32話
目が覚めると、隣で寝ていたはずの遥が居なかった。
伊達ははっとして直ぐに体を起こして家の中の物音に耳を澄ませた。
…しずかだけど、帰った…?
…でも布団あるしトイレ…まさかもう…
と伊達はプチパニックに陥りそうになった。
玄関のほうで音がして、伊達は慌てて音のした方へ向かう。
靴を脱いだ遥が振り返る。
「あ、起こした…?パン切れてたから…、なんか今日どうしても食べたくて。フレンチトーストが」
手に袋を下げた遥は、えへっと愛想笑いを浮かべた。
遥の姿をみて、力が抜けたように「そう」と言うと伊達は踵を返した。伊達を呼ぶ遥の声が聞こえていないかのようにまた布団へ潜る。
どこか様子のおかしい伊達を追いかけてきた遥。
頭までスッポリと毛布を被ったミノムシ状態の伊達に、「いーくん…?」と頬を掻きながらつぶやく。
「…寝てます」
「ごめん、いーくんのパーカー勝手にかりて…」
…それは別にいい。俺もよく遥が置いてった服勝手に着てるし
「……寝てます」
「…もしかして、オレが帰ったとか飛んだかと思った…?」
『いや、起きてるじゃん』と突っ込まない辺り、遥らしいなと伊達は握りしめた毛布の中思った。察しが良すぎるのも困る所だが。
伊達が勘違いしたのもしょうがない。遥にいつ行くのか訊いたら返事はまだ決まっていない、だった。
伊達はその言葉を信じてはいたが、どこかで疑ってもいた。
「いーくん、心配しないで。オレ居るよ…?」
「……ん」
ごはん作るね、と声をかけて遥は離れた。
………。
はるかと過ごせる時間がこうしてる間にも減っている。もう一人の自分がつぶやく。伊達は起きたくないと思いながら目を瞑る。しかし無情にも伊達のお腹が大きく鳴った。
…お腹減った
布団から這い出ると丁度遥がやってきた。「できたよー」といつも通りの遥が伊達を起こす。
「今日晴天だよ、布団干そっかな」
「…うん」
「いーくん、顔洗ってきなよ」
「うん…」
「…」
空腹を訴える音が一瞬轟いた。
「…っ、いまの音…ぷ」
あははと、遥に笑われ伊達は腹をおさえて恥ずかしそうにむくれた顔をした。
まだ可笑しそうに顔を緩める遥に優しい声で言われる。
「ご飯できてるよ、早く食べよ」
そんな遥に伊達はいつもの調子を取り戻し始めた。
「遥、また跡ついてるよ」
「…え、どこっ…?ちゃんと鏡みたのに…!ねえ、いーくん――、」
ご報告 あらすじ部分の注意書き更新しました。地雷なんかないという方はスルーで。少しネタバレになります




