第77話 食欲と性欲、そして聖火の少年。六衛田芽助、鯱千の対戦相手味埜 恒一、蜜坂 環登場
ゲームのNPCと人間であるプレイヤーの意識が入れ替わった世界の話。ゲームマスターの思惑によって全ての仮NPCはダンジョンカジノでの命を賭けたスキルを使った能力勝負が始まった。第3戦として六衛田芽助、鯱千は対戦相手が強者だと判断し身を隠しスキルを探していた。Yobaseを蘇生させたい田芽助らはゲームマスター緋戸出セルの言っていた復活の能力で生き返らせられるのは何人か話し合っていた。その頃、対戦相手である味埜、蜜坂は田芽助らに勝利するための作戦を考えながら寿司などを暴飲暴食していたのだが…。
田芽助は鯱千の予想に強く反応した。森で鯱千のいた方向へと振り返った。
「レトファリックさんと峰未雨さんが死ぬとは思ってないですけど相手もこのデスゲームを何日も生き抜いている強者なので簡単ではないかと思います。もしかしたら元バノムロッジクランの人やゲームマスターとその手先、今朝のニュースにあった電脳城雲上貝ビルを占拠した獅子川チームの人間と対峙する可能性もありますし負ける可能性もあると思います。」
鯱千は田芽助の話を聞いてやはり彼が自分よりも想定視野が広いことを悟りたのもしく思った。
「そうね。じゃあ今後の展望と予想はこれくらいにしてひとまず私たち鯱千チームの
対戦相手を確認しようっと。」
鯱千の発言に田芽助も強く賛成した。
「そうですね。対戦相手がしった相手ならスキルの対策が打てます。今は少しでも情報が欲しいです。緊張しますが確認しましょう。」
鯱千と六衛田芽助は画面を表示させ対戦相手を閲覧した。
ダンジョンカジノ第一ゲーム友情ゲーム六衛田芽助 鯱千チーム、
対戦相手 味埜 恒一、蜜坂 環
対戦相手を見て鯱千はふと違和感を抱いた。
「あれこの人たちもしかして本名でこのDESSQをプレイしているのかな。いや偽名かでもなー、こんな堅苦しい名前でゲームしててもテンション落ちちゃうと思うけどなー。もし偽名だとしたらどんな意味があるんだ。」
六衛田芽助も鯱千の言葉に同調し相手の名前についての洞察を始めた。
「そうですね。確かに変です。味と蜜、なんだか食材か生物が好きな人達なのでしょうか。おそらくゲームマスター緋戸出セルが仕組んだこの第一ゲーム友情ゲームは何らかのつながり、関係性がある人、もしくは親和性の高い仲良くなりやすい人が組まされているはず。たぶんこの人たちの共通点から対戦相手の特徴を割り出せるかもしれませんね。」
しかし六衛田芽助は自分たちの行うべき行動を改めて振り返り鯱千を急かした。
「しかし鯱千さん、相手が誰だろうと今よりも強いスキルを手に入れたり力の使い方をマスターしなければ相手が誰だろうと負けてしまいます。相手が食べ物、生物系ならそれを捕食する力なんて得たらどうですかね。でもまずスキルを持ったモンスターを探してレアだったり強力なスキルを入手しましょう。」
その頃、浜辺近くの海水浴場。海の近くに隣接されたNPCの娯楽施設にて男は食べ物を長い時間食していた。
「うめえなあ。ほんとにうめえ。うめえなあ。最高だぜこの鮭の焼き加減、そしてこの寿司の旬の味。シャリがふわっととろける。脂が口の中でとろける。そしてこのアイスみたいなシャキシャキ感。ガチで最高の美食だぜ。」
男の名は味埜 恒一。B級グルメ評論家気取りのただのブロガーだ。
「その寿司凍ってるでしょ。運営の作る料理にクレーム入れた方がいいんじゃない。
気になるのはあんたの食べ方。色んな料理ゲームマスターのくれたアイテムの食事袋から料理を全て取り出してひたすら全部の食べ物に手をつけて貪る。よくないんじゃない。」
しかし味埜の身体を見て女は興奮したのか誘惑したくなり胸を全て男に見せた。
「食べ方は雑だけど君いい顔と身体してる。あんた私とセックスしてよ。あんた結構セックス結構上手でしょ。夜の寝技は黒帯級ってやつ。君と遊べたら気持ちよさそうだなあって思うんだけど。」
女の名前は蜜坂 環。性欲の強いXにいるエロ垢を運営している猛者だ。一度彼女にDMをしたものはすべからく彼女と初体験をいたす。
味埜は蜜坂の誘いを聞き食べている最中なので口にモノを詰め込みながら答えた。
「へもほまえはほはの男と突きまくってんはろ。ほまえははの股の広いやりマンじゃねえは。」
蜜坂は味埜の話を聞いて少ししょんぼりした。それを見た味埜は素直に謝罪した。
「女は男よりも生存本能が高いから性欲も高いんだったな。悪かった。」
蜜坂は嬉しくなり飛びついた。
「あんたやっぱかわいいじゃん。で、セックスするの。」
味埜は蜜坂の提案に断固として断った。
「しない。俺は食欲の権化であり性欲の獣じゃない。対戦相手を倒しまくってここで一生暮らせるだけの飯を手に入れる。それが俺の野望だ。」
味埜はまた口いっぱいに寿司を頬張ったまま、もごもごとした声で言い放った。言葉は聞き取りづらかったが、拒絶の意思だけははっきりしていた。
蜜坂は一瞬だけ表情を止めたが、すぐに肩をすくめて笑った。
「ふーん、そういうタイプ? 食べ物の方が恋人ってわけね。」
味埜はようやく飲み込み、ふうっと息をついた。
「うーん食欲だけじゃないからね。俺はね。だから違うね。た、たぶん。ただ今は優先順位ってやつがある。ここはデスゲームだろ。腹が減って動けなくなったら終わりだ。まずは生き残る。そのために食う。」
(まあ食べる理由は適当に作っとこう。それで腹は満ちる。)
蜜坂はテーブルに腰かけ、脚を組んだ。
「へえ、意外とまともなこと言うんだ。もっと欲望に忠実な男かと思ってた。」
味埜は次の皿に手を伸ばしながら鼻で笑った。
「欲望には忠実さ。ただし一番強い欲望は食欲ってだけだ。」
そのとき、二人の前に淡く光るウィンドウが現れた。
ダンジョンカジノ第一ゲーム 友情ゲーム
参加者:味埜 恒一・蜜坂 環チーム
対戦相手:六衛田芽助・鯱千チーム
蜜坂は画面を覗き込んだ。
「来たわねゲームマスターから直々に。対戦相手決定。」
味埜もちらりと見て、興味なさそうに言った。
「六衛田芽助……鯱千……知らねえ名前だな。だがまあ油断はしねえけど」
蜜坂は指で画面をなぞった。
「でも友情ゲームって書いてある。戦うだけじゃないかもしれない。これからのゲームがどうなっていくかもわからないけど今が友情ゲームなら次は団結ゲームとかかしら」
味埜はようやく食べる手を止めた。味埜は中華系のラーメン、麻婆豆腐、北京ダックを食べ終え、つぎはヨーロッパのカルボナーラやグラタンに手を向けていた。
「チーム戦か……つまりお前とはしばらく組むわけだ。」
蜜坂はにやりと笑った。
「そういうこと。よろしくね、相棒。」
味埜は少し考えたあと、湯のみの茶を一気に飲み干した。
「まあいい。役に立つならな。」
蜜坂は身を乗り出した。
「で? あんたのスキルは?」
味埜は口の端をわずかに上げた。
「まあしょうがねえともに戦う仲間として一回だけ教えてやる。食ったもんの能力を一部再現できる。味わったものほど精度が上がる。」
蜜坂の目が輝いた。
「へえ……それってつまり――」
味埜は言葉を遮った。
「まだ全部は見せねえ。だが戦闘でも使える。」
蜜坂は嬉しそうに笑った。
「いいじゃない。面白いチームになりそう。」
味埜は再び食事袋に手を突っ込んだ。
「友情ゲームだろ? ならまずは腹ごしらえだ。」
蜜坂は呆れたように言った。
「ほんとブレないわねあんた。」
味埜は静かに答えた。
「食うことは戦うことだ。食ったエネルギーを変換して拳の威力をあげるんだよ。食ったことによる集中力で相手を撃つんだよ。」
少し間を置いて、皿の上の寿司を指で押しながら続けた。
「どんなモンスターだろうが人間だろうが、食えない相手は勝てない相手だ。俺はそういう基準で戦ってる。」
そして二人は、自分たちの知らない相手――鯱千と六衛田芽助との対戦に備え始めた。
代わって六衛田芽助 鯱千のいる浜辺の近くの森エリアに戻る。
六衛田芽助はあまりスキルを持ったモンスターがいないことで頭を抱えていた。
「モンスター探しといってもここ一帯を探してもあんまり見つけられないですね。ここは二手にわかれて見つけたら合流しますか。」
鯱千は六衛田芽助の言葉に動揺し瞬時に却下した。
「無理無理。田芽助くんいなかったら遠距離銃撃しかない私近距離の対戦相手きて死んじゃうじゃん。これからも一緒にいよーよー。田芽助くん。どうかお願い。守って私のナイト。」
六衛田芽助は推しの頼みにやる気を極限まで出した、とその時、
「ナイトとは僕のことかな。」
突然天から少年が神々しく颯爽と下りてきた。
[これは聖火のカード Q時代が変わっても受け継がれていくものは何か。]
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