第78話 聖火を託される為の王の資質、炎は未来へ受け継がれる
ゲームのNPCと人間であるプレイヤーの意識が入れ替わった世界の話。ゲームマスターの思惑によって全ての仮NPCはダンジョンカジノでの命を賭けたスキルを使った能力勝負が始まった。第3戦として六衛田芽助、鯱千は対戦相手が強者だと判断し身を隠しスキルを探していた。六衛田芽助らの対戦相手も味埜恒一、蜜坂環と明らかになり彼らも食事後、勝負に勝つために能力を教え合い行動を開始した。六衛田芽助らもYobaseを生き返らせるため新しいスキルを集め森を彷徨っていると一人の少年が姿を現した。画面には聖火のカードと表示されたのだが…。
六衛田芽助は反射的に鯱千の前に立った。突然現れた少年の姿はあまりに神々しく、ただのプレイヤーには見えなかった。
少年は木漏れ日の中に降り立ち、まるで光をまとっているかのようだった。白い外套のような衣服が風に揺れ、その手には小さな赤い光が揺らめいていた。
「ナイトとは僕のことかな。」
少年は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
鯱千は驚きながら六衛田芽助の服の袖を掴んだ。
「な、なにあれ……NPC?それともプレイヤー?」
六衛田芽助は警戒しながら少年を観察した。
「……ただ者ではなさそうです。気をつけてください。少年がこのデスゲームに参加しているとは到底思えない。そうであれば相手は」
鯱千は六衛田芽助と目を合わせて同時に告げた。
「「強敵」」
少年はゆっくりと歩み寄った。
「安心していいよ。僕は君たちを殺しに来たわけじゃない。まったく最近の若者はアニメの見過ぎで少年に対しても怪しい危険だと思えばすぐに敵意をみなす。よくないね。まあ君たちの味方ともいえないんだけどね。」
そう言うと、少年の手のひらの赤い光が形を変え、一枚のカードとなった。
炎の紋章が刻まれたカードだった。
「私は聖火のカードを統括するカードモンスターのボス。敗北した相手のスキルを自分のものとして継承できる力を持つカードだ。」
鯱千の目が大きく開いた。
「え……そんなの最強じゃん。」
六衛田芽助も息を呑んだ。
「そんな強力なカードをなぜ僕たちに……?」
少年は静かに答えた。
「この能力が欲しいように強くしているのがゲームマスターだからね。彼はとても優しくいつも世界がひっくり返るような大どんでん返しを求めているロマンチストだ。けれど僕は違ってね。僕はリアリストだ。君たち人間がNPCにしたことがきっかけかもしれないけれどこれで必ずNPCは人間たちに復讐をするだろう。その繰り返し。ただ、NPCと人類を入れ替えても無粋だとは思わないか。」
聖火のカードモンスターは話を続けた。
「だからね。僕は自分の意志でこの先のNPCと人類の和解が目指せる優しく冴えた人かつゲームマスターの力に抗える人に自分の力を与えることにした。弱者の気持ちがあり挫折や犠牲があっても前に進む。そんな大切なものを守れる強い人間に僕は投資したい。」
聖火のカードモンスターの少年に対して鯱千と六衛田芽助は質問した。
「でもさーなんで聖火ちゃんは絵を描けて平和主義者な私じゃなくて田芽助くんなの。この人確かに優しいっちゃ、ま、まあ優しいけど弱いよ。」
六衛田芽助も自分の弱さを認めているからか鯱千に同意しながら後に続いた。
「そうですよ。なんで僕なんですか。たしかにカードのモンスターとは一体契約してますけどそれだけです。戦術や戦略。強奪や略奪ができるような強くて命とか大事なものを賭けられる人がこの世界を変えてゲームマスター緋戸出セルにはできなかった。新たな世界が生み出せるんじゃないんですか。」
聖火のカードは質問やアドバイスに少し笑みをこぼしながら答えた。
「僕はカードモンスターでありながらNPCのような見た目をしている。この意味が分かるかね。僕は人の行動をNPCを通して無線で会話してたりする。この会話する能力ももちのろんカードのモンスターのスキルなんだけどね。この力であるエルフから話を聞いた。『私を全裸にした鯱千は恨んでいるけど、なんの見返りもなく服をくれた上に自分を逃がしてくれた六衛田芽助さんは忘れない。聖火のカードモンスターイグナイトバークさん。どうか彼をこのDESSQ世界の王にしてください』ってね。」
聖火のカードの話を聞いた六衛田芽助はこの世界でデスゲームを初めてすぐのことを思い返した。しかし記憶の中にはかわいかったエルフの推しの顔しか思い出せていなかった。
「もしかしてエルフの推しですか。僕何かしましたっけ。」
鯱千は今までの出来事を振り返ってすぐに気づいたので六衛田芽助の尻を思いっきり足で蹴った。
「いたじゃん。私がYobaseのご飯食べちゃったあの井戸でしょ。うーわこの人無自覚に人救ってるよ。あーはいはい確かに彼なら適任かもねー。あーなんだろうすごくむかつく。」
(私のためだけに動く田芽助くんだと思ってたのにあーむかつくわー)
鯱千は他の女性からも六衛田芽助が好かれていることにご立腹だった。
六衛田芽助は蹴られた反動で今までの回想が頭の中をめぐりYobaseや峰未雨との思い出として振り返った。
「あーそうでしたそうでした。鯱千さんがせっかく掴んだ情報の元となるNPCの捕獲に成功したのに僕が一目見て物凄く可愛いと思ったから逃がしたんでした。あの時のエルフさんですか。いやー元気そんで何よりかわいい女性がいなくなるのは社会の損失ですからね。」
六衛田芽助の言葉に鯱千は再び嫉妬し彼のケツを思いっきりひっぱたいた。
「はあう!!!!」
「人のためになるから為助ってか。もてないオタクがいい気になりやがって。(小言)」
鯱千は六衛田芽助の事が気になって気になって仕方がないので田芽助くんに聞きたくない事を聞くことにした。
「田芽助くんは私とそのエルフどっちが好きなの。」
六衛田芽助は突然の質問に驚いておどけながら答えた。
「えーとどっち、いややっぱり鯱千様がぼくの一番の推しで、迷うなうーん。推しはすべからく推しなので、ええとどうだろう。」
六衛田芽助は自分に嘘をついて鯱千を持ち上げるか、自分に正直に本能のまま答えるべきか悩んでいた。その姿を見ていた鯱千は自分が悩んだり怒ったりしていることが馬鹿らしくなってしまい聖火のカードに話を振った。
「もーまあいいや。で聖火ちゃんは六衛田芽助に今力を貸してくれたりするのかな。正直ここでカードのスキルが2枚そろったらマジ負ける気しないんだけどねー。どうかな。」
聖火のカードイグナイトバークは少しさえぎられた話を再び続けた。
「まあ君らの未来の夫婦漫才はまあまあ良かったからこのまま見ててもよかったけど、そうだね対戦相手とすぐ交戦しても困るし僕の要求を話そうかな。」
聖火のカードはこほんと息を吐き要求を述べた。
「確かにまず前提としてNPCをも助けてしまう六衛田芽助くん。君には少なからず好意を抱いている。けれどね。優しいだけで勝てるほどゲームマスター緋戸出セルが仕組んだ、このダンジョンカジノはそうはいかない。最終的に生き残る人間は一人っていうケースもありうる。だから君には能力の使い方がどれほど熟練しているのかここで検証してみたいと思う。」
聖火のカードは彼に帽子をかぶせた。
「だからね。これから君の脳内でモンスターチェスをやってみたいと思うんだ。君が勝ったら能力を使わせてあげよう。私のスキルがあれば多くのスキルを同時に所持できる。何度も人間対人間の対戦が予想されるこのダンジョンカジノにおいてスキルの量は選択肢の量だ。君の持っているスキル北極のカードテママリナネットの3を使って10対10で僕とモンスターを使ったチェスをはじめよう。」
いきなりの聖火のカードから自分の脳内にログインしたかのような感覚に襲われ六衛田芽助は慌てた。
「うわ。えなんですかなんですかこの感覚は寒いいや寒くない怖い。」
鯱千の事を思い出し彼女を守るために聖火のカードのスキルを手に入れる事を固く誓い少年の言葉に応じた。
「あれ怖くもないかも聖火さんあなた優しいですね。ゆっくりと精神世界に誘導しましたね。私全然怖くなかったです。少年の優しくて純粋な心を持っているということでしょうか。」
六衛田芽助は準備運動をはじめこれまでの死線を乗り越えたものとしての切り替えの早さそして根源的な強さがあるように見せた。
「さて勝負しますか。イグナイトバークさん。」
少年は一度しか話していない自分の名前を呼ばれて少し嬉しかった。
「記憶力いいですね。一瞬で覚えてしまうとは。」
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