10-7
再びテイラロと顔を合わせて、空はどんな態度で接すればいいのか分からなかった。二人は軽く頷き合っただけで、以前のことには触れなかった。触れている時間もなかった。
ラヴェニが、二人の黒魔法がどう補い合うのかを急ぎテイラロに説明している間、空と雪、マリリンは、冷たくそびえる要塞の城門を見つめていた。
エドウィンはプリオン要塞を彼らよりはるかによく知っている。地下の隠し通路などから侵入すれば、罠を踏む可能性が高い。エドウィンが一人きりである以上、いっそ正面から当たったほうがいい。
道中、ラヴェニからエドウィンがどんな人間かを聞かされて、雪も、弦羽が本当に害されることはないだろうと判断していた。「いい手ではない」と彼は評した。
だがすぐに、彼は続けた。「けれど、すべてを失おうとしている人間が何をしでかすかは、誰にも分からない」
そのとき、馬蹄の音が響いた。
マリリン、ラヴェニ、テイラロが揃って剣を抜いた。だが、馬で彼らの前に現れたのは、白い法衣に身を包んだシーデだった。彼は馬から飛び降りて言った。「皆さん、どうか手を出さないでください」
ラヴェニは言った。「あなたが、わたしたちに勝てるとでも?」
シーデは言った。「あなたたちに逆らうつもりはありません。従兄上と話をする機会をいただきたいのです」
ラヴェニは言った。「まさか、あなたに彼を説得して四王子を解放させる術があるとでも?あなたの立場で、なぜそんなことをするの?」
シーデは跪き、皆に向かって言った。「ただ、従兄上に伝えたいことがあるだけなのです。どうか、お目こぼしください。従兄上のいる場所まで、僕がご案内します。ただし、その前に従兄上と話をさせてください」
ラヴェニは言った。「わたしたちを馬鹿だと思っているの?みすみすあなたを行かせるわけがないでしょう」
シーデは言った。「この要塞に罠が多いことは、皆さんもご存じのはずです。僕の案内がなければ、警報を鳴らさずに中へ入ることはできません」
雪は冷ややかに言った。「君自身が、その罠の一つなんじゃないか」
シーデの視線は一同をぐるりと巡り、最後に空の上で止まった。彼は言った。「お願いします。最後の瞬間が来る前に、従兄上と話をさせてください」
以前の空なら、きっと取りなそうとしただろう。だが今の彼は、死にかけたことがあり、その手も血に染まっている。もう、簡単に憐れみを与えたりはしない。
口を開いたのは、意外にもマリリンだった。「彼の言うことには一理あります。ラヴェニさんでさえ内部の経路をご存じないのですから、案内役がいるのが最善です。シーデ殿が裏切る可能性については、彼が動く前にわたしが止められます」
ラヴェニと雪は顔を見合わせた。雪は首を横に振ったが、ラヴェニは少し考えてから言った。「シーデがマリリンさんに敵わないのは確かね。フェラキオ家が保証してくれるなら、わたしは同意するわ」
雪は言った。「途中で彼に罠へ突き落とされたら、僕たちは全滅だ」
マリリンは落ち着いた口調で言った。「そうはなりません。わたしがいますから。彼が今のところ嘘をついていないことは、わたしには感じ取れます」
雪はシーデに尋ねた。「君は、従兄に別れを告げたいだけなのか?」
シーデは少しためらってから言った。「従兄上を説得したいのです。家族を捨てて、ご自身だけで逃げるように」
ラヴェニは冷笑した。「それは駄目ね」
テイラロはいっそう怒りを露わにした。「絶対に逃がすわけにはいかない!」
シーデは言った。「従兄上お一人が去るほうが、アクミリン家全体を取り逃がすよりはましでしょう。あなた方が本当に望んでいるのは、従兄上お一人の命ですか、それともアクミリン家の失墜ですか?」
ラヴェニは言った。「両方よ!」
テイラロは拳を握りしめて言った。「あの男を見逃すわけにはいかない!」
シーデは言った。「ですが今、従兄上は四王子殿下を人質に取っています。あなた方が当初計画していたように、僕たちの一族を一網打尽にすることは、もうできないはずです」
ラヴェニは言った。「それはまだ分からないわ」
雪はマリリンを一瞥してから、シーデに向き直った。「君は、四王子が傷つかないと保証できるのか?」
マリリンはラヴェニとテイラロに言った。「フェラキオ家の者として、わたしも四殿下の安全を第一に考えたく存じます」
意見は二つに割れた。ラヴェニとテイラロはエドウィンを逃したくない。雪とマリリンは、エドウィンを説得して弦羽を解放させる人物がいることのほうが重要だと考えている。
その四人が、まだ態度を示していない空に一斉に視線を向けた。
空は言った。「僕は、シーデに話をさせてみてもいいと思う」
テイラロの顔色が変わり、口を開こうとしたところで、空が先に言った。「たとえエドウィンが今回逃げおおせたとしても、また捕まえる機会はある。一族の庇護がなければ、一人でそう遠くへは行けない。今いちばん大事なのは弦羽だ。弦羽さえ無事なら、エドウィンのことは、あとでいくらでも片をつけられる」
シーデはそれを暗黙のうちに認めた。ラヴェニも少し考えてから言った。「それは確かにそうね。局面が動くなら、エドウィン一人を捕らえるほうが、彼が一族ごと夜落の地に亡命するのを止めるより、案外簡単かもしれない。ただ、シーデがこの提案を持ち出したということは、彼にも、エドウィンを逃がせる自信があるということよ」
マリリンは言った。「ラヴェニさん、同じカード勝負であれば、あなたはどちらの一局を選ばれますか?」
ラヴェニはテイラロに言った。「ごめんなさい。冷静に考えたら、シーデの提案のほうが実現可能だと思うの」
テイラロは言った。「でも……」
ラヴェニは言った。「そもそも、あの高慢な男がその気になるかどうかよ。シーデには、そもそも説得なんてできないかもしれない。とにかくシーデに話をさせてみましょう。結果がわたしたちの思惑と違ったとしても、こちらにはまだ別の手札があるわ」
話し合いの末、彼らはシーデを通すことに決めた。シーデは急ぎ足でプリオン要塞へと入っていった。
弦羽が答えようとした矢先、慌ただしい足音が響いた。
飛び込んできたのがシーデだと分かると、エドウィンは攻撃魔法を使わなかった。
シーデは進み出ると、まず弦羽に礼をし、それからエドウィンに向き直って言った。「従兄上、どうかお止めください」
エドウィンは言った。「お前は、僕に一人で逃げろと言いに来たのか?」
シーデは頷いた。
エドウィンは言った。「そうしたければ、とっくにやっている」
シーデは言った。「お母上の身の安全は、すでに人を手配して確保してあります」
エドウィンは言った。「僕は、彼女を救うためだけにやっているわけじゃない」
シーデは言った。「従兄上は、善意を振りまくような方ではありません」
エドウィンは言った。「僕の選択は、今お前が見ての通りだ。もう後戻りはできない」
「追っ手はすでに近くまで来ています。今すぐお逃げください」
エドウィンは言った。「僕も分かっている。一族を丸ごと連れて、僕たちの居場所などそう簡単には見つからないことは」
シーデは問うた。「ならばなぜ、それでも意地を通そうとなさるのですか」
「僕の父は三十年かけてこの局を布いた。僕も十年をかけた。この勝負は、終わらせると言って終わらせられるものではない」
「それでは、ご自身が生き延びる機会を無駄にするだけです!」
「お前も、僕にはできないと思うのか?」
シーデはただ、こう言った。「お願いです、どうか手をお引きください」
エドウィンは言った。「近くに来い」
シーデは言われるままに数歩前へ進み、エドウィンに触れようとした直前、口から血を吐いた。
彼は信じられないという顔で、自分を貫いた剣を見つめ、それからエドウィンを見た。その眼差しは、複雑な色を帯びていた。
次の瞬間、彼は意識を失った。
弦羽は言った。「こうすれば、彼は無関係でいられると思っているのか?」
エドウィンは言った。「お前に理解してもらう必要はない」
そう言うと、彼は顔を背け、床に倒れたシーデを、もう一度も見ようとしなかった。
もう一目でも見れば、あるいは心が揺らいでしまうかもしれない。




