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若返りの泉とペナイシュ家の中毒に関係があるとわかってから、弦羽はこの任務を自ら引き受けようとした。しかし伝説の若返りの泉がある場所、人間貴族・五大名門のクランシュ家の拠点、ニオレアは、精靈がほとんど立ち入らない土地だった。変装の可能性をひとしきり検討した末に、王族は最終的に空を送り出すことに決めた。貴族を目指している空にとっては願ってもない好機で、断る理由など一つもなかった。
同行者はリア、リアンドラヤ神廟の主祭司だった。弦羽が手配した。
怪物と戦わなくていい、迷宮も必要ない、ただ街に潜り込んで若返りの泉を調べるだけ。難しくはないはずだった。ただ、立て続けに任務をこなすそのペースに、カワ先生がとうとう聞いてきた。「体が持つかい?」
空が言った。「機会を逃したくないんです」
アンバール迷宮での出来事を話すと、カワ先生は目を細めて言った。「金のリンゴ! 誘惑に勝てたとは、たいしたものよ!」
「友達も全員通過しましたから」
カワ先生が言った。「月神様があなたに告げた。その願いは、本当に実現できると。もしどこかで月神の金のリンゴを見つけて、もう一口齧れば、夢が続くだけじゃない、本物の現実になるわよ」
空が言った。「好きな人がいるということは、その人を……占有することじゃないと思って」
カワ先生はボヘミアン風の深紅の丸帽を被って、その流蘇を揺らしながら口を覆って笑った。「ずいぶん大人になったね」
「先生、今回の任務で、自分の魔法が本当に弱いと痛感しました。でもすぐにまた次の任務で。何かできることはあります?」
カワ先生が言った。「魔法は短期間では伸びない。でもリア祭司と同行するでしょう? 彼女の神術は相当に強力よ」
元素魔法を専門とするカワ先生が認めるほどだ。リア主祭司は伊達ではない。空は言った。「アンバール迷宮の中では、いつも仲間に頼ってばかりでした。今回もそうだったら、自分が情けない」
カワ先生が言った。「学ぶのは一歩一歩よ。最初に来たときと比べれば、ずっと成長している。心配なのは体と心が続くかどうかだけよ」
空が言った。「正直、自分でもわからないです」
迷宮から戻ってからというもの、力を根こそぎ抜かれたみたいで、毎日眠くてたまらなかった。カワ先生には少し休みをもらって、療養院でひたすら眠り続けた。この深い疲労感は、呪いをかけられたのではないかと疑うほどだった。
空はそれでも言った。「でも、新しく来た祭司がもう解毒の件を進めてくれています。早く出発して、彼女の助けにならないと」
カワ先生が優しく言った。「他の誰かに任せることもできるのよ」
言えなかった。この任務に行かなければならない理由は、功績を積みたいというだけではなかった。夕立から届いた資料に、ナセドが探す「小さな女神」の座標もニオレアにあると書かれていた。なぜ自然から生まれた女神が、森から遠く離れた大都市に? 若返りの泉の調査と並行して、こちらも密かに調べないといけなかった。
カワ先生が言った。「若返りの泉というのは、誰でも疲れを癒して心からくつろげる泉源よ。行けばついでに静養もできるわ」
空は頷いて、カワ先生に鎮静の魔法をかけてもらった。
気がついたらまた眠っていた。目が覚めると、カワ先生がかけてくれた毛布が体にあって、本人はもういなかった。
夜のサイフィ学院自然学部、希望の樹の実が柔らかく光って、低い夜空のようだった。本物の夜空を見上げると、月が明るすぎて星はほとんど見えなかった。
神廟へ向かう道中、眠気が限界で、道端にそのまま倒れ込みたくなった。どうせ学院内は安全だ。それでも意志の力でなんとか歩いて、純白のデイジー花壇を通り過ぎ、神廟へ辿り着いた。
少し待つと、外来者の気配を察知できる主祭司のリアが出てきて、眉をひそめて言った。「あなた、一ヶ月眠っていない顔をしてるんだけど」
空が言った。「アンバール迷宮が本当に疲れました」
そのとき、内殿から一人の小柄な人物が出てきた。頭から足まで鵝黄色の祭司服に身を包み、面紗をかけていた。彼女は黙って空に治療魔法をかけた。空は途端に頭がすっきりして、目が覚めた。
「ありがとうございます……外援祭司」
千年前の最強の治療者は、ちょっと手をかざすだけで、療養院全体が長期間かけて行った処置をあっさり超えてしまった。
リアンドラヤは今、サイフィ学院の神廟に安置されていた。対外的には「外援の治療者」という肩書で、本当の正体を知る者はほとんどいない。主祭司のリアでさえ、どこかの精靈族の祭司だと思っているだけだった。
礼を言われると、リアンドラヤは首を横に振り、一言も発せずに去っていった。
その背を見送りながら、リアが不満げに言った。「祭司が一人増えるのは構わないけど、なんで護衛まで連れてくるの? ここはリアンドラヤ神廟、聖女の神廟よ。男性を出入りさせていいはずがない」
空が言った。「フェラキオ家だってわかってるでしょう。文句を言っても、彼は女性に変装するだけです」シルバは今や口紅のようにリアンドラヤにべったりくっついていて、誰かが彼女に危害を加えることを極度に警戒していた。その気持ちは空にも理解できた。
リアがため息をついて言った。「まあ、そうね」
空が聞いた。「荷造りはできてる?」
「いつでも出発できるわ」
「じゃあ明日の朝にしよう」
リアが疑わしげに聞いた。「持ちそう?」
「大丈夫」空が頭の中で思っていたのは、「持たせないといけない」だった。
見え透いた強がりは、おそらくリアに筒抜けだった。彼女はそれ以上何も言わず、澄んだ声で言った。「早く戻って休みなさい」
転送陣でニオレアへ入ると、リアは珍しそうにあちこちを見回し、空はまだ少し眠そうだった。ニオレアはこの領地最大の都市で、北の方に位置するため少し肌寒く、二人とも厚手の服に着替えていた。住民は袍ではなく、人間らしい短い上着を着ていた。春の名残の寒さの中、みんな衿を立てて、黙々と足早に歩いていた。
ニオレアの建物は王都と違って高さの制限がないため、どれも高くそびえていた。街の中心にある古い鐘塔を軸に、そこから見渡す景色は完璧な左右対称だった。
鐘塔の展望台に上ったリアが眼下の景色に感嘆して言った。「若返りの泉だけじゃなく、この街そのものがもう来る価値があるわね。なんて特別な場所」
空が言った。「そう?」
リアがちらりと見て言った。「あなたは何度も冒険に出て、もう珍しいものなんてなくなってるんでしょうね。でも、わたしは王城の近くから出たことがほとんどなかったから、こんなに人間が多い場所を見るのも初めてよ」
空は気持ちを切り替えて言った。「人間の王国に入ったことはあるけど、あのときはあまりいい経験じゃなくて。ここの方が気分よく来られそうです」
「ハランドリに行ったの?」
「そうです」
リアが言った。「あそこはここと全然違う景色でしょう。わたしも見てみたい。でも旅の煩わしさは得意じゃないから」
旅が苦手な人もいるのか、と空は少し驚いた。確かに、国内なら転送魔法陣で移動できても、国境を越えれば毎回の身分確認もあって煩雑だ。
空がリアに聞いた。「ここはどう?」
リアが言った。「思ったより穏やかだった」
「都市が混乱してると思ってた?」
「クランシュ家の領地から悪い話が来ることも多くて。でも若返りの泉でリゾート地になってるからか、秩序があるのね」
空が言った。「そう、大事なのは若返りの泉ですね」
若返りの泉がどこにあるかを探す必要はなかった。街中いたるところに泉への案内板が立っていて、旅客についていくだけでたどり着いた。入場料を払うと、他の人々と一緒に露天式の泉水施設に入った。
泉の水は空色で、肌触りはなめらかで、体温より少し高い。入場者はみんな指定の茶色い衣服に着替えて、水に浸かっていた。くつろいでいる人、熱心に話し込んでいる人、老若男女が入り混じっていて、温泉というより公共の広場に近い雰囲気だった。
水に足を沈めた瞬間、リアンドラヤが治療してくれたときと同じような安らぎが広がった。さらに細かくて、炭酸飲料の気泡みたいに体をちくちくと刺しながら、蓄積した疲労物質や毒素の残滓を洗い流してくれる感覚があった。
空がリアに聞いた。「僕が入ったら、体から出てきた悪い物質で泉水が汚れませんか?」
リアが言った。「あなた、お茶のパックじゃないんだから」
それを聞いてようやく安心して、壁に凭れ、水の中の石段に座って、長い息をついた。
隣の老夫婦が話しているのが聞こえた。関節の痛みが消えた、白髪が減った、このままニオレアに移住したいとまで言い合っている。
少し離れたところでは若者のグループが賭けをして、負けた一人が泉水を一口飲まされ、仲間に笑われながら「甘い! 本当に飲める!」と驚いていた。
その様子を見て、リアが小声で言った。「不潔だわ」
空が言った。「悪い物質が泉水に吸収されるなら、飲んでも大丈夫ということになりますよね?」
「理屈の上ではそうだけど、あなたは他人の足が浸かった水を飲みたい?」リアが頭を洗っている人を指さした。
確かに、気分はよくない。
しばらくして、リアが立ち上がった。空が聞いた。「どこへ?」
「温泉があまり好きじゃない」
まだ浸かっていたかったが、リアについていくことが今の最優先だ。後ろ髪を引かれながら泉を出た。
街に戻ってから、空が聞いた。「泉は偽物でしたか?」
リアが言った。「本物よ。だから逆におかしい。この街の中心に、どこからそんな自然の力が湧いてくるの」
空は旅行案内を開いて読み上げた。「若返りの泉は花神フロラが花の中から生まれたとき、その花びらの露が一滴落ちてできたもの。伝説では長く浸かり続けると永遠の若さを保てると言われている」
リアが苛立たしげに言った。「わかってる、その『神話』が作り話だということも。この若返りの泉はクランシュ家がニオレアに来てから作ったものなの」
「でも、それがクランシュ家の公式の説明なんです」
リアが言った。「泉の中で感じたことが引っかかっている。あの力は、普通の人間の家族が持っていい類のものじゃない。あなたが言っていた女神がこの街にいるなら、それは偶然じゃない。クランシュがその女神の力を何らかの方法で使って、あの泉水を作り出したんだと思う」
空が急いで追いかけながら言った。「確かめたの?」
「宮廷育ちだから、こういう話は何度も見てきた。人間というのは、だいたいそういうものよ」
若返りの泉の関連商品を売る店が立ち並び、泉水クッキーなどの限定食品もあった。街角では吟遊詩人が泉を称える歌を歌っていた。リアはあからさまに嫌な顔で売り込みを断り続け、焼き肉の香りにも顔をしかめて、近づこうとする空を引っ張り戻した。
一通り歩いてから、空は若返りの泉以外の部分はなかなかいい街だと感じた。
空が言った。「泉に入る前と後で態度が全然違いますよね」
リアが言った。「あの泉、絶対におかしいから。近くの神廟で調べてくる」
若返りの泉への潜入は第一歩に過ぎなかった。これからもっと深く調べなければならない。
空は別の任務についていた。クランシュ家の傍系で家産を継げなかった小さな息子が経営する牧場で、牧場労働者として働き始めることになっていた。




