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トルコ石  作者: 葉櫻
八、月
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番外:守護者

アメイティスの清々しい空気を吸いながら、リアンドラヤの体はまだ疲労と痛みの中にあった。シルバの腕の中に身を預けていた。全身の力が抜け果てて、行き交う顔はどれも見知らぬ者ばかりで、今の彼女が唯一頼れるのは、シルバだけだった。


アイセンティア王室から、彼女の処遇が決定した。サイフィ学院内の「リアンドラヤ神廟」に安置されることになる。もちろん、リアンドラヤ本人として表には出られない。かつて彼女を妖魔と呼んで排斥した人間の一族は今はもう存在しないが、彼女が聖女と崇められることに反対してきた「サンチャ」教派の流れは続いている。いずれその教派の人間の青血貴族たちも、彼女の存在に気づくだろう。


リアンドラヤはこれほど先のことを考えたことがなかった。千年前、月神が目を閉じるよう言ったとき、永遠の眠りに就くものとばかり思っていた。ただ、千年後に肉体だけが役に立てばいいと。


シルバが聞いた。「何を考えているの?」


リアンドラヤが言った。「なぜまだ生きているのかと。黒女神と月神様が親切心から、精靈を救うために残してくれたということ?」


シルバが言った。「あなたは死ぬべき存在ではなかった」


リアンドラヤが言った。「でも、千年後に目を覚ますとは思っていなかった」


琥珀から解き放たれたときの痛みが、これは夢ではないと教えていた。現実に起きていることだった。


シルバは軽く笑って言った。「しかも目覚めてすぐ、わたしが老けたと言った」


リアンドラヤはそっと面紗を外そうとした。シルバがその手を止めようとすると、彼女は言った。「いいの、あなたはもう見た。わたしは魔族、見た目は醜い、それはわかってるでしょう」


「あなたは美しい」


「いつもそう言う」


リアンドラヤは面紗を外した。月魔族の典型的な顔が、シルバの前に現れた。シルバの眼には揺らぎも嫌悪もなかった。彼は言った。「今も同じことを言っている。あなたは美しい」


リアンドラヤが言った。「あなたが言う『美しさ』は、わたしが人を救える力があることを前提にしている。治療の力を失えば、わたしはただの奇妙な怪物。今わたしを目覚めさせたのも、わたしの能力が必要だったからでしょう?」


「二つのことは別々だ、ちょうど同時に起きただけ」


リアンドラヤが聞いた。「わたしが魔族だと知ってから、驚いた?」


シルバが言った。「実はそう難しくなかった。フェラキオ家の家主として、他の者より多くの情報を持っているから」彼は千年前の少年のように、リアンドラヤの額を軽くはじいて言った。「そんなに深く考えなくていい。あなたの本能は人を救う方を選ぶ、なら今はその本能のまま生きていけばいい」


リアンドラヤが言った。「わたしのことをよく知っているの?」


シルバは微笑んで言った。「もしかしたら、あなた自身より知っているかもしれない。月神様はあなたに何と言ったの?」


リアンドラヤが言った。「時が来たと。花エルフの中毒は始まりに過ぎないとも。それと、花エルフに盛られた毒は〝若返りの泉〟の水に混入されているということ。本来は永遠の若さを保つための聖物なのに、毒に作り替えると毒性が高まると。なぜ月神様がわたしにそれを教えるのかはわからない」


シルバは少し考えてから言った。「おそらく黒女神の依頼だと思う。何らかの理由で、黒女神はチームにいる〝空〟という人間をとても気にかけている。それに、アイセンティアの国民を守ることは、もとより千年前の黒女神とサイフィ神の約束だから」


リアンドラヤは黒女神が自分を見る目に宿っていた恨みがましさを思い出した。後になって、あれが嫉妬だったとわかった。


イソンがサイフィ神の慈愛の一部を受けた存在だとすれば、黒女神とリアンドラヤは、どちらもサイフィ神に恵みを受けた者だった。サイフィ神は、黒女神を邪悪の象徴として扱わなかった唯一の神だった。黒女神が嫉妬していたのは、サイフィ神がリアンドラヤに向ける「母の愛」だった。シルバが言う通り、黒女神はその「母」の願いを果たそうとしているのかもしれない。


リアンドラヤが言った。「月神様のお力添えがあれば、少しはお役に立てると思う」


シルバが言った。「申し訳ない、まるであなたを必要だから大事にしているみたいに聞こえたかもしれない。もしあなたが死なずにいたと知っていたら、どんな手を使ってでも、あなたが静かに生きられる方法を考えた」


「あなたがまだいてくれることが、一番安心できる。アイセンティア……ずいぶん変わった」空気はかつてほど澄んでいない。建物は昔よりずっと豪奢になった。かつての土の道はすべて石畳に変わっていた。


シルバが言った。「今の世界を一緒に知っていこう」


「イソン殿下は、本当に……」


「あなたが月神様に連れていかれてしばらく後、父は逝った」


リアンドラヤが言った。「殿下が頼んだからといって、こんなに長い時間わたしの面倒を見る必要はなかった。ただの言葉だったのに」


シルバが言った。「誓いだ」


リアンドラヤが言った。「でもあなたは今のわたしを初めて知ったばかり。千年前のあなたが知っていたわたしは、面紗をして、静かで、奇妙な人物だっただけ。みんなわたしを〝聖女〟と呼んだが、わたしは不思議だった。人を救うのは当たり前のことで、わたしはたまたまその力を持っていただけ。イソン殿下のように自ら戦場に立ったわけでもないのに」


シルバが言った。「琥珀が砕けたとき、あなたの記憶が見えた。胸が痛かった。でもその前から、あなたはわたしが守りたいと思う存在だった。あなたはいつも目立とうとしなかった、功績は父に譲り、過ちは自分に引き受けた。すべてを捧げて世界を救った後、自ら命を絶とうとした。その心の在り様に、サイフィ神でさえ感動して、あなたを義娘として認めた。わたしが知っているあなたは、もしかするとあなた自身が知るよりずっと多い。わたしはあなたがいつも頭を下げているのを見ていた、でも誰かを守るときだけ胸を張った。ご飯を少しずつ食べていたのは、急に患者が来ても喉に詰まらせないために、すぐ動けるためだとわかった。礼の仕方はいつも完璧だった、最初は少し過剰だったけれど、父のそばにいながら彼の威厳のために、それ以上卑屈に見せないようにした。あなたは魔族なのに、善のために戦い、両陣営の批難を引き受けた。千年の間、わたしは成長しながら、あなたの行動がどれほど尊かったかを少しずつ理解してきた。むしろ間違えたのはわたしの方だ。神諭の制限に縛られすぎて、アンバール迷宮をもっと研究しておけば、子どもたちや王子殿下たちに救いに来させることにならなかった」


リアンドラヤが言った。「一つお願いを聞いてもらえる?」


シルバが聞いた。「解毒が終わったら、わたしに自分を殺してほしいということ?」リアンドラヤの驚いた顔を見て、シルバは笑って言った。「昔のわたしは幼稚で衝動的だった。でも時間はわたしを変えた」


リアンドラヤが言った。「わたしはこの世界に合わない。ここに来るまでだけでも、世界がたくさん変わったのがわかる。千年前だって、もともと死ぬつもりだった」


シルバが言った。「その困難は、一緒に乗り越えていく。この年月の中で、わたしはあなたに関することを調べ続けてきた。あなたがこれから入る神廟も、わたしが建ててくれるよう頼んだものだ。一日もあなたのことを忘れなかった。わたしの長い命を使って、できるだけ多くの人にあなたのことを覚えていてもらいたかった」


「ごめんなさい、イソン殿下があなたに託したせいで、こんなに長く苦労させてしまって」


シルバが言った。「他にも兄弟はいた。でも父に選ばれたことが誇りだった。これから何が起きても、あなたは一人じゃない」


リアンドラヤはシルバを見つめて、かつての賑やかで精力みなぎる少年を思い出した。いつも彼女の傍にまとわりついて、一緒に遊んでくれとせがんでいた少年を。


シルバの両目には、千年前に比べて、幾年もの重みが刻まれていた。


年を重ねても、シルバはイソンとは違う。絶対に違う。


ただ、誓いの重さだけが同じだった。


リアンドラヤが言った。「こんなに時間が経って、わたしの治療方法がまだ効くかどうかもわからない。もしわたしがもう〝聖女〟ではなかったら、それでもまだ生きていていい?」


シルバが言った。「救世主として生きる必要はない。でもわたしはあなたの守護者でいたい。わたしが守りたいのは、あなたの治療の力ではなく、あなた自身だ。世界は変わった、かつてほど残酷ではない。今度こそ、あなたに選ぶ機会をもっと与えたい」


リアンドラヤの心が、優しい手にそっと包まれるように、じんわりと温かくなった。


フェラキオ。守護。


彼女は何も言わず、シルバが差し伸べた手を握った。


千年を越えた誓いが、ここから続いていく。

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