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帰路、シルバは弦羽に全員無事との報告をした。鏡の迷宮の側でヴィートに奇襲されて影を奪われ、鰐の沼に放り込まれたのだという。異変した鰐の餌として投げ込まれた俘虜が長く生き延びられることは通常ない。しかしフェラキオ家の者たちは、その鰐の沼の責め苦に耐え続けて生き延びた。命は守れたが、重傷は少なくない。とはいえどれも致命的ではなく、戻って療養すればすぐに回復するだろうということだった。
空は、シルバの肩に寄りかかって眠っているリアンドラヤに視線を向けないようにした。リアンドラヤはすでに面紗を被り直していたが、琥珀が砕けたあの瞬間、空はリアンドラヤの素顔を目撃しただけでなく、彼女の記憶まで読み取ってしまっていた。今の立場は非常に難しかった。フェラキオ家は高潔な精靈の守護者だ。口封じのために自分を刺すことはないだろう……。
シルバはそんなことをするどころか、むしろ空に礼をして言った。「此度のご救援、誠にありがとうございます。あなたがいなければ、フェラキオ家の者たちは全員アンバールに散っていたでしょう」
空が言った。「私は、四王子殿下についていっただけです」
シルバが言った。「殿下からもあなたのご功績を聞きました。毒素を体に受け入れて月神の信徒に成りすましてくださったご苦労も、存じています」
空が言った。「毒はもう抜けています」
シルバが頷いて言った。「帰還後、相応のご褒賞がいただけるものと思います。ただ、その前に一つお約束をいただきたいことがあって」
空が言った。「聖女に関することは、絶対に口外しません」そう言いながら、内心はまだ落ち着かなかった。シルバがリアンドラヤを抱えて出てきたとき、弦羽でさえ彼女の顔を見ていなかった。それほど慎重に秘密を守るシルバが、自分のような一般の平民に、あれほどの秘密を見られてしまったのだから。
シルバが言った。「この件の全体について、ご秘密をお願いしたいのです」
空が言った。「記憶消去の手続きにも従います。敬語は不要です」
しかしシルバは言った。「今すぐその必要はありません。まずあなたを手元に留め置き、王室と相談した上で、どう対応するかを決めたいと思います」
空が驚いて聞いた。「よいのですか?」
シルバが言った。「神諭に、一人の人間がこの件に関わると記されています。それがあなただと思う。王室もこれからあなたの力を必要とするはずです」
空がシルバの前で秘密を守る誓いを立てた後、シルバの肩に寄りかかっていたリアンドラヤがわずかに動き、面紗の下の目がシルバを見た。
沈黙を破ったのはリアンドラヤだった。「年を取りましたね」
シルバは、千年前まだ少年だった頃のような、極めて優しい微笑みを浮かべて言った。「ええ」
リアンドラヤが空を見て言った。「恐れなくていい、あなたを傷つけない」彼女の話す言葉にはわずかに訛りがあったが、十分聞き取れた。
空が言った。「あなたの素性を知る資格が自分にはないと思って、近づけなかっただけです」
リアンドラヤが言った。「シルバがいる、あなたを信じます」
弦羽が天幕に入ってくると、シルバが礼をして言った。「殿下、自ら危険を冒して、私どもを救ってくださいました、感謝申し上げます」
弦羽はひどく眠そうな顔をしていた。シルバが弦羽の額に手を当てて、心配げに言った。「殿下、発熱しています。まず我が一族の治療者に診ていただきましょう」
リアンドラヤが手を伸ばした。弦羽の体には触れていないのに、力を凝集させた。涼やかな治癒魔法が弦羽を包むと、数秒もしないうちに弦羽はすっかり気力を取り戻し、リアンドラヤに片膝をついた。
リアンドラヤが言った。「礼儀には慣れていません」
シルバが言った。「殿下、リアンドラヤは自分を普通の治療者として扱ってほしいと思っています」
弦羽が言った。「わかった。それでもありがとう。空、行こう、二人に旧交を温めさせてあげよう」
これ幸いと、空はすぐに天幕を後にした。
外を歩きながら、弦羽が空に聞いた。「聖女の顔を見たか?」
空が答えた。「見ました。記憶消去を申し出ましたが、シルバ様は神諭に記された人物が自分かもしれないから、王室の決定が出るまで彼らの管理下に置くと言っていました」
弦羽が言った。「シルバが、聖女は魔族だと教えてくれた」
空が言った。「月魔族です」
弦羽が言った。「月神は医療の神、千年前の戦争で聖女が最も優れた治療者だった理由が、これで説明できる」
空が言った。「不思議なのは、聖女本人も自分が生きているとは知らなかったということです」
弦羽が言った。「黒女神と月神のご意志によるものだろう。千年後、聖女はまたアイセンティアの民の助けになれる」
シルバは詳しい神諭の内容を教えてくれなかった。英雄イソン王子の直系後裔であるフェラキオ家の地位は、実際のところ今の王族に引けを取らない。シルバが話さない以上、こちらから聞くわけにもいかなかった。
空が聞いた。「雪は大丈夫ですか?」
弦羽が言った。「怪我はない。ただ少し拗ねている」
フェラキオ家の野営地沿いの川を歩いていると、前方に人の姿が見えた。
冒険者でも旅人でもなさそうな老婆だった。このあたりには人が住んでいないはずなのに。空と弦羽の姿を見て、石の上から立ち上がって言った。「お二人さん、近くに野営地がありますか?」
アンバール迷宮から出てきたばかりの空と弦羽の警戒は格段に高まっていて、相手を敵として対処する心の準備ができていた。しかし次の言葉が二人を黙らせた。
「わたしはセラス。リアンドラヤに会いに来た。あなたたち二人も一緒に来なさい」
月神の名を冒用する者は、正気の者なら誰もいない。
セラスは月相に応じて三つの姿を持つ。新月は幼い少女、弦月は少し年上の狩り姿の青年、満月は老婆だ。
新月と弦月の月神に出会ったなら、逃げるに越したことはない。運が良ければ直接殺してくれる。運が悪ければ様々な動物に変えられる。泥の中のカエルや、翅をもぎ取られた虫にされることもある。黒女神に取りなしを頼めばまだ効くかもしれないが、月神は凡人の哀願に耳を貸さない。彼女の手を止めさせられるのは、自分の祭司か、黒女神の祭司か、黒女神本人だけだ。月神が通った道では、近くの村が次々に滅ぼされた。そういった記録が歴史に多く残っている。
月神の不思議なところは、老婆すなわち満月の姿で現れるとき、この上なく慈悲深い長老になることだ。知恵に満ちていて心が温かく、誰でもどんな問いでも持ちかければ答えが得られる。月神の姿はその時の月相と必ずしも一致しないため、月神を探して満月の姿を確かめることは極めて困難で、歴史上それを試みた者は愚か者か英雄のどちらかだった。
今、満月の月神が自らリアンドラヤを指名して会いに来た。
千載一遇の機会だった。
弦羽と空は急いで野営地へ戻り、リアンドラヤとシルバに月神が来ている可能性を伝えた。
話を聞いたシルバはすぐに一族の者たちに撤収を命じ、弦羽と空にリアンドラヤの護衛を頼んだ。
急いで戻ると、幸いまだ慈悲深い老婆の姿のままだった。リアンドラヤ・空・弦羽の三人が月神の前に来て、まず跪いた。
老婆は謎めいた笑みを浮かべながらリアンドラヤに近づき、その耳元で数言囁いた。
次は弦羽の番だった。弦羽は月神の言葉を聞いて、顔色が大きく変わった。
そして次が、空だった。
月神が彼を見た。見た目は依然として穏やかな老婆なのに、空は全身の細胞が「逃げろ」と叫ぶのを感じた。
月神が言った。「あなたは金のリンゴを拒んだ。でも、すべての金のリンゴが夢への道を開くわけではない。あなたの場合は、金のリンゴを噛めば、望む通りのことが本当に叶う。もう一度機会を与えましょう、それでもリンゴを手放しますか?」
全身が金縛りになって動けなかった。月神が顔に触れてくれて、ようやく口が開いた。「自分の夢を、他の誰かの牢にしたくない」
月神が言った。「では一つ、忠告を伝えましょう。『あなたの最愛の人が、あなたを破滅へと導く』」
月神がその言葉を告げた瞬間、空の脳裏に一枚の光景が走った。自分が上を見上げていて、一本の腕が彼に向かって伸びてくる場面だった。
問いかけようとする前に、月神は微笑んで言った。「行きなさい。プロセルネの新しい娘に会えるのを楽しみにしています」
次の瞬間、老婆の姿が揺らぎ始め、花冠をつけた少女の姿と重なり始めた。弦羽が叫んだ。「走れ!」リアンドラヤを抱えて駆け出した。
月神が姿を切り替えるときの魔力の揺れで、空は意識を失った。目が覚めると、馬に乗った自分たちはすでにアイセンティアの王城にいた。
背後から弦羽に抱えられている空が聞いた。「みんな無事ですか?」
弦羽が言った。「みんな無事だ。月神様が聖女に花エルフの解毒方法を教えてくれた。フェラキオ家が全員を連れて逃げた。聖女がわたしたちの体の月神の毒素も解いてくれた」
確かに頭がはっきりしていた。空が聞いた。「なぜ月神様は助けてくれたんでしょう?」
リアンドラヤの記憶から見る限り、月神と彼女の間にそれほど深い縁があったわけではない。ラウンとデュメズ神のように祭司として結ばれた縁とは違い、月神は自分の祭司をあまり気にかけないことで知られている。
弦羽が言った。「俺にもわからない」
空が聞いた。「月神様はあなたに何を言ったんですか?」
弦羽が言った。「肝心なときに、不確かな結果を引き受けなければならないと。見えた光景は戦場のようだった。アイセンティアに戦争が来るということでしょうか」
空が言った。「あなたが外国に参戦する場合かもしれません」
弦羽が聞いた。「月神はお前に何を言った?」
「最愛の人が、自分を破滅へと導く、と」
弦羽はできるだけ前向きに言った。「言葉通りの意味ではないかもしれない。月神の言葉は多くの解釈の余地がある」
空が言った。「月神様は〝忠告〟と言っていた、〝予言〟ではない。つまり変えられる」
弦羽が言った。「そうだ、神諭ではない。運命には変える余地がある」
空が聞いた。「雪は大丈夫ですか?」
弦羽が言った。「怪我はない……ただ少し拗ねている」
「迷宮の中で怪物を殺すかどうかの件について、ちゃんと言えなかったけど、実は雪の考えが正しかったと思っています。本能的に迷宮の生き物が怖かっただけかもしれないけど」
弦羽が言った。「ヴィートと対峙してから、あなたたちの感覚の一部はわかった気がする。でも雪にどう話せばいいかわからなくて」
「帰ってから時間をかけてゆっくり話せばいい。それと、迷宮が崩壊した後、中にいた生き物は全員圧死したんでしょうか。魅魔もアンブロスも……」
弦羽が言った。「主に崩壊したのは琥珀の区域、つまり内部だ。外の生き物は異変を感じたなら、逃げる機会があっただろう。少し休んでいいぞ」
断れなかった。重い倦怠感が空を夢の中へ引き込んでいった。




