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トルコ石  作者: 葉櫻
八、月
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74/87

8-6

翌日、朝食を終えてからウィンダが聞いた。「今日は何をする?」


子どもたちが声を揃えて聞き返した。「何をする?」


ウィンダが言った。「かくれんぼをしよう!」


子どもたちが言った。「かくれんぼ!」


ウィンダが言った。「わたしが最初に鬼をやる!」そう言うや、彼女は木に向かって、百から逆に数え始めた。


子どもたちは笑いながら島の中へ駆けていった。


そら弦羽げんう・雪は目配せを交わし、三方向に分かれて「夢の島」の内部を探索しに向かった。


そらは鬱蒼とした森の中へ進んだ。飛行中に見ていたときは小さく見えていた島が、実際に歩いてみると何倍もの広さがあった。子どもたちの足は速く、すぐに追いつけなくなった。とりあえず林の奥へと歩き続けた。木エルフの王国に住み続けてきた彼には、木から何かを感じ取れるようになっていた。


小さな水溜まりの前に来ると、丸太一本を橋にしてあった。慎重に渡り終えて飛び降りた瞬間、足首を掴まれて橋から引きずり落とされ、泥の中に倒れ込んだ。


水仙の香りの中から、震えた成人男性の声が届いた。「助けてくれ! あなたは新しく来た人ですよね? 昨日飛んでくるのを見ていた。あの子どもたちを信じちゃだめだ、みんな殺人鬼だ!」


服装の様式から同じ時代の人間だとわかり、そらが言った。「あなたの仲間に目の下にほくろのある長髪の女性戦士はいませんでしたか?」


「ティファニー! まだ生きてるのか?」


そらは首を横に振った。男は何か罵声らしき言葉を吐いてから、そらの足にしがみついて切実に言った。「ここに閉じ込められてしばらくたつ。湖には水の怪物がいて、泳いで脱出しようとした者もボートで逃げようとした者も全員食われた。頼む、飛んで連れ出してくれ! この湖から出るだけでいいんだ!」


そらが聞いた。「精靈の一隊を見かけませんでしたか?」


「見ていない。でも地下に閉じ込められているはずだ! あの小さな魔女が、仲間の残りを地下の鰐の沼に放り込むと言っていた。わたしとティファニーは〝お父さん〟と〝お母さん〟として捕まって、すぐに鰐の餌にされずに済んだ。連れ出してくれ、そうすれば何でも教える!」


丁度返事をしようとしたとき、「見つけた!」という声が背後から響いた。


ウィンダが勝ち誇った笑顔でそらの肩に手を置いた。


同時に、逃げようとした冒険者の男の襟首をひっ掴んで地面に叩きつけた。倒れた冒険者は脱出できないと悟って怒声を上げた。「魔女め! 公会の仲間がお前を探しに来る、お前は惨たらしく死ぬことになる!」


ウィンダはその頭を靴の底で踏み砕いて、そらに向き直り言った。「あなたが一番に見つかったわ。次のラウンドはあなたが鬼ね。さあ、他の子を一緒に探しに行こう!」


殺意のかけらも見えなかった。熟れすぎた果物を踏み潰したような、自然な態度で。


ウィンダは水辺へ行って靴を洗い、戻ってきた。その間にそらは震えを抑えた。彼女が戻ってきたとき、彼は無理やり笑顔を作って言った。「行こう」


そのかくれんぼは、そらが負けた。一番に見つかった彼には何か罰ゲームや特別な役があるのかと思っていたが、ゲームはなかなか終わらなかった。


なぜなら一日中、夜になるまで、子どもたちが島中を探し回っても、雪が見つからなかったからだ。


この結果を聞いて、ウィンダは怒りもせず、くすくすと笑って言った。「あの子、晩ごはん抜きね」


夕食の準備を名目に、そら弦羽げんうを台所へ引き込んだ。


子どもたちが全員外の遊び場で遊んでいるのを確認してから、そら弦羽げんうに言った。「フェラキオ家は地下の鰐の沼に閉じ込められているみたいです、それが『泥沼』だと思う」


弦羽げんうが言った。「子どもたちから聞いた話では、外から来た大人を一箇所に閉じ込めて、やがて殺すらしい」


そらが言った。「すぐには殺さないなら、フェラキオ家はまだ生きている可能性がある」


弦羽げんうが言った。「雪が探しに行っているはずだ。わたしたちはできるだけ時間を稼ごう」


そらが聞いた。「どうやって?」


弦羽げんうが言った。「雪とわたしが作った幻覚薬がある。成人なら少なくとも丸一日意識が飛ぶ。子どもへの効果はさらに強いはずだ」


そらが言った。「前提は彼らが普通の『子ども』であるということですが」


弦羽げんうは薬瓶を取り出して言った。「この薬液は無色無味で、後遺症もない。幻覚状態では夢を見ているように、その場で動かなくなる」


そらは薬をシチューに混ぜ込んだ。弦羽げんうの言葉通り、見た目にはまったく変化がない。


弦羽げんうが鍋を食卓へ運び、そらはまだ料理を続けているふりをした。やがて弦羽げんうが台所に戻ってきて言った。「薬が効いた」


そらが食堂へ出ると、全員が白目を剥いて、自分の椅子の上でぴくりとも動かなくなっていた。その光景はなんとも言えない不気味さがあった。考える暇もなく弦羽げんうに肩を叩かれ、一緒に外へ向かった。


歩きながら、弦羽げんうが言った。「一つ気がついたことがある。アンバールはルーン語で〝琥珀〟の意味だ。琥珀は月魔族が棺材の素材として使う。遺体を防腐保存できるから。聖女の遺体にも琥珀が使われているはずだ」ウィンダが全員に振りかけた金色の粉を取り出して言った。「これが琥珀粉だ。もしかしたらこの島の琥珀鉱床が、聖女を中心として広がっているのかもしれない。この迷宮全体が、聖女のために造られたものだから。子どもたちが迷宮をあまり離れないのも、飛行粉を琥珀鉱から作っているからではないかと思う」


そらが言った。「まずフェラキオ家を見つけて、それから一緒に聖女を探しましょう」


「その必要はない」


雪が森の中から姿を現して言った。「フェラキオ家が閉じ込められている場所を見つけた。あそこの魔法は強すぎて、わたしたちだけでは牢を破れない。鍵もない。フェラキオの族長に確認したところ、あの血の牢はヴィートの血で作られていて、本人以外には開けられないということだった。フェラキオ家自体は無事で、鰐と戦わされているが、まだしばらく持つと族長が言っていた。族長から血をもらってきた、琥珀に封じられた聖女の遺体を溶かせる。迷宮が崩壊し始めたら、最速でわたしたちと合流すると言っていた。今から聖女を探しに行こう。他の教徒は片付けた?」


弦羽げんうが言った。「幻覚薬を使った」


雪が頷いて言った。「聖女の場所はもうわかっているんだね」


弦羽げんうが粉末の推理を話すと、雪が言った。「鉱床まで追えるか?」


弦羽げんうが言った。「教徒たちが地図を描いていた。影の保管場所も書いてある」


その地図は幼稚園レベルの落書きに近くて、そらはつい気持ちが引いてしまった。それに気づいた雪が言った。「あの教徒たちは実年齢はもう大人だ。外見が子どものままでいるだけで」


弦羽げんうが言った。「ウィンダが渡してきた金色の飲み物は、琥珀を溶かして調合した特殊な溶液で、あれで子どもの外見を保っているんだ」


雪が言った。「子どもに見えても、もう子どもの無邪気さで許される話じゃない」


そらが言った。「わかってる、同情はしない」そう言いながらも、幼い顔立ちを見ていると、心がどうしても揺れてしまう。


地図をたよりに、島の反対側へ向かった。途中に食虫の大王花の群れがあった。


そらが言った。「先に錬金術室へ行って、大王花を眠らせる薬を作らないと」


雪が聞いた。「作れるのか?」


そらが答えた。「教えてもらったことがある。配合を覚えてる、簡単な薬だ」


弦羽げんうが地図を指しながら言った。「錬金術室に寄ってから、琥珀鉱床へ向かおう」


方針が決まり、出発した。


錬金術室に着くと、そこは惨憺たる有様だった。器具は長らく放置され、乾燥した薬草も補充されていない。それでも薬草園の植物たちは、雑草に居場所を奪われながらも生き延びていた。


三人は長い付き合いで築いてきた阿吽の呼吸で動いた。弦羽げんうが器具を整理し、雪が基底薬液を調合し、そらが植物を採取する。


薬剤が煮えていく間、そらはシーデと初めて会ったときのことを思い出した。あのときの施してくれた側と施された側の関係が、今や立場が徐々に近づいて、やがて逆転するかもしれない。


アクミリン家は嫌いだ。しかしシーデを嫌いにはなれない。それでもシーデに対しては、常に一定の警戒を保ち続けていた。


シーデの配合を忠実に再現した薬粉が完成すると、次は大王花の群れへ向かう番だった。


弦羽げんうが風の元素で薬粉を全方向に散らした。大王花の群れが数回身震いしてから、ぐったりと眠りに入った。三人はすかさず走り抜けた。


大王花を越えると、夢の島の鮮やかな色彩がまるで島自身が三人の離脱を察したかのように、動植物が一斉に敵意を持って攻撃してきた。弦羽げんうがすべての攻撃を引き受け、そらも気もそぞろながら魔法をいくつか繰り出した。


蝋筆で描かれた地図の次の目的地は「影の戸棚」だった。


辿り着くと、目の前にあったのは白い卵型の建物だった。


中に入ると、衣装棚が立ち並んでいた。


そらが一つの引き出しを開けると、中には豆腐のように整然と畳まれた「影」が入っていた。布地のような感触で、広げても何の動きも見せなかった。


雪が言った。「この影の主たちは、もう亡くなっている」


三人は黙って一つまた一つと棚を開け続け、それだけの命を悼んだ。やがて残り数個になったとき、引き出しを開けた瞬間に五、六個の影が飛び出して、自由を求めて駆けていった。


最後まで全部の引き出しを開けたが、解放されたのはフェラキオ家の者たちの影だけだった。


つまり、影を奪われた他の旅人たちは、全員教徒の手で殺されていたということだ。


弦羽げんうが皆の気持ちを奮い立たせようとして言った。「フェラキオ家の影は解放された、後は迷宮を崩壊させるだけだ」


その言葉に背を押されて、彼の先導で地底湖の縁へ向かった。弦羽げんうが言った。「琥珀は水より重いから、水流の緩やかな場所に堆積する。この方向には昔川があったはず、今は干上がっているけれど、その泥炭層に下へ降りられる道があるはずで、子どもたちが採掘できるくらいの道があると思う」


言葉通り、地図が大まかに示したエリアに、細くて狭い下りの通路を発見した。


一層目に降りると、遺体が山積みになった洞窟だった。地底湖から流れ着いたものだろう。体育館のプールほどの広さの凹んだ空間に、腐臭が充満していた。雪が全員に薬を浸したハンカチを渡した。そらは膨れ上がった遺体を見ないようにしながら、それでも心は落ち着かなかった。


外見は無邪気なあの教徒たちが、いったいどれほどの命を奪ってきたのか。冒険者たちは牛頭人と戦う準備を整え、精良な装備を持ってやってきた。しかし子どもの外見をした容赦のない殺し屋たちの手にかかって散っていった。成長しないということは、純真でいることではない。責任を負わないことへの悪意だ。一番幼く見える子どもですら五歳ほどで、すでに人を殺す武器を手にしていた。


そら


雪が呼んで、静かに言った。「もし歩けなくなるほど気分が悪くなったら、弦羽げんうに背負ってもらえばいい」


そらが言った。「自分で歩ける」


弦羽げんうが言った。「あの子どもたちの振る舞いには俺も気持ち悪くなった。無理しなくていい」


以前ルイーズと話したことがある。遺体に対する精靈と人間の反応の違い。人間は遺体を恐怖や嫌悪として受け取るが、精靈は悲しみを感じる。だから弦羽げんうと雪には、そらの吐き気が本当には理解できない。


人間というのは、ひどいものだ。顔のない頭骨と目が合ってしまい、そらは隅で嘔吐してから、前進を再開した。


やがて腐臭が別の匂いで薄まり、最後には上書きされた。


ハーブと蜂蜜と肉桂が混ざったような、温かみのある樹脂の香りだった。


雪が呪文を唱えると空間が暗くなり、また光が灯った。その微かな明かりに応えるように、岩洞の天井から地面まで覆い尽くす琥珀がきらきらと輝いた。


洞窟の奥へ進むほど、琥珀は増えていった。前の道が完全に琥珀に塞がれる場所まで来ると、雪がフェラキオ家の血を取り出し、そこに垂らした。


琥珀が溶けた場所に、黒い影が現れた。


次の瞬間、その影の中から一人の人物が現れた。


十二歳くらいの子どもで、生姜色の髪をしていて、月顏花の花冠を被っていた。そらが最初に角だと思っていたのは、この花冠だった。


「だめだよ、もうこれ以上先には行けない」その子が言って、短い木のナイフを抜いた。


弦羽げんうが言った。「ヴィート」


ヴィートが笑って聞いた。「自己紹介したっけ?」


弦羽げんうは迷わず剣を抜いてヴィートに斬りかかった。


しかし王族の剣は、ヴィートの木のナイフに受け止められた。対峙する中で弦羽げんうの手が震え始め、ヴィートは余裕の笑顔のまま、ナイフで剣を押し返すと同時に手を一振りして、弦羽げんうを剣ごと弾き飛ばした。弦羽げんうは岩壁に激しく叩きつけられた。


そらが雪の前に立ちはだかった。ヴィートは二人に攻撃せず、にやにや笑いながら言った。「腹立たしいな、あなたたちの影を縫いつけてあったから、なかなか捕まえられなかった」


そらが言った。「さっきの影が君だったんだね」


ヴィートが空中に浮かんで足を組み、興味深そうに言った。「あなたをずっと観察していたよ。魅魔のところでの振る舞い、本当に上手かった、わたしたちの一員みたいだった。だから温妲も気づかなかった」


そらが言った。「ただ通り過ぎたいだけだ」


ヴィートは笑いながら首を振った。「前には月神様の聖地がある。みんなを殺しても、そこだけは通せない」


そらの全身が冷えて聞いた。「仲間の生死はどうでもいいの?」


ヴィートが言った。「新しい子どもはいくらでもいる。わたしが好きなのは素直な子、もっと好きなのは賢い子、あなたみたいな。温妲は賢くない。ああわかってる、自分はあいつらとは違うと思ってる。それは月神様の力を全身に解き放ったことがないからだ」ヴィートは自分の首の刺青を指して、刺青が発光し、同時に目が紫色に輝いた。にやりと笑って言った。「これは世界で一番の感覚だよ、一緒においで。あなたはもうちょっと体験した。魅魔のところで、自分の力を月神の力で後押しにしたとき」


確かにあのとき、そらは全身に恍惚感が広がるのを感じた。あれは月顏花の毒の助けを借りたものだったが、体の奥に眠っている何かが、もっとと引っ張っていた。ヴィートの言う「全身に解き放つ」感覚を、完全ではなくても垣間見ていた。


ヴィートは続けた。「ここに残れる。ここはあなたに合っている。あの退屈な大人たちとは違う、規則だ義務だとうるさくない。あの二人の精靈には絶対にわかりえない。精靈は精靈だ。あなたは人間、わたしも元々人間だった。生まれつき精靈に劣るわたしたちも、月神様の力があれば遥かに超えられる」


雪がそらの服の裾を掴んだ。


そらが返事をしないのを見て、ヴィートが這い上がれない弦羽げんうのそばへ飛んで言った。「精靈が人間より優れているか試してやろうか、こいつがどれだけ脆いか見せてやる」


ウィンダが靴底で踏み砕くのと同じ動作でヴィートが足を上げた瞬間、そらはスリングショットを取り出してヴィートに狙いをつけた。


ヴィートの動きが止まった。笑顔のままそらを見た。


そらは引き金を引いた。


不壊の魔弾がヴィートに命中したが、爆発もせず華々しい魔法攻撃も起きなかった。


ヴィートが二本の指で魔弾を挟んで言った。「月神様のおもちゃじゃないか」


そうだ。魔弾は月神の魔力で作られている! 気づいた瞬間、そらは完全に手詰まりになった。


ヴィートが魔弾を砕いて聞いた。「一緒に来る?」


そらが言った。「わたしが仲間に入ったら、二人を解放してくれる?」


ヴィートが眉を上げて、いたずらっぽく笑って言った。「しない。心配しなくていい、月神様に完全に受け入れられれば、そんな些末なことは気にならなくなるから」


突然弦羽げんうが叫んだ。「雪!」


同時に弦羽げんうがヴィートの足首を掴んだ。ヴィートは短パンを履いていたため、弦羽げんうは素肌に直接触れられた。


ヴィートが火傷でも負ったように叫んで飛び退いた。あの金色がかった薄黄色の輝きを見て、そらは理解した。弦羽げんうが御触を使った。御触は毒を解き病を癒す力で、毒神の欠片を源にする毒には効かないが、月神信徒の毒素を引き抜くには十分だった。つまりヴィートの力を剥奪することができた。


雪とそらは一緒に琥珀の壁へ走った。雪がフェラキオの血を琥珀に垂らすと、ジュッという腐食音が響いた。


血は三人が走るより速く琥珀を溶かしていった。


四方が振動し始めた。最初は小石が落ち、次第に激しい揺れになっていった。


最初の鍾乳石が落下した。そらはとっさに雪を引き寄せてかわし、土の元素で盾の術を張った。


目の前には無数の鍾乳石が今にも落ちてきそうで、砕けた石柱の破片も飛んでくる。全力で走るしかなかった。


突然、前方に人影が現れた。ヴィートは各所に傷を負っていたが弦羽げんうを振り切ってきて、木のナイフを構えていた。歯を食いしばって言った。「今のあなたは本当に怒らせた。手足を切り落としてやる!」


ヴィートが攻撃する前に、天井の岩が爆裂して大きな穴が開いた。


シルバが他の数名の精靈とともに穴から飛び降りてきた。フェラキオ家の一員がヴィートと組み合い、そらは雪をフェラキオ家の精靈の一人に引き渡して、シルバと一緒に洞窟の奥へ走った。


どれほど走っただろう。前方の琥珀の溶融が止まっていた。


最深部の琥珀だった。シルバが自分の胸を刃で切ると、血が琥珀に噴きかかった。琥珀はその血を吸収して、血管が広がるように亀裂が走り、封じ込められた「人」の体に向かって深く染み入っていった。


琥珀の不純物が次々と砕けて、人影が姿を現した。


琥珀の中にいたのは少女だった。封印が緩むにつれて、緑色の長い髪が生き物のように揺らめいた。そらが驚きで凝視する前で、彼女は突然目を開けた。喉を絞られているような、何かに詰まったような苦しみで咳き込もうとしたが、頭部より上はまだ自由に動かせなかった。


少女が開いたその目には、細長い縦長の黄褐色の瞳孔があった。眼球の動き方は爬虫類のそれだった。一言も発していない、今まさに助けが必要な状態なのに、そらは近づきたくなかった。それでもその目から視線を引きはがせず、ただ硬直して見つめ続けた。あの恐ろしい瞳から。


「目を合わせると、獲物は麻痺して動けなくなる」


これはルイーズが月魔族の最高の医術師について語った言葉だった。


この瞬間、そらは悟った。なぜリアンドラヤが戦争の最大の英雄の一人でありながら、認められず功績を与えられなかったのかを。なぜサイフィ女神がリアンドラヤを自分の娘として認め、アイセンティア史上最大の宗教分裂を引き起こすことになったのかを。


リアンドラヤは夜落の地と縁があるというだけではなかった。


彼女は魔族だった。


リアンドラヤが苦しみながら身をよじると、琥珀が砕け散った。シルバが駆け寄り、倒れていくリアンドラヤを受け止めた。


リアンドラヤは荒く息をつきながら、シルバの目を見つめた。シルバは自分の袍を脱いで彼女にかけると、抱いたまま外へ走り出した。


崩壊していくアンバール迷宮から、三人は共に脱出した。

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