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トルコ石  作者: 葉櫻
八、月
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72/87

8-4

そのノードには赤褐色の菌類がびっしりと生えていた。


幸いなことに、ノード自体は狭く、百メートルほど先に次のノードへの分岐路が見えた。


弦羽げんうが言った。「左を行こう」彼は飛行術を使った。精靈の飛行術では地面から指一本分しか浮けないが、それでもうごめく怪奇な菌類の上を踏んで歩くよりはましだった。


「待て!」弦羽げんうが叫んだとき、そらはすでに目の前の半透明の糸に突っ込んでいた。


突然、無数の糸が一斉に現れた。赤い糸がそらの腰に絡みついて締まろうとした瞬間、弦羽げんうがそれを全部斬り払った。


「走れ!」弦羽げんうが叫んだ。


菌類がさらに糸を噴き出しながら、同時に菌の山の中からミミズのような生き物が次々と這い出してきた。頭部がそのまま口器になっていて、中に鋭い牙が一周並んでいる。このミミズ怪物が伸びて噛みかかってくる中、弦羽げんうは見えにくい糸への注意を切らせないまま戦い続けた。そらは奴らの頭を次々と切り落とし、雪は魔法で焼いたり凍らせたりしたが、数が多すぎた。一体を倒しても次がすぐ出てきて、しかも半分に切られた奴がすぐに復活した。


百メートルが、何キロにも感じられた。


弦羽げんうが飛行術を維持できなくなり、やむなく三人はぐにゃりとした菌類の上を踏んで走った。踏み潰した菌から汁が噴き出した。


雪が突然言った。「土の元素を使え!」


そら弦羽げんうは考える暇もなく、土の元素を集めて足元から広げ、菌類を覆っていった。


土に触れた菌類は、まるで感電したように縮んでいった。雪がすぐに言った。「怪物には風で!」


弦羽げんうが風の元素でミミズ怪物を土から引き剥がした。奴らのオレンジ色の皮膚がぼろぼろと剥がれ落ち、苦悶の叫びを上げた。そらが宮廷剣でその頭を落とすと、今度は復活しなかった。三人は魔法と剣術を組み合わせながら、ようやく次のノードへ走り抜けた。


霧が晴れる前に、弦羽げんうが息を切らしながら聞いた。「今のはどういうことだ?」


雪が言った。「旅人棋の原理と同じ、四大元素の相克。風は土に克たれ、土は水に克つ。怪物を倒す方法も元素の法則と関係があると思ったら、やはりそうだった。ただし今の怪物には明確な元素の偏りがあった。通常の生き物は四元素が均衡しているものだ」


前方からシューという音が聞こえた。


霧の向こうに現れたのは双頭蛇の怪物だった。弦羽げんうが聞いた。「これはどの属性だ?」


「風だ。火が克つ」雪が答えた。


そらも感知しようとしたが、何も感じ取れなかった。見えるのは涎を垂らした双頭蛇が、四つの縦長の瞳でぐるりと三人を見回してから、最後にそらで止まる光景だけだった。


(なるほど、人間の方が美味しそうに見えるらしい)


弦羽げんうが一振りすると、王族の剣に炎が灯った。「任せてくれ」


雪がそらを後ろへ引いて言った。「彼が対処できる。邪魔しないようにしよう。双頭蛇は片方の頭を斬っても、もう一方がそのまま操作を続ける。斬られた頭が再生するまでの間。すんなりとは終わらない」


そらが聞いた。「どうすれば?」


「心臓を刺せばいい。もう弦羽げんうは心臓のかなり近くまで迫っている。彼には難しくない」


そう判断した雪だったが、弦羽げんうと双頭蛇の戦いはなかなか終わらなかった。


雪が眉をひそめてそらに言った。「心臓を刺すよう言ってもらえるか?」


そらが大声で叫んだ。「弦羽げんう、心臓を刺せ!」


弦羽げんうはそうしなかった。代わりに剣の刃が触れた鱗をすべて燃え上がらせた。双頭蛇が苦しみにのたうち回ると、弦羽げんうが叫んだ。「早く行け!」


そらと雪が次のノードへ走り込み、少し遅れて弦羽げんうが追いついた。雪が言った。「とどめを刺さなくていい」


弦羽げんうが言った。「通り抜けるのが目的だ、命を奪う必要はない」


雪が冷たく言った。「安いお情けを迷宮に持ち込むな」


弦羽げんうが言った。「制圧できるから、あえて殺さないを選んだ」


雪が言った。「その判断が自分たちにリスクをもたらしている」


口論になりかけた二人の間にそらが割り込んで言った。「まず落ち着いて! このノードには怪物がいないみたいだ」


弦羽げんうと雪はどちらも不満顔のまま、次のノードに何があるかを確認するために視線を向けた。


霧が完全に晴れて、そらは自分の目を疑った。


広大なホールの中央に、一台の車があった。ピカピカに磨かれた、展示用の新車のような佇まいだ。


そらがそれを指して聞いた。「あれが何かわかる?」


弦羽げんうが言った。「ピアノ」


雪とそらが同時に驚いて弦羽げんうを見た。雪が言った。「断頭台じゃないのか?」


そらはさらに困惑した。断頭台? 彼は言った。「僕には車に見えるよ、第二界の乗り物だ」


弦羽げんうが言った。「また心を惑わすノードだ。とにかく前へ進もう」


ホールには出入口が二つしかなく、このノードを抜けるには他に道はなかった。


そらが一歩前に踏み出した。


瞬時に、また幻境に落ちた。


山間の道路を思いきり飛ばして走っていた。思わず笑い声が出た。完璧な晴天の下、この道に車は自分たちだけで、緑の草原の間を縫う曲がりくねった道を走っていた。ここはかなり綺麗だった、第二界、つまりそらが元いた世界の基準からすれば。


「コーツタンにも〝車〟を発明すべきだな」


振り返ると、助手席に座っているのはラウンだった。そらは咄嗟に、ラウンの名を呼ぶのを堪えた。地図を持ったラウンが視線に気づいて、こちらを見て聞いた。「どうかしましたか?」


そらが言った。「これは僕の幻想だ」


後部座席から笑い声が聞こえた。バックミラーを見ると、横になって雑誌を読みながら夕立がくすくす笑っていた。彼女が言った。「このズボン変すぎる! 穴がこんなにたくさん開いてるなんて、銃でも撃たれた?」


これは幻想だ。


ラウンが言った。「道は他に車がいないけど、前を見て運転してね」


幻想だ。


こっちの世界に来てから、そらは何度も夜に考えた。愛する人たちが一緒に元の世界へ来てくれたら、どれほどいいかと。第一界は魔法があって息をのむほど美しい。でも階級は厳しく、種族間の争いと差別は根深い。平民のままならともかく、貴族と関わりを持った以上、厄介ごとは尽きない。


彼はだんだんと理解するようになっていた。自分がこの世界を愛しているのは、魔法の不思議さでも風景の美しさでもなく、本当に愛している人たちがここにいるからだということを。だから妹の景蘿は元の世界へ帰ることを選んだ、彼女が愛する人があちらにいるから。


もし愛する人たちと元の世界へ行けたなら。ラウンは賢くて機敏だからできることが多い。夕立は自由を好むから世界中を旅して回れる。三人でどこへでも行ける。寿命は少し短くなるかもしれないが、貴族の面倒ごとも、世界を救う責任も背負わなくていい。


次の瞬間、木のぬくもりある洋風の家の中にいた。窓の外は一面の花畑だった。ここでは毎朝日差しに起こされて、午後は雨粒のリズムの中でぼんやりと窓ガラスを眺めながら、詩の一行でも書こうとする、そんな日々が流れ込んできた。


階下からラウンの笛の音が聞こえた。庭では夕立がブランコを漕いでいて、どんどん高くなって、もう飛んでいきそうで、嬉しそうに笑っていた。


これが、そらの理想とする「家」だった。


ふと手の中に金色のリンゴが現れた。ここに留まりたければ、食べればいい、という念が流れ込んできた。永遠にここにいられる。状況は望む通りに変わる。欲しいものは何でも手に入る。


これは甘い罠などではなく、本当の意味で一つの選択肢だった。


望む夢の中に永遠に酔いしれる、それは素晴らしいことではないか?


弦羽げんうと雪、任務、フェラキオ家、聖女。そんなものは他人のことだ。


鏡の迷宮と違って、今度は自分自身と向き合っていた。


迷宮の力がまた告げた。金のリンゴを噛めば、この幻想は現実になれる。月神の力はそれほど強大だ、と。


そらは口を開いた。


「人は生きている以上、責任を背負う」


たとえこれが全部本当だとしても、ラウンは主のために犠牲を厭わない人で、夕立はこの理不尽な世界をよくしたいと思っている。彼らは行きたくないはずだ。彼らの意志を無視して、自分の仕事を捨てさせて、自分が描いた「幸福」に強引に連れ込む。それはテイラロがやったことと何が違うのか。


どんなに綺麗な計算も、最後には崩れ去る。


そらは火の元素で、手の中の金のリンゴを溶かした。


現実に叩き戻されると、ホールの中央にあった車は消えていた。代わりに無数の白骨が広がっていて、それぞれの手に金のリンゴを一口齧った跡があった。


弦羽げんうと雪はまだ戻ってきていなかった。立ったまま、目を閉じている。そらは揺り動かすことをしなかった。外からの力が入ると、かえって悪化するかもしれない。


しばらく待つと、二人がほぼ同時に目を開けた。


二人とも金のリンゴは食べていなかった。そらはようやく力が抜けて、その場に座り込んだ。


雪が先に聞いた。「何が見えた?」


そらが言った。「この世界で大切だけど傍にいない人たちと、元いた世界へ戻って、政争のない生活を送る夢だった」


弦羽げんうが言った。「俺はイナータが初めて伴奏してくれた誕生日の宴の場面だった。あの頃の俺は何も知らなくて、人の中に紛れて、誰かに誕生日を祝ってもらえるだけで嬉しかった。父上と母上が、王子のふりをしなくていい、兄上たちみたいに王室の一員として立つ必要はない、ずっと遊んでいてもいいと言った。でも屋根の上が見えて、雪のことを思い出した。今度の任務のことも。だから金のリンゴを壊した」


雪が続けて言った。「母后を殺そうとした反逆者たちが断頭台に送られる夢だった。実際には断頭台を見たことがあるだけで、処刑の場面は見たことがない。母后が言った、もっと多くの人の力を奪って軍隊を作れば、我が一族は無視できない勢力になる。権力の頂点に座れる。父上も母后も傍にいて、俺はイグルーサの国王になる」


そらが言った。「楽しい夢ばかりじゃないんだね」


雪が言った。「迷宮は最も深い欲望を見せる。そして意図的にお互いの姿を見せないようにして、ここに来た目的を忘れさせる」彼は周りの骸骨を見て言った。「この人たちは、永遠に夢を選んだ」


弦羽げんうが言おうとしたことを、雪が先に言った。「黒い欲望を話せるなんて」


雪が言った。「お前たちに知られても構わない。俺はこういう人間だ、怖いなら任務が終わったら離れればいい」


そらが言った。「考えること自体は止めようがない。でも行動するかどうかは選べる。言ってしまえば、僕と弦羽げんうの夢も大概だよ。僕は好きな人たちを自分の傍に閉じ込めようとした。弦羽げんうは大人になりたくなくて、家族に王室の苦労を背負わせようとした。みんな恥ずかしい欲望があるけど、誰も留まることを選ばなかった」


雪が冷笑して言った。「二人と比べてもまだ自分の方がひどい。俺は生命を顧みない悪人だ」


弦羽げんうが言った。「お前は悪い人じゃない」


雪が言った。「さっきの双頭蛇でわかっただろう。俺は目の前に潜在的な敵がいれば全部殺したい。少しのリスクも冒したくない。お前の目には愚かに映るかもしれない、俺が一番弱いのだから。どんな面から見ても一番弱い」


弦羽げんうが言った。「俺はそう思っていない」


そらはもう我慢できなくて、二人の王子に命じた。「二人とも、座れ」


雪と弦羽げんうはぽかんとしてから、素直に地面に座った。


そらも座って言った。「何をそんなに争う必要があるの。雪が双頭蛇を殺したかったのは僕たちの命を守るため。弦羽げんうが殺さなかったのは僕たちの心を守るため。最終的にどちらが絶対に正しかったかは、結果が出る前には誰にもわからない。考え方の違いは、迷宮の中で解決しなくていい。ここは話し合いをする場所じゃない」


雪が言った。「では次のノードで物理的な危険に遭ったら? 仁慈のために死ぬつもりか?」


そらが雪に言った。「君が断頭台を見たのは、目的を達成するには血の闘争が必要だという潜在意識のせいだよね?」


雪が頷いた。


そらが言った。「君と弦羽げんうが価値観を一致させるのは不可能だと思う。弦羽げんうは断頭台のない国の出身で、僕は死刑はあるけど断頭台ほど残酷じゃない国の出身で、君は本当に断頭台がある国の出身だ。数言で互いを説得するのは無理だよ。今決める必要があるのは一つだけ、これから攻撃的な生き物に遭遇したら、殺すか否か。僕は殺すべきだという立場だ」


弦羽げんうが言った。「通り抜けられればいい、命を奪う必要がどこにある?」


そらが言った。「僕たちは迷宮を知らない。あの糸に絡まったとき、弦羽げんうが一瞬遅ければ僕は死んでいた。今は道徳の正誤を議論する場じゃない、この瞬間に殺すかどうかを決める。殺すという立場を取るのは、僕たちの情報と実力が不十分だから。もし各ノードの怪物とその弱点が書いてある地図を神様が与えてくれたら、殺さない選択もする。今この瞬間、迷宮は僕たちを食べようとしている。生き延びたい、フェラキオ家を救い出したい、花エルフの一族を救う方法を見つけたい。だから敵を殺すことを前提に戦う」


弦羽げんうそらをしばらく見つめてから、雪に聞いた。「お前も同じ考えか?」


雪が言った。「俺はそんなに善良じゃない。ただ殺すべきだと思っているだけだ」


そら弦羽げんうに言った。「君が僕や雪と同じ立場じゃなくていい。でも聞きたい。今ここまで経験してきて、この迷宮の中で手加減すると思うか?」


弦羽げんうはしばらく考えてから言った。「お前の言う通りかもしれない」


そらは息を吐いた。


実は、彼の中は雪と変わらなかった。弱者として、理不尽な迷宮の中で、そらは深く恐怖していた。中立に見える言い方で弦羽げんうを説得しようとした本当の理由はそれだ。


(怪物の生死なんて、知ったことか。あんなの、こちらを引き裂こうとしているんだぞ! 弦羽げんうは理想論すぎる。弱者の気持ちがわかっていない)


雪が弦羽げんうに言った。「王族の名にかけて誓えるか? アンバール迷宮の中では、僕たちの三人の命を最優先にして、攻撃してくる怪物を殺すと。攻撃してはいないが危険な怪物、たとえば吸血鬼は含めないでもいい」


弦羽げんうは頷いて誓った。


そらはようやく張り詰めた気持ちが緩んだ。荷物の中から手作りの軟らかいグミを取り出して、二人に渡した。


正方形で綿菓子のような食感で、中にナッツが入っていた。


甘いものをもらって、雪の顔が少し和らいだ。


そらが言った。「僕が一番早く目を覚ませたのは、迷宮が僕の痛いところを正確には踏めなかったからかもしれない。自分でも何が本当に欲しいかわからないから」


弦羽げんうが聞いた。「元の世界へ帰りたいとはまだ思う?」


そらは首を振って言った。「どっちの世界にいても、自由じゃない部分はある」弦羽げんうと雪を見て言った。「少なくとも今は、信頼できる友達ができたから」


弦羽げんうの表情も少し和らいだ。


三人は地面に座ったまま、しばらく気持ちを落ち着かせてから立ち上がった。


そのとき、霧に覆われた次のノードから、獣の咆哮が聞こえてきた。


三人が顔を見合わせた。


来るなら来い。


弦羽げんうが剣を抜いた。そらは魔法の準備をして、雪のそばについた。


三人は白骨が散らばるホールを歩いて、前へと進んだ。

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