6-3
氷雪の国では、太陽が顔を出しても、寒さは変わらない。
乳母から物語を聞くとき、雪はよく思っていた。「太陽のような笑顔」とはどんなものだろう、と。
体が弱くてまた熱を出し、意識が朦朧とするとき、雪はぼんやりと想像の光を見た。たぶんあんな感じだろう、子どもの頃、父王が重臣たちの目を逃れて寝室に来て、布団をかけ直してくれたとき見せた穏やかな笑顔。雪はいつも眠ったふりをして、父王が油断した瞬間をこっそり盗み見た。イグルーサの王は、息子の前でも柔らかな情を見せてはならないという決まりがあったから。
雪が六歳のとき、母后の死を悲しみすぎて体を壊した父王もついに逝ってしまった。それは不作の冬のことだった。貴族たちが雪に向ける目は、雪原で傷ついた子オオカミを取り囲む群れのようだった。食糧にするかどうかを話し合っているかのような目だった。
このとき、アイセンティアがイグルーサに物資を貸し出してくれた。提示した条件は、雪を「賓客」として送ること。実質的には人質だった。貴族たちはすぐに雪をアイセンティアへ送り出した。幼い雪は、誰にも意見を聞かれることなく、はるか遠くの木エルフの王国へ旅立った。
アイセンティアの王城に着いた日、幌を開けて馬車から降りた瞬間、最初に目に入ったのは、金髪碧眼の美しい子どもだった。同じくらいの年頃なのに、雪が一度も浮かべたことのないような、燦々とした笑顔を持っていた。その子が手を差し伸べて言った。「はじめまして。ぼくは弦羽、アイセンティアの四王子だよ」
弦羽の手はとても温かくて、笑顔はアイセンティアの太陽のようにまぶしかった。
弦羽はすぐに雪の一番の遊び友達になった。アイセンティアの王城で走り回り、遊んだ。雪が初めて大笑いしたとき、弦羽は目を大きく開けて言った。「笑うとこんなに素敵なんだから、もっと笑えばいいのに」
雪はすぐに笑顔を消した。弦羽が聞いた。「どうしたの?」
雪が言った。「笑っちゃいけないんだ」
「なんで?」
「父王が亡くなったばかりだから」
弦羽はにこにこした顔を落ち着かせて、静かに聞いた。「他にも理由があるの?」
「王位を継げないし、体も弱いし、自分はできそこないだし……」雪は頬が濡れているのに気づいた。手の甲で拭うと、透明な涙が手に落ちた。「泣いちゃいけない」
「自分の国では、辛いことがいっぱいあったんだね? 何でも自分のせいにされて?」
雪は泣きながら頷いた。
弦羽は続けた。「アイセンティアにいる間は、何も君のせいじゃない。泣きたいときも笑いたいときも、どうぞ。この王宮の中では、どんな自分を出してもいい。秘密は守るから」
弦羽の約束通り、雪はアイセンティアの宮廷で、かなり自由な生活を送ることができた。それは主に弦羽が常に傍にいて、陰口や雑音を遮ってくれたからだった。弦羽は末っ子として深く可愛がられていて、王族から公式行事への出席まで免除されていたほど、自由が許されていた。その特権を使って、弦羽は雪に新しい生活を開いてくれた。政治的な事情があるため、雪は弦羽以外のアイセンティア宮廷の人間とは自由に交流できず、アメイティスの城からほとんど離れることもできなかったが、それでも想像していたより遥かに良い日々だった。
弦羽が木陰で涼んでいると、雪はいつも日なたに立っていた。弦羽が「こっちに来て日差しを避ければいいのに」と言うと、雪は答えた。「もったいない、イグルーサにはこんな陽光がないから」
弦羽はそれを聞いてすぐに木陰から出てきて、一緒に遊んだ。小さな花の精が二人の周りを飛び回り、幼い日々を彩った。
雪が弦羽の一番好きなところは、弦羽が決して怒らないことだった。世話をしてくれる大人はたいてい雪に苛立っていて、彼をお荷物だと思っていた。でも弦羽にとって雪は、最も仲の良い、実質唯一の遊び友達だった。弦羽も正体を明かせないため、同じ年頃の子どもと深い関係を結べないでいたのだ。
二人は遊んでばかりではなく、王族の最大の支援家族であるピエテ家の書庫によく通い、本を読みふけった。雪は初めて書庫に入ったときの衝撃を覚えている。背の高い本棚にびっしりと並んだ典籍、それでも圧迫感はなく、むしろ果てしなく広い世界に踏み込んだような気がした。
「好きな本を読んでいいんだ!」弦羽はそう言ってくれた。
二人は知識の海を泳ぎ、好きな本を互いに薦め合い、難しいところを一緒に考え、錬金術の謎を一緒に探った。雪の長所は細やかさで、数粒の粉末の違いを完璧に調整できる。弦羽はそれに感嘆して言った。「これからぼくたちで錬金術の工房を開こう」
雪が聞いた。「あなたの夢は、あちこちを旅することじゃないの?」
弦羽が答えた。「命は長いから、いろんなことができる」
雪は少し考えてから言った。「まず冒険に出て、伝説の光の杖を見つける。それから名前を残さずに杖を大人に渡す。そして遠い国の森の中に、小さな工房を開く」
弦羽が続けた。「本でいっぱいで、薬草園があって、錬金術の実験室もある」
雪が言った。「毛布が敷いてある温かい隅と、暖炉もほしい」
弦羽が言った。「花神様のピンクの不滅の炎はどう?」
雪はしばらく首を傾けてから気づいた。弦羽が知っている暖炉とは、神々への祭祀に使うものだった。雪が思い描いていたのは、本物の冬の寒さを防ぐ暖炉だった。
生活が濃密に交わっていた時期でも、この小さなすれ違いを見れば、二人が根本的には異なる世界を生きているとわかる。
楽しい日々はしばらく続いた。やがて弦羽の兄、アイセンティアの三王子の婚約が発表され、イグルーサの貴族たちが祝いに訪れた。それが過去の不快な記憶を蘇らせた。
婚約に伴って、王族主催の宴会と舞踏会があった。弦羽は末っ子の立場を最大限に利用して父母に甘えて、何とか二人が変装して参加できる許可を勝ち取った。
舞踏会では、数えきれないほどの令嬢と踊った。香りとドレスの波の中で、相手は次々と変わった。音楽が変わる瞬間、手を強く握ってそのまま引き留めようとする令嬢もいたが、雪は彼女たちの顔を記憶する前に離れていた。
「雪」
弦羽が小声で呼んで、尖塔の最上階へ連れていった。
(塔か、好きじゃないな)と思いながら、弦羽が手を引く温度が氷を溶かしていくようで、足は自然とついていった。
「秘密のスポット」とやらに着くと、弦羽は壁に両手をかけて言った。「見て、兄上があそこにいる」
雪は目を細めて、花びらの雨を浴びる婚約者を眺め、弦羽に聞いた。「どこの国の姫?」
「エンジェイマ王国の小さな姫君だよ」
火エルフか。エルフの血脈の序列では、花エルフが最も強く、次いで光エルフ、木エルフ、それから火・風エルフ、次が水エルフと氷エルフ、雪エルフは全支族の中で最も弱い位置にある。
血の序列が強い方が子に必ず伝わるわけではないが、十中八九はそうなる。だから木エルフの王族と火エルフの姫が結婚すれば、生まれる子はアイセンティアを継げる木エルフの確率が高い。木エルフが火エルフとの婚姻を望む理由はそこにある。そして普通はイグルーサの木エルフ王族や高位貴族もまた、婚配の相手として真っ先に選ばれる……
「きれいでしょう?」
弦羽の声が雪の思考を遮った。雪が言った。「姫の顔がよく見えない」
「そういう意味じゃなくて、この景色全体が、きれいだなって」
雪が言った。「うん。あなたも結婚が楽しみ?」
なぜそんなことを聞いてしまったのか。雪は少しぼんやりして、弦羽が頷きながら何か言うのを聞いた。いつか自分たちにも結婚の日が来る、その日もきっとすごく美しいだろう、というようなことを言っていた気がした。
そのとき突然、雪はある感覚を覚えた。いつかこうして弦羽を失うのだ、と。
「イグルーサに来てくれない?」また言葉が口から出てしまった。
弦羽が言った。「行きたい!」
「長い間、たとえば……わたしが正式に王族の身分を剥奪されるまで、そのくらいの間」
弦羽は理解できないという顔をした。何度説明しても、弦羽にはイグルーサの複雑な内政は本当には理解できないだろう。
雪は婚約者と王子の方へ顔を戻して言った。「何でもない、ふと思っただけ。とにかく、冒険に行こう」
「そうだ!行きたいところがたくさんある!」
弦羽が行き先を次々と挙げる間に、雪の心の中では何かが切り替わっていた。
別れの日は、思っていたより早く来た。
冰の女王が正式に即位した。重臣たちの合意で、「正統な継承者」という身分を持つ雪は、念のため召喚されて見えない高い塔に閉じ込められた。養生させるという名目だったが、新鮮な空気さえ惜しまれていた。
生活の主な場は自分の部屋で、決まった時間に教師が来て剣術・算数・言語などを教えてくれたが、剣の稽古でさえ王宮の稽古場でしかできない。世界は非常に狭かった。踏み台に乗っても、唯一の小さな窓からは何の景色も見えなかった。
そんな状況でも刺客が塔に忍び込もうとすることがあったが、警備の厚い塔は誰も突破できなかった。重臣たちの判断は正しかったのかもしれない、閉じ込めておけば確かに守られると、雪はそう思うことにした。
ある日、きれいなお姉さんが現れた。名前はユーリ、花エルフだった。
雪はいつもと同様に、心の壁を下ろすつもりはなかったが、ユーリが両親はアイセンティア王国の出身だと話した。
アイセンティア。その言葉を聞いたとき、雪は弦羽を思い出して、少しだけ壁を低くした。
「わたしはあなたの護衛です」ユーリは言った。
雪は冷たく一瞥して聞いた。「それはどういう意味?」
「あなたの側に、ずっといるということです」
ユーリは約束を守った。知っている情報はすべて雪に伝えた。時々、雪が王宮の他の場所を歩くことを許されたとき、ユーリが話してくれた政局が本物だったとわかる噂を聞いた。
眠れない夜、雪は鈴を引くとユーリがやってきて、物語を読んでくれた。まだ行ったことのない街も、山も、深い海も、神話もおとぎ話も、ユーリは生き生きと語って弦羽よりも上手だった。雪は目を閉じて、それらの場所へ心だけで旅をした。
その想像の中に、いつも金色の髪をした人影がいた。
やがて、ユーリが物語を語り途中で欠伸をするような深夜に、雪は口にした。「アイセンティアの四王子は、元気にしているかな」
ユーリは目をぱちりとして、姿勢を正して言った。「情報はないわ。木エルフにさえわからない秘密なんですもの」
雪は待ったが、ユーリはいつまでも問いを投げてこなかった。それで雪は自分から言った。「なんでそれを聞くのか、聞かないの?」
ユーリはそっと笑って言った。「どうすればまた会えるかを、なぜ聞かないのかしら、と思って」
「彼に幸せでいてほしいから」
それはつまり、自分が邪魔をするわけにはいかないということだった。
ユーリは近づいて、耳元で囁いた。「もう少し待ってください。これは女王陛下のお言葉です」
冰の女王。雪がいつも思い出すのは、あの日のことだ。一人で庭に出て雪だるまを作っていたとき、突然、雪玉が胸に当たって弾けた。
振り向くと、自分より少し年上の女の子がいた。遠い親戚だった。
彼女はトレシと言った。こちらを見て、期待に満ちた顔をしていた。
雪は雪合戦を続けず、そのまま部屋に引っ込んだ。
次に会ったとき、彼女の名前は「冰」になっていた。
誰にでも、どうしようもない事情というものがある。
新しい冰の女王がふさわしくないとは、雪は一度も思わなかった。彼女のことを冷酷だという声があることも知っているが、そういう人たちは本当の彼女を知らないのだと思っていた。
だから雪は自由を求める気持ちをきれいに断ち切って、素直に塔の中に入った。いつか双王体制の復活を訴える人たちが、時間とともに彼のことを忘れてくれるように。
あるいは、ついに誰かが動いて、自分を殺してくれるように。




