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トルコ石  作者: 葉櫻
五、戦車
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5-9

翌日、そらは歓声で目を覚ました。


ラグマン帝国の精鋭部隊が突如カスティーラに踏み込み、カスティーラの王族が国境地帯の人身売買に関与し、多くのラグマン人を攫ったという理由で、カスティーラの国王を逮捕した。


同時に、アクミリン家の私兵がオーズバイ家も人身売買に加担していた証拠を掘り出した。アクミリンとラグマンが手を組んで、カスティーラ王国の二つの大きな腐敗を断ち切ったのだ。


カスティーラの国民は人身売買の恐怖の下で生きてきた。下位の貴族の子女でさえ、夜落の地に売り飛ばされる可能性があった国だ。その政権が瓦解したことで、国民は歓喜し、平民には手を出さないラグマンの軍隊を大歓迎した。


そのような知らせを語りながら、イルコは優雅にアクミリン家が「高位の青血貴族」弦羽げんうを迎えに来るのを待った。彼女は弦羽げんうそらに従ってアイセンティアへ向かい、証人として、自分が属していた国家の罪を世に明らかにする準備をした。


砂風を浴びながらアイセンティアへ戻ってから、弦羽げんうはことの経緯をそらに詳しく説明した。


要するに、そらが人身売買に巻き込まれ、弦羽げんうは見過ごせなかった。しかもラグマンの人々も多く被害を受けていることがわかり、アクミリン家を通じてこの件を処理することにしたのだという。


弦羽げんうが言った。「アクミリン家はラグマンの王族と代々婚姻関係にあって、カスティーラではアイセンティアの代表として交易を行っている。この件を動かせるのはアクミリン家しかいなかった。お前がカスティーラの売買構造に巻き込まれたとわかった時点で、俺はアクミリンに知らせた。エドウィンがカスティーラに来たのは、最初から最後まで、オーズバイ家の側につくためではなかった」


そらが聞いた。「アクミリンの忠誠をどうやって確かめたの?」


弦羽げんうが答えた。「アクミリンが最大の利益を得るから。カスティーラの新たな王族もアクミリン家と婚姻で繋がっていて、ハランドリの新たな支配者はアクミリン配下の傀儡になる。さらに他国の鍵の使者候補を一人除き、自国の非自家の候補を一人遠ざけた。すべてアクミリンに有利に働く」


そらはつぶやいた。「テイラロはちゃんと勝ったのに」


(世界は、本当に不公平だ)


そらはさらに言った。「でも最後に勝つのは、絶対にあの子だ。ラヴェニでさえ、彼女には勝てない」


弦羽げんうが言った。「俺はラヴェニが成功する可能性は相当高いと思っている」


話しているうちに、テイラロが来た。


弦羽げんうが聞いた。「大丈夫か?」


テイラロはぐったりした様子で言った。「どんなに悪い相手でも、信仰上の姉妹には違いない。その子が殺されるのをただ見ていることしかできなくて、しかもあんな侮辱的な死に方で。わたしも同じ、力ある者に操られている。こんな日々はもう嫌」


弦羽げんうが言った。「王族護衛の身分を解除することはできる。ただし、お前とそらの契約は自分で断ち切らないといけない」


テイラロの目は悲しみに満ちていた。王族契約が解かれてから、彼女はそらに手を差し伸べた。その手を握りながら言った。「ごめんなさい、あなたを守れなかった上に、ずっと災いをもたらしてばかりだった」


そらは優しく言った。「新しい鍵の使者が就いたら、また会えるよ」


テイラロが言った。「一緒に……冒険に行かない?」


弦羽げんうが口を開く前に、そらははっきりと言った。「ごめん、僕はアイセンティアに残る。ごめんね」


テイラロは泣きそうな笑顔を浮かべて言った。「謝るべきはわたしの方。こんなに身勝手なのはわかってる、でもどうしても聞かずにはいられなかった。さようなら、またいつか」


そらが聞いた。「どこかに行きたいところはある?」


テイラロが答えた。「わからない。冒険者公会の資格を取って、何か任務があれば受けようと思う」


そらが言った。「新しい環境に行ったら、新しい発見があるかも」


テイラロは首を振って言った。「ただ、あなたのそばから離れたくないだけ」


そらはできる限り優しい言葉で言った。「テイラロは僕のことが好きなんじゃなくて、理由と目標が必要で、それが僕に向いているだけだと思う」


テイラロが聞いた。「わたし、あなたにとって重荷になっていた?」


そらは黙って答えた。


テイラロは笑い出した。笑い終えてから言った。「わかった。自分の旅を歩いていく。でも一つお願いがある。必ず王子殿下と青血貴族の助けを受け入れてほしい」


そらが言った。「そうする」


別れを前に、そらはテイラロに、自分が書いたレシピ集と、自ら宝石を加工して飾り付けた羅針盤を贈った。テイラロは彼に、自分で編んだ皮ひもの数珠ブレスレット、手作りのお守りを渡した。


そらは言った。「必ずまた会える日が来るよ」


テイラロは、以前自分が贈ろうとしたがそらが断った家族の剣を見つめて言った。「次に会うときは、もう縛られていないといいな」


テイラロを見送ってから、まだ二人と話さなければならなかった。


まずイルコを探しに行った。彼女はコール療養院に一時的に滞在していた。


イルコはまだ優雅にお茶を飲んでいた。彼女がそらに聞いた。「正義の旗を掲げて他国の政治に介入し、その国の王まで逮捕する。それが本当の正義なの?」


そらが言った。「危険の中で生きている人々にとっては、実質的な助けになっています」


「弦羽殿下とも話したけど、彼もそれが正義だとは思っていなかった」


そらが言った。「弦羽げんうは正義を追い求めている。僕にはあの人のようにはできない。ただ、自分と似た境遇の人が少しでも良く生きてほしいと願うだけです。たとえそれがあまり正義的でなくても、自分の基準を信じたい」


イルコは微笑んで言った。「わたしもかつてはそう思っていた。でも今こうなった」


そらが言った。「自分をちゃんと律します」


イルコが言った。「最大の悪の根源、アクミリンのことを考えてみて。あなたたちは彼らの指一本も触れられない。新しい国王を立てても、カスティーラはすぐにまた同じ繰り返しに戻る。それが人間というもの」


そらが言った。「エルフでも商売っ気が出てくる。人間も善良さを学べます」


イルコが言った。「人間は教訓を最も学ばない種族よ」


そらはただ聞いた。「これからどうするつもりですか?」


イルコが言った。「地位と財産を失う。殺されるより残酷ね。行く場所があるかしら。向こうについても、アイセンティアはわたしを信用しない」


そらが答えた。「あなたを追い詰めたのはエルフじゃない。あなた自身が今の道を選んだ」少し迷ってから言った。「コール療養院に残るのも悪くないです。僕もここにいる。ここは中立の場所だから」


イルコが言った。「王族のものだから、中立じゃない」


そらが言った。「少なくともアクミリンに投じるよりは信頼できます」


イルコが言った。「それはそうね」


「どうしますか?」


「ゾラン町に行く。わたしの慣れたやり方で生きていく」


意外だったが、言われてみればイルコらしいとも思えた。


イルコが言った。「ゾラン町の商人は皆それぞれ秘密を持っている。公会の管理もあって、比較的安全な場所よ」


そらが言った。「公会の資格を取ってみたらどうですか」


イルコはおかしそうに言った。「剣も持てないわたしが冒険者になれって?」


そらが聞いた。「お家では剣術を習わないんですか?」


「それはアイセンティアの習慣よ。カスティーラの令嬢は、か弱ければか弱いほどいいとされるの」


「それなら一から学べばいい。僕だって十六歳から剣を習い始めました。最低限の護身くらいはできるようになります。ゾラン町にも危ない人間が大勢通り過ぎる」


イルコが言った。「うちにはまだ人が残っているから、身の安全はある程度確保できる。別れる前に、一つ言っておきたいことがある。初めて会ったすぐに、あなたは信頼できる人だと感じた。そうでなければ、簡単に踏み潰せる相手でも、心の内を漏らしたりしない。忠告を一つ。あまり柔らかすぎないようにして」


「覚えておきます」


イルコの目線は閉じられた窓の外に漂って、もう何も言わなかった。



ラヴェニを見つけると、彼女は指導教員と話しているところだった。


そらが来たのを見て、ラヴェニが聞いた。「どうしたの?」


そらが言った。「二人きりで話せる?」


ラヴェニが承知して、学院内のリアンドラヤの神廟へ向かった。リアもすぐに祈祷室を一室空けてくれた。


ラヴェニが聞いた。「何の話?」


そらが聞いた。「ラヴェニは鍵の使者候補なの?」


ラヴェニが言った。「そう」


「じゃあ……君は実際には……」


「クランシュ家の養女の中で、百年来一番の実力を持つ子がわたし。黒女神もわたしを気に入っている」


「じゃあ完全にクランシュ家の管理下に?」


ラヴェニが答えた。「育ての家族の命脈はクランシュに握られていて、わたしはクランシュとアクミリンの両方を潰したいと思っている。でも同時に、わたしは確かに彼らが支持する鍵の使者候補よ。黒女神がわたしを受け入れた理由の一つは、以下が上を食い破る姿を見たいから。これは賭けよ。二大家族とわたし、お互いが欲しいものははっきりしている。後は力の天秤がどちらに傾くかだけ」


「まさかエドウィンと結婚するなんてことには……」


ラヴェニの顔色が一瞬で険しくなった。「結婚相手は四王子殿下か、そうでなければあのろくでなしのエドウィンしかない」


「あんなに憎み合っているのに、どうやって結婚するの?」


ラヴェニが言った。「だから二十歳になる前に、自分で自分の運命をなんとかする」


盗聴防止の魔法がかかっているのに、そらは思わず声を低くして聞いた。「黒女神と直接話したことはある?」


「娘になったその日以来、一度もない」


そらは驚いて言った。「そんなに少ないの?」黒女神との会合を説明すると、ラヴェニは肩をすくめて言った。「面白いと思う部分が人によって違うのよ。あなたの場合は、ちょっとつつくとテイラロが暴走するから、黒女神は当然面白がる。わたしの場合は……ロゼン家に育てられたとは言っても、実際に面倒を見てくれていた〝父母〟は二人とも亡くなっている。今のわたしはその家族を裏切らないためにやっているだけで、ロゼン家とはもうそこまで密接な関係じゃない。面白くない子には、お母様も注目しない」


そらが言った。「でもテイラロは何もしていないのに黒女神に退屈だと言われて、アイセンティアを離れなければならなくなった」


ラヴェニは突然これまでとは違う、いたずらっぽい笑顔を見せた。一瞬、そらは夕立を思い出した。彼女は言った。「だからわたしは、こっそり色々やってきたの」


そらが言った。「候補でいたい人もいれば、逃れたい人もいる。黒女神はその人が一番嫌がる方向を選ぶ」


ラヴェニが言った。「それが黒魔法の女神というものよ」


そらが言った。「テイラロはラヴェニが候補だって知っていた?」


ラヴェニが答えた。「知らない。わたしが選んだ力は最強のものではなくて、水面下で動けるものだから。あなたはそれを知って、わざわざ教えに来てくれた。テイラロに不利なことをするんじゃないかと心配して?」


そらはカスティーラで起きたことのほとんどと、テイラロが遠く旅立つ決断をしたことを話した。ラヴェニは複雑な表情で言った。「あの子、あなたのことを手放せるのね」


「本質的にはまだ手放せていないから、だから離れる必要があるんだ」


「あなたへの執着が行き過ぎていた。わたしも彼女と話したことがある。とにかく、彼女がそう決めた以上、国内で最有力の候補はわたしになるはず」


「王族もラヴェニを推すの?」


「それはどうでもいい。鍵の使者になれなくても、やりたいことは達成するから。それよりあなた、貴族になるつもりはないの?」


「僕が?」


ラヴェニが言った。「あなたをイナータに紹介したのも、この道を舗装するためよ。サイフィ学院に通っていて、基本的な貴族の礼儀もある。王子と友人で、五大名門とも知り合いになった。紅血貴族になるための条件は、もうほとんど満たしている」


「貴族ってそんなに簡単になれるものなの?」


「オーズバイ家は金で貴族になった。お金を稼ぐのは難しいかもしれないけど、あなたは功績を立てれば爵位を与えてもらえる」


弦羽げんうにも言われたが、ラヴェニの口から聞くと、学校で表彰状をもらうくらい簡単な話のように聞こえる。本当にそんなに簡単なのだろうか。


ラヴェニが言った。「大事なのは、簡単かどうかじゃない。あなたはならなければいけない。今の立場に貴族という身分の保障がなければ、結局危うい。今回の経験でわかったでしょう?王子でさえあなたを守るのは難しかった。でも貴族の身分があれば、あの令嬢もむやみに手を出せない」


「〝必ず〟貴族に……」


「何かを成し遂げたい、自分や身近な人を守りたいなら、身分が必要よ。あなたはもうここにいる。歩いていきなさい。王子殿下も助けてくれるから」


そらが答えた。「実はちょうど、一緒にある任務に行こうと誘ってくれた」


ラヴェニは彼の肩を叩いて言った。「チャンスを逃さないで。わたしたちは友達で、お互い助け合うのは当然でしょう」


ラヴェニを見つめながら、そらは真剣に頷いた。「わかった、ありがとう」


(もし貴族だったなら、あのときラウンにもっと力になれたかもしれない)


(もし貴族だったなら、あんなに簡単に国境を越えさせられることもなかった。蕾もカスティーラも、これほど大きな問題には発展しなかっただろう)


力を持たなければならない。ラヴェニも弦羽げんうも、何度もそれを直接間接に伝えてくれていた。紅血貴族は血統でなる地位じゃない。今自分が立っている場所、持っている縁、それは他の誰にも得られないものだ。


(ふさわしいかどうかじゃない。この力が必要なんだ)


彼はテイラロからもらった皮ひもの手環を見た。


彼は言った。「必ず頑張って、貴族になる」

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