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トルコ石  作者: 葉櫻
五、戦車
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5-7

イルコが言った。「結局、こういう経緯があったの。この空中花園はサトカシュ様がロヴィラ夫人への愛の証として建てたもの」彼女は小さな声で言った。「地に足のつかない空中花園は、花エルフが結局この土地の人々と同じ帰属にはなれないことの象徴でもあるけど。でもフレシア様とロヴィラ様がカスティーラの宮廷に入って、オーズバイ家の領地を豊かにしたのは事実よ」


そらが言った。「でも今のハランドリはまだ砂漠じゃないですか?」


イルコが言った。「フレシア様が優先的に改善しているのは、農業の可能性がより高い、わが一族の別の土地なの。ハランドリで今こうして植物が育っているのも、彼女が潤してくれた結果よ。水路の改修や土質の改善、彼女はたくさんのことをしてくれた。ただアイセンティアから来たあなたたちには当たり前のことに見えるだけ。城の中を見に行かない?」


「行ってもいいんですか?」


イルコは彼を柔らかいクッションを敷いた座席に乗り込ませた。ラクダが引く馬車だった。幌の布は特殊な紗製で、内側からは外が見えるが、外からは中が見えない。イルコは車中で、よく立ち寄る商店や、通りの美術品をあれこれ紹介してくれた。噴水の石像から金属の彫刻まで、特殊な彩色を施した壁画なども多く、大半が水エルフの手によるものだった。


そらが言った。「ご家族、芸術がお好きなんですね」


イルコが言った。「高いものを買うことしかわかってないの。この都市には芸術家も多く抱えているけど、エルフには遠く及ばないわ」


(人間がエルフを羨みながら妬むあの心理は、どこへ行っても変わらないんだな)


ハランドリの中心部の美術品は、確かにデフェニングほど調和が取れていなかった。イルコの言う通り、純粋にお金の力で積み上げたような印象だった。


イルコが突然車を止めるよう指示して、二人は降りて、仕立て屋に入った。


そらはすぐに壁の衣装を見て言った。「月のドレス?」


イルコが嬉しそうに言った。「知ってるの?」


「青血貴族のお嬢様にお仕えしたことがあって」


「アイセンティアで大流行してるんでしょう?」


そらは言った。「こちらのスカートは短めで、肩も出ているんですね。どちらも素敵だと思います」本当はもう月のドレスも星のドレスも流行が終わっていた。華美すぎるので、若くて高位の貴族令嬢しか着こなせない。ただ、それはイナータの「ファッション影響論」が正しいことを証明してもいた。国内での流行が短期間であっても、日と夜の境界に位置するカスティーラにまでその波が届いているのだから。


イルコが言った。「スカートが短い方が可愛いわよね。その青血貴族というのは誰?」


「守秘義務があって、申し上げられません」イルコはアイセンティアの宮廷の構成を理解している。イナータの名前を出せば余計な注目を集めることになる。


イルコが言った。「貴族の方々は皆そうね。秘密があって打ち明けられないのに、聞き上手で口の堅い人を見つけるのはとても難しい」


そらが言った。「わきまえはわかってるつもりです。あなたが話してくださったことは、他の方の前では言いません」


イルコはちょっと笑って何も言わなかった。しばらくしてから言った。「あそこがうちの私邸よ。わたしはここで戻ります」


そらは礼をして言った。「案内していただいてありがとうございます。わたしもここで失礼します」


「せっかくここまで来たんだから、食事を一緒にどうぞ」


イルコの勧めを断れず、彼女について屋敷に入った。金と輝きに満ちた食堂には、すでに食事の準備が整っていた。


食事の間も、イルコはアイセンティアのことを話し続けた。食後、二杯のワインが出てきた。そらが断ろうとすると、イルコが先に言った。「今度は酔わせるものじゃないわ」


「本当に申し訳ないのですが、うちの文化では、わたしの年齢ではお酒はいただかないことになっていて」


イルコは笑みを浮かべて言った。「ここはハランドリだけど?」


そらはやむなく白ワインをゆっくり飲んだ。


見覚えのある目眩が来た。彼が失礼を詫びようとすると、イルコがすでに席を立っていた。二人の侍者が来て、左右からそらを支えた。


そして意識を失った。



目が覚めると地下室にいた。恐怖よりも、情けなさの方が強かった。


(あれだけ大変な目に遭ってきたのに、それでもこんなに簡単に引っかかるなんて)


「貴族の方々は皆そうね。秘密があって打ち明けられないのに、聞き上手で口の堅い人を見つけるのは難しい」


イルコのあの言葉が最初から、相手を永久に黙らせる方法があればいいだけだと説明していた。


ハランドリの地下室にまで独特の黄砂が漂っていた。そらは手で地面を押して立ち上がった。


見張りの衛兵が近づいてきて言った。「座ってろ」


そらが言った。「逃げようにも逃げられない、ただの普通人だから」


衛兵は何度か笑って、哀れみの目で言った。「悪い奴じゃないな」


そらが言った。「わたしは貴族の近侍です。わたしが消えれば、主人は本気で探します」


衛兵は答えた。「貴族のお嬢様に無礼を働いたんだ、罰を受けて当然だろ」


(そういう理由かよ)そらは言った。「主人は木エルフ、アイセンティアの青血貴族です。わたしが消えた理由をこんなに簡単に諦めるはずがない」


衛兵はイルコと同じ言葉を返してきた。「ここはハランドリだ」


(始末するつもりなのに、なぜまだ生きているんだろう)そらはそれを考えながら、体の中の細い繋がりの糸を引っ張った。


精靈の護衛契約は飾りではない。契約を結んだ後は、双方、特に主人から護衛への「連絡」が格段に届きやすくなる。これまでは物理的な距離が遠すぎて使えなかったが、今は目と鼻の先だ。テイラロはすぐに信号を受け取れるはずだ。


それが来る前に、優雅に現れたイルコが、なぜすぐ殺さないのかをそらに説明した。


イルコは真っすぐ彼を見て聞いた。「あなたの主人はアクミリン家の情報を調べに来たんでしょう?」


そらが答えた。「違います。他の任務があって、たまたまここを通ったんです」


嘘が下手な自分でも、これは本当のことだった。弦羽げんうがアイセンティアを出た本当の理由は、軽率に攫われたおかしな自分を助けに来ることだったのだから。


イルコは急かさず、雑談のような口調で聞いた。「どうしてカスティーラの内政に干渉しようとするの?」


そらは重ねて言った。「主人にその意図はありません」


「それなら余計に、あなたをここから帰すわけにいかない。もうこれだけのことを知っているから」イルコは衛兵に目を向けて言った。「手早くやって」


衛兵が返事をする前に、地下室の扉が叩き割られた。


宮廷剣を手にしたテイラロが、砂埃が落ち着く前に光の術を発動させ、半透明の矢で衛兵の鎧の下の心臓を貫いた。


イルコが反応する間もなく、テイラロはすでにその傍に移動して、喉に剣を当てていた。


この状況に直面してもイルコは冷静に言った。「わたしは貴族よ」


テイラロが言った。「紅血貴族が王室と馴れ合いで悪事を働く。カスティーラのような場所でしかあり得ないことね」


二人が対峙していると、弦羽げんうが部下を率いて階段を降りてきた。その立ち姿の優雅さと落ち着きは王族の名に相応しく、イルコが見上げてその威圧感を感じた瞬間、わずかに緊張の色を浮かべた。


アイセンティアの護衛がすぐにそらを解放し、別の者たちがテイラロに代わってイルコの両手を縛った。イルコはハランドリの衛兵たちに向かって言った。「わたしはオーズバイよ!」


「そんな妹がいるとは、一族の恥だな」


イルコはその声の主を見た。「お兄様?」


イルケイは彼女を無視して弦羽げんうに言った。「現行犯で捕えたのですから、アイセンティアの法律で裁いていただければと思います」


イルコの視線が弦羽げんうとイルケイの間を行き来してから言った。「そう。さすがお兄様ね」


イルケイはいかにも正義の味方然として、真剣にイルコに言った。「話し合った結果、アイセンティアの貴族様の助力があって初めてわかりました。これほど長い間、あなたが影でどれほどの汚いことをしてきたかを」


イルコは令嬢らしい品を失わず、柔らかい口調でイルケイに言った。「わかりました」


イルケイはそれ以上彼女を見ず、彼女を連行させてから、そらに礼をして言った。「妹がご迷惑をおかけしました。彼女と繋がっていた者も含め、アイセンティアに引き渡します。弦羽様のお力なくしては、こんなことが目の前で起きているとは知らないままでいました」


そら弦羽げんうに言った。「頭が少し痛くて、先に失礼してもいいですか?」


弦羽げんうが頷いて、引き続きイルケイと話を続けた。そらの反応はイルケイへの礼を欠いていたかもしれないが、イルケイの行動がそらにはひどく不快だった。


弦羽げんうが王族の身分を明かせないとき、クダ家の傍系を名乗っていた。精靈大国の最上位の貴族が出向いたとなれば、イルケイもある程度は顔を立てざるを得ない。そしてそらは小さな駒として、イルコに監禁された罪を確定させ、彼女への審問の中からオーズバイ家の罪を引き出す足がかりに使われた。人身売買のような大きな罪を被るには一定の家格が必要で、イルケイが選んだのは実の妹だった。


吐き気がした。イルコの手口の熟練ぶりを見れば、彼女が無実とは言えない。しかし人身売買の糸はここで切れて、終わりになる。アクミリンはもちろん、オーズバイ家でさえ、イルコを切り捨てれば追及を逃れるだろう。


(正義は、本当にここまでしかできないのか)



数日後、弦羽げんうはイルコの審判への参加を許された。彼女はずっと罪を認めず、家族の秘密も一切口にしなかった。膠着状態が続き、みんながこの件を忘れた頃に、イルコは釈放されるだろう。弦羽げんうはそうそらに告げた。


そらが聞いた。「つまりオーズバイ家という線はここで途切れるの?」


弦羽げんうが言った。「イルコが言ったことで一つ正しいことがある。ここはハランドリで、俺たちはここの法律で彼らを裁けない。オーズバイとカスティーラが合意すれば、イルコが逆にお前に対して何か言い立てるかもしれない。今はクダ家の名義でカスティーラを一時的に抑えているが、彼らがクダ家が本当に軍を送ってくることを恐れているうちだけだ。でもイルケイは宴という名目で俺をハランドリに留め置き、アイセンティアとの連絡を断った後でお前が危険になる可能性がある。もう一つの展開としては、俺たちが早めに離れれば、イルコはすぐに解放されてしまう」


「じゃあ何ができるの?」


「実はアイセンティアの勢力はカスティーラに気軽に入れない。特にハランドリについてはそうで、唯一の例外はオーズバイと婚姻で繋がり、長く関係を持つ家族だけだ」


「アクミリン?」


弦羽げんうが頷いた。


そらが聞いた。「アクミリンを頼りにするの?協力してもらえるの?」


弦羽げんうが言った。「蕾に賭けるしかない。アクミリンの鍵の使者候補と蕾は対立している。あとは待つだけだ」


待機期間中、そらは部屋から出られず、ただ焦りだけが積み重なっていった。


ついにアクミリン家の一行が来た。


黒衣に黒袍のエドウィンを見て、そらの胸には喜びのかけらも湧かなかった。随行するアクミリン家の者たちも全員黒ずくめで、薔薇色の城ハランドリには全くなじまなかった。


エドウィンは弦羽げんうに冷淡に頷くだけで挨拶とした。


イルケイとエドウィンが握手を交わした後、イルケイが言った。「いつも通り、黒晶宮があなたのお部屋です」


「承知した」エドウィンはそう言って部下を連れ、イルケイの最高級のもてなしを受けていった。


その夜がそらにとって最も不安な一夜だった。エドウィンとイルケイが話し合っていたが、弦羽げんうすら招かれていなかった。


二人は一体どんな判断を下すのか。



翌日、エドウィンと弦羽げんうが会合し、そらも同席した。エドウィンが言った。「あなたが言っていた盗賊団の討伐は、私とイルケイ殿が行う」


弦羽げんうが聞いた。「うちの者は含めない?」


エドウィンは表情を変えずに言った。「ここは我が一族が担う地区です」


弦羽げんうは争わず頷いた。「では任せます」


イルケイとエドウィンの一行は馬で城を出ていき、その夜に勝利の報せが届いた。蕾の盗賊団の動向は、悉くイルケイが把握していたということだ。


ただ、蕾だけは捕まらなかった。


この知らせを聞いても、弦羽げんうは驚く様子を見せず、その夜の祝勝宴にも参加した。


深夜、弦羽げんうそらのもとへ来て、魔法の巻物を取り出した。二人に隠形をかけ、こっそりイルコが監禁されている部屋の外まで移動した。エドウィンが見張りに賄賂を渡しながら中へ入るのを見届けた。


弦羽げんうは鉱物の粉末を空中で魔法陣の形に描いた。魔法陣が発動するにつれて、部屋の中のイルコとエドウィンの会話が少しずつ聞こえてきた。


「表向きはあなたは貴族令嬢の地位を失うことになる。でも俺があなたを引き取り、残りの人生、守り続ける」エドウィンはそう言った。


イルコが答えた。「いらない」


「俺を信じられないのか?」


「あなたの言葉が本当かどうかに関わらず、応じない。身分を失うくらいなら、死んだ方がまし」


「初めて会った日から、俺はずっとあなたに惹かれていた。あなたもわかっているはず、俺が他の女性と親しくなることがなかったことも」


「わたしたちの権力のバランスはすでに傾いている。このままでは良い結末にならない」


「それなら、あなたはどうしたい?」


「わたしは絶対に罪を認めない。あなたとお兄様に力があるなら、アイセンティアのあの貴族を追い払って」


「動かせない」


「クダ家の傍系じゃないの?」


「彼の本当の身分は、わが国の四王子だ」


部屋の中からイルコのため息が聞こえた。「そういうことか」


エドウィンが言った。「あなたを助け出したいが、王族の前では俺も無理はできない。ただ安心しろ、ハランドリに留まれば、誰もあなたにどうにもできない」


「あの王子が鍵の使者候補を材料にして脅してきたら、あなたは持ちこたえられる?」


「その二つの問いの答えは同じだ。貴族の血を引く盗賊が、境界地帯で人の売買をしていた。鍵の使者候補の能力が彼女の威張る拠り所だった。すべての罪はあの娘に帰せられる」


「彼女を見捨てるの?」


「我が一族の鍵の使者候補はより強力だ。あの小娘の考えなしの行動から見て、彼女は黒女神の最終的な認可を得られない。イルケイはすでに我が一族との協力を了承した」


「あなたたち、本当にラヴェニを抑えられるの?」


「いくら嫌がっても、二大家族の圧力からは逃れられない。しかも彼女は人間だ。精靈に肩入れすることにはリスクがある」


「ラヴェニはとても頑固でとても強い。鍵の使者の力を使わなくてもあなたに勝てる」


「俺はもとから強大な戦士ではない。ラヴェニにできる抵抗は、こういう小さな場所でしかできないことだ。蕾を捕まえたら、あなたが出てきて、蕾に誘われてこれらのことに手を貸してしまったと言えば、事は闇に葬られる」


「それでもわたしへの実質的な保証がない。守ると言うが、どう守る?あなたの城に情婦として匿うということ?」


「俺の一族の者を使ったという名目で、あなたをアイセンティアへ連れ帰る。そこなら必ず軽い判決になる。アイセンティアは未成年に特別に寛容だ。しかもあなたは被害者でもある。蕾がすべての発端だ。資料はすでに整えてある。たとえ貴族令嬢の地位を失っても、俺の一族の貴賓として、アクミリン家が五大名門であり続ける限り、青血貴族でさえあなたには手が出せない」


「それは口約束に過ぎない。婚姻による保証がない限り、信じない」


「結婚はできない。最初からできなかった」


イルコの冷笑が聞こえた。「高貴な青血貴族様だから?」


エドウィンは迷わず答えた。「そうだ」


「なら応じない」


「どうなろうと、あなたしか選択肢はない。より体裁のいい形で過ごすかどうか、それだけの違いだ。イルケイは俺よりもっと手加減しない」


「好きよ、あなたのことが。とても好き。そうだとわかっているでしょう」


「俺もあなたが好きだ。だからこそ、これが俺があなたを守れる方法だ」


イルコはそれ以上答えなかった。しばらくしてから、エドウィンは部屋を出ていった。弦羽げんうそらを連れて自分の部屋へ戻った。


ハランドリでは、壁に耳がある。弦羽げんうは地図を取り出して、ゾラン町を指さした。


弦羽げんうはこの旅にフェラキオ家のエルフを一名同行させていた。アイセンティアの王族に専属で仕え、主人を守るために変装を得意とする守護者の一族だ。弦羽げんうはそのエルフに自分に変装するよう命じ、自身はそらとともに素早くゾラン町へ向かった。

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