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トルコ石  作者: 葉櫻
五、戦車
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46/51

5-3

巨人の女の子の家は、数ブロック先にあった。そらはそこへ連れていかれ、彼女の部屋に置かれた。


女の子はぺちゃくちゃと何か話しかけてきたが、言葉が通じないとわかると、指先で彼の頭をかいてやった。その力加減は控えめで、自分より体格がずっと小さいはずの蕾よりもずっと優しかった。


そらは首を横に振って、言葉がわからないことを示した。


女の子は残念そうな顔をした。


逃げるなら今かもしれない。ただし、彼女がこんなに高く自分を持ち上げていなければ、の話だが。


女の子は彼をドールハウスの中に移した。家具は一通り揃っていて、台所はダミーだが、トイレと風呂は使えた。問題は、このドールハウスが半分に切られていて、片面は住居、もう片面はガラス張りになっていることだった。そらの一挙一動が、女の子の視線に晒されてしまう。カーテンで仕切れるのはトイレと浴室だけだった。


明らかにこれは女の子が即席で作ったものではなく、人間の家を模した巨人仕様のペット小屋だった。豪華な洋館という体裁はとっている。ただし人間が狭くて閉塞的な環境を苦手とすることは、誰も考慮していないようだった。


女の子は彼を丁寧に世話してくれた。縫い目がよれよれの、明らかに自分で縫ったと思しき小さな衣服を持ってきた。着替えたくなかったが、女の子が何度も衣服を彼の前に持ってくるので、仕方なく着替えた。着替えを終えると、女の子は嬉しそうに両手を叩いた。


「ありがとう」そらは苦笑いして言った。


当然、女の子には聞こえていない。


翌日、彼女はそらを持ち上げて小さな籠の中に入れ、その籠を高く上げ、わざと周囲が見えるようにして、何か言い続けた。


女の子の一歩一歩が、そらには地震のように感じられた。籠の中に座り込もうとするたびに、女の子は彼の首根っこを掴んで持ち上げた。最終的に彼は籠の縁にしがみついて、なんとか頭を籠の外に出すようにした。


巨人の家の内部は、人間の家とだいたい同じ構造だったが、すべてが数倍に拡大されていた。かつてリアが極端な言い方をしていたことがある。「人間はねずみと変わらない。人間の文化はねずみの体の病原菌のようなもので、世界中に増殖していく」と。史書に出てくる一つ目の巨人はかつて洞窟に住んでいたというが、今では住宅で暮らすようになっていた。闘技場の文化も、もしかしたら人間から学んだのかもしれない。そう考えると、人間というのはなかなか恐ろしい。


女の子が台所に籠を置いたとき、まさか料理の材料にされるのかと、そらは青くなった。


しかし女の子はおぼつかない手つきで包丁を取り出すと、何かの果物を小さな角切りにして、洋人形用の小皿に並べ、彼の前に押してきた。人形用のティーポットと小さなカップにも、少しお茶を注いでくれた。


女の子の視線を感じながら、そらは果物を手に取り、口に入れた。


女の子は大喜びし、今度はパンをちぎって何切れかくれた。


ただ、量の見当が全くついていないらしかった。彼女の目には少しのかけらに見えるものが、そらの目線からは小山のように積み上がっていて、とても食べきれなかった。


ある程度食べてから、そらは皿を押し返した。女の子は皿を片付けてくれた。


その後も女の子は家のあちこちへ連れていってくれたが、食料貯蔵室に入ったとき、屠殺されたままの姿の動物が大量に並んでいるのを見てしまった。その中に人型の遺体もあって、そらは即座に吐き気を覚え、目を覆った。


目を離した瞬間、女の子はもう彼をドールハウスに戻してくれていた。


女の子に悪意がないことはわかった。愛するペットに接するような普通の接し方で、むしろ「飼い主」としてはかなり良心的な部類だろう。こんな日々が続いていく。盗賊団にいたときよりも、かえって絶望的だった。ドールハウスのガラスを割って逃げ出したとしても、日の出の地の魔法を学んだ彼には、夜落の地ではほとんど元素を制御できない。魔法なしでは、テーブルから降りることさえできないだろう。次にどの方向へ逃げるかもわからない。毎日、女の子からの餌やりを受け入れて、着替えを命じられ、歩かされる。


自由はガラス一枚向こうにあるのに、この偽物の「家」の中で生活している。食べるものは盗賊団のときより格段にいいが、逃げられないという無力感はずっと重かった。


そらは懸命に相手の立場から考えようとした。これは子どもだ。奴隷売買のことなんてわかっていない。ただ自分のペットをちゃんと世話したいだけだ。そらがどんな食べ物を嫌がっても、女の子はより新鮮な果物や、よりやわらかい焼き肉を用意してくれた。玩具も買ってきてくれて、転がる、跳ぶ、座るといった動作を覚えさせようとした。彼女の世界観では、人間がどこまで知性を持っているか、全くわかっていないのかもしれない。


(あのとき、ルイーズから巨人語を習っておけばよかった)


巨人の女の子はどうしてもそらが元気のない理由がわからなかった。砂糖を持ってきて、新しい服を持ってきて、機嫌を取ろうとしてくれる。でもそらは自分の中で何かが少しずつ死んでいくように感じていた。


ある日、女の子は彼を大きな白紙の上に置いて、クレヨンの欠片を一本渡した。


そらは馬と自分の等身大の絵を描いて、真剣な目で女の子を見た。


女の子は人差し指で彼の頭をつついた。彼はそれをよけながら、絵の馬を指さした。


家の中を案内されたとき、食材の貯蔵室に馬がいるのを見ていた。馬さえもらえれば、逃げられる可能性がある。


(巨人の女の子は、「ペットのペット」という概念を理解できるだろうか)


女の子はよくわかったのかわからないのか、じっと紙の絵を見つめてから、毎日のルーティンと同じく、そらをドールハウスの中に戻した。


そらは思いきりガラスを叩き、力なく女の子の後ろ姿を眺めた。



しかし翌日、女の子は本物の生きた馬を連れてきて、しかもそらを外に出してやった。


そらの気持ちが一気に上向いた。鞍はなくて乗りにくかったが、この部屋から飛び出すだけなら、なんとかなるはずだ。女の子が振り向いた瞬間、馬に交流術をかけた。馬はすぐに理解して、全速力で駆け出した。


気づいた女の子が追いかけてきた。


馬は全力で走ったが、巨人の女の子の速さにはかなわなかった。女の子が大きな手を伸ばして、二本の指でそらを馬ごとつまみ上げた。馬は暴れたが、腹を女の子の虎口に挟まれて、どこにも逃げられなかった。


女の子が扉を開けて、馬と馬上のそらをそっと持ち上げた。


そらはその濁った、それでも穏やかな瞳を覗き込んだ。


女の子はもう一方の手をポケットに入れて、茶色いミニチュアのショルダーバッグを取り出した。


そのバッグをそらに渡してから、二人を掌に乗せて外へ出て、庭にそっとおろした。


地面に足がついた瞬間、馬は全力で駆け出した。柵の下の隙間を目指して一直線に。


そらが振り返ると、女の子は動かずに立ったまま、二人の行く先を見送っていた。


柵の穴を抜けると、外は巨人の集落が広がっていた。今持っている情報は一つだけ。アイセンティアは巨人の部族の東にある。そらは馬に東へ向かうよう伝え、女の子からもらったバッグを開けた。中には彼の持ち物、パンの切れ端、水が満たされた皮袋、それと一包みの宝石の欠片が入っていた。当面の食料と水は確保できた。宝石は魔法を使う助けになる。そして何より大事な魔弾のスリングショットも無事だった。


そらはつぶやいた。「ありがとう」


馬は彼を乗せて荒漠を駆け、巨人の集落を遠ざけていった。砂漠の上をどのくらい走っただろう。やがて、目の前に小さなオアシスが現れた。


馬は疲れて自分から止まり、水を飲んで草を食んだ。


そらは馬から降りて、水源のそばに膝をつき、両手で水をすくって飲んだ。透き通った水は驚くほど甘く感じた。寄生虫のことを考える余裕もなく、何度も何度も飲み続けた。


飲み終えてから、木の下に腰を下ろして、ぼんやりと遠くを見つめた。見渡す限り黄砂だけで、巨人の家はおろか、人の気配も全く見えない。


(念のため、急がないと)


そう思った瞬間、馬がぶるぶると頭を振って、そのまま駆け去ってしまった。


(……どうすればいいんだろう)


まあ、行けるところまで行くしかない。


「ありがとう、お疲れ様」馬はもう聞こえないところにいたが、それでもそらはそう言った。

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