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トルコ石  作者: 葉櫻
四、法王
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4-7

物語を話し終えてから、ヴァレリーが言った。「島というからには、陸からも見えるはずなの。あなたの友人たちは、エルフ貴族の学院の学生で、神話の研究をしているんでしょう?資料を集めてもらえないかしら。あれが本当にただの夢だったのか、誰かの仕業だったのか、それとも実在するのか」


そらは真剣に言った。「必ず調べてきます。友人たちに協力してもらってもいいですか?」


「もちろんよ。ありがとう」


頼み事を終えると、ヴァレリーは来たときと同じように静かに去っていった。



ラヴェニとテイラロに合流してから、そらはヴァレリーの依頼を説明した。すると意外にもラヴェニが言った。「いっそメニスト本人に会いに行かない?」


そらは驚いて言った。「彼女、まだ生きてるの?」


ラヴェニが言った。「海妖族長と交渉してるときに聞いたの。あなたの働きにすごく満足してて、わたしたちをメニストに紹介してくれるって」


そらはつぶやいた。「レポートをどう書こうか考えてたところで、まさか本人に直接取材できるなんて思ってなかった。僕たちに会う資格なんてあるのかな」


ラヴェニが言った。「海妖族長にも対面したんだから、心配いらないわ」


テイラロが言った。「メニストは海妖よりずっと安全よ」


ラヴェニが言った。「確かに。文献を見る限り、メニストは悪人とは到底思えない」


そらが言った。「じゃあ行こう」



数日休んでから、彼らはヒメロペからメニストの住む場所を聞き出し、メニストの許可も得て出発した。


鬱蒼とした森の中を進みながら、そらは前を歩くテイラロを見つめ、最初期のエルフがどうやって森の中で生活していたのか想像するのは難しいと思った。アイセンティアのエルフは、もはや人間とほとんど変わらない。整った容姿以外、ほとんどすべてが同化されている。


森の奥に、二階建ての赤煉瓦の家があった。煙突から白い煙が立ち上っている。一見ごく普通の民家のようで、外の薬草園が少し広いくらいの違いしかない。


「学生さんたち?」


三人が振り返ると、煉瓦の家の傍の小屋から女性が出てきていた。頭巾で髪を覆い、大地の色をした作業着を着ている。見た目だけでは沼地の妖と何の関係があるのか全くわからなかった。背丈は普通の人間より高く、整った顔立ちにはある種族特有の目を見張るような美しさはないが、穏やかで居心地のいい印象を与えた。


ラヴェニが二人を促して礼をした。「メニスト様」


メニストは手にした薬草でいっぱいの籠を下ろして言った。「醜い沼地の女巫には見えない?人魚に脚を生やしてあげられるくらいだもの、外見を変えるくらい簡単よ」


ラヴェニが前に進み出て、家から用意してきた贈り物を差し出すと、メニストは袋の中をちらりと見て微笑み、彼らに言った。「中へどうぞ」


家に招かれると、天窓から差し込む陽光が眩しいほどだった。そらは思わず連想した。数百年もの間沼地に閉じ込められていたメニストにとって、あんなに陰鬱な日々はどれほど辛かっただろう。


家の中はかつてのメニストの工房によく似ていた。生活空間は狭い片隅に押し込められ、カーテンの奥にはシンプルなベッドがうっすらと見えた。メニストが指を鳴らすと椅子が三脚現れ、彼らを錬金台の前へ座るよう招いた。


座ってから、そらがノートとペンを取り出すと、メニストはそれに興味を示して聞いた。「〝記録〟は使わないの?」


ラヴェニが言った。「彼は紙とペンを使う習慣なんです」


メニストが言った。「あなたたちの組み合わせは面白いわね。一人は国内最高位の家のひとつ、一人は紅血貴族、一人は平民。木エルフは厳格な階級制度があるんじゃなかった?」


そらはラヴェニを見て、彼女が頷くのを確認してから経緯を話した。メニストは頷いて言った。「誰にでもやむを得ない事情があるものよ。アンリエットのことを聞きたいのね?」


ラヴェニが聞いた。「もっと詳しく教えていただけますか?」


「とても美しくて、可愛らしい子だった。今残っている絵画は、彼女の魅力の十分の一も伝えられていないわ。あんな子に頼まれて断るのは難しい。もちろん、ヒメロペの紹介だったこともあるし、これを機に沼地を出られるかもしれないという、わずかな希望もあったでしょうね。彼女は何度も手紙を寄越して、人間の王子を愛してしまったから、ほとんど人間と同じ体になる能力が欲しいって。毎回脚や肺を作り直さなくて済むように。何度も頼まれた後、本人が直接来るなら話を聞くと言ったの。まさか本当にシラーナからあの汚くて臭い場所まで来るとは思わなかった。彼女の体のデータを測って、薬を調合して魔法陣を準備するのに少し時間がかかった。その間、彼女はずっとわたしに一緒に逃げようって説得してきた。もちろんそんなの引き受けられるわけがない。最後はヒメロペに彼女を送り出してもらった。その後は内乱、きっかけはわたしが国王を毒殺したこと。混乱の中で、わたしは逃げ出した。あなたたち、わたしの工房に行ったそうね」


ラヴェニが言った。「見つけたのは空です」


そらはようやく口を開いて言った。「残っていた沼鬼に追われて、たまたま転がり込んだ先があなたの工房だったんです。それで、勝手にあなたの残された手紙を読んでしまいました」


メニストが言った。「あの沼鬼たち、まだいたのね。時々、彼らも哀れだと思うわ。自分で考える力がないんだもの。アンリエットとの往復書簡は、もともと誰かに見られることを前提に残しておいたものよ。わたしとシラーナにつながりがあると知れば、わたしを追ってくる連中も少しは考え直すかもしれないから。わたしのことなんてどうでもいいの。あなたたちが研究したいのはアンリエットでしょう。人魚の尾を両脚に変える配方なら、何かと引き換えにくれるなら渡してもいいわ」


ラヴェニが真剣に聞いた。「何が欲しいんですか?」


「珊瑚菓子のレシピ」


ラヴェニが困惑した顔をすると、そらが言った。「アンリエット姫がよく作っていたお菓子で、僕がちょうどアンリエット姫の作っていたものに近いものを作れたんです。メニスト様が欲しいのはこれですか?」


「そう、ヒメロペが教えてくれたの。彼女、料理は全然できないから。あなたがいなくなったら、わたしみたいな薬師に似た味を作れるかどうか試すしかないでしょうし」


「誰が料理できないって?」


入ってきたヒメロペを見て、ラヴェニとテイラロは驚いた。ヒメロペは今回は両足で立った姿で、相変わらず涙の宝石の額冠をつけ、髪には細かい宝石を散りばめていた。ほとんど透明な糸の網のようなもので留めているらしい。彼女は入ってくるなりそらだけを見つめ、遠慮なく彼の隣に座って手を伸ばし、抱き寄せようとした。


ラヴェニがすぐにそらを引き離して言った。「ヒメロペ様、彼をいじめないでください」


ヒメロペは両手を挙げて言った。「わかった、触らないわよ。この子に言いたかっただけ。あなたの腕前は認めてあげる、いつでも海妖族へ遊びに来ていいわ、来る勇気があるならね」彼女は年齢こそ一番上のはずなのに、まるで子どものようにメニストに甘えて言った。「珊瑚菓子は?それのために来たのよ!」


メニストがそらを見ると、そらが言った。「すぐ作ります」


「厨房のものは自由に使っていいわ」メニストが言った。


そらが珊瑚菓子を急いで作っている間、女性たちが楽しそうに話している声が聞こえてきて、少し安心した。テイラロが自分のことでヒメロペに対して気まずさを感じるのではないかと心配していたが、幸いテイラロは礼儀正しく振る舞っていて、想像していたような混乱は起きなかった。


珊瑚菓子を持って戻ると、ラヴェニが言った。「現地調査の方はだいたい終わったわ。あなたに聞かせられなくてごめんなさい、帰ったらまとめておくから」


そらが言った。「ラヴェニのまとめ方、僕の自分のメモより百倍わかりやすいよ」


ラヴェニがメニストとヒメロペに聞いた。「お二人はどうやって知り合われたんですか?」


メニストが言った。「ある誰かさんは、海妖の中でも王族の出なのに、行動だけは特別に子どもっぽいの。何百歳になっても十歳にも満たない子どもとほとんど変わらなくて、一日中食べて飲んで遊ぶことしか考えていない。沼地の女巫をわざわざ訪ねてきて、年を取らない種族を若返らせたいなんて言う人、わたし初めて見たわ」


ヒメロペが言った。「見た目が子どもの方が、お菓子をねだりやすいでしょ」


メニストは嫌そうな顔をして言った。「報酬が十分じゃなかったら、こんな依頼引き受けなかったわよ」


ヒメロペが言った。「わたし以外に誰があなたの相手をしてあげるのよ、文句言って」


メニストが不意にそらを見て言った。「ヒメロペをここまで夢中にさせる人も大したものね。あなた、料理の腕前だけで彼女の心を射止めたの?」


そらは迂闊に答えられず黙っていると、ヒメロペが言った。「彼、アンリエットとどこか似てると思わない?」


メニストが言った。「似てないわ」


ヒメロペが言った。「美しさで言えばもちろんアンリエットには遠く及ばないし、料理の腕前ならアンリエットはこの子ほど上手じゃなかった。大事なのは、二人とも〝交流〟ができるってこと」


ラヴェニが言った。「待ってください、まさかアンリエット様も交流師だったんですか?」


ヒメロペが言った。「これは書物にもほとんど書かれていないでしょうね。アンリエットは、言葉を話せない種族にも交流術を使える数少ない存在だった。それを成し遂げるのはとても難しいの。この人間の坊やが一生かけて努力しても無理よ。アンリエットは王女だったからこそ、その地位ゆえに皆が彼女と〝交流〟したがったの。それが、アンリエットが種族の垣根を越えられた理由よ。でもこの子からは、優しさという資質は確かに感じる。もしあなたも王族に生まれていたら、アンリエットの半分くらいの成果は出せたかもしれないわね」


テイラロが不満げな表情のメニストに言った。「空は本当に優しいんです!」


そらが気になったのは、アンリエット姫が交流師だったという点だった。彼はヒメロペに聞いた。「他種族と交流できる交流師になるには、王族か貴族でなければならないんですか?」


ヒメロペが言った。「じゃなきゃ誰があなたに耳を傾けるのよ」


(凡人から貴族になるなんて、天に昇るより難しい。最下層の貴族でさえそうだ。これは本物の〝交流師〟になる夢が砕け散ったということだ)


そらがしばらくぼんやりしていると、誰かが「橙色の島」と言うのが耳に入って、つい聞いた。「橙色の島って、本当に存在するんですか?」


一同が一瞬静まり、それからヒメロペが言った。「それは人魚の伝説よ。海妖でさえ証明したことはないわ」


そらが言った。「ヴァレリー王女から聞いたんですが、彼女とアンリエット姫が幼い頃、生命の潮に乗って、生と死の境界にある海域へ行って、早くに亡くなった小さな王子に会ったそうなんです」


メニストが言った。「カイランね」


ヒメロペが言った。「そんな名前だったかしら」


そらが言った。「ヴァレリーはずっと、橙色の島が本当にあるのか知りたがっていて、僕に調べてきてほしいって頼まれたんです」


ラヴェニが言った。「ここに来る前に、ルイーズが関連の研究について何か言ってた気がする」


「本当に!」


「帰ったら聞いてみましょう。あの家が一番、この手の文献を持ってる可能性が高いわ」



帰り際、メニストが言った。「わたしの存在は広めないで。でも必要なときは、訪ねてきてもいいわ。体形を変える魔薬は得意だから」彼女はそらを見て言った。「解毒はあまり得意じゃないけど」


ヒメロペが言った。「沼地の女巫って本当にいい人ね!」


メニストは彼女を横目で見て言った。「みんなアンリエットのためでしょう」


(アンリエット姫が二人の「悪人」をここまで変えられたのは、きっと美貌だけのおかげじゃない)


ヒメロペとメニストを見つめながら、そらはもっとアンリエットについて知りたいという思いが湧き上がってきた。


それに、この二人の協力があれば、本当にすごいレポートが書けるかもしれない。



海辺の別荘に戻ると、ラヴェニはルイーズに連絡を取った。すぐに、アンリエット姫の手稿の写しが送られてきた。ラヴェニとそら、テイラロは大量の文献を整理した。多くは閲読石で照らし合わせる必要があり、かなりの時間がかかった。


最終的に出た結論は、アンリエット姫が自分の集めた知識を一曲の歌にまとめたということだった。


テイラロがそらに言った。「世界には歌声で魔力を伝えられる種族がいくつかあるの。海妖もその一つで、魅惑の力を使う。エルフもその一つで、歌詞を魔力に変えられる。人魚にもこの力があって、主に海の様子を鎮める力。でもアンリエット姫は詠唱者の訓練を受けていた。つまり、特定の歌を歌うことで魔法効果を発動できたの。特定の場所でこの歌を歌わないと、アンリエット姫が隠した物を見つけられないわ」


ラヴェニが言った。「でもこの手稿には歌詞がないの。アンリエット姫の一番大切なノートが、木エルフの手にあるとは考えにくいし」


そらが言った。「ヴァレリー王女も持ってなくて、ヒメロペとメニストにも心当たりがない。じゃあ他に誰のところにあり得るんだろう」


テイラロが言った。「アンリエット姫の愛する人は?」


ラヴェニが言った。「とっくに亡くなってるでしょう。国そのものも滅びてるし」


テイラロが言った。「でもその方向で探す価値はあるかも。アンリエット姫は十六歳以降、ドリアン王国の宮廷に住んでいた。その間に何か研究の成果を残していたなら、手がかりは彼女の愛する人の方にあるはず」


ラヴェニが言った。「考古学的に掘るしかないの?でも国内のドリアン王国の遺跡は、クランシュ家がほとんど登録済みで、資料も整理されてるわ」


議論は結論に至らないまま、明日また話そうということになった。



夜、そらはそっと人形を取り出した。


そうだ、休暇に来てまで、彼はあの人形を持ってきていた。今ではほとんど肌身離さず持ち歩いていると言っていい。呪いの品だと思われる心配もない。夕立の魔法は非常に繊細で、しかも黒魔法を使ったものではないからだ。使っているとき以外、それはただの人形に見える。せいぜい、少し顔つきが不気味なだけだ。


耳と口に刺さった針を抜いて聞いた。「夕立、いる?」


「わっ!」


人形が突然大きな声を出して、そらはびっくりした。それから笑い声が聞こえてきた。


「子どもっぽいな」彼は思わず言った。


「あはは、何の用?ちょうど暇してたところ」


「お願いしたいことがあって、アンリエット姫に興味あるかなと思って」


「すごく好きだよ!」


「橙色の島、人魚の伝説に出てくる天国みたいな場所のことを、アンリエットが研究してたみたいで、それを探してて……」


そらの説明を聞いてから、夕立が答えた。「それなら、その人に直接聞いてみる!」


「誰に?」


「まだ言えない。わたしのこと信じてくれる?」


「お願いするよ。アンリエット姫の実のお姉様からの頼みなんだ」


「うん、とりあえず聞いてみる。結果が出たら、使い魔に届けさせるね。片目の見えないカラスだから、驚かないでね」


「よろしく頼む」


「こんなに手伝ってあげるんだから、お礼は何くれるの?」


「何が欲しい?」


「あなたの料理が食べたい!」


「それなら会わないとできないね」


「暇になったら会いに行く、レシピ準備しておいてね!」


「わかった」


夕立と連絡が取れて、そらは気持ちがずっと落ち着いた。その夜は穏やかに眠りについた。



「うっ!」


つつかれて目を覚ましたそらは、自分の胸の上に一羽のカラスが止まっているのを見て、危うくベッドから転げ落ちそうになった。


見たところもう夜明けらしい。夕立の仕事の速さには驚かされる!


カラスは小さな箱をくわえて彼に渡すと、そのまま飛び去った。去り際、自分でこじ開けた窓をきちんと閉めていった。


鍵がかかっているかと思ったが、金属の箱は意外なほど簡単に開いた。ごく普通のオルゴールで、金や銀の装飾はなかった。


彼はオルゴールの取っ手を回した。

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