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トルコ石  作者: 葉櫻
二、吊るされた男
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19/46

2-9

ラウンが去った後、そらは検問の列から外れた。


胸の人骨の薔薇の刻印に力を注いで護守魔法を剥ぎ取り、緑松石の手環を取り出した。


ラウンが教えてくれた追跡術はすぐに反応した。今いる場所はラグマン帝国最大の都市キグノア。もし彼女がラグマン宮廷の実力者を探しているなら、この街のどこかにいるはずだ。


追跡術の淡い痕跡を辿り、市の中心部へ向かって歩いた。


キグノアは人と声でごった返していて、追跡術の腕前もまだ大したことがない。目印のない地図を持たされたようなものだ。どこへ行けばいいかわからない。


ふいに、追跡術の線が目に見えるほどはっきり現れた。


(ラウンが言っていた、逆追跡に気をつけろと)


でも構わなかった。最初から見つけてほしくて来たのだから。


追跡術の痕跡を辿ると、やがて一つの時計塔の前で立ち止まった。


見上げると、上から覗き込む人影があった。


急いで時計塔の階段を駆け上った。丸い螺旋階段に自分の足音が響き渡る。


頂上に着いたとき、夕陽が落ちかけていた。血のような茜色の光が窓から差し込み、狭く何もない時計塔の最上階を染め上げた。さっきの暗い階段とはまるで別の空間のようだった。


少女はやはり黒いマントと黒衣で、胸の前で腕を組んで壁にもたれて聞いた。「探してた?」


夕陽に染まった彼女の髪が金色と桃色に輝き、風の誘いに応えてなびいた。


「うん」そらは息を切らして言った。


「何の用?」


「名前を聞きたくて」


「わたしの名前は夕立。わたしの国の言葉で〝驟雨〟という意味。特に夏の午後の雷雨のことよ。それで?わざわざ来たのは名前を聞くためだけ?」


「ここへ来る前にいろいろなことがあって、やらなければ永遠にできなくなることがあると気づいた。縁あって、黒女神が神々の会議に乗り込んだときの記憶を見たことがあって、鍵の使者がどんな存在かも大体わかった。妳が鍵の使者に一番ふさわしい人だと思う。力を貸せればと思って」


「どう力を貸すの?」


「たとえばアイセンティアの貴族の情報を共有するとか。前任の鍵の使者、オーロパ王女の罪悪の街の城主の地位を受け継ぎたいんでしょう?宮廷に直接入ることはできないけど、貴族や王族と知り合いが多いから、注意して見ていられる」


「なぜオーロパ王女のことを知っているの?」


「周りが貴族ばかりで、うっかり聞いてしまうことがある」


「報酬は何が欲しい?」


「何もいらない。鍵の使者の悪い先例をたくさん聞いてきたけど、夕立はそういう人じゃない。鍵の使者が世界にこれほどの影響を与えるなら、夕立が一番ふさわしいと思う」


「わ、ありがとう。でもそれだけじゃわたしはあなたを信用できない。いい人なのはわかるんだけど、王族や貴族と知り合いがいると自分で言ったじゃない。わたしが二重スパイじゃないってどうしてわかる?」


「どちら側でも僕はスパイとは言えない。守るべき秘密は守る。ただ夕立が罪悪の街の副手を探してアイセンティアへ来たのに、向こうはすでに別の国へ行っていた。僕がいれば、アイセンティアに空振りで来る時間を省ける」


「もう一度聞く。報酬は何が欲しい?無料で動いてくれる人なんていないと思う」


「冒険がしたい」


「え?」


「今は国内に縛られているけど、夕立が話してくれたことや、実際に冒険を経験してみて、ずっとアイセンティアの中だけにいたくないと思った。夕立は船を持っているって言ってたね。そのチームに入りたい。人魚も、海妖も、巨人も、ドワーフも、本物の海の竜も、全部見てみたい」


「お兄さん、今の〝チーム〟は二人しかいないよ。言ってた船も、最近嵐でぼろぼろになって、仲間が修理してくれる人を探しているところ」


「夕立はきっとすごく強くなる。確信がある」


「要するに、チームに加わりたいってことね。いいよ、コックとして!」


夕立の弾けるような笑顔を見て、そらは自分が正しい選択をしたと確信した。しかし彼女が何かを差し出したとき、確信が少し揺らいだ。


それは、顔も手足も大きな待ち針が何本も刺さった木の人形だった。手で削ったらしく、作りがそれほど丁寧ではなく、目の部分は黒いバツ印を刺繍した赤いボタンで、体には刺青のような細密な模様がある。


夕立が言った。「話しかけたいときは耳に刺さった針を抜いて。何かを見せたいときは両目の針を抜く。まあ言わなくてもわかるよね。まず適当に指を刺して、血を一滴垂らして」


そらがそうすると、血の粒が不思議なことに人形の中に直接染み込んで、表面には血の跡一つ残らなかった。


「ありがとう」


「こっちがお礼を言う立場でしょ!まあいいや。もし裏切ったら、この人形であなたに呪いをかけるよ!あなたの血がもう入っているから……全然怖がってないじゃない」


「今もう黒女神に呪われているから」


「そうだったね。早く回復するといいね。チームに加わってよ!タトゥが嫉妬するかもしれないけど、あなたの料理を食べたら文句はないと思う」


「誰それ?」


「仲間よ。いつかアイセンティアを通るとき、あなたに会わせてあげる。面白い子よ」


「ラグマンで探していた人は見つかった?」


「まだ。行動がとにかく掴めなくて。あなたを信頼できるようになったら、もっとちゃんと話す。用事があるから、もう行くね」


「じゃあね」


夕立はぴょんぴょんと跳ねながら階段を駆け下りた。足音が遠ざかっていくのを聞きながら、そらは壁に寄りかかって座り込んだ。


なぜこんなに心臓がどきどきしているのか。


弦羽げんうに頼まれたことではあるが、心の底から自分も彼女についていきたかった。彼女が鍵の使者になったとしても、世界を傷つけることはないはずだ。


なぜなら、彼女が世界に向ける目が情熱に満ちているとわかるから。



幾重もの難関を越えてアイセンティアへ帰り、連絡を入れると、すぐにテイラロが来た。


会うなり彼女はそらを抱きしめ、何も言わずにそのまま放そうとしなかった。ようやく腕を解いてから聞いた。「拉致した人間にひどいことをされた?」


そらが犯罪の記録を残さないよう、ラウンがすべてを誘拐に見せかけて手配してくれた。そらもその話に合わせると約束していた。「用が済んだら解放してくれた。怪我はさせられていない」


テイラロは何度も確認してようやく信じてから、眉をひそめて言った。「連れ去られたとき、本当に怖かった。療養院も大騒ぎになって、みんなが探した。犯人はわたし一人でしか来るなと言って、他に何か企んでいるんじゃないかと思った。でも怪我がなくてよかった。ごめんなさい、ちゃんと守るから、もうこんなことにはさせない!」


「今回は予想外の出来事だった」


「この間、お守りを作ったの……これしかできることがなくて」


そらは複雑な気持ちで彼女が差し出した皮紐の手環を受け取った。木彫りの珠が連なっている。そらが連絡できないでいる間、ここから出ることも許されずに、ただ知らせを待ち続けるテイラロの姿が浮かんだ。


(彼女を苦しめてしまった)


テイラロがそらの体のあちこちを確認し続けているうちに、そらは腹をくくってエニシダの花冠を差し出した。「これ、テイラロに」


いくつか説得の言葉を考えておいたが、テイラロは何も聞かず、そのまま花冠を頭に乗せた。


その瞬間、花冠がほどけ、花びらと枝葉がはらはらと地面に落ちた。テイラロが戸惑いの表情で立ちすくんだ。


「テイラロ、鍵の使者候補なの?」


「……なぜ突然そんなことを?」


エニシダの花冠の仕組みを説明すると、テイラロは黙り込んだ。


「答えを急かしているわけじゃない。ただもう知ってしまったから、隠したままにしたくなかった」


「誰が教えたの?」


今度はそらが答えられなかった。


「わかった」テイラロはため息をついて、隣に腰を下ろした。「機会があれば、わたしもちゃんと話したいと思っていた」

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