12-8
休みの日、サロメは古物市場へ出かけた。
ここでも、魔王が攻めてくるという噂を耳にした。だが、月魔族の気質は読みにくく、とりわけ今代の魔王は態度が定まらず、戦うか戦わないかの間で揺れ動いていた。かつての国王のように常に主戦派で、国内の政治経済をうまく治め、血魔族の圧力に簡単には屈せず出兵を助けたりしない人物とは違っていた。
月魔族の魔王が、出兵しないことを願うしかない。でなければ、いよいよ逃げなければならなくなったとき、サロメには、どこへ逃げればいいのかも分からなかった。
そんなことを考えながら歩いていると、楽器を売っている露店の一つに、木地そのままの色をした七弦琴が置かれているのが目に留まった。貼られている値札は、異様なほど安かった。
彼女はすぐに尋ねに行った。商人との会話から、今は皆、食料や生活用品を買い込むのにお金を使っていて、楽器を買う人などいないのだと、それとなく分かった。
それでも、彼女はその琴を買った。
中型以上の船団が出航する際には、必ず吟遊詩人を一人乗せる決まりがあると知って以来、その身分で便乗して金楓城へ渡れるかもしれないと考えていたからだ。町の人々が彼女を好いているかどうかに関わらず、精霊の血筋が、彼女を優れた吟遊詩人にする助けになることは、疑いようのない事実だった。
七弦琴を手に入れると、彼女はすぐ、道端の空いた一角で弾き始め、小さな声で冬の歌を歌った。
行き交う人々は足を止めないまでも、いくらか歩みを緩めてくれた。それが、サロメに少しの自信を与えてくれた。
医者になって人を助けることも、教師になって純真な子供たちを教えることも、兵士になって国を守ることもできない彼女だったが、せめて何曲か歌うことで、不安に揺れる人々の心を、少しでも落ち着かせられるかもしれない。
精霊に伝わる、一輪の花を巡って戦が起きたという民謡を歌っていたとき、背の高い痩せた男が、彼女の前に立った。冷たい表情、全身黒ずくめの装い、裾まで届く長外套はあらゆる寒さを遮っているように見えたが、男の存在そのものが、まるで残酷な真冬そのもののようだった。一目見るだけで、その氷のような態度に凍えてしまいそうで、皮膚が風化した岩のように乾いてひび割れ、悲しみの涙でなければ潤せないほどに思えた。
サロメの本能は、目の前のこの人物が危険だと告げ、できるだけ遠ざかったほうがいいと囁いていた。それでも、彼女は歌い続けた。
男は何も言わず、ただそうして、彼女が歌い終えて日が暮れるまで待っていた。
七弦琴を仕舞いながら、サロメは申し訳なさそうに言った。「こんにちは。すみません、明日もお仕事があるので、今日はここまでにしますね」
それを聞くと、男はゆっくりとその場を立ち去った。
翌日は、また同じ退屈な店番の仕事だった。戦を控えたこんな時期に、誰がケーキを買う気分になるだろう。サロメは冷蔵棚の中の精緻なケーキを眺めながら、やりきれない思いでそう考えていた。
店の扉の鈴が鳴り、彼女が「いらっしゃいませ」と言いながら顔を上げると、そこにいたのは、なんと昨日、彼女の歌を聴いていたあの男だった。
「こんにちは、どんなケーキをお求めですか?」
男は冷蔵棚を見つめたまま、答えなかった。
サロメは黙って待っていたが、しばらくしても、男は凍りついたように立ち尽くしたままだった。彼女はもう一度口を開いた。「どなたかへの贈り物ですか?」
男はふいに尋ねた。「君は、どれが好きなんだ?」
「これです」サロメはイチゴのケーキを指差した。
男は顎で、そのケーキを示した。「それでいい」
サロメは尋ねた。「一切れになさいますか、それともホールで?」
「ホールだ」
「かしこまりました、少々お待ちください」
ケーキを包装し、男に渡したあと、サロメは、相手の視線に強い不安を覚えた。
どうして、こんなにじっと見つめてくるのだろう。
「他に何か、ご入用ですか?」彼女は尋ねた。
男は金貨を一枚投げ出すと、ケーキの箱を取り、何も言わずに立ち去った。
「あの……」サロメは、商品の価値をはるかに超えたその金貨を握りしめたまま、寒風の中へ消えていく男を、追いかけるのを諦めた。
それから、男はたびたび店を訪れるようになった。
いつも決まって、サロメのおすすめのケーキを尋ねた。最初は買ったらすぐ帰っていたが、やがて、少し足を止めて彼女と言葉を交わすようになっていった。
男は、いつもサロメ一人が店番をしているときに現れた。まるで、彼女がいつ働いているのかを、ちゃんと知っているかのように。
最初、サロメは少し不安を感じていた。だが、次第に、自分が男の訪れを待ち望むようになっていることに気づいた。おかしな話だが、会うたびに、男はどこか、彼女の記憶の中にある父の顔に似てくるような気がした。がっしりとした肩、すらりとした体つき、低く響く声。あと少し、笑顔があれば、なおよかった。もしかしたら、何か理由があって、この方法でしか彼女を見に来られない、本当の父親なのかもしれない。
もちろん、そんなはずはない。
男が手を止め、サロメはそこでようやく、相手をじっと見つめていたことに気づかれたのを悟った。
「失礼しました、フォークはご入用ですか?」
愚かな質問だった。彼はこれまで何度もケーキを買っているのに、フォークを求めたことなど一度もない。
男は逆に尋ねた。「お祭りには、行かないのか?」
サロメは答えた。「聖フロラ祭の日は、仕事があるんです」
男はそれ以上何も言わず、ケーキを提げて立ち去った。
去年の聖フロラ祭には、お嬢様に連れられて街へ遊びに行ったことを思い出し、彼女は少し寂しくなった。極北鎮で過ごした中で、一番寒い冬だった。毎日琴の練習をするにも、店主一家が寝る前のわずかな時間を見計らうしかなく、そうしなければ、うるさいと嫌がられてしまう。一度、街角で歌っていて追い払われてから、誰でも気軽に道端で演奏していいわけではないのだと知った。彼女には、出演料を払うだけの余分なお金はなかった。
聖フロラ祭の前夜、サロメはひどく忙しかった。多くの人が祭りを祝うためにケーキを買いに来て、仕入れの量も倍になっていた。夜になっても、ケーキはまだ売り切れなかった。店主が言っていた「売り切ったら早く上がっていい」という話は、結局、口先だけのものだった。
ほどなく、あの男がまたやってきた。
彼は尋ねた。「君は、ここに、いつまでいるつもりなんだ?」
「このケーキたちが売り切れるまで、でしょうか」サロメは答えた。
「全部買おう」
サロメが驚いて男を見つめると、彼はじっと彼女を見つめ返し、ゆっくりと言った。「包んでくれないのか?」
「本当に、こんなにたくさん要るんですか?」
男が手を振ると、サロメは慌てて、すべてのケーキを包装した。
それから、男は尋ねた。「一緒に、外を歩いてくれないか?このケーキを、困っている人たちに配りたいんだ」
サロメはすぐに頷いた。やはりこの人は、本当にいい人だったのだ。
店の札を「閉店」にひっくり返し、サロメはいくつかのケーキを提げ、男は袋いっぱいのケーキを持って、二人で外へ出た。家のない人々に出会うたびに、ケーキを渡し、良い祭りの日をと声をかけた。もちろん、すべての家のない人々が親切というわけではなく、中にはサロメの財布を奪おうとする者さえいたが、男がそばにいて、手を一振りすれば、その悪人は殴り飛ばされたかのように吹き飛んでいった。
男はサロメに言った。「大丈夫、怪我はしていない」
サロメは頷いた。
男がふいにサロメをじっと見つめ、それから尋ねた。「怖くないのか?今日、君は知らない相手と、そのまま一緒に出かけたんだぞ」
サロメは小さな声で言った。「あなたは、知らない人じゃありません。わたしたち、もう何度も話しましたから」そして、勇気を奮い起こして尋ねた。「どうして、わたしにこんなに良くしてくださるんですか?」
「君の歌には、魂がこもっていたから」
でも、彼が彼女の歌を聴いたのは、一度きりのはずではなかったか?
サロメはそれを問いただすことはせず、視線をそらした。ちょうど、男の手に目が留まった。寒さで赤くなった両手だった。
彼女は尋ねた。「手、冷たいですか?」
「手袋を忘れてしまったんだ」
サロメは手袋を外して言った。「わたしの手は温かいんです。手を繋ぎませんか?」
男はサロメを見つめ、手を差し出した。
サロメは、その大きな手を握った。片方だけしか温めてあげられないけれど、それでも、彼女の感謝の気持ちを、少しは伝えられるはずだった。
灯りの飾られた通りを歩きながら、行き交う幸せそうな家族を眺めていると、ふいに、もう孤独を感じなくなっている自分に気づいた。
通りの両側の家々では、仲睦まじい家族が煮込み料理を囲んでいた。家の中には食べ物の香りが漂い、皆が大きな食卓を囲んでいる。祭りとは、本来こうあるべきものなのだ。ケーキ屋の店主は彼女に優しくしてくれたが、一度も、自分の家の食卓に招いてくれたことはなかった。たとえ誘われたとしても、サロメは、きっと頷く勇気を持てなかっただろう。
この男がいてくれたおかげで、彼女はこうした美しい飾りを見ることができ、祭りの喜びを感じることができた。
あちこちを見渡していると、男が口を開いた。「ここを離れるつもりはあるのか?」
「もともと、お金を貯めてここを離れる計画でした。戦争のせいじゃなくて、家族を探すためです」
「家族?」
「わたしは幼い頃からここに預けられていて、途中、別の場所で働いて、お金を貯めてから戻ってきたんです。でも、ちょうど戦争に巻き込まれてしまって。本当は、まっすぐ金楓城へ行くつもりでした。両親は冒険者で、最後に金楓城へ行ったと聞いています。両親がわたしを置いていった理由と、二人が元気にしているかどうかを知りたいんです」
「君は本当に、二人がそばにいなかった理由を知りたいのか?」
サロメは、雪の降る空を見上げたまま、答えなかった。
両親が去った理由は、彼女を捨てたか、すでに亡くなったか、そのどちらかしかないことも、彼女は分かっていた。
本当に、その理由を知りたいのだろうか?
最後に、彼女は尋ねた。「わたしは、調べに行くべきだと思いますか?」
男は黙ったままだった。
サロメは、彼のその静けさに慣れていたので、そのまま続けた。「わたしは、家族をもう一度見つけられるかもしれないという、わずかな希望を抱いています。あなたに出会ってから、なおさらそう思うようになりました」
「どうして?」
サロメは小さな声で言った。「あなたが、わたしの想像していた父の姿に、よく似ているから」
男は黙って、来た道を引き返し始めた。
ある帽子屋で、サロメが通りかかるたびに目を留めていた灰色のふわふわした帽子を買い、自ら彼女にかぶせてくれた。
まるで、父親みたいだ。
サロメは心の中でそう呟いた。
もしこんなふうに自分を気にかけてくれる父親がいたら、どんなによかっただろう。
「極北鎮では、大勢の人があなたをいじめている」
サロメは言った。「はい。昔に比べたら、今の町の人たちは、わたしにあまり優しくありません」
「その人たちに、償わせたいか?」
サロメは小さな顔を上げ、微笑んで言った。「みんなとの関係は、あまり良くないですけど、いつかまた、ここに戻ってきて、みんなに会える機会があればいいなと思います」
男は頷いただけで、何も言わなかった。
二人はそうして、雪の積もった通りを歩き、互いに温もりを分け合った。男は、サロメに花輪も一つ買ってくれた。言い伝えによれば、良い子が聖フロラ祭の前夜に花輪を寝台の頭に掛けておくと、翌朝には花輪が咲き誇り、その子は一年じゅう幸運に恵まれ、花神から贈り物をもらえる機会にさえ恵まれるという。もちろん、これは花輪の作り手が事前にかけておく魔法にすぎず、同時に、親たちが寝台の脇に、あらかじめ買っておいた贈り物をこっそり置いておくのだ。それが子供をあやすための仕掛けだと分かっていても、サロメは、感謝しながら受け取った。
最後の別れ際、サロメは男に言った。「明日は仕事が休みなんです、またご一緒に散歩していただけますか?」
ところが男は言った。「明日、私は極北鎮を発つ」そう言葉を切ってから、サロメにとって思いがけない問いを投げかけた。「一緒に来るか?」
「あなたの国へ、ですか?」
「そうだ」
「わたしは、まず金楓城へ行って、母を探したいんです」
沈黙が二人の間に横たわったあと、ついに男は言った。「分かった」
サロメは尋ねた。「これから先も、お会いできる機会はありますか?」
男は頷いた。
彼女を気にかけてくれていることは、数多く伝わってきていたが、この男は結局、彼女の親しい友人でも家族でもなく、サロメは彼の名前すら尋ねたことがなかった。彼に重荷を背負わせたり、約束を無理強いしたりするのも、彼女は望まなかった。
こうして、二人はそのまま別れた。
少なくとも最後に、彼の手は、彼女によって温められていた。
翌朝起きると、サロメが真っ先にしたのは、花輪を確かめることだった。
フロラ神を象徴するセンペル花がすべて満開になっていて、桃紫色の花びらが、緑の土台に彩りを添え、この上なく美しかった。
彼女はその香りを嗅ぎ、甘くほほえんだ。
ベッドから降りようとしたとき、何かに足をぶつけた。
一つの箱だった。見たところ……七弦琴の形をしている。
彼女は箱の蓋を開け、震える手で、中に収められていた桃色の楽器を取り出した。桃色は彼女の一番好きな色で、ずっと、こんな色の楽器を持ちたいと夢見ていた。琴身には、小さな金色の文字が並んでいた。書かれていたのは、彼女の名前、サロメ。その上には、もう一行、彼女には読めない文字があった。
この贈り物は、あの人の手によるものに違いなかった。
彼女は、その完璧な、傷一つない七弦琴を、そっと撫でた。
灰色の毛糸帽をかぶり、一番お気に入りの桃色の外套を着て、彼女は最初に弾き語りをしたあの場所へと向かった。
準備をしていると、母親の手を引いた小さな男の子が、すでに彼女の前に立ち、期待に満ちた目で見つめていた。
彼女は微笑み、弦を軽く試し弾きした。
それでは、今日にふさわしい、花神を讃える歌を一曲。




