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ある日、お嬢様が彼女に言った。「聞いた?花神号が極北鎮に寄港するの。金楓城へ向かう途中なんですって」
「どちらでお聞きになったんですか?」
お嬢様はサロメの表情をうかがいながら言った。「父の友人が言ってたの、この前のバート様よ。花神号に乗って、金楓城へ商売に行くんですって」
これは、またとない好機だった。サロメはうつむいて言った。「でも、わたし、船賃が買えません」
お嬢様は急いた様子で言った。「船が極北鎮に寄港するなんて、これ以上ない機会よ!」
サロメはただ、こう言うしかなかった。「また、きっと機会はありますから」
夜、夫人がサロメを呼び寄せ、ふと切り出した。「聞いたのだけれど、あなたの膝がひどく痛むそうね。症状が出ると、立つこともできないとか」
「少し痛みますが、でも……」
夫人はサロメに封筒を手渡して言った。「そんなに酷い怪我では、女中の仕事を続けるのも無理でしょう。長年、この家のために尽くしてくれてありがとう。これで故郷に帰って、養生なさい。少ししたら、馬車が極北鎮まで送ってくれるわ」
封筒のずっしりとした重みから、サロメは、中にどれほどのお金が入っているか想像がついた。彼女は目を見開いて夫人を見つめた。夫人は彼女に微笑みかけ、小さな声で言った。「ご両親に会っておいで」
荷物をまとめ、迎えの馬車に乗り込んでもなお、サロメは、目の前で起きていることが信じられなかった。
お父さんとお母さんに会いに行ける!
ところが、運命とは、やはりどこまでも意地悪なものだった。極北鎮に戻ってみると、月魔族がチェイモンド王国への侵攻を企てているとかで、対外航路はすべて封鎖されていた。極北鎮も、その例外ではなかった。
仕方なく、彼女は地元でケーキ屋の仕事を適当に見つけ、店の屋根裏部屋にしばらく身を寄せることになった。
貴族の家であれば、使用人部屋でさえ、普通の小さな店の屋根裏より上等だ。それでも、身を寄せる場所があるだけで、サロメは十分にありがたいと思っていた。しかも、店主が彼女にあてがってくれた部屋には、通りが見える外向きの窓があった。サロメは、孤独を感じるたびに、その窓に顔を押し当て、行き交う人々の数を数えた。そうすることで、いくらか心が慰められた。
極北鎮に戻ってみると、かつて彼女の世話をしてくれた鎮長夫妻は、もう病で亡くなっていた。見知った人々の多くも、戦を避けて町を離れ、通りはひっそりと寂しくなっていた。
彼女が幼い頃からこの町で育つのを見ていた子供たちが、わざわざやってきて尋ねた。「あんたの耳、変だね。精霊みたいでも人間みたいでもないよ。あんた、何なの?」
「わたしの母は精霊で、父は人間なの」
「じゃあ、耳もどっちかの形になるはずだろ。何でそんな、尖ってて垂れてるんだよ?」
「分からない」サロメは恥ずかしさを感じた。自分は奇妙だ、どちらにも属していない――そう思えて仕方がなかった。
子供たちにふざけて雪玉をぶつけられることもあった。ある時、雪玉の中に石が仕込まれていたことがあった。頬を何かが流れ落ちるのを感じ、手で拭ってみると、思いがけず、手のひらが血で真っ赤になっていた。
住まいへ帰る道すがら、彼女はずっと考えていた。自分が生まれてきたこと自体が、一つの過ちだったのではないか、と。
それでも、仕事は続けなければならない。手早く手当てを済ませると、彼女はそのまま店に出た。ちょうど、店主の息子が、叔父から何かを受け取りに来ていた。サロメを見かけると、彼はいつも二言三言、世間話を交わしてくれた。言葉が軽薄で、要領を得ない冗談ばかり言う人ではあったが、少なくとも、好意的ではあった。
サロメの傷の経緯を聞いて、店主の息子は吹き出して言った。「あいつらは、君を嫌ってるわけじゃないよ。綺麗だと思ってるんだ」
「石をぶつけてきたのに、好きなわけないでしょう」
「人間は精霊を見ると、どうしても羨ましくなるものなんだ。その尖った耳だけでも、妬ましく思う。男の子たちは、君の気を引きたいんだよ」
「それで、石をぶつけてくるの?」
「そうだよ」
「変なの」
「人間に嫁ぎたいとは思わないのかい?」
また始まった。彼はいつも、話を結婚の方向へ持っていきたがる。
サロメの年齢では、まだ結婚のことなど考える必要はなかったし、幼い頃から鎮長夫妻が言い争うのをずっと見てきたせいで、結婚というものに、さほど期待を抱いてもいなかった。それでも店主の息子はしつこく食い下がり、さらに尋ねてきた。「どんな人と結婚したい?」
「優しくて、善良で、正直な人」サロメは、それでも答えてしまった。
「僕はすごく優しいよ」店主の息子はすぐさま自薦した。
サロメは思わず笑い声を漏らした。
その反応が、店主の息子を怒らせてしまった。「冗談を言ってると思ってるのか?」
「怒らないで、わたしが悪かったわ」サロメは慌てて言った。
店主の息子は不満げに立ち去り、サロメは一人、店番を続けるしかなかった。
彼女は、かつてないほどの孤独を感じていた。




