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トルコ石  作者: 葉櫻
十一、運命の輪
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115/119

12-6

エルシーの情報を把握したあと、空(そら)とマリリンはすぐに出発した。


空(そら)の胸中は複雑だった。正直に言えば、あの絵を見るまでは、エルシーのことを、ただ強く立派な母親なのだと思い込んでいた。相手を神格化し、母性と結びつけて考えることなど、一度も疑ったことがなかった。皮肉なことに、今、彼らが探しているのもまた「エルシーの娘」であり、結局、同じ堂々巡りから抜け出せずにいる。


北へ進むにつれて、気温はどんどん下がっていき、イグルーサ王国の厳寒にも匹敵するほどになった。


この旅は、前回のようには順調にいかなかった。途中、彼らは足を止めざるを得なくなった。


月魔族が、チェイモンド王国へ侵攻しようとしていた。戦争はもはや、口伝えの憶測ではなく、現実のものになろうとしていた。空(そら)とマリリンが、チェイモンドのいくつかの都市が陥落し、月魔族が首都・寒霜城を攻め落とそうとしているという知らせを受け取ったとき、アイセンティア貴族としての空(そら)の責務が発動し、寒霜城へ赴いて指揮を執るよう命じられた。


アイセンティアの使者は言った。「恐れながら申し上げます。子爵には自衛の術も実戦の経験もございません。前線に出られても、何の役にも立たないでしょう。寒霜城に必要なのは、マリリン様です」


マリリンは真剣な面持ちで空(そら)に言った。「護衛として、本来ならあなたのおそばを離れるべきではありません。ですが、わたしは軍を率いに向かわなければなりません。どうかご自身の身をお守りください。もし寒霜城が陥落するようなことがあれば、すぐにアイセンティアへお戻りください」


「君がいれば、陥落なんてしないよ」


マリリンは空(そら)に礼をすると、慌ただしく立ち去った。


彼女のこんなに急いだ姿を見るのは珍しかった。それが、空(そら)に、ある実感を抱かせた。世界規模の戦争が、本当に始まろうとしているのだ、と。


それでも、アイセンティアは依然として、彼にエルシーの娘を見つけ出すことを求めていた。空(そら)はやむなく、ティラミスだけを連れて、エルシーの足跡を辿っていったが、精霊の少女に関する情報は、どこにも見つからなかった。チェイモンド王国には精霊がきわめて少なく、他の多くの人間の国と同じように、精霊に対して生まれながらの畏敬の念を抱いている。だからこそ、マリリンが守備軍に加わることが、あれほど重要だったのだ。もしどこかの町に他の精霊がいれば、絶対に隠し通せるはずがない。空(そら)はそうして何の手がかりも得られないまま北上し続け、ついに国の最北端にある小さな町、極北鎮へと辿り着いた。雪と氷に覆われたその町には、まだ片付けられていない聖フロラ祭の祝祭の飾りが残されていて、まるで、戦争という現実から目を背けているかのようだった。


極北鎮の住民たちは、ほとんど逃げ出していなかった。逃げたところで、どこへ行けるというのだろう。ここは、彼らが幼い頃から育ってきた、生まれ故郷なのだから。


もし極北鎮にも精霊の痕跡がなければ、あとは金楓城へ向かうしかない。空(そら)はティラミスを放ち、町じゅうをあちこち嗅ぎ回らせた。すると、思いがけず、ティラミスが反応を示し、ある場所へと勢いよく駆けていった。


空(そら)はあとを追いかけ、最後に見つけたのは、十歳ほどの少女の脚の上で、心地よさそうに横たわっているティラミスの姿だった。


少女は七弦琴を下に置き、顔を上げて空(そら)を見た。髪は桜のような桃色で、左側に小さな三つ編みを垂らし、残りの長い髪は肩へと流れていた。瞳はラベンダーのような紫色で、耳は精霊に似た尖った形をして、わずかに垂れ下がっていた。


空(そら)は片膝を地につけ、少女と目線を合わせて言った。「こんにちは。これは僕が飼ってる追跡犬なんだ。目を離した隙に逃げ出しちゃって。大人しくさせてくれてありがとう。連れて帰ってもいいかな?」


少女は答えた。「いいよ」


「この子、普段はあまり人に懐かないんだけど、君にはよく大人しくしてるんだね」


「わたしの歌を聞いて、こっちに走ってきたの」


そう言いながら、彼女はまた目を閉じ、鼻歌を口ずさみ始めた。


澄んだ柔らかな歌声が、二人の周りに響き渡った。まるで音符が躍動して見えるかのようで、空(そら)はすっかり音楽に引き込まれ、しばらくぼんやりと聞き入っていた。ティラミスに至っては、お腹を見せて甘え始めた。


この子の詠唱術の腕前は、空(そら)がこれまで出会ってきた、専門の吟遊詩人の多くよりも優れていた。もしかすると、空気のように澄んだ音色のおかげで、より良く響いているのかもしれない。歌唱の技術も、年齢には不釣り合いなほど熟達していた。


空(そら)は言った。「僕の名前は空(そら)。君の名前を聞いてもいいかな?」


「わたしはサロメ」


「こんにちは。どうして君は、ここに一人でいるの?家族は?」


「家族はいないの」


「ここが危ないって知ってる?戦争がもうすぐ始まるんだよ」


「知ってる。わたしは金楓城に行こうとしてるんだけど、船がもう出てないの」


「どうして金楓城に行きたいの?」


「お母さんを探しに行くの。金楓城にいるって聞いたから」


「その『聞いた』っていうのは、誰から聞いたの?」


「わたしの世話をしてくれてた村長」


人間と精霊の混血、花精霊特有の髪色、そしてティラミスのお墨付き――サロメは、おそらくエルシーの娘の一人なのだろう。けれど、サロメは姉がいないとも言っていた。幼い頃から、ずっと一人きりだったと。いったい、どういうことなのだろう。


空(そら)は港のそばに腰を下ろし、サロメが知っている限りの身の上話に耳を傾けた。


サロメは幼い頃から孤児で、両親の顔を見たことがなく、極北鎮の住民たちによって育てられた。


かつての極北鎮は、中継貿易の要衝だった。花神の加護を受け、極寒の北の地で唯一の不凍港だったからだ。だが、別の港湾都市が興隆してから、極北鎮はひっそりと衰退していった。


極北鎮の鎮長は言った。サロメの母親は、極北鎮を離れる前に、金楓城へ行くと言っていた、と。金楓城は、夜魔族の首都だ。


だからこそ、金楓城へ行くための金を貯めることが、サロメにとって、一番の願いになった。


昼間、サロメは町役場で使い走りや雑用を手伝い、夜は役場の二階にある古い書庫で眠った。町の書記が、麻袋と藁で彼女のために寝床をこしらえてくれ、古い下着が布団代わりになった。一番上等なものといえば、鎮長の妻が柔らかすぎると言って捨てた羽根枕だった。


極北鎮には、一年のうち、冬と、もっと寒い冬しかない。一番厳しい寒さの季節になると、彼女は、町役場の人々がくれた小遣いをかき集めて温石を一つ買い、眠るとき、それをお腹に当てた。へそを冷やすと風邪をひくのだと、大人たちが言うのを聞いたことがあったからだ。彼女には、病院にかかるだけの余分なお金はなかった。


八歳になって、サロメはようやく、正式に働けるようになった。彼女は町役場の書記の紹介状を持って、隣町の貴族の家へ奉公に出た。一番下っ端の、皿洗いの女中から始めた。幼い彼女の手はもともと、荒い仕事に慣れきっていて、一か月皿を洗い続けるうちに、さらにひび割れて赤く腫れ上がった。それでも、正式な給金を受け取れるようになると、彼女はそのわずかな収入を抱きしめるようにして、いつか十分なお金が貯まったら、そのまま旅をして金楓城まで行き、母を探すのだという未来を夢見た。


夫人の娘はサロメより一つ年下で、夫人はそのせいか、サロメを特別に可愛がってくれた。言うことをよく聞き、辛抱強いサロメを、いずれ自分の娘の専属女中にするつもりなのかもしれなかった。ちょうど、結婚のために厨房女中の一人が家を離れることになり、サロメはすぐに厨房女中へと昇格した。厨房で働く良いところは、主人たちの食べ残しの美味しい料理を分けてもらえることだった。料理人も、切れ端の食材を厨房女中たちに分けてくれた。それは、サロメがこれまでの人生で一度も味わったことのない、この世の美味だった。これまでの彼女の食事が良いときでさえ、野菜くずと細かく刻んだ肉で煮込んだ薄い汁物や、薄くバターを塗った黒パン、ときどき出る、乾いて味気ない魚の身くらいがせいぜいだった。


幼い頃、長く飢えを経験してきたせいで、サロメは特に空腹を恐れるようになっていた。部屋にパンを一切れ隠しておかなければ、安心できなかった。家令はそのことを知ってから、よくビスケットのようなお菓子を、サロメのために取っておいてくれるようになった。屋敷の使用人たちは皆、とても穏やかな人たちで、争いごとはほとんどなかった。サロメが町役場に寄宿していたときのように、町の人たちが喧嘩をして、鎮長に判断を仰ぎに来るようなこともなかった。仕事を終えてから休むまでの間、使用人たちは集まってトランプをしたり、ちょっとした賭け事を楽しんだり、楽器を弾いて歌を歌ったりした。サロメが音楽に触れたのは、ちょうどこのときだった。


最初、彼女はただ、周りに勧められるまま、その季節の春の歌を口ずさんだだけだった。歌い終えると、皆が呆然と彼女を見つめていた。そのとき初めて、彼女は自分に歌の才能があることに気づいた。それから、彼女は歌うことが大好きになった。


歌が上手いだけでは、あまり役に立たない。夫人はサロメに、針仕事や掃除といった家事の技能も学ぶべきだと言った。そうすれば、もっと優秀で何でもこなせる女中になれるから、と。だが、お嬢様の七弦琴の稽古があまりにも難航したため、夫人はサロメに稽古相手を務めさせ、家庭教師の教える内容を覚えさせるようにした。サロメはその機会に、基礎的な楽理まで学んでしまった。


学んでいくうちに、サロメは、お嬢様よりもずっと音楽に興味を持つようになった。そのことを知ったお嬢様は、どんなことがあっても、夫人に家庭教師を辞めさせないよう頼み込んだ。


主人一家の恩に報いるため、サロメは一層努力して働いた。多くの家庭では、使用人は自分の行動をできる限り隠し、専用の通路を使って移動し、主人に気づかれる前に片付けや掃除を終えておかなければならない。だが、サロメが働いていた家には、そんな厳しい決まりはなかった。祝祭日のたびに、使用人たちを休憩室で遊ばせ、酒を飲ませてくれることさえあった。それは、サロメに、「家」というものが本来あるべき姿を、ほとんど感じさせるほどだった。


一年で最も重要な聖フロラ祭、一年に一度の団欒の日が来ると、使用人たちは交代で休暇をもらい、街へ出て祝祭に参加することができた。サロメはきちんと働きたいと思っていたのに、お嬢様が彼女を街へ連れ出した。そして、主人たちを訪ねてきた親戚や友人たちが皆帰ったあと、今度は使用人たちが、それぞれの家へ帰る番になった。帰る家のないサロメには、特別な厚い手当が支給され、その代わりに、この期間、何人分もの仕事を引き受けることになった。彼女は、ただ懸命に働くことで孤独を忘れるしかなかった。そういうとき、彼女は、自分には家族がいないのだと、はっきりと思い知らされた。


だからこそ、彼女はいっそう懸命に貯金をした。母を探しに行く、その日を待ちわびながら。

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