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トルコ石  作者: 葉櫻
二、吊るされた男
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11/46

2-1

暗闇の中で突然目が覚めた。


期待していた目覚め方ではなかった。


そらを目覚めさせたのは、胸をぎゅっと締め付ける痛みだった。彼は心臓のあたりに手を当て、オーテが教えてくれた呼吸法を何度も心の中で繰り返した。また来た。今週これで三度目の夜中の目覚めだ。


ゆっくりと身を起こし、窓辺に歩いていく。このまま息が乱れてパニックになる前に、意識を別のものへ向けなければ。


清澄な月光が窓ガラス越しに床一面に降り注いでいた。アイセンティアの夜は、いつもこんなに穏やかだ。テーブルの花瓶には白く輝く雛菊が活けられ、清水を吸い上げて、枯れる気配がまるでない。


オーテは、浅い眠りの原因は過度な不安からだと言った。しかしそらにとって、自分の感情は不安よりも苛立ちに近かった。体の中でいつも何かがもぞもぞと落ち着かなく蠢いていて、薬を飲んでも収まらない。


ぼんやりと窓の外を眺めていたとき、異様な銀の光が一瞬走るのが見えた。そらは窓枠に手を当てて身を乗り出し、目を凝らした。


銀色の弾丸のような何かがこちらへ向かって真っすぐ飛んできた。速度があまりにも速くて、窓ガラスに激突する寸前で急反転したとき、それが何の動物なのかを確認できなかった。おそらくコウモリだろうか。


ほとんど顔を窓に押しつけるようにして探したが、その鳥のような生き物の姿はもう見当たらなかった。


そのとき、窓の庇の下から一羽の動物がひょっこりと現れた。


全身の羽毛から爪の先まで金属の光沢を帯びた鳥で、生気のない丸い目がぱちりともせずに彼を見つめていた。頭がときどき神経質にこくこくと動く以外は、どこからどう見ても人工物にしか見えない。


金属の鳥は頭を下げ、その長くとがった嘴を窓の隙間に差し込むと、力まかせに窓をこじ開けた。そして彼の袖を咥え、窓の外へ引っ張り出そうとして離さない。


(この鳥、何か大事なことを伝えようとしているのかもしれない)


そう感じたそらは、半身を窓から身を乗り出しながら、空気中の水属性を集め、暗闇に半分呑まれた月から少しだけ光を借りた。豊かな純粋な力が手の中に流れ込んでくる。この満ちた力は、教室での練習よりずっと軽々と魔法を使わせてくれた。彼は窓の下に生えていた野草を急速に成長させ、太く逞しくなった茎と葉が数秒のうちに二階の高さまで伸び上がった。


念のため風属性も少し加えた。植物だけでは体重を支えられないかもしれないから。そうして彼はその植物を伝って地上へと滑り降りた。


素足の裏が草地に触れた瞬間、まるで雲の上に立っているかのようだった。やわらかい草の上に、露がじんわりと滲んでいた。


金属の鳥が待っていた。そらが手を伸ばせば捕まえられるほど近づいたとき、鳥の体がまるで風船みたいに急速に膨らんだ。数秒もしないうちに、鳩ほどの大きさだった鳥が象ほどの大きさになった。


そらの驚き声と同時に、巨大な鳥はこのパジャマ姿の間抜けな人間を咥え上げ、呆れるほど大きな翼を広げた。


(鳥に掴まれるなんて、ちっとも楽しくない!)


空中の寒さに全身に鳥肌が立ち、真正面から叩きつける風で目も開けていられない。せめてもの救いは、鳥の爪がUFOキャッチャーのアームのように肩をしっかりと掴んでいるだけで、肉に食い込んでいないことだった。


ものすごく後悔した。掴み上げられた瞬間に大声で叫べばよかった。高空に来てから叫んでも、誰にも届かない。もう叫ぶのもやめた。冷たい風が口の中に流れ込んで喉が痛いし、そもそもこの巨鳥は完全に無視している。捕食者が獲物の悲鳴を気にするはずがない。


どれくらい飛んだだろう。飛行速度が落ちて高度が下がってきたのを感じ、恐る恐る目を開けた。


地平線のあたりがうっすらと白み始めていて、山脈の稜線が浮かび上がっていた。


巨鳥は断崖の上で彼を放した。そらはよろめきながら着地した。彼を解放した巨鳥は崖の縁に立ちはだかり、硬い鉄の嘴で同じく固い羽根を繕いながら、背後の山洞へ入るよう彼を追い立てた。


そらは仕方なく洞窟へと歩いていった。


洞窟内の光源は、壁を人の手で削った窪みの中に据えられた松明だった。揺れる炎は消えることのない不滅の火で、燃料は魔法の結晶、非常に長い時間燃え続けることができる。


(誰かの拠点みたいだ)


通路には一定間隔で松明が置かれ、深い洞窟の中を苦しめるはずの漆黒を追い払っていた。それぞれ異なる結晶による色とりどりの炎に照らされた長いトンネルは、まるで画廊のようだった。岩壁の石の紋様が、精巧に刻まれた彫刻のように見えた。


やがて、通路の先に部屋が現れた。


青い炎が跳ねる暖炉のある読書室だ。その手前、黒い半透明の石でできた読書台の上に、水色の表紙の本が一冊置かれていた。


他人の本をむやみに触るつもりはなかったのに、突然吹き込んできた強風がページをめくり、ある一ページで止まった。


(本が自分で開いたなら、勝手に触ったことにはならない)


近づいて見ると、書かれている文字は見たこともない異国の言語だった。文字はくるくると巻いていて、太い中央部から荊棘のような刺が突き出している。その字体を見ていると、そらはなんとも言えない不快感を覚えた。少し吐き気さえした。難しすぎる外国語を脳が拒絶しているのかもしれない。


本を閉じた。しかし手を離した途端、また風が吹いて同じページが開いた。


(気持ち悪い)


怖いと思えば思うほど、目が離せなくなった。ページの上で標題の文字が大きく太く踊っていて、まるで肥えた毛虫が目の中へ這い込んでくるようだった。この単語をどこかに書き留めたい、声に出して読みたいという衝動が湧き上がったが、読み方がわからなくて、それがたまらなく焦れったかった。よく見ると、本文の中にもこの単語が何カ所か出てきている。


もう一度本を閉じた。今度はページが何かに挟まれて止まった。


銀色の嘴だった。


いつのまにか小さな姿に戻っていた鋼鉄の鳥がじっと彼を見つめ、ぱちりと目を瞬いた。

次の瞬間、鳥は彼めがけて急速に飛んできた。そらは反射的に両腕を顔の前に上げ、目を閉じた。



目が覚めると、自分の部屋にいた。


(やっぱり夢か)


窓に目をやった。窓が開いていた。


ということは……そらは布団を引き剥がした。


真っ白なシーツの上に、そして彼の両足に、湿った土の跡がついていた。

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