11-7
赤い踊り死ぬ事件の解決を確認したあと、シューナは再び空と顔を合わせた。
このとき、シューナの張り詰めていた顔の皺が、いくらか和らいでいた。
彼は言った。「よくやりましたね。真相を突き止めただけでなく」
空は耳を傾けた。
シューナは続けた。「普通なら、赤い靴のもともとの持ち主を突き止めた時点で、調べをやめるものです。責任を負わせる相手さえいれば、それで十分ですから。それでも調べを続けたのは、どうしてですか?」
空は正直に言った。「僕自身が真相を知りたかったんです。でも、僕を突き動かしたのは、三王妃殿下でもあります」
シューナは頷いて言った。「あなたは誠実な人ですね。それも、わたしがあなたを認めた理由の一つです」
空は尋ねた。「僕のことを、認めてくれたんですか?」
「口ぶりはまだ子供のようですが、あなたのなさったことは、すでに大人であることの証です。これからは、わたしがあなたを『あなた』とお呼びします。あなたは、わたしを『お前』と呼んでください」
空は尋ねた。「あなたは……あなたは、僕に家を築くだけの力があると思いますか?」
シューナは真剣な顔で言った。「あります。瑪瑞琳から、あなたが事件を調べた経緯を聞きました。これから先は、もう一人で無茶な冒険をなさらないでください。家の力を使うのです。わたしとマリリンは、今のところ二人しかいませんが、それでも家です。わたしたち二人は、あなたが必要とするときには、最も忠実な支えになります。今回は特例です。これからは、誰かに認められるためだけに、自分の命を危険にさらすことはしないでください。今回のあなたが、いささか無鉄砲だったのは、その部分です」
「はい」
シューナはさらに、家のあれこれについて長々と語り、空は頭がくらくらするほどだった。特に予算の話になると、空は言った。「全部、あなたに任せます」
「せめて、一か月の支出については、把握しておいてください。ゆっくり学べばいいですが、すべてわたしに任せきりにはできません。いずれ、自分で解決しなければならない日が来ます。まずは、家屋の修繕費から……」
シューナがまた説教を続けようとしたところで、瑪瑞琳が用があると言って空を連れ出し、彼を救い出してくれた。
扉を出ると、マリリンは空に言った。「シューナさんのおっしゃることは、ほとんど正しいです。ただ一つ、わたしと彼とで考えが違うところがあります。わたしの目には、あなたはまだ子供です。少なくとも、わたしの前では、子供でいていいんですよ」
空は感謝の眼差しでマリリンを見つめた。マリリンは彼にウィンクを返した。
彼は言った。「君がいてくれて、本当によかった。いろんなことが、安心できるようになった。カスティーラに行ったときも、すごく怖かったけど、君がいなかったら、あの機会を引き受ける勇気すら出せなかったと思う」
「信頼していただけて、光栄です」
空は慎重に尋ねた。「シューナが言ってたみたいに、君のことも家族の一員として、他のことでも頼っていいのかな?」
「わたしたちは、もう家族ですよ」
「でも、本当に面倒なことになるかもしれないよ!王室とはあまり関係のない、僕個人がやりたいことかもしれないし」
「あなたのお頼みを引き受けられるなら、それは光栄なことです」
空はそこでようやく、安心して笑った。
叙爵の当日、空はイナータが仕立ててくれた礼服に着替え、盲目の馬ゴマに乗り、マリリンの護衛とシューナの付き添いのもと、王城へと向かった。
シューナは眉根を寄せて尋ねた。「本当に、ゴマにお乗りになるんですか?あなたの乗馬も、あなたを象徴するものですよ」
空は言った。「ゴマは、僕が選んだ馬だ」
マリリンのとりなしもあって、シューナはため息をつき、その事実を受け入れた。
叙爵の儀式は、今日行われる。
空はそう考えていた。
不思議なものだ。知らず知らずのうちに、ここまで長い道のりを歩いてきた。振り返れば、経験してきたすべてのことが、どこか現実味のないもののように思える。
王城に着くと、空はまずルイーズと落ち合った。もともとは、ルイーズに少し勇気をもらいたいと思っていたのだが、一目見た瞬間、空はもう駄目だと悟った。ルイーズは彼以上に震えていて、まるで、叙爵を受けるのが彼女自身であるかのようだった。
ルイーズ自身も具合の悪さに気づいたのか、ミシアに尋ねた。「ミシア、わたし、変に見えないかしら?」
ミシアは柔らかく微笑んで言った。「あなたは主役ではありませんから、ご心配なく」
ルイーズは哀れっぽく、ミシアの手を握って言った。「わたしのそばにいてね」
ミシアの視線が空へと向かった。「バイさんのほうが、もっと注目を集めることになるでしょうね」
空は言った。「僕をもっと緊張させてくれて、どうもありがとう」
ミシアは笑うだけで、何も言わなかった。
ルイーズは少し落ち着きを取り戻し、空を見定めてから言った。「あなた、とても素敵よ」
空は言った。「イナータが選んでくれたんだ。彼女が失敗するはずがないから」
「確かにそうね」
ルイーズは空の襟元を整えてから言った。「やるべきことは全部やったわ。一番難しいところは、もう過ぎたの。これから先の叙爵の儀式は、あまり深く考えないで。ただ、通り過ぎればいいのよ」
空は言った。「実を言うと、今はもう緊張しすぎて、あれこれ考える余裕も、儀式の細部を感じ取る余裕もないんだ」
「それでちょうどいいの」
ルイーズは手を下ろして言った。「怖がらないで。わたしもイナータもそばにいるから、何も起こらないわ」
「僕が失敗するんじゃないかって、怖いんだ」
ルイーズは言った。「わたしだったら、道をまともに歩くことすらできないでしょうね。こういう場で主役として出席するなんて、絶対に無理。今のあなたを見ていると、とても笑い者になるような人には見えないわ。お祝いの品は、もうわたしの手の中にあるの。何か、当ててみる?」
空は当てずっぽうに言った。「カード?」
「まさか、カードだけなんて送るわけないでしょう!もっとも、ある意味では当たってるんだけど」
「だって、今の君の身につけているものの中で、収まりそうなのはカードくらいしかないだろう。それに、これは五大名門の令嬢、ルイーズ・ピエテ直筆の手書きカードだ。それはもう……」
ルイーズは顔を赤くして言った。「もう言わないで!直接渡すわ」彼女は一枚の金属製のカードを取り出した。「これは金メッキしてあるだけだけど、価値は材料そのものよりずっと高いのよ。これは、王冠学院と、わたしの家のすべての書庫の貸出証なの」
空は言葉を失い、目を見開いてルイーズを見つめた。ルイーズはその視線に気恥ずかしくなり、うつむいて言った。「もちろん、資料はわたし本人に直接聞いてもらってもいいけど、もし今後、わたしに言いにくいことや、伝える時間がないことがあったら、このカードを直接使えるわ。便利だと思うんだけど?あなたの侍従が、あなたの代わりに来てもいいのよ」
「ルイーズ、これは最高の贈り物だよ!」
ルイーズは目を少し開いて、笑顔を浮かべて言った。「気に入ってくれたなら、それでいいの」
「見るだけじゃなくて、本を借りられるなんて、本当に助かるよ!先生に書けって言われてる報告、もっと資料を探さなきゃって困ってたところなんだ」もちろん、それだけではない。ルイーズは、自分の権限そのものを彼に分け与えてくれたのだ。
ルイーズは顔をそむけて言った。「あなたの友達が、あそこにいるわよ。話しに行かなくていいの?」
空がルイーズの指す方向を見ると、そこにいたのは、なんと雪だった。
空はルイーズに言った。「ごめん、ちょっと失礼するね」
空は急いで歩み寄り、雪に言った。「来るなんて、言ってなかったじゃないか」
雪は青白い笑みを浮かべて言った。「驚かせようと思って。今さっき、最高の贈り物をもらったって言うのを聞いて、僕の贈り物が見劣りしないか、少し心配になったよ」彼は何もない空中から、一束の花を取り出した。「こういう場には、花が必要だと思ってね」
空は、その独特な花をじっと見つめた。氷の結晶でできた茎、雪の結晶でできた花びらのようで、冷たくもあり柔らかくもあり、ごくかすかな香りが漂っていた。
空は花を受け取って言った。「ありがとう!すごく気に入った」
「まだ紹介してなかったね。これは僕が育てた花で、『白暉』って名付けたんだ。君の封号に合わせて。弦羽が君の封号を教えてくれたんだよ。いいね、君にぴったりだ。持って帰って植え直せば、もう君のものだよ」
「こんなに貴重なもの、もらえないよ!」空はすぐに笑って言った。「でも、厚かましく受け取らせてもらう。男は一生のうちに、花をもらう機会なんてめったにないって聞くから、こんな機会をもらえて、光栄だよ」
雪は言った。「この花に、特別な効能はないんだ。本当は、七色草みたいな万能薬になる植物を育てたかったんだけど。結局、見た目だけの花になっちゃった」
空は言った。「花に何か効能がなくたっていい。ただそこに在るだけで、十分美しいよ。花だけじゃなくて、他のものだって、そうだと思う」
雪は笑って言った。「僕が贈り物をするはずだったのに、いつの間にか、君に慰められてる」
「僕は本心を言ってるだけだよ。ありがとう。この花、僕の周りの人にも分けてあげてもいいかな?」
「君が想いを寄せてる人?」
「……そうだよ」
雪は驚いて言った。「冗談で言っただけなのに」
空は言った。「僕は本気だよ。いろんなことを経て、自分の気持ちが、だんだんはっきり分かってきたんだ。こんなに美しい花、彼女にも見てほしいんだ。というか、僕が持っている美しいものすべてを、彼女にも持っていてほしいって思うんだ」
雪の唇の端に、微笑みがこぼれた。彼は言った。「そうだ、弦羽は、少し経ってから君に会うって。先にこれを伝えておいてほしいって頼まれてたんだ。君に、お城を一つ贈ったって」
「え?」
空が信じられない思いで聞いていると、雪は続けた。「アイセンティア西部の暁の古城。この城は、過去六百年間、誰も使っていなかったんだ。彼なら、新しい城を建てることもできたはずだけど、君は、数百年の歴史を持つ古城のほうを気に入るだろうって言ってたよ」
弦羽は、本当によく彼のことを分かっている。
綿菓子のように柔らかく、口の中でとろけるような幸福感に包まれながら、叙爵の儀式が始まった。
叙爵の儀式で、空は初めて、アイセンティアの国王と対面した。
国王の顔を見た瞬間、彼は、どうして弦羽が国王に最も愛されている息子なのか、理解した。
遠くから見たことのある三王子と比べても、国王陛下と弦羽はいっそうよく似ていた。顔立ちの輪郭も、目元も、ほとんど瓜二つだった。国王は老いた皺こそ見せていないが、その眼差しには、もう若くはないことが表れていた。
弦羽は父親と同じように、堅い意志の奥に、かすかな優しさをにじませていた。彼らの心は、けっして揺るがないほど堅く、それでいて、愛によってたやすく溶けてしまうほど柔らかい。国王陛下の姿の中に、空は、弦羽の未来の姿を見た気がした。そのときにはもう、空は彼のそばにいられないだろうし、弦羽も、もう空を必要としないだろう。
国王の傍らの王妃は、穏やかに微笑んでいた。その容貌にも老いは見えなかったが、漂う気品は、その見た目とは裏腹に、あどけない少女のものではなく、すでに成熟した女性のそれだった。弦羽が話してくれた、母についての小さな話の数々を思い出し、空は思わず、王妃に対して親しみを覚えた。純金のように輝く髪色は、この王国で最も高い身分の証だった。今に至るまで、アイセンティアの王位継承権は、純血の木エルフ王族の手にのみ握られている。政略結婚は必要な手段だった。エルフの長い寿命は、異国の勢力による侵食を防ぐ力になる。
こうした複雑な思惑を脇に置いて、この一家をただ純粋に眺めれば、彼らは、ごく普通の幸せな家族にすぎなかった。多くの平凡な家庭と同じように、慈愛に満ちた両親と、素直な子供たちがいるだけの。
最高権力者たちに見つめられ、空は不安を覚えながらも、彼らの眼差しの中に、弦羽がいつも放っている、あの温かさに似たものを感じ取り、それほど怖くはなかった。
これから先、彼はこの国全体の中で、王族、祭司、青血貴族に次ぐ地位の、紅血貴族となる。
今年、彼は十七歳になる。この世界に初めて足を踏み入れてから、まだ一年しか経っていない。
無数の視線を浴びながら、彼は足元をふらつかせるようにして立ち上がり、脇へと下がった。あわや躓きかけたときも、その場はしんと静まり返ったままで、囃し立てる声一つ上がらなかった。それが、かえって彼に、より大きな重圧を与えた。彼は、見守る人々の中に見慣れた姿をこっそり探して安心を得ることもできない。けれど、直接目には入らなくとも、今この瞬間、弦羽がきっと彼を見つめているのだろうと思うと、少しだけ安心できた。少なくとも、群衆の中に、自分を好意的な態度で見守ってくれている人間が、一人はいるのだから。それに彼のほかにも、ピエテ家の一員が静かに見守り、クダ家の大切な娘が、一家を代表して彼を支えてくれている。彼は決して、一人ではなかった。
地位が象徴するのは、権力だけではない。もっと深い意味を持つものだった。これから先、彼の人生は、もう二度と、これまでと同じようには戻れない。
だが、それは必ずしも、悪いことではないだろう。
長々と続く叙爵の儀式の中で、空が一番はっきりと聞き取った言葉は、たった一つだった。
「封号『日暉』子爵を賜る」
これより前に、弦羽は先に、「日暉」の意味を教えてくれていた。暉とは、最も強く輝く陽光ではない。柔らかく、目立たないけれど、安定していて温かい光のことだ。
国王は、白景空が、そういう存在になることを望んでいるのだ。
背筋を伸ばし、姿勢を正して、本物の貴族のように。空は、彼に授けられた栄誉と責任を、受け取った。
クランシュ家の冷ややかな視線の奥には、深い悪意が潜んでいた。その悪意は、これから先もずっと、彼につきまとうことになるだろう。それでも、彼が気にかけるべきなのは、自分を嫌う人間がどう思うかではなく、自分が大切に思う人たちがどう思うかだった。
外からの力の揺さぶりは避けられない。運命は、必ずしも、その人生の主が自分で決められるとは限らない。それなのに、自分はこれほど幸運にも、決定権を手に入れることができた。だからこそ、簡単に手放すわけにはいかない。
見ていてくれ。僕は、自分が望むやり方で、生きていく。
空は、心の中で、密かにそう宣言した。




