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トルコ石  作者: 葉櫻
十一、運命の輪
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11-1

マリリンと正式に護衛契約を結んだあと、マリリンは尋ねた。「わたしに任せる最初のお仕事は、何でしょう?」


空(そら)は少し考えてから言った。「僕の『家』を組み立ててほしいんだ。執事と、それを手伝ってくれる人たちが要る」


「使用人のことでしょうか?」


「もっと、本物の『家族』みたいな感じにしたいんだ。誰かが誰かより下だっていうのは、なしで」


「分かりました。彼らのことは『侍従』とお呼びになるといいでしょう。侍従は見つけやすいですが、執事は今のところ、最も急を要します」


空(そら)は言った。「とにかく、まずは執事を探すんだね?」


マリリンは言った。「はい。それについては、周りの貴族のご友人に聞いてみるのもいいかもしれません」


ちょうどいいことに、空(そら)が知る中で最も抜け目のない貴族、イナータから、彼に用があると連絡があった。


空(そら)に会うと、イナータはまず、爵位を得たことを祝い、それから、彼がオスワルを打ち破るために彼女を頼ったのは賢明な判断だったと言った。


彼女は言った。「わたしが初めて会った頃のあなたなら、『僕にはクダ家に出兵を頼む資格があるのかな』なんて言って、一人でずっと悩み続けてたでしょうね」


空(そら)は言った。「本当によく分かってるね」


イナータは笑って言った。「今日ここに来たのは、わたしに、ふさわしい執事の心当たりがないか聞きたいんでしょう」


「どうして分かったの!」


「王族の護衛が、あなたと護衛契約を結んだって聞いたわ。彼らはたいてい、主人に『家』を築いてほしいと思うもの。最初の一歩は、家の中をきちんと取り仕切れる執事を見つけることよ」


空(そら)は少しためらってから尋ねた。「王族の護衛がそう言うのは、王族の利益を、僕たちより優先して考えてるから、ということなのかな?」


イナータは言った。「確かに、彼らは王族の利益を優先するわ。でも、目指しているのは双方にとっての勝利よ」


しばらく世間話をしてから、イナータは言った。「いるわ。あなたと補い合えそうな人間を一人知ってる。その人の才能は、わたしが保証する。ただ、けっこう用心深い性格だから、あなたの家に加わってもらうには、先にその人の許可を得る必要があるかもしれない」


「どうすればいいの?」


「本人に、直接聞いてみたらいいわ」


そこで、空(そら)はその人物のもとを訪ねた。


相手の名前は、シューナといった。


目の前にいる、白髪交じりの老紳士は、淡々とした態度で、礼儀正しいが、どこか距離のある雰囲気だった。空(そら)はまだ正式に叙爵されていないので、彼は空(そら)を子爵とは呼ばず、「バイさん」と呼んだ。そして、イナータの話によれば、シューナはエルフの世界で働いてきて、早くから姓を名乗ることをやめており、わざわざその姓に触れるのはかえって失礼にあたるという。そのため、空(そら)も彼のことは、そのまま「シューナ」と呼ぶことにした。


シューナは案の定、空(そら)に言った。「あなたには、まだこんなに若いのに、新興貴族としての責任を背負えることを証明してもらう必要があります。執事の仕事は、あなたの衣食住を整えるだけではありません。あなたが求めているのは、『家』の執事です。それならまず、あなたが『家』を支えられることを証明してもらいましょう。一番簡単なところから始めます。執事が何をするか、ご存じですか?」


「侍従の管理?」


「それと、使用人もです」


空(そら)は言った。「みんな、侍従と呼びたいんだ」


シューナは眉をひそめて尋ねた。「なぜですか?」


「誰かが誰かより下だっていう感じが嫌なんだ。せっかく『家族』なんだから、それくらいは通していいだろう?」


空(そら)は、シューナがもっと頑固な反応をすると思っていたが、意外にも彼は言った。「分かりました。では、侍従は何人必要ですか?」


「マリリンの護衛がいれば、それで十分じゃないかな」


「城の掃除は、誰がするのですか?」


空(そら)は言った。「掃除は好きなんだ」


これは明らかに、高得点の答えではなかった。シューナはますます眉をひそめ、さらに尋ねた。「料理人は、何人必要ですか?」


「料理も好きだよ。実を言うと、掃除より好きなくらいだ」


「馬丁は、何人?」


「馬丁が要るの?」


シューナは筆を置いた。


空(そら)は気まずそうに言った。「僕、そんなに馬鹿かな?」


シューナは言った。「少なくとも、数を適当にでっち上げて、理想ばかり高くて手が伴わない、ということはありませんね」


長々と、説教のような話が続いたあと、シューナはようやく言った。「今、アクミリン家の旧領地の一つで、奇妙な現象が起きています。人間の村なので、対処はいっそう厄介です」


空(そら)はすぐに言った。「僕が行く」


出発前、マリリンが提案した。「まず、馬を一頭お選びになりませんか?鹿でもいいのですが、鹿に乗る人間は少ないので」


確かにそうだ。人間の男性貴族は、ほとんど誰もが自分の馬を持っている。


馬市に着くと、空(そら)はマリリンに尋ねた。「馬って、どうやって選べばいいの?」


マリリンは答えた。「速く走れる馬もいれば、長く走り続けられる馬、重い荷を運べる馬もいます。あなたの必要に合わせて選んでください」


空(そら)は言った。「速い馬がいいな。逃げなきゃいけないことが、よくあるから」


マリリンは可笑しそうに言った。「それでしたら、こちらの馬がお似合いかもしれません」


空(そら)が奥へと進んでいくと、一番端の馬房に、一頭だけ離れて立つ馬がいるのが目に入った。彼は馬商に尋ねた。「どうして、この子は他の馬と一緒にいないの?」


馬商は答えた。「この馬は片目が半分見えないんです。戦で傷を負いましてね。道は分かるし走れますけど、他の馬ほど機敏には動けません。値段も、もちろんずっと安くしてあります」


空(そら)は手を伸ばして、その馬の顔をそっと撫でた。馬はおとなしく、彼に触れさせていた。


空(そら)はマリリンと目を合わせた。マリリンは彼に微笑んだ。彼は言った。「この子がいい」


マリリンは言った。「あなたの動物との交流術があれば、あなたがこの子の目になってあげられます」


馬商は驚いて、何度も確認したあと、こう言った。「安いのはいいですが、大人(だんな)様には、健康な馬をお選びになったほうがよろしいかと」


結局、空(そら)はそれでも、その馬を買った。


彼はもう一度、馬の顔に手を伸ばした。


馬は耳をぴくりと動かしたが、避けようとはしなかった。


空(そら)は動物との交流術を使おうとしたが、この馬は、多くの軍馬と同じように、生まれてすぐから軍事訓練を受けてきたため、身についているのは服従であって、自分で考える力ではなく、指示以外の問いにはあまり応じられなかった。そのぶん、かえってすんなりと、空(そら)はこの馬の視界と繋がることができた。


そこにあったのは、ぼんやりとした薄暗がりだった。


空(そら)は馬を軽く叩いて言った。「……君が見てるのは、こんな世界なんだね。大丈夫。僕が、もっとたくさんの世界を見せてあげるから」


「本当に、お優しい方ですね」帰り道、マリリンが言った。


「見て見ぬふりはできないんだ」


「それが、あなたの一番の美点だと思います。大事なことにはいい加減にしないし、些細なことでも、助けが必要な相手には、できる限り手を差し伸べる」


「この子を選んだのは、本当に正しかったのかな?」


「客観的に見ても、動物との交流術に長けたあなたが、視力に問題のある馬と安定した繋がりを築けば、かえって、あなたの指示に従いやすくなります。選択を誤ってはいません」


「そこまで考えてたわけじゃないよ」


「はい。それこそが、あなたの美点です。この子に、名前をつけますか?」


もともと馬商は番号で呼んでいた。空(そら)は少し考えて言った。「灰色だから……ゴマにしようかな」


マリリンがくすりと笑うと、空(そら)は照れくさそうに言った。「ごめん、頭に浮かぶ名前が、全部食べ物なんだ」


マリリンは言った。「もう一度申し上げますが、それも全部、あなたの美点です」


馬を手に入れると、空(そら)とマリリンはすぐにその土地へ向かった。


現地の役人から状況を聞くと、一週間前、誰かが赤い宝石をあしらった、赤い漆塗りの革靴を一足持ち込んだという。その靴を履いた者は皆、狂ったように踊り出し、力尽きて死ぬまで止まらなくなる。呪いの品が一人に影響を与えるだけならまだしも、事はそれで終わらず、まるで伝染病のように、踊り出す者がどんどん増えていった。今に至るまで、役人たちはその赤い靴を見つけられずにいた。


空(そら)は尋ねた。「どうやって『伝染』するんですか?」


「今のところ原因は不明で、村全体をすでに封鎖しています。直接触れなければ感染しないはずですが、今はもう、誰も危険を冒そうとしません」


空(そら)は言った。「僕たちは王都から来ました。もっと優れた治療師が揃っているので、たとえ感染しても、なんとかできます」


村への立ち入りを許可されると、空(そら)はまず、両手を力任せに振り回し、足を踏み鳴らしている男に出くわした。見たところ、活気があって楽しそうだった。


空(そら)がその人の目と目を合わせた瞬間、全身に鳥肌が立った。


男の顔はくしゃくしゃに歪み、そこにあるのはまぎれもない苦痛と恐怖の表情だった。彼はかすれた声で言った。「頼む、もう踊りたくない」


その表情と言葉とはまるで裏腹に、男は全力で踊り続けていて、その動きの激しさは、靭帯が引き裂かれてしまうのではないかと心配になるほどだった。


一人の女性が手足を踊らせながら通りかかり、男は空(そら)をその女性へと押しつけた。女性も空(そら)を引っ張って一緒に踊らせようとした。顔じゅう涙まみれでありながら、それでも彼女は、軽やかなステップで踊り続けていた。何人かの子供たちが一斉に駆け寄ってきて、二人の周りを回りながら踊ったが、みな泣いていた。よく見ると、彼らの靴からはすでに血が滲み出ていた。


そこで空(そら)はようやく気づいた。女性は助けを求めなかったのではなく、助けを求める力すら残っていなかったのだ。


空(そら)は怒りを抑えて言った。「役人たちは、こんなふうに対処してきたんですか?祭司の一人も呼ばずに?先生が言っていました。呪いが特定の品物によって引き起こされているなら、その品物を見つけて、壊すか封印するかしなければならないって。今から探し始めて、まだ間に合いますか?」


「一つ方法があります。わたしはここに残って、人々の症状を和らげます。あなたが、その品物を探しに行ってください」


そうだ、弦羽(げんう)が、マリリンには治療師の資格もあると言っていた。空(そら)は頷いて言った。「大人しくするよ。危ないことはしない。危なくないと分かってるから、僕一人で行かせてくれるんだよね?」


マリリンは頷いて言った。「相手が本当に強大な力を持っているなら、そもそも呪いの品を使って、陰から人を傷つける必要などありません。わたしはここにいますから、必要になれば、いつでも戻ってきて頼ってください」


空(そら)がマリリンを好ましく思うところの一つは、彼女がたいてい、選択の権利を空(そら)に残してくれることだった。自分は後方支援として控え、まるで空(そら)の力を肯定してくれているかのように。彼ももう十七歳だ。イナータはこの年頃、社交界で誰もが注目する存在で、五大名門の代表として、さまざまな行事に出席していた。イナータにできるなら、自分にもできるはずだ。

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