竜の素材の加工
「やっぱり騒ぎになってるなあ……」
2日連続で白龍さんを召喚してしまったのだ。そりゃあ目撃者も増えてしまう。
中には動画での投稿もあり、白龍さんの姿が小さいながらも映っている。
『この距離でこのデカさって……テーブルマウンテンの頂上を覆えないか?』
『誰かがストームドラゴンと戦ってる時に増援として出現したのかな?』
『もしかしたら召喚とかかもしれないな。現に、しばらくしたらスーッと消えてるし』
……勘が鋭いなあ。召喚というのは間違っていない。召喚の方法が特殊なだけで。
今後は『間違って顕現しないように注意せねば』と言っていたし、正規の方法以外で虹を出しても大丈夫……だと思いたい。
『もし召喚だとしたら誰がこの龍を引き出したんだ?』
『ランカーなら動画を撮ってるだろうし、それがアップされないとなったら……誰かほかの人かな?』
『またたらしさんか』
『予期せぬ出来事が起きたら、たらしさんのせいにしておけばいいと思ってない? 私もそう思う』
『たらしさん割とやらかすからな。いい方向で』
『それはそう』
『たらしさんならこの龍もたらしてたりするんだろうか』
君たち。
いや、確かに俺たちのせいではあるから反論できないんだけどさ!
『ってかこれ、テーブルマウンテンの頂上に出現したんだったらストームドラゴンに聞けばいいんじゃない?』
『確かに』
『あ、それは聞いてみたけど濁して答えてくれなかったぞ』
『マジかよ』
『となると、ストームドラゴンも関わってないのか……?』
『謎が謎を呼ぶな……』
『なーぞなーのだー』
『出会った人、本当に情報求む……気になって夜しか眠れねえ!』
『普通じゃねーか!』
ランさんも口をつぐんでくれているんだな。これならランさん経由でバレることもなくて安心だ。
そう思っていたら……。
『……もしかしたらこの白い龍、ランさんのお母さんという可能性が微レ存?』
『……は?』
……は?
思わず、掲示板のレスと気持ちが一致してしまう。これが念レスというやつか。
『ランさんの所に現れたってことは、ランさんと関係性がある可能性は高いはず』
『そうかな……? そうかも……?』
『ランさんが口をつぐむのも肉親を知られたくないとかかもしれない。そして、誰も現場で目撃してないってことは、ただ単に親を召喚しただけという可能性がある』
『なる……ほど……?』
ツッコみたい。今すぐツッコミたい。
でもツッコむと俺がその場にいたのがバレるし、掲示板がざわついてしまうのでスルーしかない。
『つまりこの白き龍は私の義母になってくれるかもしれない龍だ!』
『おいコラ』
『いつ誰がランさんとの結婚を許可したよ』
……その後、一時はランさんのファンクラブ会員たちがざわついたものの、新情報は何も出ないまま時間が過ぎ、次第に話題は沈静化していった。
『特定の手順を踏んだら出るレアモンスターじゃないか?』という書き込みには少しヒヤヒヤしたが、虹との関連性には気付いてなかったのでセーフ。……と思いたい。
**********
「……さて、ランさんの牙や爪、鱗はどう加工したものか……」
ランさんに対してできる限りのことはやったので、ランさんにもらった素材各種を加工してみることにした。
アトラスさんは武器、アテナさんはアクセサリー、レックスさんは薬。
俺はどうしようかなあ……遊具には使えなさそうだし、アクセサリーかアイテムにできれば良さそうなんだけど……。
とりあえず、まずは加工できるか確かめてみないと。
俺は爪を取り出し、キングウルフさんの牙でそっとなぞってみる。すると、牙でなぞったところが切れているのを確認できた。これなら加工も容易そうだ。
同じように牙も試してみたが、やはりスパッと切れている。ランさんが『上位種の誰か1人でも連れてきたらランなんて敵わないじゃん……』と言っていた通りに、実力差が如実に表れているようだ。
……これって、キングウルフさんの牙を使えばランさんにダメージが入るってことじゃ……
「……うん、今まで何となくしまったままにしてたけど、これ壊れ武器だ」
となると、クイーンドリアードさんの枝を使った杖とかもぶっ壊れになる可能性があるわけで……。
でも、エルダートレントさんの枝を使った杖は装備制限があったし、クイーンドリアードさんの杖もおそらくそれ以上の装備制限がある可能性が高い。
……というか、まず加工できるかどうかが怪しいよね……。加工せずにそのまま魔石を付けただけでも杖判定されそうではあるけど。
さておき。
まずはランさんの素材を加工していこう。
最初にたくさんある鱗から。ライアたちが気に入っているので、鱗に小さな穴を開けて紐を通し、首からぶら下げられるように、ペンダントっぽくしてみようかな。
ただ、そうなると紐の強度が気になるから……。
俺はアテナさんにメッセージを送り、アラクネ……シーダちゃんの糸の在庫があるかを確認する。
一番強度を高くできるのは、今のところアラクネの糸だろうしね。
するとすぐに返信があり、ギルドで一緒に加工することになった。
どうやらアトラスさんやレックスさんも誘っているようで、一緒にやればいいアイデアが出るのではないかという考えのようだ。
確かに自分一人の考えだと限界があるしね。三人寄れば文殊の知恵ってやつだ。四人いるけど。
ということで、場所をギルドに移して作業を行うことにしたのだった。
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「それではコウさん、これがシーダちゃんの糸で作った紐になります。コウさんちの子の数だけ作っておきましたので、みんなにプレゼントしてあげてくださいね」
「ありがとうございます、助かります」
俺はアテナさんから紐を受け取ると、あらかじめ鱗に開けておいた穴に通していく。
一周させたら紐を結んで、穴の所に固定して……と。
「こんな感じかな……」
俺は出来上がったペンダントを手に取り、ライアたちの首にかけられるか想像する。
今回は驚かせたいので秘密にしているが、実際にかけたときにサイズが合わなかったらどうしよう……と思ってしまうのも確か。
そんな時、アテナさんが俺に声をかける。
「あ、それはライアちゃん用になりますね。それぞれ紐の長さを調整してるんですよ」
「え……?」
確かにアテナさんはみんなの採寸をしてたけど……そこから紐の長さの調節までやってくれてたのか?!
一本一本長さが違うなーとは思っていたけど、まさかこれほどとは……。
「ほかの紐なんですけど、これはフィーリアちゃん、これはスコールちゃん、これは……」
同じような長さなのに、一目見ただけで分かるなんて……これがアテナさん……!
「……さすがとしか言いようがないです」
「ふふっ、褒めてもらえると嬉しいですね。……それでは、みんなにいいものを作ってあげてくださいね」
「ありがとうございます。みんなに喜んでもらえるようにがんばります」
こうして、俺はせっせとペンダントづくりに励み……。
「よし、できあがったしみんなに配ってあげないと!」
紐の長さは調整されているけど、鱗の大きさは俺自身が調整しないといけないので時間はかかったが、いいものができあがったと思う。
鱗はキングウルフさんの牙で加工し、ライアなら葉っぱ、レイなら花のように、その子に合ったデザインにしている。……これで一目で誰のアクセサリーなのかも分かるしね。
「さて、他の人たちは……っと」
俺はペンダントをアイテムボックスに入れると、アテナさんたちの進捗を確認しに行った。
「あ、コウさん。私はこんなのを作ってみました」
「こ、これは……」
アテナさんは複数の鱗を重ね合わせ、立体的な花のブローチを作っていた。
こ、これが本職のアクセサリー……!
「す、凄すぎますね……立体的でとても綺麗です。しかし、どうやって重ね合わせて……?」
「実はこんな風にやったんです」
アテナさんはブローチを裏返すと、鱗の重なる部分を見せてくれた。
「これは……はめ込みで作っているんですか?」
「そうです。鱗のそれぞれに凹凸を作って、はめ込んで重ねているんです」
「削りの精度がかなり求められそうですね……」
少しでもサイズが違えばすぐに外れそうだし、これをキングウルフさんの牙でチマチマ削って作り出すのにはかなりの根気が必要だろう。
俺が穴を開けて紐を通しただけのペンダントを7人分作ってる間に、こんな凄まじいものを作り上げるなんて……アテナさん恐るべし!
「ふふふ、やってみると結構楽しいので、また鱗が貯まったら一緒にやってみませんか?」
「そうですね……俺も精工なものを作りたいのでお願いします、アテナ師匠」
「師匠ですか……いい響きですね、ふふっ」
俺もこういったものをライアたちに作ってあげたいし、吸収できる技術はどんどん吸収しないとね。
……さて、アトラスさんとレックスさんは……。
「あ、コウさん。実はドラゴンの爪や牙を削ろうとしたのですが、キングウルフさんの牙ではうまくいかなくて……」
レックスさんの所に来ると、どうやら作業が難航しているようだ。
確かにキングウルフさんの牙で切断はできても、削るのは難しいよね……。
「確かに牙で粉にするのは難しいですよねえ……」
「ほかにも、牙を大根おろしにする感じでドラゴンの鱗に擦ったんですけど、鱗の方が弱いらしくて鱗が傷まみれになっちゃったんですよね……」
なるほど、ランさんは攻撃>防御な感じなのか。ドラゴンらしいといえばドラゴンらしいか。
しかし、削れないとなると他に方法が……。
「あっ」
「どうされました?」
「いや……白龍さんの鱗を使えばいけるのでは?」
「あーっ!」
「ちょ、ちょっと声を抑えて……」
「す、すみません。白龍さんを知ってるのは僕たちだけですもんね。気を付けます」
今、ギルドメンバーはランさんの所に行っていて、ギルド内には俺たちだけしかいないからいいんだけど、いつ戻ってくるか分からないしね。
とりあえず手早く済ませようと、俺とレックスさんで牙と爪をそれぞれ白龍さんの鱗で擦ると、みるみるうちに削れて行く。これが古の龍の防御力……。
しかも、まったく鱗の方は傷が付いていない。ノーダメージってことなのか。
「……化け物じみた性能ですね」
「確かに……あ、それでは粉を回収しましょうか。俺は牙の粉をビンに詰めていきます」
「それでは僕は爪の方を……」
それぞれ粉を回収し終えると、俺はビンをレックスさんに渡す。これで実験ができそうかな。
「コウさん、ありがとうございました。それでは僕はこれで研究を始めますね」
「がんばってください。それでは俺はアトラスさんの方を……」
「コウ、ここにいたのか。武器ができたぜ」
俺が鍛冶場の方に行こうとすると、アトラスさんがやってくる。
手に持っているのは……刃に対して垂直なグリップがある短剣……カタールかな?
「ええと……もしかしてカタールですか?」
「おっ、よく知ってたな。爪がデカいもんだからクローにするかどうか迷ったんだけどな。たまにはこういうのが造りたくてよ」
「分かります、普段造らないものを造るのって楽しいですよね」
いつも同じものだとマンネリしちゃうからね。しょうがないよね。
ただ、性能はやはり高いらしく、強力な風属性の補正と攻撃力を併せ持ち、地属性のドラゴンにはかなり有利に戦いを進められそうな感じだ。地属性のドラゴンなんて強いだろうから相手にしたくはないけど。
「ただ防御面が不安だよな。腕丸出しだからカウンターが怖いしさ」
「それなら、側面に鱗を貼り付けてみるのはどうです?」
「良さそうだな。問題はどうやって固定するかだが……側面に溝を掘った板を貼り付けて、鱗を削ってはめ込む感じにするか?」
「いい感じですね。鱗のおかげで見た目的にも綺麗になりますし……」
「確かに。よし、いっちょやってみっか!」
……とりあえず、これで一段落かな?
俺はみんなに声を掛けると、ライアたちに造ったものをプレゼントするためにホームに戻るのだった。
**********
「わー……キレー! ありがとーコウー!」
「コウさん、わたしこのペンダント、大事にしますね……!」
「ふぇー!」
「ボクにもあるなんて、コウは優しいなぁ。風の魔力が宿ってるし、なんか落ち着くかもー」
……そういえば属性相性を全く考慮していなかったのだが、ライアたちも普通に付けられるし、問題はないのかな……?
「見る角度で色が変わるの楽しいにゃ!」
「がう!」
「らー!」
角度によって見え方が変わるのって楽しいよね。
みんな、自分の好きな色が見えるためにはどの角度がいいのか、って楽しんでいるみたいだし、造って良かったなと改めて思う。
……そういえば、見え方が変わるのって万華鏡もそうだったな。
ランさんの鱗を砕いて万華鏡の素材にしたら、キラキラしててかなり楽しそうかも?
うちの子たちだけでなく、ランさんにも気に入ってもらえるかもしれないし、今度作り方を調べておこう。
こうして、次のアイテムの着想を得つつ、平和な時間は過ぎていくのだった。




