ストームドラゴン②
『ざぁこ、ざぁこ♡ ざこ人間♡ 身体能力よわよわ♡』
今日はストームドラゴンことランさんの最近の様子はどうなんだろうと思い、ランさんと戦ったプレイヤーの動画を見ているのだが……。
「……ランさん、煽りに煽るなあ……誰だよこんなにメスガキ成分多くしたの……」
「ねーねー、もしかして、コウはこういうのが好きなの?」
「えっ……? コウさん、わたしもこんな感じにした方がいいんですか?」
「いやいやいや、ライアやレイはそのままがかわいいからね? 変に変わらなくていいからね?」
「きゅっ……」
「か、かわ……」
ライアとレイの顔が赤くなる。咄嗟のこととはいえ、ちょっと恥ずかしいこと言ったか俺?
「さ、さておき……ランさん、強すぎるから俺たちじゃ戦うのは無理だよなあ。だから俺たちは楽しんでもらう方向に行きたいんだけど、ライアやレイは良い案はない?」
とりあえず話題を変えなければ。
遊具を楽しんでくれているうちの子たちなら、何か良い案は出ないものだろうか。
「んー……でも、ライアたちとは大きさが違い過ぎるから、ブランコは無理だし、シーソーもできないし……」
「的当て……もあの場所ではできないですよね。こっちまで的当てをやりに来たら、町が大騒ぎになりそうですし」
そうだよなあ……ランさんが急にこちらに来たら、どったんばったん大騒ぎになりそうだし。
……そういえば、ランさんのレベルってどれぐらいなんだろう? クヴァーナ砂漠の次だから、セクメトさんより高くて、キングウルフさんたち上位種よりはだいぶ低いぐらいか……? 上位種はホント人外レベルだから……。
その中でもシルフィーさんはキングウルフさんより上、マーメイドクイーンさんはアルラウネさんより上というのが分かっているぐらいか。そしてレベルが分かっているのはクイーンドリアードさんの3000以上……。
それなら俺、アトラスさん、アテナさん、レックスさんの4人でマーメイドクイーンさんを召喚すれば勝てそうだけど、これは強すぎるから正攻法で戦っている人から見たらズルみたいなものだし、ダメージランキングもある今回は封印しておこう。……どうにもならなくなったら、イベント終了前に奥の手ということで使うのもアリかもしれないけど。
「とりあえず、トランプを持っていってみんなでやってみる? スコールみたいに風で操ればランさんもできそうだし」
「あ、やりたいやりたーい!」
「わたしもやってみたい……ですけど、急に攻撃されるなどは無いでしょうか……?」
「それは大丈夫。戦う素振りを見せなければ襲われないから」
「そ、それなら安心です……動画で見る限り、怖い人だと思ってたので……」
そうなんだよなあ。口調はともかく、ドラゴンだから見た目は普通に厳ついんだよね。女の子だけど。
……あ、女の子ならリボンとかのアクセサリーなら喜ばれるかな? でも、それはアテナさんがもうやってるかもしれないし……。とりあえず、メッセージを送ってみようかな。
「……あ、返信がきた。どれどれ……」
『アクセサリー、私も考えてました! でも、硬い鱗で覆われているので、どこに何を付けようか迷っていたんですよね。これからそちらに行きますので、相談しましょう』
……と、メッセージを読み終わると同時にアテナさんからホームへの入場許可を求められたので、即応じることに。
「……ということで来ちゃいました」
「行動力の化身」
「ランさんに似合いそうなものって何だと思います?」
「そうですね……やっぱりリボンとかですかね。角に付ける……というか巻く? 感じにすればいいのかなと」
「なるほど。それに、ランという名前通り、蘭のコサージュみたいなものを付けるのもいいかもしれませんね」
「あ、確かに。名付けの時に説明したので、それも喜んでくれそうです」
「それなら私がコサージュを作りますので、コウさんはリボンを作ってもらえますか?」
「分かりました。それでは準備……」
……ん? なんだか視線が突き刺さるような……。
俺は思わず振り向くと、そこにはライアとレイの姿が。
「ドラゴンだけずるーい! ライアも欲しいー!」
「わ、わたしもです……」
ああ、もしかしてランさんに嫉妬してるのか……?
それならライアとレイにも……。
「ふぇ!」
「ねーねー、ボクにはないのー?」
「にゃーも、にゃーもー」
ああ、騒ぎを聞きつけてどんどん増える……。
結局、俺とアテナさんで全員分のアクセサリーを造ることで納得してもらうことになるのだった。
**********
「あ、コウじゃなーい。今日は何か楽しませてくれるのー?」
「そうですね、でもその前にプレゼントがありまして……」
「プレゼント? ふーん、どんなのー?」
「アテナさん、お願いします」
「はい! それではこちらを……」
アテナさんがアイテムボックスから取り出したのは、ドラゴンサイズの大きなリボン。
ランさんはストームドラゴンで、風属性のため全身が緑色をしている。今回のリボンの色はその補色となる赤色だ。
更に、そのリボンの中心部には蘭のコサージュを付けている。
「ランさん、こちらを角に付けたいので少々よろしいですか?」
「はいはーい」
ランさんはアテナさんの言葉に応え、頭をこちらに差し出してくれる。
ランさんの角は頭の左右にそれぞれ1本ずつ生えており、今回は右側の方にリボンを付けることにした。
……頭を差し出してくれたとはいえ、それでも身長が足りないため、無機物操作で空を飛びながら付けることになる。
悪戦苦闘しながら、なんとか角にリボンを固定させ、一息つくことに。
「スキルを使わないと飛べないなんて、ざぁこ♡ ……でも、ありがと」
「どういたしまして! ……それから、ちょっとお願いがあるんですけど……」
「なぁに?」
「い、一緒に記念撮影をしたいと思いまして……」
「撮影?」
「あ、動画みたいに動くものではなく、そこだけ切り出した……止まったものですね」
「ふぅん、よく分かんないけど、別にいーよ」
こうして、アテナさんとランさんで記念撮影をすることに。
サイズが違い過ぎるので写真内に収めるのは苦労したけど、いい感じに撮れたと思う。
「こんな感じになりますね」
「ふーん、いいじゃない。あ、これが今回のリボンかぁ」
「そうです。ちょっと小さかったですけど、かわいくておしゃれになったと自負してます」
「そっかぁ……かわいくておしゃれ……あ、そういえばこのリボンのここに付いてるのはなぁに?」
「それは蘭のコサージュですね」
「あ! 名前を付けてくれた時に言ってた花! そっかぁ……そこまで考えてくれるんだぁ……」
何となくだけど、若干ランさんの顔が赤くなっているような……照れてるんだろうか?
俺の気のせいかもしれないけど。
「それじゃ、今回のお礼はどうしよっかなぁ……」
「あ、ランさん、実は今回は遊ぶものも持ってきていまして」
「遊ぶもの?」
「はい、こういうものなんですけど……」
俺はアイテムボックスからトランプを取り出す。
ランさんからしたら小さすぎるものだろうけど……。
「これなぁに?」
「トランプといって、いろいろな遊び方があるものなんです。実際に俺たちがやりながら説明していきますね」
「ふーん、とりあえずやってみよっかなぁ」
「それではポーカーからやってみましょうか」
**********
「ざぁこ♡ 運よわよわ♡」
「ま、まさか勝ち越しできないなんて……」
ランさん、初めてのはずなのにめちゃくちゃ強い……。
運が強いのかそれとも戦略が強いのか。俺たち全員を合わせても5勝15敗と大きく負け越している。
……そういえばこのゲームはステータスに運があるんだけど、ランさんは高レベルだから俺たちよりも運がやたら高い可能性がある。
つまり、レベル差による運の差もあり、そこで差がついている可能性もある……?
それならバンシーの花冠とか、運が上がる装備を身に付ければ差を埋められるかな……? ちょっとズルいことはズルいけど。
「んー、でも楽しめたからいっかぁ♡ それじゃお礼を持ってきてあげるねー」
ランさんはそう言うと飛んで巣へと戻っていった。
「やたら強かったですね……」
「ビギナーズラックというのもあるかもしれませんが、単純にレベル差による運の差もあるかもしれませんね」
「でもライアは楽しかったー!」
「わわわ、わたしも楽しかったです……。最初は凄く怖い人って思ってたのですが……」
このちょっとおどおどしている子は、アテナさんのところのアルラウネのティアちゃん。
俺がギルドメンバーにリュウグウノツカイの魔石を提供して進化した子の一人だ。
泣き虫っぽいからティアという名前らしいけど、本当に憶病だったとは……。
「ティアちゃん、最初は慌ててて、トランプを落としてたりしたもんねー」
「でも、そこで優しくしてくれて……いい人だなって分かってからは怖くなくなりました」
「そうそう、いい人だったー」
ライアはティアちゃんにもグイグイいくなあ……これがコミュ強……。
でも、ティアちゃんに嫌がられない程度の距離感は保ってるし、これもライアの強みなのかな。
「お待たせー。……んー、何を話してたの?」
「ランちゃんがすっごくいい人って話ー」
「……ぷっ。あはは、ランがいい人って……ライアもコウに似て面白い子ー♡」
……そして、それはランさんにも発揮されている。
「そういえば、ランさんは一人称はあたしだったような……」
「あ、気づいたー? 名前が気に入ったから、覚えられるように名前にしたのー」
「なるほど、そういえばまだあまり知られてないですよね」
掲示板でもまだストームドラゴンと呼ばれていることが多いが、たまにランという名前が混じるのは、戦った人たちが書き込んだものなのだろう。
それなら本人が動画で宣言するのもいいかもしれない
「それなら、動画で自分の名前を宣伝してみますか?」
「へー、良い案だー。それじゃ早速やろうかなー。……その前に、お礼を渡してから、ね」
こういうところをキッチリしているあたり、ライアの言うとおりに良い子なのかもしれない。行動はメスガキだけど。
……さておき、今回のお礼は……。
「はい、それじゃこれあげるー」
「これは……鱗ですか?」
「うん、時々鱗が生え変わる時に落ちるんだけど、なんとなく貯めてたのー。コウたちならそれで何か造るんでしょ?」
「そうですね、ありがとうございます」
「わー、キラキラしてて綺麗ー! コウー、ライアにも一個ちょうだい!」
「そうだね、レイたちも欲しがるかもしれないし、帰ってから分けようね」
「うん!」
鱗は俺とアテナさんそれぞれに15個ずつあり、みんなに分けても充分に加工できる数が残る。
……しかし、リボンとトランプで遊んだだけでこの報酬って……真面目に戦闘している人たちに申し訳ない気もする……。
「でもぉ……それを加工できるかなぁ?」
「え……?」
「それじゃ試しにやってみて」
「は、はい……」
俺は試しにハンマーを取り出し、鱗を叩いてみる。
しかし、カーンという鈍い音はするものの、鱗には傷一つ付かない。
「あはっ♡ 力よわよわ♡」
「う、嘘でしょ……」
ランさんの身体から落ちているということは、この鱗は劣化しているということ。
それなのに傷一つ付かないのは……力の差があり過ぎるということか……。
「……いや、でももしかしたら……」
俺はハンマーをしまうと、今度はキングウルフさんの牙を取り出す。
そして鱗をすーっとなぞると……。
「あ、切れた」
「……はぁ?! な、なんでそんなもので……っていうか、それ何?!」
「キングウルフさんの牙ですけど……」
「キングウルフ……?! なんでそんなものをコウが持ってるのぉ?!」
あ、この驚きようは……。
うん、ランさんは上位種よりレベルが低いのは確定かな。
つまり、マーメイドクイーンさんに頼れば、確実にランさんをわからせられる……。
「まあいろいろありまして……倒すとかはできないんですけど、本人から頂きました」
「凄いよ! キングウルフ、毛がモフモフで気持ちいいの!」
「な、なんでそんな友達感覚みたいな……え? え? コウって実はつよつよなの……?」
……その後、俺はランさんにキングウルフさんの牙を手に入れるまでの経緯を説明することになるのだった……。




