スキル伝授②
「……これで全員終わりですわね」
後日、俺たちのギルドメンバー全員がノッカーたちから採掘のためのスキルを伝授してもらった。
ちなみにスキルはこんな感じだ。
【鉱石探知 (アクティブスキル):壁をノックして、反響する音で鉱石の有無を探知できる。消費MP80】
思ったより消費MPが重い。バイスさんはめちゃくちゃ使ってたので軽いと思ったけど、あれはバイスさんのMP消費軽減のスキルがあってこそ、だったんだな……。
鉱石を掘るための時間は短縮できるけど、消費MPをどうやって捻出するかが課題になるな。
「おお……消費が重いが時短になるから助かるな」
「バイスさんみたいに消費MPを軽減できるスキルがあればいいんですけどね。私も無機物操作のスキルの消費を軽くできれば、もっと戦闘にも役立てられるのですが……」
「装備とかで軽減できるものがあればいいんですけどね」
「消費MPが1になるやつとかな」
「それめちゃくちゃ強い恐竜倒さないといけないやつじゃないですか……」
「ははは……確かに」
と、懐かしい話をしながら全員が笑う。
これで全員が鉱石掘りをしやすくなったので、ものづくりギルドとしてはかなり前進しただろう。
「……それにしてもノッカーさんたちかわいいですねえ……お洋服とか作りたくなっちゃいます」
「お洋服……!」
アテナさんの言葉にお嬢様ノッカーの耳がピクリと動く。あ、お嬢様だけあって服って言葉には敏感なんだ。
「あ、あの! どのようなお洋服を作られますの?!」
「ええと……こんな感じですね」
アテナさんはアイテムボックスから服を何着か取り出すと、広げてノッカーに見せる。
するとノッカーはアテナさんの服のかわいさを気に入ったのか、アテナさんの目の前に羽で飛び上がる。
「あのあの! わたくしのお洋服を作っていただきたいのですが……!」
「ふふ、それならお嬢様っぽい服がいいですかね」
「お嬢様……? どうしてですの?」
あっ、もしかしてこれ、お嬢様口調だって知らずに使ってるな?
種族全体がこの口調ではないから、誰かに教えられたのだろうか。
「あ、なんでもありません。それでは採寸をしたいのですが……後から大丈夫ですか?」
「もちろんですわ! なんなら今ここでこれからやっても……」
「そ、それはダメです! 他の人たちが見てますし……」
「……! そ、そうでしたわ……わ、わたくしとしたことが……」
意外と思い込んだら一直線な子なのかもしれない……。一応、羞恥心はあるようなので安心した。
「ところでコウさんにもお願いがあるのですが、よろしいですか?」
「俺にできることでしたら」
「実は定期的にフェアリーシロップが欲しいのですが……お返しは鉱石でしかできませんが……」
「それなら大丈夫です。……というか、その条件なら他のギルドメンバーが出しそうなものですが……」
と言いながら、俺はギルドメンバーの方をちらっと見る。
……うん、やっぱり提供する気満々だね。ノッカーのいる場所は教えられないけど、代わりにフェアリーシロップを提供することならできるかな。
「……大丈夫そうです」
「ありがたいですわ! それでは、お近づきのしるしに……」
お嬢様ノッカーはそう言うと、何もない空間から熱砂の鉱石を複数取り出した。へー、モンスターでもアイテムボックス持ちの子がいるんだ。……さすがに妖精サイズの子が鉱石を持ち歩くのは大変だろうし、運営の優しさだろうか。
「ありがとうございます、それではまた後日フェアリーシロップをお持ちしますね。……今度はノッカーさんサイズの瓶で……」
「ふふ、そうですわね」
こうして、俺たちはお嬢様ノッカーたちからスキルを習得できたのだった。
**********
「それではご指導お願いできますか?」
「もちろんですわ!」
俺はギルドメンバーが帰ったあと、ノームの村にある鉱脈でお嬢様ノッカーにスキルのレクチャーを受けている。
本当にノックするだけでいいみたいなのだが、反響の違いがどのようなものなのか知りたかったのだ。
「では、まずわたくしがやりますわね」
お嬢様ノッカーが俺の目の前で壁をコンコンと叩く。そのノック音は低く、鈍い。
「ここの先には無いようですわね。それでは次……」
今度はさっきの壁から5メートルほど離れたところでノックをする。
すると、今度は少しだけ高い音が返ってくる。
「ふむふむ。ここを少し掘れば鉱石が出ますわね」
「分かりました。それでは掘ってみます」
「らー!」
俺とブラウンはツルハシで指定された壁を掘り進める。
すると、すぐ近くから熱砂の鉱石を複数個掘り出すことに成功した。
「おお……つまり、ノックした時の音が高いほど、近くに鉱石が埋まっているということですね」
「その通りですわ。スキルを使い続けると進化して、より遠くの鉱脈が分かるようになるので、たくさん使ってくださいな」
「分かりました、ありがとうございます」
レベル表記がないから固定だと思っていたけど、使うと進化するんだな。スキルの進化もあるということは……実は無駄と思っていたスキルが進化して壊れスキルになったりするんじゃ……?
ライアの使う切削みたいに、使い込むと別スキルが手に入るものと同じパターンだけど、進化するパターンもあるんだな。
「それではノッカーさんもMPが減ってしまったと思いますので、これをどうぞ」
「これは……?」
「EXマジックポーションです。鉱石探知1回でMPを80消費するので、200回復すれば元通りですしね」
「いえ、わたくしは1回20で使えますわよ?」
「えっ」
……伝授スキルって、もしかして消費MPが高くなるものもあるのか?
それとも、使い続けて進化することにより、消費MPが下がる可能性も……?
「そういえばバイスさんもそんなことを言ってましたわねえ。不思議なこともあるものですわ」
「そうですね……。あ、そんなに消費はしていませんが、よろしければEXマジックポーションをお試しください。意外とおいしいんですよ」
「……いただきますわ」
おいしいという単語に耳が反応した。やっぱりこの子はおいしいものが好きなんだな。
まあおいしいものが嫌いな人なんていません! たぶん。
俺はチェンジプラントで作ったコップにEXマジックポーションを注いで渡す。
「それではどうぞ」
「ありがとうございますわ。……んっ……確かにフェアリーシロップほどではないものの、口の中に甘さが広がって、幸せな気持ちになれますわね」
「実は素材にフェアリーシロップを使っているんですよ。だから元々のマジックポーションの苦さが消えて、甘くなっているんです」
「なるほど、これならいくらでも飲めそうですわ」
気持ちは分かるけど、甘いものを採りすぎたら健康に悪いし、ほどほどがいいと思う。
……とは思ったけど、それを言うのも野暮かな。普通ならそんなに手に入らないものだろうし。
「そういえば小分けにしましたが……回復効果はどうでしたか?」
「そうですわね……20ほど回復していましたわ」
「なるほど、1/10ぐらいの量だったので、効果も1/10になったみたいですね」
あの説明文、全部飲むの前提の回復量だったんだな。まあ、こういう風に途中で残すことはまずないだろうし。
そういえばフルーツプラントの果物を分割して食べた場合、効果は最初に食べたものだけだったけど、こうやって小分けに食べたり飲んだりする時の挙動も考えられてるのかな。細かい……。
「それでは完全回復まであと20ですね。追加でお注ぎします」
「あら、気が利きますわね。ふふ、やっぱりコウさんはお優しいですわね。わたくしの見込み通りですわ」
「お褒め頂きありがとうございます。それでは……」
俺は瓶を傾けてコップにEXマジックポーションを注ぐ。
その後、残った分は他のノッカーに試飲してもらったのだが、この味が気に入ったノッカーもいて、フェアリーシロップの代わりにEXマジックポーションが欲しいというノッカーまで出ることになるのだった。
**********
「さて、それじゃEXポーションが作れるか試してみるかな」
エファにはしばらくノッカーに渡すためのフェアリーシロップを作ってもらっていたけど、鉱石探知スキルを習得できたのでようやく桜の花びらの蜜をもとに作ったフェアリーシロップを量産できるようになった。
今回はいろいろ試してみたいので複数個のフェアリーシロップが貯まるのを待っていたのだ。
「まずは説明文通り、普通にポーションを作る際に入れてみるかな」
俺はポーションを作る工程の途中でフェアリーシロップを投入し、かき混ぜていく。
すると……。
【EXポーション:ランクC、飲むことでHPが200回復する。EXはエクストラの略。エクストラポーションと表記しても短めだがEXポーション表記なのは、EXマジックポーションと合わせたいから。でもどちらもEXで始まるから間違って使いそう。気を付けて!】
うわあ、あっさりできちゃった……。
まあ、そもそもHP回復のフェアリーシロップが珍しいから、あっさりできた方が良いという運営判断なんだろうけど。
そして、次はハイポーションを作る過程で投入してみる。今回手伝ってもらうのはライアだ。
そういえば初めてのハイポーションはライアと作ったんだったなあ……懐かしい。
……おっと、感傷に浸っている場合ではない。俺は素材を準備すると、魔法水に薬草を2つ投入してかき混ぜていく。更にその最中にフェアリーシロップを入れて……と。
「それじゃライア、魔力を籠めていこう」
「うん!」
俺とライアは息を合わせて魔力を魔法水に注いでいく。
……そして、できあがったのは……。
【EXポーションβ:ランクB、飲むことでHPが350回復する。くっ……あれだけポーションの過程で入れてねって説明したのに、まさかハイポーションの過程で入れることに気付くとは……。この天邪鬼さんめ】
いや、気になったからやっただけなんですけどね?!
というか、アイテム名の最後にβが付くのか……そのうちγとかΔとかεとか出てくるのかなあ。それよりも……αはどこいった?
……まあ、普通のやつにαって付けたらβとかγがあると仄めかしているようなものなので、αは無しにしたんだろうけどね。あ、ちなみに無印もβもどちらも特許取得できたので、一応は別アイテム扱いのようだ。
さておき、ハイポーションのレシピに加えたらEXポーションβになるってことは、ハイマジックポーションのレシピに加えたら、EXマジックポーションもβが作れるのでは……?
機会があればハイマジックポーションのレシピも研究したいところだ。
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その後、EXポーションβを量産したり、ノッカーたちから大量にもらった熱砂の鉱石で火属性の武器を造ったり、着々とストームドラゴン……ランさんとの戦闘準備が整っていく。
また、火水の鉱石でアトラスさんに武器を造ってもらったが、どうやら一律で『地-105、水+30、火+75』の補正が付くようだ。
数値を見るに、おそらく『地-105、水+105』と『水-75、火+75』が相殺されてこうなっているのだろう。
-の補正の高さに目が行くが、複数属性の補正値が上がるのは面白いな。ロックバードみたいに複数属性を持つモンスターがこれから出てくるかもしれないし、複数属性の弱点を同時に突けたら大ダメージみたいなロマンがある。
防具を造っても同じ補正だろうから、地属性攻撃がないエリアなら複数属性を軽減できるのでいい感じかもしれない。
ただ、初見で地属性を使うか使わないか分からないモンスター……例えば魔女などは苦手だから、ピーキーな性能であることは確かだろう。
とりあえず、火属性の補正値が熱砂の鉱石よりも高いので、キヴァナ峡谷では活躍できそうだ。
こうして着々と準備は進んで行くのだが、問題が一つ。
「……ランさんが喜びそうな遊具や遊びが思いつかない……」
そう、問題とは俺たちに課されたもう一つの課題……ランさんを楽しませるもの。
このまま楽しませられないままだときっと、「ざぁこ♡ 想像力よわよわ♡」とか罵られんだろうなあ……。
今度、遊びの本とかを見ていいものがないか探そう……。
こうして、俺はランさんを楽しませるものを探し始めるのだった……。




