鉱脈探し
「……さて、次は属性装備の量産……かな」
ストームドラゴン……ランさんの名付けという(俺たちの中では)一大イベントが無事に終わり、ようやくいつも通りの活動に戻れるようになった。
属性装備の量産には属性鉱石が必要になるのだが、クォルトゥス鉱山で採掘できる属性鉱石よりも、クヴァーナ砂漠で採掘できる熱砂の鉱石を武器に、キヴァナ峡谷で採掘できる烈風の鉱石を防具にそれぞれ使う方がより効果が高くなる。
そのため、鉱脈を見つける必要があるのだが……。
「今のところ、大きな鉱脈は見つかってないんだよな」
砂漠のモンスターたちから熱砂の鉱石の掘れる場所を教えてもらったり、キヴァナ峡谷で探索して宝箱などから入手したりで少数なら手に入れることはできるのだが、いかんせん大きな鉱脈は見つかっていない。
バイスさんはノッカーから鉱脈を見つけるスキルを教えてもらっているので、できれば俺たちもノッカーから伝授してもらいたいところなのだが、肝心のノッカーがどこにいるか分からない。
バイスさんなら何か知っているだろうか。
「スキル持ちのバイスさんに協力を仰いでもいいんだけど、バイスさんは地属性だからキヴァナ峡谷のモンスターとは相性が悪いんだよな……」
ストームドラゴンの鱗があるから襲われないけど、もし鱗の効果範囲がパーティー内で、バイスさんがゲスト扱いでバイスさんだけ攻撃されるという可能性も無きにしも非ず。そうなったら申し訳ないしね……。
とりあえず一度バイスさんに会いに行った方がよさそうだ。
「……よし、それじゃ準備をして……」
「コウー!」
「……ライア?」
「コウ、こっちきてー! 綺麗な花が咲いてるのー!」
「花が……?」
俺は畑の方に駆け出すと、そこには立派な桜の木があった。
……これ、もしかして謎の種から成長したやつ……? 成長促進とかがあるにしても、成長速すぎでしょ……まあ、ファンタジーの世界だからそういうものなんだろうけど。
「ね、ね、綺麗でしょ?」
「まさか桜がホームに生えるとは……でも、確かに綺麗だね」
「この木、桜って言うの? ピンク色で綺麗なの好きー!」
ライアが舞い散る桜の花を追いかけるのを見て、気持ちが和む。どれだけの期間花をつけているのか分からないけど、一回はお花見をしたいな。
「それじゃ、今日のお出かけの帰りにみんなの好きな魔石を買ってお花見する?」
「したいしたい!」
「ふぇ!」
「コウさん、私もしたいです!」
他のみんなも賛成のようで、今日の帰りにエインズの町でそれぞれの大好物の魔石を買うことにした。
あとは料理も買って帰ろうかな。団子とかあれば食べたいなあ……。
そんなことを考えながら準備をして、バイスさんのもとへ向かうのだった。
**********
「──なるほど、ノッカーのスキルが必要ということか」
「はい。熱砂の鉱石や烈風の鉱石が大量に手に入ればキヴァナ峡谷の攻略が楽になると思いまして」
「オレが行ければいいんだが、いかんせんまだまだ忙しくてな……オレにスキルを教えてくれたノッカーは旅をしていると聞いたんで、どこかの鉱脈かオレみたいな鉱石を扱う仕事をしているヤツのところにいるかもな」
「なるほど、ありがとうございます」
鉱脈はクォルトゥス鉱山にあるけど、あそこは人間というか運営の手が入り過ぎてるからな……。
可能性があるとすれば……クヴァーナ砂漠のブラウニーさんが何か知ってるかどうか、だろうか。
「もし会えたら礼を言っておいてくれ。それと……熱砂の鉱石と烈風の鉱石が余ったら融通してくれると助かるんだが……」
「分かりました。どこかでノッカーに会えたら伝えておきます。鉱石は……しばらくはこちらで使う量が多くなりますが、余ったら納品させて頂きます」
「おう、頼んだぜ。……あー、早く人造ゴーレム試作二号機を造りてえ……」
「が、がんばってください」
……そういえば、バイスさんのゴーレムは頑丈だったな。
火属性のゴーレムを造ればランさんに対抗できるだろうか? 大きく造れば体格差もなくなるし、ダメージがより通りやすくなるかも……。ダメージにサイズ差補正があるかどうか分からないけど。
ただ、ゴーレムを動かすのに途轍もないMPが必要になるからなあ……バイスさんはスキルのおかげで少ないMPで動かせるからできる芸当であって……。この辺を何とかできればいいんだけど。
……まあ、まずは鉱石を手に入れないことには机上の空論だな。ノッカーを探しに行こう。
「──それで、ここに来たということか」
「はい、ブラウニーさんなら何かご存知かと思いまして……」
「ふむ……儂もノッカーについては聞いたことがあるな……ここの近くにも鉱脈があるから、そこにたびたび来ていると上のノームが言っていたな」
「なるほど……その鉱脈の場所は教えて頂くことは可能でしょうか?」
こういうのは知られてはいけない場所もあるから、もしダメだったら潔く諦めよう。
……と思っていたのだが。
「ああ、詳しくは上のノームに聞くといい」
「ありがとうございます」
「……ま、お前さんなら教えてもいいだろうと思っただけだ。そう無茶なことはしないだろうしな」
これは……信頼されていると思ってもいいのかな。鉱石を採りつくしたりはしないようにしなきゃね。
「重ね重ねありがとうございます。……そして、もう1つ相談があるのですが……」
「ふむ、それは何だ?」
「実は──」
俺はトレントの島に棲んでいるペンギンたちに水属性の無機物操作を教えてあげたいということを話した。今は旅に出ているが、もしそれでも習得できなかった場合、ブラウニーさんが教えてあげることはできないか……というのも付け加えて。
「もちろんお礼はさせて頂きます。……これになるのですが」
「おいおいおい……なんだこの大きさの虹色の鉱石は……以前のよりも数倍大きいぞ……」
ブラウニーさんがランさんの掘りあてた虹色の鉱石を見て目を丸くする。
反応を見るに、やはりこの大きさはとてつもなく貴重なようだ。
「……分かった、もし習得できていなかった場合、儂がそちらに向かおう」
「よろしいのですか?」
「時間があれば技術を磨きたいのは確かだがな……儂が技術を磨くのは自己満足もあるが、モンスターの役に立ちたいからだ。技術という形でなくても、そのペンギンの夢を叶えるものなら協力したい」
……あれ? 人間が嫌いなだけでブラウニーさんって実は結構優しい人なんだな……職人気質で気難しい人だと思ってたから認識を改めないと。
何にせよ、これでカイザーさんたちの問題が解決できそうで何よりだ。
「ありがとうございます、カイザーさんたちが帰ってきたら話を伺ってきます」
「ああ。またいつでも来るがいい」
こうして俺はノームさんの所に戻り、鉱脈へと案内してもらうことにしたのだった。
**********
「──ここが鉱脈ですか」
「はい。時々ノッカーの方々がいらっしゃいます」
……ん? 方々?
てっきり旅をしているノッカーは1人だと思っていたけど、複数存在するのか……。
「よろしければ鉱石を掘りながらお待ちいただければ、そのうち姿を現されると思います」
「なるほど、鉱石掘りのお手伝いをされる方ですからね。それでは鉱石を掘ってみます」
「お気をつけて。それでは私は村に戻ります。……今日こそはトランプで勝ちたいと思いますので……」
……すっかりノームさんも遊びにハマったなあ……今まで遊ぶものがなかった分、ドハマりするのも頷けるが……。
さて、それでは鉱石を掘りながら待ってみよう。
「それじゃブラウン、鉱石を掘るのを手伝ってもらえる?」
「ら!」
俺はブラウン用の小さなツルハシを渡すと、坑道へと入って行った。
**********
「うーん……出ることは出るけど、それほど大きな鉱石はないなあ……」
「らー……」
時々小さな鉱石やクズ鉱石は出るものの、熱砂の鉱石は全然掘り当てられない。
「あら、こんな所に人間さんがいるなんて……珍しいですわね」
鉱石をアイテムボックスに入れていると、突然声を掛けられる。
もしかして……と思い振り向くと、そこには10センチほどの小さな妖精が足元に立っていた。
「あなたはもしかして……」
「ふふ、聞いて驚きなさい! このわたくし……ノッカーが手伝ってあげますわよ!」
やはり彼女はノッカーのようだ。しかしこの喋り方はいったい……ノッカーは鉱夫のアイドル的な存在だから、運営的にはアイドルみたいな喋り方ってこと……? これじゃアイドルというよりよくあるテンプレお嬢様だけど。なお、周りにセバスチャンはいない。
「ありがとうございます、それではよろしくお願いします」
「よろしくってよ! そうねぇ……」
ノッカーは俺の目の前の壁をコンコンと叩く。これがノッカーが鉱脈を探すときの仕草で、名前の由来ともなっているものだ。
場所を少しずつ変えて数か所コンコンと叩くのを繰り返すと、とある場所で動きを止める。
「……ここですわね。掘ってみるといいですわ」
「ありがとうございます。……お礼は先の方がよろしいですか?」
「いえ、掘り当ててからにしてくださいな。万が一出なかったら無駄骨ですから。ま、そんな万が一なんてあり得ないのですけどね!」
うーん、やっぱり運営は何か勘違いをしてないだろうか。まあキャラが濃いのはいいこと(?)だ。
ちなみにノッカーへのお礼は伝承的には食べ物が基本だ。
……さて、俺は言われた場所を掘り進めてみると、なんと複数個の熱砂の鉱石を掘りあてることができた。本当にノッカー様々だ。
「ありがとうございます。それではこちらお礼のフェアリーシロップになります」
「フェアリーシロップ……? 初めて聞くものですわね」
俺は食べやすいようにとフェアリーシロップをお皿の上に出し、更にチェンジプラントを使って小さな木のスプーンを作ってノッカーに手渡す。
「あら、気が利きますわね……では頂きますわ……」
ノッカーがスプーンでフェアリーシロップを掬って口に持っていく。そして香りを嗅ぎ、そのまま口の中へと流し込んでいく。
「……あぁ……美味ですわ……。口の中に広がる芳醇な香り……今までこの味を知らなかった自分が恥ずかしいですわ……」
そこまで?! 確かにクイーンドリアードさんたちも絶賛してたけど……。
「ええと……あなたは……」
「コウと申します。こちらはブラウニーのブラウンです」
「ら!」
ブラウンは俺と一緒にペコリと頭を下げる。
「そう、コウさんですのね。では、もう少しお手伝いしますので、よろしければもっとフェアリーシロップを……」
「んー? 何かいい匂いがするんだなー」
「あーっ、一人だけいいものもらってずるーい! 私もーっ!」
「ちょ、ちょっとあなたたち! コウさんはわたくしが最初に声をかけましたのよ!」
「え、ええと……フェアリーシロップはまだまだありますので、よろしければ全員どうぞ……」
フェアリーシロップをめぐってのケンカが勃発しそうなので先手を打つことに。
俺の言葉を聞くとノッカーたちは言い争いを止め、大人しくなる。
とりあえず人数分のお皿とスプーンを用意して、ノッカーたちに話を聞くことに。
「俺は以前バイスさんという方からノッカーについて聞いたことがあるのですが……あなたたちの中にバイスさんを知っている方はいらっしゃいますか?」
「あら、それはわたくしですわね」
……まさかのご本人様の登場である。しかも最初に出会ったノッカーが、だ。
まあ、トレントの島は海を渡らないといけないから行くのは難しいだろうし、キヴァナ峡谷はノッカーたちは属性不利だからここが一番可能性があったわけではある。……俺の知っている範囲内では、だけど。
「バイスさんがノッカーさんにお礼を言っていましたよ」
「あら、そうですの?」
「はい。スキルのおかげでものづくりを楽しんでいました」
あのゴーレムが造れたのも、ノッカーのスキルのおかげだろうしね。あれだけ大きいとかなりの数の鉱石を使うだろうし。
「……ところで俺もそのスキルを伝授して頂くことは可能でしょうか?」
「そうですわねえ……それなりの対価が欲しいところですわね」
「なるほど……魔石1か月分とか、フェアリーシロップ1瓶分とかだとちょっとアレですか……ね……?」
俺は対価として少なすぎると言われると思ってノッカーの方を見たが、ノッカーは涎を垂らしている。……意外といけそうだな?
「……はっ」
涎に気付いたノッカーが我に返る。
「そそそ、そうですわね……2瓶分なら考えなくもないですわね……」
「分かりました、それでは貯まりましたらお持ちします」
「お、お待ちしておりますわ」
「ねーねー、私も欲しいー! あなたの他にスキル欲しい人いないのー?」
「んー……たぶんいると思いますが……」
「じゃあ紹介してー!」
このノームの村周辺についてはまだ俺しか知らない所なんだよな。
人間嫌いのブラウニーさんのこともあるし、あまり人を連れてくるのは避けたいところだが……って、よく考えたらノッカーたちに出てきてもらえばいいのか。
「それでは相談してみます。次に来るときにはお答えできると思います」
「待ってるよ! 絶対だからね! 噓ついたら鉱石100個飲ませるんだから!」
……もしかして針千本飲ますみたいな言い回しか? 鉱石100個て。
何にせよ、これで鉱石についての問題は解決できそうになるのだった。




