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VRMMOでものづくり始めました  作者: SAK


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ブラウニー上位種

「コウさん! 現実(こちら)ではお久しぶりです!」

「お久しぶりです、アテナさん。それではこちらをお渡ししますね」


 俺は読んでいた本を鞄にしまうと、鞄からライアのフィギュアを取り出す。

 以前アテナさんからこちらのゲーセンに残っていないか尋ねられて、最後の1個を取っておいたものだ。


「ありがとうございます! これでライアちゃんの着せ替えが捗ります!」

「そこまでして頂けるなら、ライアも喜んでいると思いますよ」

「コウさんにそう思って頂けるなら幸いです。ところで……」


 アテナさんは一瞬俺から目を逸らし、目を閉じてから決心したように鞄から何かを取り出した。

 それは……。


「こ、これ……よ、よろしければお受け取りください……!」

「これは……」


 俺は布を広げると、小さなワンピースが姿を現した。

 もしかして、これは……。


「フィギュアのライアに着せられるワンピース……ですか?」

「は、はい! その……頂いてばかりだと申し訳ないので、何かお返しできないかと思いまして……。それで、思いついたのがライアちゃんの服だったんです」

「ありがとうございます、大事に使わせて頂きますね」

「よ、よかったぁ……」


 アテナさんはホッとした表情で胸をなでおろす。

 もし受け取ってもらえなかったら……と思っていたのだろうか。

 ……こんなに心の詰まったものを受け取らないなんて、絶対にあり得ないのにね。


「……あ」

「ど、どうしました?」

「ひ、広げたはいいんですけど……その、女の子の服の畳み方が分からなくて……」

「あ、それでしたらここをこうしてですね……」


 アテナさんは慣れた手つきで服を畳んでいく。

 ライアのフィギュアサイズだから小さくて難しいはずのに、丁寧に、しかも正確に。

 思わず「おお……」と、感嘆の声を漏らしてしまう。


「はい、それではこれをライアちゃんに届けてあげてください」

「分かりました、きっとライアも喜ぶと思います」

「……はい! ……ところで、さっき読まれていた本は……ものづくりの本ですか?」

「そうですね、現実でも勉強しておいた方が、(ワールド)こう(クリエイターズ)でも、アテナさんのようにいいものを作れるのでは、と思いまして」


 アテナさんの服は向こうでも人気だ。それは、現実でもそういう技術を持っているからだろう。

 俺もできるだけものづくりの技術を身に着けたいと思い、最近は本を漁っている。


「なるほど、コウさんは向上心の塊なんですね。私も見習わないと、です。……そういえば、コウさんは現実でもものづくりをされるんですか?」

「いえ、実は現実だとやっていませんね……」


 俺はアパート住まいのため、日曜大工的なことはできないこと、ものづくりをするためにワールドクリエイターズを始めたことをアテナさんに伝える。


「なるほど……それでしたら……」

「はい」

「…………えっと、折り紙とかペーパークラフトみたいに、音を立てないものづくりはいかがでしょうか?」

「なるほど、それならライアたちに教えて一緒に楽しむこともできますね。ご助言、ありがとうございます」


 最初少し言い淀んでいたのが若干気になったが、良い提案だと思う。

 俺は帰ったらネットで調べてライアたちに教えようと思い、アテナさんにお礼を言う。


 ……実際、今の俺は折り紙なんて紙飛行機ぐらいしか折れないからなあ……レパートリーを増やしていけば、ライアたちだけでなく向こうのこどもたちにも教えてあげられるし、いろいろ役に立ちそうだ。


「こちらこそライアちゃんのフィギュア、ありがとうございました。それでは、また向こうでお会いしましょうね」

「はい、それでは……と言いたいところなのですが、この時間の女性の一人歩きは危ないと思うので、よろしければ近場のバス停や駅までお送りしますよ」

「ふふ、やっぱりコウさんは優しい人ですね。それではお言葉に甘えさせて頂きます」


 会社帰りに会うことにしていたので、もう夜の7時を回っている。

 この町は治安が悪いというほどではないのだけど、やはり心配になってしまうので申し出たのだが、快く承諾してくれた。



 その後、俺はアテナさんを駅まで送り届けて帰宅するのだった。




**********




「……さて、それじゃノームさんやブラウニーさんに会いに行こうかな」

「コウー、お出かけー? ライアもついていってもいーい?」

「もちろん。砂漠までみんなと散歩したいから道中は他の子たちに代わってもらうけど、大丈夫?」

「うん! それじゃ、準備してくるね!」

「今日は砂漠に行くにゃ? それならにゃーもついていくにゃ」


 ライアがお出かけの準備をするためにみんなの所に行くと同時に、フィーリアがこちらに来る。

 やはり砂漠出身だけあって、砂漠のことが気になるのだろう。


「今回はノームさんのところに行くんだけど……フィーリアは他に行きたいところがある?」

「んー……セクメトがいなくにゃって、あの辺がどうなってるか気になるにゃ」

「なるほど、それじゃあ村の訪問が終わったらピラミッド周辺まで行ってみようか」

「ありがとうにゃ!」


 こうして、俺たちはまずノームさんのいる村に向かうことにするのだった。




「お久しぶりですコウさん。お待ちしておりました」

「ええと、待っていたというのは……」

「「「むー!」」」


 ノームたちが木片を持って集まってくる。

 それを見て俺は広場の方へと目をやると、ブランコと滑り台が使用回数を使い切られ、がれきの山になっていた。……なるほど、新しいものが欲しい、と。


「お礼はさせて頂きますので、よろしければ新しいものを頂ければと思いまして……」

「もちろんです。……そして、よろしければ作製方法をお教えしますので、ノームさんたちも造られてみてはいかがでしょうか? 今のものに気になる点はあると思いますので……」

「分かりました。私たち(ノーム)とブラウニーで協力して造りあげてみます。お手すきの際にご教授ください」

「はい。……それでは先に、がれきの撤去と、新しいものを設置しますね」

「お手数をおかけします……」


 俺はがれきの山をアイテムボックスに収納し、アイテムボックスから新しい遊具を設置する。

 ……とすぐに、ノームたちが群がってくる。


「コウのものはここでも大人気なのにゃあ……」

「もっちろん! コウの作るものは楽しいんだもん! ねー、コウー」

「ライアにそう言ってもらえると自信がつくなあ。……あ、ノームさん、ブラウニーさんにお渡ししたいものがあるので、取り次いで頂きたいのですが……」


 そうそう、本来の目的を忘れかけていた。今回ここにきたのは各種の属性鉱石と、虹色の鉱石を渡すためだ。

 ブラウニーさんのおかげでブラウンが進化できたことも報告しなくちゃ。


「分かりました、それでは少々お待ちください」

「よろしくお願いします」




「……お待たせしました、よろしければブラウニーの方と一緒に来て欲しいとのことです」

「分かりました。それじゃライア、ブラウンに代わってくれる?」

「うん!」


 俺はペットモンスターをライアからブラウンに変更して、ブラウニーさんの所へと行くことにした。

 果たしてどんな人なんだろうか……人間嫌いだから、昔人間といざこざがあったんだろうけど……。


 俺は粗相がないようにと気を引き締めてブラウニーさんに会おうと思うのだった。




**********




「……ほう、お前さんがコウか」

「はい。本日はお時間を頂き、ありがとうございます」

「……まあ、そんなに堅苦しくしなくていい。先日の鉱石は助かった、礼を言う」

「いえ、こちらこそおかげさまでブラウンが進化できました、ありがとうございます」

「らー!」


 ブラウンが俺に合わせてペコリと頭を下げる。自分だけ未進化だったのを脱却できたので、ブラウンもこの人に感謝しているようだ。

 ブラウニーさんは普通のブラウニーとは違い、人と同じぐらいの大きさで、しかも筋骨隆々。ものづくりの中でも鍛冶屋といった特に激しい肉体労働をする人の体つきに近い。

 この姿をブラウンは尊敬の目で見ているから、ブラウンもこういう感じになりたいのかな……?


「……だが、さすがにあの量は儂の方がもらい過ぎだ。それで、今回お前さんに来てもらったのは、スキルを教えたいからだな。これで等価とさせてもらいたい」

「よろしいのですか? それではこちらの方が頂き過ぎのような気がしますが……」

「これだけの数を自分で集めようと思ったら時間がかかる。その時間で儂は技術を磨きたいからな」


 おお、正に職人って感じだ。

 確かに属性鉱石を集めようと思ったら結構な時間とお金とアイテムがかかる。

 それらを総合的に見て妥当と思っているのだろう。


「それではお言葉に甘えて、スキルを頂いてもよろしいでしょうか?」

「ああ。そうだな……無機物操作の風属性以外なら無属性を含めて教えられるが……どれがいい?」

「えっ?!」


 ブラウニーって地属性なのにそれ以外の属性が使えるの?!

 しかも、無機物操作はノームが使うものなのに、ブラウニーさんまで使えるなんて……。


「どうした?」

「いえ、無機物操作といえばノームさんたちと思っていたので……それに、地属性の方が風以外の属性を使うというのにも驚きまして……」

「儂も昔は旅をして様々なモンスターに教えてもらっただけだ。それを今回はお前さんに伝授する、それだけだ」

「なるほど……それでは無機物操作の無属性をお願いできますか?」

「よかろう、では手を出せ」


 俺は手をブラウニーさんの方に差し出す。


 今回は無属性にしたのは、一番扱いやすいと思ったからだ。

 属性付きの場合、有利もあるが不利もある。無属性ならどんな状況でも対応できるのが強みだ。

 器用貧乏と言われたら辛い所ではあるが……俺としては無属性が一番だと思っている。


「……よし」


 ブラウニーさんは俺と手を合わせると、ブラウニーさんの魔力が流れ込んでくる。

 そして、魔力の流れが止まり、ブラウニーさんが手を離す。


「これでいいだろう。無機物操作の無属性が使えるようになっているはずだ」

「ありがとうございます、大事に使わせて頂きます」

「ああ。……それで、そっちのブラウンとやらにもスキルを渡しておこう」

「よろしいのですか?」

「……以前ここに来た時に、お前さんの役に立ちたいからいろいろ教えて欲しい、と言われたのでな」

「ブラウンがそんなことを……」

「……まあそんなところだ。さて、ブラウンよ、手を出せ」

「らー!」


 そして、同じようにブラウンもブラウニーさんからスキルを伝授された。

 どんなスキルを伝授されたのだろうか……? 気になるけど、今すぐにステータスを見るのは失礼かな。


「ら!」

「ああ、存分に活躍してくるがいい」

「ありがとうございました、ブラウニーさん」

「……ふん、ただの鉱石の対価だ。そこまで感謝されるものでもない」

「いえ、貴重なスキルを教えて頂いたのですから、感謝しかないです。……ところで、本日は追加の鉱石をお持ちしたのですが……」

「ほう……」


 ブラウニーさんが興味があるといった感じの目で俺の方を見る。

 そこで、俺はアイテムボックスから虹色の鉱石を取り出す。


「こ、これは……!」

「とある場所で採掘された虹色の鉱石です。よろしければブラウニーさんに、と思いまして……」

「滅多に出回らない虹色の鉱石をか……?!」

「はい、ブラウンがお世話になったのでぜひ受け取って頂ければと」

「……さすがにこれは釣り合わん。コウ、手を出せ」

「は、はい……」


 俺は恐る恐る手を出すと、ブラウニーさんは数回に渡って魔力を流し込んでくる。


「……これで風以外の無機物操作のスキルが使えるようになったはずだ」

「ええっ?! よ、よろしいのですか……?」

「ああ、それだけ貴重ということだ。……コウ、お前ならいつここに来ても構わん。今回の礼を用意しておく」

「ええと……俺としてはスキルだけでも充分過ぎるほどなのですが……」

「いや、さすがにこれだけというのは儂自身が許さん。必ずまた来い」

「は、はい。それではありがとうございました」


 ……そ、そんなに貴重だったのか……。

 しかし、人間嫌いにしては普通に話してくれたな……気に入られた、とかなのだろうか。

 何にせよ、いろいろなものを頂いたし、またこちらもお礼を持ってこよう。


 ちなみに、他の人間がここに来てもいいか尋ねたら難色を示されたので、しばらくは他の人たちの進化はお預けかな……なお、他に上位種のブラウニーがいるかどうかは不明らしい。



 そして、その後はノームたちに滑り台やブランコのつくり方を伝えてから、フィーリアの要望に応えて砂漠を回ることにするのだった。

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― 新着の感想 ―
ブラウニーさんはツンデレなのかね?… まあ、人嫌いのブラウニーさんすらも誑してしまうと…罪作りよねコウ
やっぱりたらしたー。 人間嫌いは直っていないけれど、コウは気に入られたようですね。 ブラウニーさんの予想を超えてきたというのもあるだろうけど、気に入ったというのが根底にあると思う。 そしてマメな現実の…
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