35話 乙女心と言うものなのです
やはり恋愛(異世界)に戻しました。だってやっぱラブストーリーだし。それから少し疲れました。毎日更新していましたが、土日は休むことにします。
「そろそろ出発するか?」
朝食を済ませると、フォーリオ様はさっさと後片付けを始めました。食後は、ついデザートが欲しくなってしまいますが、わたくしは狩人の妻になることを心に決めたのですから、いつまでも王都で暮らしていた時のようなことを言ってる場合ではございません。
フォーリオ様は出発の準備が終わった後も、焚火の痕跡を消したり、昨晩、わたくしが踏み倒した草叢までも、何もなかったかのように整え、その後も周囲を確認しておりました。
「そこまでする必要がありますの?」
「盗賊がここまで追ってこないとは限らないだろ?」
フォーリオ様はわたくしの為にしてくれているのだと判り、心が温かくなりました。
そして、いよいよ山小屋へ向けて出発です。
まずは浅瀬を通って対岸へ渡りました。フォーリオ様は歩きながらも、いろいろ説明をしてくれます。
狩人は、ユレイブの街に近い、森の入口から、クスノキから南西に徒歩で半日ほど行った場所にある湿地帯までの森の南側を『浅い森』と呼び、それより北側、山岳地帯を中心とした森を『深い森』と呼ぶのだそうです。
『浅い森』はほぼ平坦で、魔物よりも普通の動物の方が多く生息しているとのことで、あまり強い魔物はいないようです。ユレイブの狩人の殆どが『浅い森』を狩場にしているとのことです。
逆に『深い森』は険しい山道が大半で、クスノキ辺りから上流は、ずっと登りになっているとのことでした。また『深い森』には、知恵のある魔物がテリトリーを構えているらしく、彼らなりの社会を築いているとの話です。
さらにその奥には、魔獣地帯があり、強力な魔物が弱肉強食の世界を繰り広げているとのことでした。山岳地帯には多くの竜種が巣くっているとも……。山小屋はまだまだその先なのだそうです。
フォーリオ様は抑揚もつけず淡々とお話をされるので、何ともないように聞こえますが、あまり穏やかな話ではありませんね。
ただ、わたくしの頭に『髪喰い虫』を見つけた時の方が怖がっていらっしゃいましたので、却って、その飄々とした感じが頼もしくも思えます。お陰で、無暗に怯えることもありませんでした。
お話では、『深い森』の入口とも言えるこの付近はまだまだ緩やかだとのことですが、わたくし、先程から、すでに息があがっておりました。
「ちょっと休むか?」
わたくしは、体力を使い果たしてしまい、その場に座り込んでしまいましたが、「おい、不用意に座るな!」と、また怒鳴られてしまいました。わたくしは泣きそうになってしまいましたが、すぐに立ち上がりました。
「疲れたんなら、水でも飲んで来い。水浴びしても構わないぞ。それから靴は置いてけ」
なぜ靴を脱ぐ必要があるのか、理解出来ませんでしたが、問い質す気力もなく、言われた通りに靴を脱いで、川へ向かいました。髪喰い虫などというわけの判らない虫に、寄生されてしまっているというのに、まだまだわたくしは、油断ならない森の中にいるという自覚が足りていないようです。反省です。
水浴びは今朝したばかりでしたが、汗だくになっておりましたので、布を解いて川の中へ入りました。一枚の布を折って結んで思考錯誤しながら作った服でした。けれど仕方がありません。フォーリオ様は――アンタ、汗クサいな――などと平気で言いそうな人です。そんなことを言われてしまったら、わたくしは立ち直れなくなってしまうでしょう。
フォーリオ様がこちらを向いていないことを確認して、さっとワキも洗います。
本当は、頭を水につけたくはありませんでした。洗髪はとても清々しいのですが、メイドがいないと後が大変なのです。
わたくしの髪型は、いわゆる貴族令嬢が好んでよくしているクルクル巻き髪縦ロールヘアーではございません。一度だけ挑戦したことがあるのですが、残念ながらあまり似合いませんでした。
メイドの一人が「お嬢様は丸顔ですからね~」などと零しておりましたが、それほど丸くはありませんよ。それからはずっと真っ直ぐの髪をそのまま降ろしたストレートヘアーにしています。ある程度切り揃えていますので、巻き髪の方よりは楽なのですが、それでもウエスト辺りまでの長さはあります。
乾くまでの時間を考えると、濡れたまま紐で縛るしかありませんが、やはり随分痛んでいるように思います。
もちろんこの髪も、山小屋へ到着したら、すべて剃ってしまうことは重々承知しているのですが、一時であっても、フォーリオ様に綺麗だと思われたいと考えてしまうのは、いけないことでしょうか。これが乙女心と言うものなのです。
ただやはり頭の中に虫がいるかもしれないと思うと、無性に気になってしまい、結局、川に頭をつけてしまいました。
水浴びが終わって、もう一度布を服に仕立て上げようとしましたが……、無理でした。足元まで隠そうとしたら、大して立派でもないお胸が半分跳び出してしまいました。何度かやり直してみますが、どこかで齟齬が出てしまいます。どうやら今朝の服は奇跡的に出来たもののようです。
あまりお待たせするわけにも参りませんので、結局、普通に体に巻き付けることにしました。
無念です。
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