22話 父侯爵との会話 ~その1
書くつもりのなかった裏の設定を晒してますが、大丈夫なのだろうか……。続けれるのだろうか……、粗が出そうで不安です。
「まあ、いろいろと訳ありなんだが、おまえは勇者リオ様を知っているな」
父侯爵は仕切り直しとばかりにソファーに深く座り直した。話が長くなるということだろう。
「はい。もちろん存じ上げておりますわ。遠い遠い国からフランチェスカ王国にお越しになって、魔王を打倒され、世界に平和を齎された大英雄です。この国に、いや世界に、知らぬ人はいないのではないでしょうか?」
ロザンナは、当然と言わんばかりに答える。
「そうだ。その勇者リオ様だが、3年前、前王太子妃が身罷られた前年に亡くなられている」
「えっ! 亡くなられていたのですか?」
ロザンナは、勇者リオが死んでいたことに驚いたというよりも、幼い頃から絵本や、小説、また演劇などで慣れ親しんだ勇者に対してリアリティーがなかったのだ。実在する人物であったことを改めて認識したという驚きであった。
「ただな……。ドラゴンさえ倒してしまうあの方が、死んだというのも信じがたい話なのだが、報告によるとロイヤルディアのツノが喉に刺さって即死だったそうだ」と、首を傾げ「その報告をしたのは、御子息のフォーリオ様だということだ」と続けた。
「フォーリオ様……ですか。勇者様の御子息とは言え、丁重に扱われるのですね?」
勇者リオはともかくとして、父侯爵が、その息子にまで敬称をつけるのが、ロザンナには不思議に思えた。
「おまえは生まれる前だったから知らないだろうが、この国は、いや世界は地獄だった。日常のように魔族に襲われ、人は虫けらのように殺され、建物は玩具のように壊された。せっかく育てた作物も奪うでも食うでもなく、ただ面白半分に滅茶苦茶にされた。あのままなら、この国は、人類は、滅亡するしかなかった。そんな時に現れたのがリオ様だ。当初は、黒髪黒目と見慣れない面立ちであり、いつも優しげに微笑まれていたこともあって、すこし頼りなく思われていたが、聖剣を携えたリオ様は、騎士団が総掛りで一匹を撃退するのが精々だった魔族を、たったお一人で圧倒されたのだ」
「それは、子供の頃から読んでいる本や、演劇などで、良く知っておりますが……」
父侯爵が、勇者リオの活躍をつぶさに細大漏らさず語り尽くす勢いだったので、ロザンナは失礼を承知で止めた。
「あ、ああ、そうだな。すまん、ついな。私は昔から勇者リオ様の大ファンなのだ。実は一度、助けられたこともあるんだぞ、凄いだろ! サインを貰おうと思ったんだが、ご身分を隠しておられたのでな、空気が読める私は敢えて知らない振りをして会話をしたのだ。あの時は緊張して何を話したのかさっぱり憶えていない。ポーっとしたまま、気づいたら王都にいた。それに実はな、先月無理矢理入れた視察があっただろ? 実は、あの街は勇者リオ様と大魔導士エリス様が出逢った場所なんだぞ! その時の記録や、初めて聞くエピソードなんかもあって。いやー、有意義な視察だった。勇者リオ様がその街の宿で記帳したという実物の宿帳も見たぞ。お土産で買って来た――「出来れば、要点だけをお話頂ければと」――あ、ああ、そうだな。すまん、ついな。それでな、私の勇者リオ様コレクションのことなんだが」
「それは、此度の、わたくしの縁談に関係があるのでしょうか?」
ロザンナは父侯爵に、氷のような冷たい視線を向ける。
「……ないな。えっと、勇者の息子とは言え、格下である辺境伯に、大臣であり侯爵である私が、どうして敬称までつけるのか? って話だったな。わかってる、わかってるって」
「……」
「勇者リオ様一行が、この大陸にある国々を巡って魔族を撃破して人々を救い、最終的には魔族の親玉であった魔王を討伐され、この大陸に平和が齎されたわけだが、その後、ヒト、ドワーフ、エルフ、獣人など、大陸中の国と言う国の王が、ここフランチェスコ王国に集まって会議がおこなわれたのだ。勇者リオ様はこの国に所属していたからな。議長国は我が国だ」
「……また、お話が反れておりませんか?」
「いや大丈夫だ……、たぶん。で、そこでの話し合いの結果、満場一致で 勇者リオ様を大陸を統べる王、皇帝として奉ろうということになったのだ。だから、私の中では勇者リオ様は皇帝であり、フィーリオ様は皇太子なのだ。だから敬うのは当然だ」
父侯爵はフンス!と鼻を鳴らす。
「よろしいでしょうか? ――なぜ敬称を付けたのか?――という話をするだけで、これだけ話が長くなってしまうのなら、わたくしの縁談の話になるのは、いつ頃のことになるでしょうか? 日は跨いだりはしませんよね? もう判ってしまいましたので、言ってしまいますが、わたくしの縁談の御相手は、勇者リオ様の御子息であるフォーリオ様ですね?」
「なっ、なぜ……」
父侯爵は続けなかったが、――なぜ、先に言ってしまうのだ! 空気が読めないのか! だから、あんなバカ王子に断罪などされるのだ!――という言葉をグッと飲み込んだ。そして「……ハァ~~」と溜息をつく。これ以上はもう話せる気分ではないと言った風に、ソファーにぐったりと背を預け、しらけきった興ざめな顔をした。
「ふぅ~」
仕方ないとばかりに、今度は、ロザンナが溜息をついた。
「では、わたくしが引継ぎますが、勇者リオ様はそれをお断りになられた。リオ様の望みは『僕に褒美をくれると言うのなら、自由をくれないだろうか?』でしたわよね。絵本にも載ってる有名なセリフでございます。そして勇者リオ様は、人々を救う旅に出られたのですよね。大陸を跨いで活躍される様々な冒険譚は、たくさんの絵本や演劇になっておりますわ」
ロザリオが話を進めると、死んでいた侯爵が息を吹き返した。
「ふふふ、いや、それが違うのだ。ロザリオよ。そこは、所詮、絵本や演劇だ。本物の勇者リオ様は旅になど出ていない! 亡くなられるまで、ずっとこの国にいたのだ」
「な、なんですってー」
とロザンナは大袈裟に驚いた。その方が父の機嫌も良くなるだろうと思ったからだ。
少しでも評価されたいです。泣きそうです。よろしくお願いしますm(__)m




