第1370話 ニャアと鳴くネズミ
たくさんの穀物が貯蔵してある蔵のなか。
陽だまりが落ちる場所に積まれた米俵に、チュウ、チュウ、チュウと群がって、食い荒らしている不届き者たち。
けれども、ひと声、ニャア、と聞こえてきたならば、あっという間に散り散りになって、チュウ、チュウ、チュウ、と泣き叫び、脇目もふらずに逃げていく。
すっかり閑散とした蔵に、駈けこんできたネズミが一匹。
迫る危険に気づかなかった、どんくさいやつかと思いきや、そのネズミの口からこぼれた声は、なんとニャアという響き。
ニャアと鳴く狡賢いネズミは、まんまと競争相手たちを追い払って、山盛り米粒にご満悦。
さっそくたらふく食おうとすると、チュウと今度こそ逃げ遅れたらしい間抜けなやつの声が聞こえた。
離れるどころか、ずんずん、チュウ、チュウ、近づいてくる。
危機感がないのか、はたまた、ニャアを知らない無知なのか。
けれども、チュウ、チュウ、チュウ、チュウ、鳴く声は、どことなく艶っぽく、ちょっぴり興味が湧いてくる。
ニャア、ではなくて、チュウ、と返して、一緒に食事をしないかと誘う。
返事はチュウ。
喜び勇んで迎えにいくと、待っていたのは鋭い牙。
チュウと鳴く狡賢いネコは、まんまと馬鹿なネズミを騙くらかして、ご満悦にて陽だまりに、どっかり丸まり眠りについた。




