第1368話 透明なごはん
食の事情が急激に変わりはじめていた。
新発売の”透明の素”は無色透明無味無臭の調味料。
料理に混ぜれば、あら不思議。
みるみる透明になってしまう。
まるでからっぽのお皿に見えても、ちゃーんと料理が盛られてるというわけだ。
おいしいごはんの法則は味と匂いと見た目のバランスだなんて言われていたが、近頃はちょっと違っている。
味がいいのは、辛かったり、しょっぱかったり、甘かったり、旨味があること。
匂いがいいのは、香ばしかったり、さわやかだったり、はたまたとろけるような感じだったり。
それらは、最終的にある程度なら取り繕えるが、見た目となると難しい。
下ごしらえの段階から、完成形を計算して、焼いて焦がしたり、煮て崩れたり、なんてことがないようにしないといけないし、そもそも元となる食材が、どんな姿をしているかという問題だってあるのだから。
特に子供は、気味の悪さを感じてしまうと、口に入れたがらないものだ。
幼さ故の、気まぐれな好き嫌いに翻弄される親御さんは数知れず。
そんなお悩みを簡単に解決できるのが”透明の素”というわけ。
味はいい、匂いもいい、けれども見た目がダメという料理でも、これひとつで、たちまち極上の一品に早変わり。
時代が変わってからは、大人も例外ではなくなってきている。
目をつぶりたくなるような、いやな見た目の料理たち。
それもこれも、獣肉や野菜が不作になり、ゲテモノぞろいの食材たちを食わねばならなくなったせい。
しかし、パリッと揚げたりして、触感さえごまかしてあれば、透明の翅やら目玉なんてのは、案外おいしく食べられるものだ。




