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井ぴエの毎日ショートショート  作者: 井ぴエetc


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1350/1383

第1350話 進化の歩み


 人類はついぞ光速の壁を超えることあたわず、がんじがらめに距離は時間にしばられ続けていた。

 このままでは順調だった宇宙進出の道は閉ざされ、さらなる進化へ向けた歩みは停滞ていたいせざるをえない。

 だからこそ、時間を無視して距離を超越ちょうえつできるワープ技術の完成は悲願ひがんであり、この旅の先で待つものに、大いなる望みがたくされていた。

 星々がきらめく広大な宇宙のて。

 我々がここまでやってこれたのは、数えきれないほどの犠牲ぎせいと、数多あまたの天才たちの努力あってのこと。

 是非ぜひにでも、成果を持ち帰らなければならない。


 銀河ぎんがの向こうにある銀色の惑星。

 そこにはワープ技術を持つ生命がすんでいた。

 いまから数百年前のこと。人類がその場所を訪れたのはまったくの偶然。

 故障した宇宙船が、漂流ひょうりゅうの末に辿たどり着いたのだ。

 記録によると、彼らはまるで植物。特にマングローブに似ているらしい。生態せいたいも植物と同じで、大地に根をって、普段ふだんは身じろぎもしない。

 けれども、自転によって近くの恒星こうせいが作り出す朝がうつろうと、それに合わせて、光の当たる座標へと跳躍ちょうやくするのだという。

 それこそがワープ。瞬間移動。彼らの持つ不思議な能力であり、我々がこれから解析かいせきしようとしている技術。

 難破なんぱ宇宙船の船員たちは、彼らにワープさせてもらい地球に帰還きかんした。そして、彼らの存在を後世こうせいに伝えた。夢を残した。


 当時の宇宙船の翻訳機でも、ある程度の対話は可能であったが、今回はそのときよりも高性能なものを搭載とうさいしているから、綿密めんみつな意思の疎通そつうができるだろう。

 銀色の惑星の衛星えいせい軌道きどうに乗って着陸地点を探る。

 事前に電波通信で挨拶あいさつしたかったが、彼らの能力は生まれ持ってのものらしく、伝えられているところでは、科学文明は存在しないそうだ。

 銀の大地は起伏きふくが激しい上にすべすべしていて、こまめな噴射ふんしゃで宇宙船の姿勢を何度も整えなければならなかった。余分なエネルギーを消費することになったが、いざとなったら、前回と同じく彼らにワープを頼めばいい。


 感慨かんがい深さに満たされながら、宇宙船から外に出る。

 我々を歓迎かんげいするかのように、彼らが周囲に集まっていた。

 その姿を見て、き上がった感情は困惑こんわく

 たしかに植物のようだ。タコが足を開いたような形のマングローブの樹木に似ている。だが、彼らはその根っこを使って、歩いていた。身じろぎしないという記録に反している。

 そのことをたずねると、彼らの代表が、こんなふうに答えた。


「あなた方には大変感謝しております。以前、私どもはワープで移動するしかない不便な体でしたが、あなた方の姿を参考にして、ごらんの通り歩けるように進化し、いまは、日々に必要なほんのすこしの距離だけを行き来することができています。あんな力はなくなって、本当にせいせいしていますよ」


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