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第781話 危機が近づく


 ガンさんの猛攻、今回の騒動の原因となったゲブはなすすべもなく宙を舞い…そして地面に叩きつけられる。


 ドシャアアアッ!!!


 ピクピク…。


 地面に転がったゲブの足がわずかに動いている、まるで丸めた新聞紙でひっぱたいたゴキブリのリアクションのようだ。どうやら死んではいないようだが意識は朦朧、よく分からない呻き声を上げている。もっともあんなに頬も腫れて歯まで折れていたらまともにはしゃべれないだろうけど…。


「うぐぁ…ゲ、ゲブ…」


 やられた本人の代わりという訳ではないだろうがならず者たちの一人が苦痛の声と共に何事か呟き始めた。


「くそったれが…。これから…、町の盛り場で集合して…ひと暴れしようってハナシだったのに…よう…」


 どうやらこのならず者たち四人組、酒場や劇場、芝居小屋などが集まるあたりで何かしでかそうとしていたらしい。


「へっ、残念だったな!そんなザマじゃ暴れるどころか盛り場にだってたどり着けねえだろ」


 憎まれ口を叩いたならず者にショーンさんが声をかけた。するとならず者は薄ら笑いを浮かべながら応じた。


「へ、へへっ…。残念…なのは…テメーらだぜ…」


「なんだと?」


 ならず者の不適な態度と発言にショーンさんの濃い眉がピクリと動いた。その反応を快く感じたのかならず者は調子に乗って話し始める。


「盛り場には今…、俺たちのダチや…アニキが向かってンだぜ…。そこに俺たちが来なけりゃ…、やられた事が知られりゃ…へへっ…。テメーら…ヘッ、命はねえぜ…。ざ、ざまあ…みろ…だぜ…へへへっ…。た…楽しみ…だぜ…。エ、エマイソヌのアニキが…テメーらを…ボコボコに…すんのが…よォ…」


「な、なにっ!?エマイソヌだとッ!?」


 ならず者が口にしたアニキとやらの名を聞いたハンさんが地面に倒れている男の胸ぐらを掴み強引に引き起こすと大声で問いただした。


「へ、へへっ…。そうだぜ…、エマイソヌのアニキだ…。あの人は…つえーぞ…、かないっこねえ…。テメーらはもうお終いた…、そろそろ…盛り場に向かい始める頃じゃ…ねえのかなァ…?フへへッ…」


 がくり…。


 それだけ言うとならず者は意識を失い言葉が途切れた。ハンさんが男の胸ぐらから手を離してそのまま地面に横たえた。そんなハンさんに僕は声をかけた。


「あ、あの…ハンさん?この男が言っていたエマイソヌっていうのは…?どうやら知っているようですけど…」


「エマイソヌは…」


 ハンさんが口を開いた、かなりの緊張感を持って…。


「おれたちが追っている山岳院おやまで修行していた男だ…、捕縛命令が出された私利私欲に染まる拳を振るう者たち…。そのひとりがエマイソヌだ」


「えっ!?ハンさんたちが追っている相手!!?」


 驚きのあまり僕は声を上げた、そこにショーンさんとケイさんも話に加わってきた。


「ああ、しかもヤツは粗暴な事この上ない…。そんなヤツがどうやら手下のチンピラを増やして町で暴れようってんならかなりの迷惑が町にかかっちまうぜ」


「だが、エマイソヌは間違いなく強え。少なくとも実力は山岳院おやまの中でも上位、性格は…それ以上に捻じ曲がったヤローだがな」


 ならず者たちがアニキと慕うエマイソヌ…、どうやら迷惑極まりない人物のようだ。


「ヘッ!!なんだそのツラはッ!?そんなのまとめてぶっ飛ばしちまえば良いんだよォ!!」


 その時、ガンさんが大きな声で叫んだ。その額からはまだうっすらと出血がある。


「良いかァ?ビビるんじゃねえ!俺様は…、ついでにお前たちもよォ、新たな奥義も得て間違いなくサイキョーに近づいてンだよォ!だったら負けるハズはねえ、エマイソヌだろうが誰だろうがやっちまえば良いんだ!」


 そんな威勢の良いガンさんの言葉にハンさんたちは小さく吹き出すようにして笑った。


「フッ…、そうだな。たしかにそうだ」


「ああ、いかにヤツがカプエストツ山岳院の高弟こうていであったにせよ今はただの追われる者…」


「こんな程度の低いチンピラどもを引き連れて良い気になっているだけの小せえ男に過ぎねえ。だったらよぉ…」


「うっしゃ、ぶちのめしに行くぜ!!」


「「「おうッ!!」」」


 ガンさんの言葉にハンさんたちが力強く応じた。それを見ていた僕は彼らの絆を羨ましく思うと共に小さな心配が浮かんでくる。盛り場は酒場もあればヒョイオ・ヒョイさんの社交場もある。ヒョイさんは強いけどミミさんたちはダンサーだし、メルジーナさんは歌姫…少なくとも争い事があった時に巻き込まれたらひとたまりもないと思う。そう思ったら居ても立っても居られないいられない気持ちになってきた。


「ぼ、僕も行きますっ!盛り場にはお世話になってる人がたくさんいるんで!」


「へっ!だったらよォ、みんなで行こうぜ?なあ、師匠オヤジィ!」


「はい!」


 即断即決、今いる面子めんつの中ではこの町の地理に一番詳しい僕が先頭に立って盛り場に向けて走り出したのだった。

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