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日々は楽しく色鮮やかに  作者: 明日葉 晴
球技って、人の安全に気を使うよね
33/61

第33話 不意を突くのは的確に

こんにちは。

青井 良春です。

江東さんはどんな競技でも目立つから面白いね。

それに、スポーツマンとして、勝ちに拘るのは見習いたいと思うよ。


では、本編をどうぞ。

 前回のあらすじ

 岩尾君が怖すぎる。初の失点。




「ふむ。オレが入れたのではないのが悔やまれるが、一点は一点だ。ここからどう巻き返すか見物だな」


 相手チームが歓喜を上げてる中、岩尾君が一言残し陣地に戻って行った。


「ごめん、みんな。一点取られちゃった」

「気にすんなって!むしろあそこから立て直して守ったら、本当に怖いよ!江東さんも人なんだなって思った!」

「ドンマイ、ドンマイ!人には限界があるからね!」


 みんなが励ましの言葉をくれた。やたら『人』って言うのを強調されたのが気になったけど、みんな優しい。


 少し早いけど、澪の作戦を実行するしかないかな。


「みんな、ちょっといい?次から私も攻撃に参加するよ」

「え?でもゴールは?」

「キーパーが攻撃しちゃいけないルールはないからね!もちろん、ちゃんとゴールも守るよ!」


 澪の出した作戦は実にシンプル。私も攻撃に参加すること。ただそれだけだ。キーパーをやれと言われただけで、攻撃をするなとは言われていない。ルールと苦情を逆手に取った作戦だ。

 チームのみんなは、少し動揺したみたいだけど、次第に落ち着いてきた。


「わかった。俺達だけじゃどのみち攻めきれない。だったら、相手にリードされてるなら防御を捨てて、その作戦で行こう」

「ありがとう!そしたら、不意を突く為にも開始時から後ろに下げて私にパスして!一気に抜いて決めるから。じゃ!巻き返そう!」

「「「おう!」」」


 試合再開。コートの中央から始まる私達のボールは、開始直後、自陣へ戻された。私は全力で上がり、ボールを受け取った。


 ここはシンプルに中央突破!


 いきなりの単独突撃に驚いたのか、相手のチームは硬直した。その隙に一気に抜き去り、残すは岩尾君とゴールキーパーらしき人のみになった。


 このまま決める!


 私は渾身のシュートを打った。その直後、驚くことに、キーパーらしき人は怯えたような顔をして、頭を抱えてしゃがんだ。


 ゴール守らないの!?


 そう思った矢先、岩尾君がガッチリと両手でボールを受け止めた。


「いいシュートだ」

「岩尾君。まさか…」

「考えることは同じようだな。そのまさかだ」


 岩尾君はゴールキーパーだった。最初からゴールキーパーなのに攻めていたということだ。だから最初は自分のゴール近くにいて、攻撃時に攻め上がっていたんだ。

 私達が今実行したことを、最初からやっていた。ただその違いだけなんだ。


「じゃあ、その人は?」

「囮だな。友人と出たはいいが、運動は苦手だそうだ。だから囮をやってもらってる」

「そっか。そうなんだね」

「オレがキーパーで残念か?」

「いやいや。むしろ嬉しいよ。さっきの借りを、ちゃんと返せる」

「ふはは!やはりお前は面白い。ならオレも、ちゃんと貸しを作らねばな」


 そして、試合が再開された。私はゴールまで全力で戻り、再びチャンスを伺う。岩尾君も同じで、味方にボールを渡した後、ゴールで様子を見てるみたいだ。


 不意打ちが失敗した今、後は力ずくで点を取るしかないかな。


 そう思っていた時、事態は動いた。相手がパスを出したボールを、私のチームの人が割り込んだ為に、弾かれて浮き上がった。

 私と岩尾君は同時に走り出し、ボールに向かう。距離の関係で、私が一足早くボールにたどり着き、ゴールに向かう。岩尾君はゴールには戻らず、私に向かってきた。


 岩尾君、勝負を仕掛けてきたね。ここで受けなきゃ女が廃るね!


 避けて、追われ、不意を突かれて取られ、追って、避けられ、追って、不意を突いて取り返し、また追われて…

 そんな攻防を繰り返していた。お互いが牽制しあい、パスも許さない。一進一退。拮抗した勝負の中、時間だけが過ぎていき、晴れていた空は、いつしか曇っていた。


 このままじゃ時間制限で負ける。無理にでも動かすしかない…


 私は苦渋の決断で、奪ったボールを、体勢を立て直さずにななめ方向に力一杯蹴り飛ばし、コートの外へと出した。


「お前が痺れを切らすとはな」

「私だってちゃんと抜きたかったよ。でも、試合に負けたら意味がないから。私だけが勝ちたいんじゃないの」

「ほう。個人でここまで拮抗して、チームとしても互角。試合としては一点差。残り時間も半分を切っている。この状態から逆点すると?」

「するよ。私は勝つ。私達が勝つ」

「なら、見せて貰おう。オレは次で止めを刺させてもらう」


 私が出したボールはゴールキックになった。岩尾はボールを高く蹴り飛ばし、同時に走り出す。


 自分でボールを受けるつもりなのか!


 そう思った瞬間、私は一つ作戦を思い付く。誰かに相談する事を考えるより早く、体が動いた。


「背中借りるよ!」

「え?…ふべっ!!」


 私はチームの人の背中を踏み、高く跳ぶ。

 岩尾君は私の狙いに気付いたみたいで、引き返し始めたけど、もう遅い。


「せぇりゃあぁぁぁ!」


 パシィィィィィン!


 上空で蹴られたボールは、角度と速度を付け、来た方向を帰る。そして、囮君の横を通り、ゴールに入った。


 これで同点!


 チームが喜び、相手は驚き、グランド全体が騒然とする。不意に空から雫が落ちてきて、そして雨が降りだしてきた。

33話を読んでくれて、ありがとう。


岩尾君とは一緒にバスケしたけど、あんなに動けるとは思わなかったな。

今回のサッカー部勧誘の筆頭は彼で決まりだね。


それでは、これからも付き合ってくれると嬉しいな。

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