第45話:事件でしょうか?
辻斬りが出なくなって一週間が経過し、街中は他の話題によって徐々に辻斬りの話題は薄れていく。始めの3~4日は俺達も街にくりだし辻斬りの捜索や情報収集を行ったがアイツ等は姿を現さないので何の収穫も無く、後半は辻斬りの噂が何かあったら動こうと皆で話し合って決め夜に捜索することはしなくなった。
「やっぱりあの日の出来事が原因?」
「たぶん、追い込まれてしかも本物(?)の辻斬り犯まで出てきたんだ。さすがに模倣犯だったら潮時だと考えても不思議じゃない」
「となると、辻斬り犯の捕縛依頼は失敗だね」
「そうだな、辻斬りのほとぼりが冷めてきたがまた出るとは思えないし」
「そっか、・・・・だったらこの際ギルドで少し遠出の依頼でも受けてみない?」
「気晴らしにはなるかもしれないし、俺は別に構わないけど」
「それじゃ、シエル起こしてギルドに向かいましょ」
辻斬り捜索の為最近飲んでいなかったので昨晩遅くまで酒場で飲んでバカ騒ぎをし今の今まで寝ていたシエルをポアラは当然のように手早くビンタで叩き起こし、頬を擦りながらブーたれているシエルを連れて俺達はギルドへと向かった。
「人がせっかく気持ち良く寝てたのに~」
「寝過ぎ、それに昨日あんなに飲み食いしたんだから動かないとブタになる」
「ブタとは失礼ねぇ、ちゃんとこの見事なプロポーションを維持してるわよ。ねぇ、テツヤ?」
「俺に振るなよ。たしかに太ってはいないと思うが、プロポーションだったらポアラの方が良いだろ?」
「ぐぅっ! そりゃ、ポアラの方が胸はあるしくびれてるわよ・・・・ってなによなによ、2人して私の事バカにしてるのっ!?」
「バカになんてしていない、事実を述べているだけ」
「ムッキー! その言い方が既にバカにしてるじゃない!」
「まぁまぁ、落ち着けシエル。別にシエルのプロポーションが悪いと言ってるんじゃない、むしろ良い方に分類されるだろう。ただ、ポアラが良すぎただけだ」
「・・・・・・なんで双子なのにこんなに差が出るのよ」
俺の余計な一言でシエルが落ち込みどうしたものか考えようとした矢先に「ほらぁ、下らない話していないでさっさと行きましょう」とポアラはバッサリと切り捨てスタスタと先へ行ってします。
「えっと、・・俺達も行こうか?」
「・・そだね」
この国は国王が代わって物価が高くなったりギルドの依頼に制限がかかったりして冒険者がとても住みづらい国となっており、他国出身の冒険者は早々にこの国を出て行ってしまう。その為相変わらずこの国のギルドはイングヴァルト王国のと違って冒険者が少なく閑散としていた。
「遠出の依頼は・・・・ないね」
「高収入なのも見当たらないし、いつも通りちょっとした依頼だけだな」
「そろそろ他の国に移動してみる?」
「職員にダメ元で聞いてみて何もないようなら移動を視野に入れようよ」
依頼板を離れ受付に行くと2人の職員が何やら口論している。昼休み中なのか他に職員が見当たらなかったので仕方なく口論をしている職員達に声をかけることにした。
「すみません、どうかしました?」
「ん? おぉ、あんたらか。それがな、コイツが受理していた依頼を依頼板に掲示し忘れていたんだよ。しかも、内容を見たら何でこんな依頼を受理したんだって言いたくなるような物でな」
「何言ってるんです! 依頼者はかなり深刻な顔をしていたんです、本当に何かあったのかもしれないじゃないですか!」
「あのなぁ、そう思ってたんなら掲示し忘れるなよ・・」
「それ、どんな依頼なの?」
「『娘の安否確認』というものさ」
「それだったらギルドに依頼があっても不思議ではないんじゃない?」
「そりゃ、行方不明とかだったらそうかもしれないが」
「違うの?」
「伯爵家に奉公に行った娘から手紙がこなくなったからだそうだ」
「心配性な両親なんじゃないの」
「だからってギルドに依頼までだすか」
「・・・・その依頼、誰か受けた?」
「いや、掲示してなかったから誰も受けていなが」
「それじゃ、それ俺達が受けるよ」
「いいのか? 少し遠いし報酬も少ないから受けても赤字になるかもしれないぞ」
「構わない」
「まぁ強く止める理由もないし、分かった受理しておく」
他には何も無かったので1つだけ依頼を受け、ギルドを出てさっそく遠出の準備にとりかかる。
「勝手に依頼を決めて悪かったな」
「それは別に構わないんだけど。いきなりその依頼を受けたいだなんて、何か気になる事でもあったの?」
「あぁ、ちょっと・・」
「どこが?」
「引っかかったのは『手紙がこない』じゃなく『手紙がこなくなった』ってとこ」
「・・たしかに、言われてみればそうね」
「ん? 単に職員が書き間違えたんじゃないの」
「シエルが言う書き間違えというのも考えられるが、もし違うならどうして突然手紙がこなくなったのかが気になってな」
「それで、準備が終わったらすぐに伯爵家に行くの?」
「いや、まずは依頼者に詳しい話を聞こうと思う。通り道だから時間も喰わないし」
「分かったわ」
準備を手早く済ませ今にも出発しそうな乗合馬車に駆け込んだ。馬車内には俺達の他に5人の冒険者が乗っており、突然俺達が駆け込んできたので彼等は少しビックリしている。馬車は走り出し少し落ち着いたのか、ほどなくして5人の内の1人が声をかけてきた。
「君達もパーシェル伯爵家に行くのかい?」
質問の中に出た名前はまさに俺達が依頼の為に向かおうとしたとこだった、若干驚きつつも聞き返す。
「『も』ってことはあんた達も伯爵家に行くのか?」
「まあね、警備の依頼を受けたんだ。泊まり込みで報酬も良かったし」
「警備の依頼? ギルドにそんな依頼あったかしら?」
「いや、街で急遽人手が欲しくなったからって直接依頼を受けたんだ」
よくよく考えたら伯爵について何も知らなかったので色々と彼等に話を聞いてみると、彼等は俺達が受けた依頼の依頼者が住んでいる村出身という事も分かったので依頼の事は伏せて娘のパルフェについてもそれとなく聞いてみた。彼等の話を聞いたかぎりパルフェはとても家族思いという事が分かったので、ますます手紙がきていないという事が嫌な感じがしてならい。他愛のない話をしてるうちに村に着き彼等は実家に帰っていったので、俺達は依頼者の家に向かった。
コン!コン!
「すみませ~ん!」
少し扉を開けて1人の女性が俺達を若干訝しい目をして見てくる。
「・・どちらさまでしょうか?」
「ギルドで依頼を受けた者ですが、少しお話をよろしいでしょうか?」
「っ! あ、あなた!」
「どうした」
「この方達が依頼を受けてくれたそうです!」
「ほ、本当かっ! ありがとうございます! ささ、どうぞ中へ」
家に上がり両親から事の発端から今どのような状態かを聞いてみた。パルフェは2ヶ月前に少しでも家計を助ける為に給金の良い伯爵家で奉公し毎週欠かさず手紙を送ってきていたのだが、1ヶ月前に突然手紙がこなくなり伯爵家の使いという者が聞かされていた金額より何十倍もの大金を給金として忙しい娘の代わりに持ってきたとのこと。両親は少し不審に思い娘の様子を確認する為に伯爵家に伺ったが忙しいの一点張りで娘に会うことはおろか屋敷に入ることすら出来なかった。そして今なお娘からの手紙はなく、会うこともできない状態というわけだ。
日も暮れて暗くなってきた時に依頼を受けてくれたお礼に泊まっていって下さいとのことなのでご厚意に甘え、依頼者の方々が寝静まった後に俺達はこっそりと家の外に出る。
「いろんな人から話を聞いたけど、どう思う?」
「どう思うも何も。それほど家族思いである娘の便りが突然無くなって会うこともできず、そして伯爵家の対応。何か遭ったと考えるのが妥当だろ」
「たしかにそうね、それを前提に行動したほうが良さそう」
今日1日の話をまとめて改めてパルフェに何かが起こっていると考え、俺達は今後の方針を話し合ってから就寝した。




