第46話:見えてくる事、見えないもの・・
依頼者の家に泊めてもらい朝食までいただいてから朝一番の乗合馬車に乗り込むと、馬車内には昨日の5人の冒険者が既に乗っていた。お互い知らない仲ではないので挨拶を交わし雑談しながらの退屈しない馬車の旅となり、2日の行程をへてパーシェル伯爵家があるソムニウムの街へたどり着く。5人と別れ住民に場所を聞きながら宿へ向かった。
「さて活動拠点も決まったことだし、まずはどうする?」
「日も暮れかかっているし街を見て回ったりするのは明日ね」
「それじゃ、簡単な情報集めを兼ねて酒場で夕食にしようよ」
酒場に行くと時間帯も相まって活気が漂ってかなり賑わっており、周りに耳を傾けながら夕食を取り始める。王都では少なからず王族&貴族に対する悪口や愚痴等があったが、ここで聞こえてくるのは取り留めが無い話ばかりだ。
「なんか王都より雰囲気良くない?」
「たしかに暗い顔をしてる人は少ないが・・・・」
「国の政策自体はあんなだから、パーシェル伯爵領では何か特別な処置でもしてるのかしら」
「税金を安くしてるとか? あっ! でもそれだとパーシェル伯爵領は王都の隣領だからすぐ分かるだろうし、王家から何か言われたりするか」
「もしかしたら、何かしら大きな収入源でもあるのかも」
「まぁ今のとこ政治方面を気にする必要はないさ、俺達の目的はパルフェの安否確認なんだから」
「それもそうね、それじゃ明日からはどう行動していく?」
「直接伯爵家に行けば早いんじゃないの?」
「それは無理だな」
「どうして?」
「少しは考えなさいよ、シエル」
「むっ!それじゃ、ポアラはその理由が分かるっていうの!?」
「もちろん、簡単な話よ。両親でさえ屋敷すら入れなくて会えなかったのに、私達のようなどこの誰とも分からないような見ず知らずの冒険者を屋敷に入れると思う」
「あっ、それもそうか」
「え~っと、んじゃ何かあった時にすぐに色々動けるように明日は街の全体的な造りの把握をしながら領主の評判と噂を聞いて回ろう」
明日の行動を決め3日ぶりに飲み食いして騒ぎたかったが、起きるのが遅くなって明日に影響したら困るので今日のとこは早めに休むことにした。
翌日3人共予定通り早めに起きることが出来たので朝食を済ませ探索を開始する。この街は東西に分かれるように真ん中に川が流れ東側には領主そして騎士&兵士が住み、西側には一般住民が住んでおり川の中央部分に1つだけある唯一東西を繋ぐ橋には関所を設け兵士達が滞在し厳重に行き来を管理している。通りは結構な数の人で賑わっていたが時々妙な緊張感が漂いそんな時は兵士が闊歩しているのが多く目に付く。探索を開始してから数時間が経ち日も真上に差し掛かろうとしていたので、近くの定食屋に入り昼食ついでに気付いた事について意見を纏めることにした。
「賑わってはいるんだけど、なんだか変じゃない?」
「たしかに、俺達のような冒険者を警戒するならともかく自国の兵士を異様に警戒し少なからず恐れている感じだったな」
「そうね、もしかしたら領主に対しての不満が無かったのもそれが何かしら関係しているのかも」
「もしそうなら領主に対しての情報が同じようなものばかりで有益なものが殆どなかったのも納得だ」
「これ以上領主の情報を集めても無意味そうね、次はパルフェの目撃情報でも集めてみる?」
「私もそれが良いと思う、というか同じよう事ばかり聞くのはもう飽きたよ~」
午後の行動はパルフェの似顔絵を使って目撃情報を集めて回ったが「見た事はあるかなぁ? どうだったかなぁ?」といった情報しかなく、当然パルフェの名前を知っている人はいなかった。
「何にも有益な目撃情報がなかったね」
「まぁ、これだけはっきりと住む場所が分けられていたらな」
「どうする? ダメもとであちら側も行ってみる?」
「どうせあの関所のとこで足止めだろ、行くとしたら夜に忍び込むしかないか」
「きゃっ!」
突風で目にゴミでも入ったのかシエルが声を出し、パルフェの似顔絵が描かれている紙がヒラヒラと飛ばされていく。慌てて追いかけるがもののすぐに紙は地面に落ち、近くにいたご老人が拾い上げた。
「あれ1枚しかないんだから大事にしてよね」
「分かってるよ、も~。すみませ~ん!」
「おや? これを落としたのは君達かね」
「はい、拾って下さってありがとうございます」
「いやいや。偶々近くにいただけじゃ、お礼を言われる程じゃない」
「そんな事はありません、それは人探しに使っている似顔絵でして大事な物なんです」
「そうかそうか、見つかるとよいの。・・・・ん? この娘・・パルフェじゃないか!?」
「えっ? お爺さんパルフェの事知っているの?」
「あぁ、よく私のお店に来ていたからのぉ」
「その話詳しく教えてもらっていいですか!」
お爺さんは今まで経営していた飲食店を息子達に譲り若い時に集めて読まなくなった本で老後のんびりと古本屋を経営して過ごしていると、2ヶ月位前にパルフェがお店にやって来たそうだ。若い娘が熱心に古本を読んでいるのが少し気になって聞いてみると、パルフェは怪我や病気で苦しんでいる人達を助けたり両親や弟妹を養う為に将来医者になりたいが医学書や薬学書は高価で今の自分では買えないのでここで読ませてもらっていると申し訳なさそうに言ってきた。立ち読みではあったがお爺さんは叱る事なく、むしろしっかりした夢を持っているパルフェを応援したくいつでも来なさいと伝えるとパルフェは嬉しそうに顔をほころばせお礼を言う。週2~3日のペースでお爺さんのとこに来て勉強したりお茶しながら話し相手になったり過ごしていたが、1ヶ月位前に急に姿を見せなくなり心配していたとのことだ。
お爺さんにお礼を言い俺はある場所を目指し、シエル達も慌ててついて来る。
「ちょっとちょっと、何処に行くの!?」
「診療所だ、パルフェが医者になりたい考えていたならそこにも行っていた可能性がある」
「なるほどね」
診療所に到着しパルフェについて聞いてみると、たしかに2ヶ月前から週2日のペースでここに来ている。しかし1ヶ月くらい前から姿を見せなくなり、筋が良く教え甲斐があったのにと診療所の人達はとても残念がっていた。
「ここも1ヶ月前か」
「いったい何があったのかしらね」
「・・・・」
「・・シエル、どうしたの?」
「えっ、いや、あれ何だろうと思って」
シエルが指差した方を見ると関所のとこで誰かが兵士達と揉めているようで、近づいてみると数人の子供が何かを必死に訴えていてそれを煩わしそうに兵士が対処していた。




