第31話:王都襲撃
馬車の乗り心地はそれ程良いものではなかったが荷物も置けるからいずれは欲しいなぁと考えてしまう。
「なんじゃ?」
ミゲルが不思議そうな声を出して馬車を止めると、別の馬車が近づいてくる音が聞こえてきて側で止まったのが分かった。
「どうしたんじゃ、そんなに慌てて?」
「どうしたもこうしたもないよ、魔物が王都に攻めてきたんだ!」
「魔物が! 近くを徘徊する事はあっても直接王都を攻め込むことなんてなかったはずじゃが」
「そんな事は知らないよ、あんなに多数の魔物が出てるのに城の兵士やギルドの冒険者の動きが遅いし。こっちは命からがら逃げてきたってわけさ」
「そうか・・」
「あんたらも今は王都に向かうのは止めときな、それじゃ俺達は急ぐんで」
馬車が去って行く音を聞きながら俺とカイムは顔を見合わせる。
「さっきの話、もしかしてテツヤさんが言ってた通りじゃ」
「たしかに奴らの仲間が攻めてくる可能性は考えたが、魔物だと偶然という気もする。魔物を操る術があいつ等にあるんだったら別だが」
「そっか」
「とりあえず詳しい状況が知りたい。ミゲルさん、少し急いでもらえるか!」
「分かった」
先程よりも速く馬車は走りだし、街壁が見えてきたとこで行動を制限されないように馬車から降り徒歩で向かう。街壁の門に近づくにつれチラホラと人が倒れ手当を受けている光景が目につき始め、なかには凄惨な光景も目についたのでレティーナには目を瞑ってもらい手を引いて歩いた。ミゲルが比較的軽傷の者に話を聞いたみたが、いきなり多種類の魔物が攻めてきたという事以外何も分からなかった。
「テツヤよ、お主のあの魔法で皆を回復できないか?」
「出来なくはないけど見たとこ間に合わない者以外は薬や魔法を使える者で十分のようだし、あれはけっこう魔力を使うからこの先何が起こるか分からない以上薄情かもしれが魔力は温存しておきたい」
「そうか、・・そうじゃな」
「ところでミゲルさん、多種類の魔物が集団で行動するのは頻繁にある事なんですか?」
「いや2~3種類なら見かけたりするが、聞いた限り今回はそれ以上の種類が集団で行動している。そんなことはまず有り得ないと思うのじゃが」
「という事はテツヤくんこれって」
「あぁ、奴等の仕業と考えていいかもな」
「お主等、何か知っているのか!?」
俺達は王女達を救出する時に対峙した者達の事を話した。
「なるほど、きっとの今の状況が魔術師が言っていた次の作戦の1つということなのでしょうね」
「たぶん、でも目的が見えてこないんです。ただ魔物を放つだけなら誘拐事件を起こす必要はありませんし」
「たしかにそうじゃな、戦力分散は分からんでもないが王都を魔物で混乱させるだけが目的なら単なる愉快犯でしかない」
「となると、やっぱりこれも真の目的の為の通過点でしかないというわけか」
「決め付けるには情報が足りんの、ここは一度ギルドに向かうとするか」
門をくぐるとほんの昨日まで綺麗な街並みで色んな種族が通りを歩き賑わっていたのに、今や家は崩れ所々火事が起き煙が上がって通りは傷つき倒れている人で溢れていた。
「酷いっ・・・・!」
レティーナは目の前に広がる光景を見て思わず息を呑み、俺達は心の底から怒りが湧いてくるようだった。考えていた以上に街中の被害が大きく事態は悪化の一途をたどっていたので、レティーナを背負いかなりの速さでギルドまで駆けていく。
ギルドが見えてきた時数名の冒険者が魔物の建物への侵入を防いでいたが、誰が見ても劣勢なのは明らかなので速やかに安全な場所の確保を考え魔物の排除を決意する。
「儂とフォーリアであのデカブツを叩く!」
「なら俺は真ん中にいる3体のリザードマンだな」
「私とカイムで残りのゴブリンを担当するわ」
お互いに倒す対象を確認しながら走り、俺達の姿を見た冒険者が増援に喜んでいる。俺達の存在に気付き駆け寄ってくるミゲルを捉えようと巨人が手を突き出してくる所にフォーリアが矢を放って巨人の胴と腕射抜き、動きが鈍ったところにミゲルが重量のある戦斧を走る勢いを加重するように振り抜き両足を切断する。両足を切断され巨体を支えることができなくなった巨人は地面に倒れ落ち、そこに止めとばかりにミゲルが戦斧を振り下ろし巨人の頭を叩き潰した。ダンジョンでは不意を突かれ壊滅状態の彼らしか見られなかったが、こうして改めて見ると流れるような連携攻撃と破壊力には感嘆させられる。
俺も負けていられないとばかりにリザードマンと対峙し攻撃をで回避しながらカウンターを仕掛けようと考えたが、レティーナを背負っているのを思い出し安全を考え1対1になるように足を運び敵の攻撃を出来る限り強く剣で弾き体勢が崩れた奴の顔を最小の魔力・範囲に調整された爆発魔法で吹き飛ばしていき瞬く間に頭部が無い死体が3つ出来上がった。
自分の仕事が終わったので残り2人の方を確認してみる。シュリは風の魔法剣で真空波を飛ばしながら牽制して近づき、接近したら強風をぶつけて動きが止まったところを斬り伏せていた。そしてカイムは自分の攻撃距離を保ちながら敵にマトモに攻撃させることなく押していき、深々と突き刺したら炎の魔法槍の力を発動し内側から焼き尽くしていった。上手く不意を突くことができたということもありギルド前に屯っていた魔物はものの数分で全滅させることができた。
「ミゲルさん、助かりました!」
「うむ、それよりギルド職員は中に居るか? 儂等は来たばかりじゃから詳しい状況を知りたいのじゃ」
「はい、全員ではありませんが中にいます」
「では行こうかの」
最初からいた冒険者に引き続き見張りをしてもらい俺達は建物の中に入っていき、入ってすぐ見知った顔を見つけたので近づいていった。
「無事だったようですね、ミーニャさん」
「テツヤ君! あなたも無事だったようね、みんなも無事で良かった」
「再会を喜びたいとこだけど、今はどんな状況かすぐに教えて欲しいんだ」
「ごめんなさい、魔物対処に追われてギルドの方でも詳しい事は分かっていないのよ」
「ミーニャさん、城の方はどうなっていますか?」
「あら可愛い娘さん、テツヤ君この子は?」
「レティーナ王女だよ」
「なるほど、レティーナちゃんかぁ・・・・・・えっ? レティーナ王女!?」
「そうだよ」
「し、失礼致しました! 知らなかったとわいえ大変なご無礼を!」
「構いません、それより城は?」
「申し訳ありません、ギルドの職員が城の騎士に救援要請を持って行ったのですが誰も戻ってこないのです。ただ魔物が攻めてきているにも関わらず悠々と城へ向かう集団がいたという情報が何件かありました」
「テツヤさん!」
「あぁ、たぶん奴等だ。レティーナ王女すぐに城へ向かおう」
「・・・・いえその前に、ミーニャさん街中に入った魔物の駆除はもう終わったのでしょうか?」
「いいえ、冒険者や兵士不足で東・西側の魔物はまだという話です」
「分かりました、テツヤさんまずは街中の魔物を全て駆除しましょう!」
「いいのか?」
「はい、私は王族です。王族なら身内よりもまずは住民の安全を第一に考えるべきですから」
「キミがそう言うのなら俺は反対しない、みんなもそれで良いな?」
皆は俺とレティーナを交互に見て頷き、すぐに二手に分けるパーティーを決め魔物の排除に向かった。




