第32話:王都襲撃② -防衛戦-
俺&カイム&レティーナのパーティーは東門の方へ向かった。東門では3小隊程の兵士と10~20人程の冒険者が防衛に当たっており現状は均衡しているように見えたが、半数以上は傷付き後方で治療を受けている。
「ここの指揮を執っているのは誰ですか!?」
レティーナは前線に近づいて行きながら指揮者を探し、それに気付いた30代位と思われる立派な鎧を着た騎士が近づいてきた。
「ご無事でしたか、レティーナ王女!」
「えぇ、それより今の状況を詳しく説明して下さい」
レティーナと騎士が話し合っているのを少し離れたところで見ているとカイムが話かけてきた。
「レティーナ王女をこんな前線に連れてきてよかったの?」
「仕方ないだろ連れて行かなかったら自分で勝手に行くとか言い出すんだから、それなら連れて行って安全な後方に居てもらった方がまだマシだ」
「そうだけど、それなら人数が多いミゲルさん達に同行させた方が良かったんじゃない?」
(カイムの話はもっともだがルーシアと約束した以上他人任せにするより、目に届く範囲に居てもらい全力で守った方がより安心できる)
カイムと話ているところに話し合いが終わったのかレティーナと騎士が近づいてきた。
「お待たせしました、テツヤさん、カイムさん」
「レティーナ王女、この者達は?」
「私を助けて下さった冒険者の方々です」
「おぉ! この度は王女を救出して頂いて私からもお礼を申し上げます」
「それより、今はどうなってる?」
「周辺住民の避難は完了している、統率されていない魔物なので始めはこちらが押していたのだがあの巨人共とワイバーンが現れてから徐々に押されていきこの有様だ」
改めて魔物の方を見ると今は手前の方にコボルト・ゴブリン・オークが犇めき、その少し後ろにミゲル達が倒した巨人と同種と思われるのが3体それぞれ武器を持っており、その上空にはワイバーンが2体旋回している。
「あの巨人とワイバーンをどうにか出来れば押し戻せるか?」
「それは出来るが、まさかお前達たった2人であれを倒すとでも言うのか!?」
「さあな、俺達は独自に動く。レティーナ王女は後方に居てくれ」
「私も魔法学院に通っていますので回復ならできますが」
「なら後方の負傷者を手当していてくれ」
「分かりました」
「貴様! レティーナ王女に命令などして不敬を働くなど以ての外だ!」
「お止めなさい騎士バルゼル!」
「! しかしレティーナ王女・・」
「今はそれぞれ出来る事をする時です、そこに身分の壁を作るものではありません。我々王族や騎士がこの状況で第一に優先するべきは住民の安全確保です」
「・・承知致しました」
「それじゃ、始めるとするか」
「お二人とも、お気を付けて」
返事の代わりに手を振り、俺とカイムは魔物に向かって歩き出す。
「カイム、今回はさすがに本気を出せよ」
「本気?」
「惚けても無駄だ、お前が今までずっと力を抑えて戦っている事はバレてるんだ」
「そっか、シュリちゃんにはバレなかったのに流石だねテツヤさん」
「・・・・シュリの為か?」
「うん、僕が全てやってしまったらシュリちゃんが成長できなくなっちゃうから」
「シュリが知ったら怒りそうな理由だな」
「だね、今回は仕方ないから本気出すけどシュリちゃんには内緒だよ」
「分かった、その代わり頼んだからな」
魔物の群れが目の前の最前線まで来て俺とカイムは飛び出し、後ろから兵士や冒険者が何か叫んでいたが気にしなかった。
「一番厄介そうなのはあのワイバーンか」
「そうだね、上空からちょこちょこ炎とか吐かれたら面倒かな」
「届くか?」
「僕じゃ無理だね」
「なら俺がワイバーンを先に終わらせる、その間に巨人のとこまで道を作ってくれ」
「了解」
俺は近くの家の壁を駆け上り屋根に降り立ち、カイム達を一瞥した。カイムは今までとは比べ物にならない程のパワー&スピードで近寄らせること無く手足を斬り飛ばし顔などの急所を突き刺して魔物を圧倒し次々と屠っていき、後ろからは前線の兵士や冒険者がレティーナと話していた騎士に発破を掛けられ攻め上がってきていた。
(それにしてもカイムかなり爪を隠していたな、普通に戦ったら勝てるかどうか)
後顧の憂いが無くなり、俺はワイバーンに専念することにした。
(とわいえ相手は上空だもんなぁ、こんなことなら飛翔魔法もちゃんと練習しとくんだったよ)
試しに魔力を抑えた火系魔法のファイアーボールを放ってみると、悠々と躱され逆に火はこう使うとばかりにワイバーンは1体ずつ火の玉を2~3個吐いてくる。剣と魔法で迎撃するが撃ち漏らした火の玉が隣の家を破壊し、上空の魔物はそれを見て嘲るように声を出していた。
(ちっ! 中途半端な攻撃は駄目ってわけか、それなら・・)
今度は氷系魔法のフリーズブリットを放ったところ、魔物にとってこの氷の玉の弾速も遅いと思ったのかこれも悠々と躱す・・・・・・が!
「ブレイク!」
魔物が躱すと同時に俺が叫ぶと氷の玉は砕け周囲に飛び散り、いきなり近くで発生した氷の礫による無数の散弾を流石に躱すことが出来なかった1体が落下する。落下地点に屋根伝いで急ぎ移動し、落下に合わせて力強く剣を横一閃し魔物の身体を上下に割った。それを見ていたもう1体のワイバーンは仲間を殺られたことで怒り心頭に発したのか俺のとこへ勢いよく下降してくる。俺はこれを好機と考えギリギリまでその場を動かずタイミングを計るように下降してくる魔物を見据える。ぶつかる直前にジャンプして突進を躱すと同時に素早く2連撃で翼を斬り飛ばし、暴れられる前に胴体に降り立ってすぐに剣を胴に突き刺して縫い止めから魔法で光の剣を創り出して首を撥ね飛ばした。
一先ず俺の相手が片付いたのでカイム達の方を上から覗き見ると、既にコボルト等の雑魚魔物は粗方討伐を終えカイムを含む何名かは巨人と対峙していた。俺は巨人の方へ走り出し巨人が足元の敵に気を取られているのを確認してから屋根から巨人に向かって勢いよく飛び降りる。
「下がれ、カイム!」
叫んですぐに剣を魔力で強化し、巨人がこちらに気付き向こうとする前に上から下まで剣を走らせ一刀両断し巨人は身体を左右に分けられ絶命した。
「すまん、少し遅くなった」
「そうでもないけど、また派手な合流だね」
「それより負傷者が増えていないか?」
「ごめん、僕と後ろの兵士達との距離が少し空いたとこを狙ったかのように側面から敵の増援があったんだ。出来るだけ早く排除したんだけどやっぱり無傷とはいかなくて」
「なるほど、ならこれ以上時間をかけてはいられない。巨人の残り2体を俺達で速やかにやるしかない」
「うん」
俺達は駆け出し巨人が武器を振り上げたと同時に顔を狙って魔法を繰り出した。それを防がせることで一瞬視界を無くし、そのタイミングでカイムが近づき槍に捻りを加えて勢いよく突き出し片足を吹き飛ばして俺の方に倒れてくるところを狙って下から上に一閃して首を斬り落とす。そのまま止まることなくもう1体の巨人に向かい、攻撃を絞らせないように左右に広がりながら近づいていく。走りながら土系魔法で巨人の少し後ろに巨大な穴を作り、巨人はその穴に足を取られ後ろに倒れた。その一瞬を突き俺は壁を使ってジャンプして上から胴を袈裟斬りし、同時にカイムはそのまま走って下から顔を吹き飛ばした。




