第30話:一抹の不安
第3王女と名乗った女の子はたしかにルーシアを少し幼くした感じによく似ている。
「私の事を聞くということは、あの人達の仲間では無いということですか?」
「あぁ、キミ達を助けに来たんだ」
「とても騎士には見えませんが?」
「そりゃ~冒険者だしな」
「ふ~ん」
女の子は訝しい目で俺を上から下までジロジロ見ている。
「貴方ではあの頬に傷のある男に勝てるとは思えません、助けでは無くホントは犯罪人の仲間ではないのですか?」
(どうやら冒険者というのも信じてないみたいだな。まぁ、たしかに見た目は完全な新人だからあの男に勝って助けにきたとは考えられないか)
「犯罪人の仲間じゃないよ、俺はキミの身内に頼まれて助けにきた者だ」
「身内? 王族が一介の冒険者に直接依頼するとは思えません、ますます怪しいです」
女の子はますます疑わしい目を向けてきた。
「どうしたの、テツヤさん?」
他の牢に入れられていた人達を助け終えたカイムが近づいてきた。
「王女が俺達のこと助けに来た人ではなく、犯罪者の仲間と考えて牢から出ようとしないんだ」
「困ったね~、無理矢理でも上に連れて行く?」
「それは止めとこう、もう少しこの子と話して聞かせるから先に1階に上がっていてくれ」
「了解、シュリちゃんと合流して捕まっていた人達に詳しく説明しておくよ」
カイムが上の階に行ったのを確認し、袋からルーシアから預かった物を取り出す。
「これを見てくれ、これがキミの身内から直接依頼された証拠にならないか?」
女の子は手の平に乗っている髪飾りをチラッと見てすぐに顔を逸した。
「その髪飾りが何?」
「キミの大事な物なんだろ、依頼を受けた証拠として預かってきた」
「それが証拠? どうせこの為にどこかで同じのを買ってきたんでしょ」
「おかしなことを言うね、これはキミが10歳の誕生日に姉から貰った世界に1つだけの手作りの髪飾りだろ」
その言葉を聞くやいなや、女の子は驚いた顔をして俺を見た。
「どうしてその事を知って・・! その事は私とルーシア姉様の2人だけの秘密なのに」
「キミの姉さんとは知り合いでね、会った時に証拠として髪飾りとその由来を聞いておいたのさ」
「・・・・それじゃ、ホントに、ホントに助けにきてくれたの?」
俺が頷くと女の子は抱きつき声を出して泣き始める。
(気丈に振舞っていてもまだ子供だ、安心して張り詰めていた糸が切れたんだろう)
優しく頭を撫でながら女の子が泣き止み落ち着くまで待った。しばらく泣いた後、女の子は恥ずかしそうな顔をしながら俺から離れる。
「もう大丈夫か?」
「はい、お見苦しいところをお見せしてごめんなさい」
「気にしなくていい。とりあえず上に行こう、いつまでもこんなとこに居るもんじゃない」
そう言って手を差し出すと女の子は手を取ってくれたので、優しく手を引いて1階へ向かった。1階に出ると攫われていた人達をリビングの1箇所に集めていたのでとても狭かった。カイム&シュリ&クレージュの3人が何やら話していたのでそちらに俺達も近づいた。
「無事でなによりだよ、クレージュさん」
「テツヤさん! はい、本当にありがとうございます」
「テツヤくん、クレージュさん救出の依頼もあるし早く帰りたいと言う人も居るから今から1度皆をフィルド村に連れて行こうという事になんたんだけど」
「それで良いんじゃないか、1番近い村だし村長も知らない仲ではない。ただすぐは無理だな夜の森をこの人数で歩くのは得策ではない。皆には悪いが朝になるのを待って出発しよう」
「そうね、それじゃみなさんに説明してくる」
「頼む、1階と2階に分ければ何とか寝れるだろう。シュリは中で護衛していてくれ、俺とカイムは外で見張りをするから」
「テツヤさん、あの・・」
レティーナ王女は不安げな顔で俺を見てくるので、頭を優しく撫でて安心させシュリとクレージュの近くにいるように伝える。説明が終わってシュリが戻ってきたので俺とカイムは外に出た。
「テツヤさん、あいつ等せっかく攫った人達をあっさり放棄したけど何でだろ?」
「ダナンが言ってただろ、あいつら等の依頼主は騒ぎを起こせばいいだけで誘拐は勝手にやったことだって」
「あぁ言ってたね、でもたしか王女の誘拐は依頼を受けたって言ってたよね。なのに王女まで放棄するなんてちょっと変だよ」
「まぁな、考えられるとしたら王女の誘拐で当初の目的が達成できたから必要無くなったってとこか」
「なるほどねぇ、それじゃこれからの問題はその目的かな」
「・・・・俺が考える中で一番可能性が高いの王都の戦力分散だ」
「! それってあいつ等が王都を攻め込むって事? さすがにそれは考え過ぎだよ」
「だといいがな。もう寝よ、朝になったら彼女達を送るのに体力を使うからな。2時間おきに交代だ、すまんが先に休ませもらうぞ」
そう言って俺は横になり交代で見張りを続けたが、特に何もなく朝を迎えた。
朝になったので彼女達を連れてフィルド村へ向かう、途中の魔物は回避は難しいと判断しカイムは護衛に徹し俺とシュリで速攻で排除していった。村に着くまで不思議だったのはレティーナが戦っている以外ずっと俺に引っ付いて手を握っていたことだ、何故か懐かれてしまったようだ。
村に着くとスルト村長が喜びながらクレージュを抱きしめ、近くにミゲル達が居るのに気付いた。
「やっ! ミゲルさん達も来てたんだ」
「おぉ、お主らか! 儂等は今しがた着いたところじゃ。しかし、後ろの女性達を見る限り事件は解決したようじゃな」
「犯人は逃げられてしまったけどな。ミゲルさん達が居てくれたのはちょうど良かった、女の人達を馬車で各村に送って上げてくれないかな? 俺達馬車持ってないから送り届けるのに時間かかるし」
「それくらいお安い御用じゃ」
「それと、ミゲルさん達がここに来る前に王都に変わった事は無かった?」
「? いや、いつもと変わらずといった感じじゃったが」
(そうか、やっぱり俺の考え過ぎか・・)
「それよりお主の後ろにおる女の子はもしや・・・・」
「ん? あぁ、レティーナ王女だよ。攫われていた人達と同じとこに捕まっていたからなんとか救出できた」
「!! これは失礼致しました、レティーナ王女様、此度はご無事でなによりです」
「ありがとうございます、貴方方も私達の捜索お疲れ様でした」
「いえ、勿体無いお言葉です!」
「それじゃ俺達も王女を城へ連れて行くとするかな」
「だったら王女の護衛として儂とフォーリアがついて行くとするか」
村長がお礼に泊まっていって欲しいと言ってきたが皆をいち早く送り届けたかったので丁重に辞退し、攫われていた女性達がミゲルの団が所持する馬車に乗り込み出発したのを確認して俺達6人も馬車に乗って王都へ向かった。




