救出編第1話Act2-5
Act2-5
~栄光かさもなくば死を!~
2階席から見ればは赤茶白黒のモザイクしか見えないほど人が密集しているのだろう。大人数が1箇所に集まった時の特有のBGMが聞こえるだけだ。ほぼ全ての視線が出演者のいないステージを向いていた。・・・元が操るモニターに映っている光景だ。といっても装置が存在するわけではない。
「やるぞ・・・」
岬がモニターを見ながらスタッフに語り掛けた。
「演出の準備はOKだ」
元もモニター越しに答えた!
「斎藤、あなたのチームがNo.1よ・・・それにふさわしくね!」
「打ち上げやりましょう!」
岬はメンバーたちに目を合わさない。無視しているわけではなく、視線を向けなければならない方向があったからだ。その証明として、左手を上へを挙げ、わずかな動作で楓たちに振った。
それを見た元がモニターを指先で素早くタッチした!
直後に岬は下へと落下していった!
「道路が混んでるからヘリからダイブしてきてしまったよ!道路が混んでるからヘリからダイブしてきてしまったよ!」
「あるわけねーだろ!」
「さて、観客の皆さん、我等がWOFCoの新作発表に来ていただきありがとう」
チームメンバーは全員無言だった・・・
「新作はフルダイブ型のVRソフトだ」
そして岬の動作、発言を黙って見つめていた。
「説明の前にVRゲームのお勉強と行こう」
部長も、当然の如くモニターを瞬きを全くせずににらみつけていた。口角は下がっていたが、怒りや不満ではないようであった。
「今のVRなら知っての通り、見た目は現実と遜色ない」
岬、そして愛理沙の動きに合わせ、楓の自信作が出現した。
「?あれ?クリーチャーが岬に寄り過ぎてる?」
元が手を止められない状況にも関わらずわざわざ集中力を分散させてまで発言した。
「明美じゃないんだから、いじりませんよ」
「でも、こいつらの中身は100年前のコンシューマビデオゲームから変わってない」
「ウガガガガガガガガーーーー!!!!!!!!」
そんなことなど気付きもしないクリーチャーが暴れまわる!
「頭がちょこっと良くなってアウ!」
元の懸念通り、岬がクリーチャーに襲われた!
「あー・・・やった・・・」
歯ぎしりをする元
「まあ受けてるから大丈夫でしょう?」
愛理沙が一瞬だけ目じりを下げ、直後に口角も下げた。それを見逃さなかった人物がいた。
「宴会は大友の驕りね・・・反論はないわよね?」
部長は子供の悪戯を発見した親の表情で愛理沙にゆっくりと、そして耳元で囁いた。
「・・・え?」
わけがわからないという表情になる愛理沙。だが、部長は容赦せずに証拠があるという口調で話しかけた。
「自白はとれたし・・・」
「・・・あう・・・」
もはやこの場で愛理沙に打つ手は存在しなかった。
「こいつには後でお仕置きしておこう・・・」
スタッフルームでの尋問をよそに、岬は予想外のトラブルと失笑を切り抜けたようだった。
「続きだ。どこまで話したかな・・・そうだ!このやんちゃボウズのことだった。頭がちょこっと良くなって、それでもこんなんだが・・・あとは、ポリゴンの数が増えたくらいだ」
共犯たるクリーチャーも知らん顔で自分の役割を果たすべく観客席の方へ移動し始めた。
「さらにだ、見た目はリアリティが出たのに、触っても木なのか生物なのかもわからないときた」
事件の真相を知らない観客たちは、あらかじめ予想されていた通り、クリーチャーをもみくちゃにし始めていた。
「VRは今でも騒がれてるけど、触れた途端にただの人形劇になってしまう」
「見た目だけなら観光旅行なのにね」
「だが、そんな人形劇とはもうおさらばだ!」
問題児が消滅した。
「WOFCoは新しい世界を創造する!」
「新世界の名、それはT-W-H-a-R・・・TWHaR!」
「今宵、その一端をお見せしよう!」
「もう、事故なんて起りませんよね?」
「浅井が思わなければ!」
チームで無数のレビューを繰り返した映像が流れ始めた。
「いかがだっただろうか?」
「このTWHaRは今までの人形劇擬きとは違う3つの特徴を持っている!このTWHaRは今までの人形劇擬きとは違う3つの特徴を持っている!」
楓たちは一言も話さなかった。
「1つ!触覚と味覚の再現!」
「2つ!じっくり遊べる!」
「3つ!異世界旅行ができる」
「順番に説明しよう!」
岬のプレゼンに耳を傾けるのみだった。
「まず、触覚と味覚の再現についてだ!」
「手元のジュースを飲みながら・・」
観客の手は誰に差し出されたかわからないジュースが入ったグラスをつかまされた。
「さあ・・・来い!いいの頼むぞ・・・」
期待以外の感情が存在しない口調で元が呟く・
「よし!」
観客の顔を見た元が喜びのジェスチャーを示した。
「そしてこいつにセクハラしながら聞いてほしい」
「VRでの食事はユーザーの長年の夢だった。我々はそいつをこの新作に詰め込んだ!触覚も同じだ!一度体験すれば、もう、砂と水道水と木工細工だけの世界には戻れなくなる!」
「・・・少し長くなってしまったな」
「2つ目の話に移ろう。諸君の中にはVRをやって現実の予定をダメにした経験がある人は多いだろう。でも、そんな醜態とはおさらばだ!」
「TWHaRの世界で1日過ごしても現実は1時間しか経過しない!」
「つまりだ!24倍の時間があれば現実の予定をVRのせいでダメにすることはないだろう!」岬「最後だ!TWHaRの世界は現実以上に行動できる!旅行したっていい!生活もできる!モンスター相手にスーパーヒーローにもなれる!・・・ただし、犯罪はダメだぞ!」
「さて・・・どこの国にもあることだが、この世界に入るには手続きが必要だ」
「WOFCoがこれを代行する」
「具体的には\59,000で新世界へのパスポートを発行しよう!」
「希望者はWOFCoに名乗り出てほしい!」
プレゼン終了の合図は観客が代行してくれた。
「シャンパンは必須ですね?」
「良く分かってるじゃない」
満足度の高い顔をしている部長と楓だった。
「・・・安いやつ・・・」
グレープタイザーと言いたそうに落ち込んでいる愛理沙。
「こういう時は○ンペリに決まってるのよ!」
そんな状態でも部長は情け容赦がなかった。




