救出編第1話Act2-4
Act2-4
~プレゼンに向けて~
透明な丸テーブルは4人に囲まれていた。中央には投影モニター、そしてモニター内には台本らしきセリフが大量に書き込まれた電子書類・・・岬たちは眉間にしわを寄せてそいつをにらみつけていた。
「・・・」
「・・・スタンダードですねー」
「うーん・・・作成者は武田先輩ですね?」
「?僕は会場の選定だけど?」
「長尾に頼んだ俺がバカだった・・・」
「没ですね・・・」
イラついた雰囲気が漂っていた。”別のやつに頼めばよかった”・・・無言の後悔がにじみ出ているようだった。
「岬・・・長尾の尻拭いはちょっと置いておいてほしんだが・・・」
様子をうかがいながら元が挙手をした。
「?」
「実は・・・プレゼン会場がぶんどられた」
「!何がどうなった?」
事実を信じ込むような顔ではないことだけは確かな表情に変化した。
「下手人は社長なんだがな・・・」
言いにくそうに答える元・・・
「・・・そんなアホなことするか?あのひねくれ社長が?」
「いや、ホント・・・出来の悪いギャグマンガだよ、これじゃあ」
「くそ!外部に取るか!」
迷える岬に助け舟を出した人物がいた。
「あの・・・VRゲームのプレゼンなんですから・・・VRスペースでやったらどうでしょうか?」
「「「!」」」
3人が視線と顔の向きが発言者に集まった。
「それだ!楓に座布団1枚・・・いや、3枚だ!」
「流石ガネーシャチーム!地の果てまで考えが飛んでるわね!」
なぜか5人目の発言者の声がした。その声に反応して、4人の視線は瞬時に入口へと動いた!
「VRなら同時実況中継も楽よね?」
無理難題を配下に押し付ける独裁者の如き笑いを浮かべながら部長が意見・・・とはもはやいうことができないであろう命令を下した。
「?!」
「かのプレゼンの神様を超えるやつにして頂戴ね?」
「・・・」
さらにハードルを上げられ黙ってしまった4人。意図が全くもって不明だが、部長は左手で持っていた鞄に右手を入れ込んだ。彼女の手が鞄から出てきたとき、四角い物体を掴んだ状態であった。直方体であったが、物が入るような構造ではない。中身は紙が方向をそろえて重なっているようだ。光沢を帯びていて、中央には黒いロングTシャツを着た”プレゼンの神”と呼ばれていた50代であろう男が印刷されていた。”プレゼンの神”は印刷の中で聴衆を各人の夢に導こうと全身全霊でプレゼンをしていた。それを見た4人は口を全開にして、凍り付いた・・・。自分たちがよく知る、そしてファンであるアイドルがどこからともなく出現して、声をかける間もなく通り過ぎてしまったかの如き反応であった。
部長はゆっくりと驚きの源を岬の目の前に動かした。岬はそれを心をどこかに置いてきてしまった表情で受け取った。
「・・・」
完全に黙り込んでしまった岬と元。2人のためなのかは不明だが、女性陣が沈黙を破った。
「高いの?」
「100年近く前なのに保存状態が良すぎる・・・たぶん値段なんてつけられない!」
「・・・」
「わざわざ紙の本を?」
それが岬がこの場で放った最後のセリフになった
「社長に言ったタイトルを思い出しなさい」
部長に言われたきり、岬は前時代の遺物を持ったまま動かなかった。
「もう休憩時間かしら?」
休憩時間をはさみ、会議が再開された。
「”新しいVRの歴史書を書き出す!”ってのはどうだろう?」
「いい案だな・・・挑戦的で」
「もっと大きくいきましょう!”電話を再発名する”ならぬ”新世界を創造する”とか!」
「大友の案に一票ね」
なぜか会議の参加者が5人に増えていた。
「私も愛理沙に」
もう人数なんてどうでもいい・・・それでも内容は吟味する発言が続いた。
「・・・今回のアイデア大会の優勝者は大友で決定だ。元は再挑戦してくれ」
意見を退けられた方が残念がった。
「次だ・・・登場シーンをどうするか・・・俺なら客席から登場するかな?」
「手堅い策だね」
支持者は多かったが、岬の案にこの場にいた最高権力者は不満があったようだ。
「・・・500年前じゃできなかった演出のほうがいいかもね」
しばらく沈黙が流れる・・・だが楓だけは違った。
「天井から落ちてくるなんてどうかしら?」
「それで行こう!」




