救出編第1話Act1-4
Act1-4
~齋藤岬の野望1~
部屋の中でたった2人、岬と部長が向かい合っていた。2人の間の障害はタブレット1つだけだった。
「”企画書”です」
岬がタブレットを反転させた。
“人間力と組織力を育てるVRゲーム”
というタイトルが表示されている。
部長は差し出されたタブレットを押収し、ページをめくっていった。
「・・・ゲームで?」
タブレットをテーブルに放棄して、部長が問いかけた。
「あのクソチーフを見て思ったことです」
「まあ・・・反面教師にはなったでしょう?どうしようもないクズだったけど」
「奴はVRゲームで人を虐めるが好きで、学生時代・・・社会人時代も“それ”ばっかでした。そして誰からも甘やかされてエゴの塊になった”クソッタレ”です!」
完全に私情が入った個人批判を敢行した。だが、ここにはこれを否定する人物は存在しなかった。
「今、似たような”クソッタレ”共が周りを汚染して被害者が量産されつつあります。その製造元は・・・”俺等”です」
岬の主張を聞いた瞬間、部長は昔のビデオゲームにあったCOM特有のインチキスピードの如き速さで反応した。両手を自分の手が圧潰するほどの強さで握りしめて、自身の胸の前に持ってきた。脇は当然のことながら引き締めている。“これからストレートを放ちます”という雰囲気だった。
「!聞き捨てならないわねえ・・・!本気で言ってるんだったら、今すぐ私の下から異動してもらうことになるわよ!・・・反逆者の制裁は組織に欠かせないことだからね・・・覚悟しなさい!」
粛清の前にパンチの方が飛んできそうな状況だったが、岬の顔は恐怖の表情へ変化することはなかった。それどころか、どこかニヤけた表情に変化した。そして、首を横に振って切り返した。
「言っているのは”クソッタレ”共の保護者です。その”保護者のクソッタレ”共が俺等のイメージを決めてるんです!まあ、そこをなんとかするのが今の俺ですから」
「・・・続けて」
“戦闘態勢”を解いて話を続けさせた。
「この”クソッタレ”共も”被害者たち”も”ゲームで遊ぶ”のが大好きです。ですから、”そんなにゲームが好きなら、ゲーム中で教育してやるよ!”ってことです
しばらくの沈黙があった。そして、部長が口を開いた。
「・・・崇高ね・・・うーん・・・50点かしら?
岬は下を向き、残念がった。だが、その動作は何処か嘘くさいものだった。
「目の付け所はいいわ・・・ただ、”これ”を前面に出してしまうと”クソッタレの被害者たち”は逃げてしまうわ」
「!」
「面白くないことなんて進んでやりたがる奇特は少ないわ」
「・・・」
「それに”我々は教育ソフトも出してるぞ”なんて言うのも偽善になるわね」
「・・・」
部長の一言一言に対して頷いていく岬。
「私なら・・・」
部長が言いかけたが、岬は掌を部長に突きだして“アタックチャンス”を無理やり作り出した。顔は勝利を確信したかのような笑顔だった。
「”トロイの木馬”にしますか?」
この答えを待っていたかのように部長も微笑んで、指を岬に突きだした。
「座布団一枚!」
「あと1週間あるわ。”木馬”を持ってきなさい!」
「思わず玉座の間に飾りたくなるような奴を作ってきますよ!」




