仮想編第1話Act3-2
Act3-2
~黒い鎧~
噴水だったのだろうか?円形の人工池が見えた。周囲には灰色の木が等間隔で生えている。見た感じは綺麗そうな水で満たされていた。
(!)
クァンタムにあった鳥居があった。ここも、この島の出入り口なのだろう。
(なにも出なければいいが)
慎重に踏み出す・・・足が沈む!私の脛の真ん中あたりまで水深があるようだ。足を持ち上げる・・・抵抗が強い・・・いや、強すぎる!普通の水ではないようだ。ゲル状接着剤みたいだ!足首に不快なほどまとわりついてきた!
(!)
何もないところから人型の物体が出現した!デカい・・・!目測5mオーバーはあるだろう。そいつがまっとうな人間でないことは確実だ。透明だった奴に色がついてくる。真っ赤な頭蓋骨が明らかになったが、皮膚や筋肉、内蔵が出現する様子はない。
(躰もそうなのか?)
こっちは黒い全身鎧を着ていた。
(まさかの単独でBoss戦に挑むことになるとは!)
「我が敷地内から来るとは・・・面妖な!」
黒鎧が口(骸骨だとすればだけど)を開いた。
「・・・1人か・・・。ではこのゴーディ、貴女に敬意を表して一騎討ちにて応じよう!」
黒鎧改めゴーディが突撃してきた!この場は奴にとってはただの石畳と変わらないようだ。一騎打ちとか言ってたけど、正々堂々バカ正直に戦うわけではないようだ。
こちらは機動力を発揮できない。圧倒的に不利な地形だ。もう逃げるしかない!誰になんと言われようと!
ポーションと取り出して・・・ブン投げた!・・・ひるまない!顔面に命中したのに!
(出なければ!)
敵の払いを回避し損ねた!両足に衝撃が!尻餅をついてしまった。
起き上がろうとするが、脚が動かない・・・!違った、膝から先が存在しなかった。両足が切り飛ばされたようだ。
(一撃で?!)
HP的には大ダメージ・・・というわけではないのに!
奴が長剣を振り下ろすのが見えた!とっさに転がって回避!・・・したはずだったのに左肘に衝撃が!ついでに空中に跳ね上げられた!
もともとあった“足に斜線が引かれたマーク”の右に“手に斜線が引かれたマーク”が追加されてしまった。
(・・・迂闊だった・・・名乗っている間に逃げるべきだった!)
胸に衝撃を受けた!私の躰からポリゴン片が吹出すのが見えた!
(ここで・・・死ぬのか?)
痛みはない。死ぬって・・・不快なものだな・・・。
自分のHPゲージに目が行ってしまう・・・!まだ半分近く残っていた!
自分の胸元を見る・・・小ぶりな膨らみは見えるが、シャツの襟も裾もスカートも見えない!どうやら服が壊れただけだったようだ。
胸の間に白い棒状のものが・・・!剣で串刺しにされていた。
「あっけない・・・」
こいつ・・・遊んでるのか?右腕だけで何かできれば・・・
「だが、幕だ!覚悟は・・・良いな!」
奴が走り出した!後を見る・・・。奴は木に向かって突撃しているのだろう。
私を磔にするつもりなのか?まだ死にたくない!戻ってやるべきことが!
右腕を後へ突きだす!木に触れた!少しだけ突撃の角度がずれた!
木の脇を通過した!
(!)
正面を向くと黒鎧が木とオフセット衝突を起こしていた。慣性で抜けてくれるはず!
ゴーディが視界の中で急速に小さくなる。同時に目に映る木の数も徐々に増えていく!
あまり遠くには飛ばない様だが、とりあえず脱出には成功した。
背中に衝撃を受けた!着地・・・と言うよりも墜落だ。
(セーフ!)
視界に映るのは雲と・・・何やら黒い棒!しかも向かってくる!
(ぶつかる!)
かろうじて躱す!
もうHPが一桁しかない・・・とりあえず回復しなくては・・・
メニューを開く。
(・・・!)
右腕を目の前に持っていこうとしたが、肘から先が存在しなかった・・・薬瓶を握れない。回復が・・・
(・・・これ・・・どうしよう・・・)
見つかると・・・マズイ。隠れなくては・・・。早く回復してくれ!
(!)
間近に人の顔が?茶髪ショートヘア、多分ウルフカットで黒い戦闘服を着た10代後半の少女っぽい?その子がにっこりと笑った。
(見られた!しかも作り笑いされた!)
固まるのは危険すぎる!逃げなくては!
「私もプレーヤーよ。Mobじゃないわ」




