仮想編第1話Act1-2
Act1-2
~きっかけ~
プラスチックでコーティングされたページをめくった。
・・・僕の今の価値って何があるっけ?
(VRでしか顔見れない人間・・・じゃダメ・・・だよな)
突然文面が見えなくなってしまった。代わりに飛び込んできたのはエリカ姉の上半身だった。
「"歴史上の名言、迷言集 2019年出版”・・・50万以上はかかったでしょ?」
「紙の本がやっぱり読みやすいんだよ」
「電子本100冊分の価値は?」
「僕にとってはある」
いつの間にか本の代わりに紙箱を掴まされていた。何やらCGっぽい絵が全体に印刷されている。廃墟と空飛ぶ要塞なのだろうか?もっとも、こんなパッケージに見覚えはない。” TWHaR”・・・!
「βテストのご褒美よ」
後ろから声を掛けられた。振り向くと、妹が立っていた。
「そんな特典があったんだ。・・・で、なんで4つも?」
「特典がソフト2本だからよ」
「一個は学兄へのプレゼント」
「ありがとう・・・」
「どうしたの?」
「そろそろ引退を考えてたんだ・・・」
「よく言った!これほど早くこようとは!お姉さんは嬉しい!」
エリカ姉が両腕を広げて迫ってきた!びっくりしている間に密着された。胸に柔らかいモノが押しつぶされる感触が・・・長く続かなかった。
「ってことは?」
「ちょっとVRと距離を置こうと思ってたんだ」
「あっちの仲間を放り出して?」
「別れは言うよ」
「戻ってこない?」
「もう決めたことだから」
「そっか」
「今夜の0時から開始だから遅れないでね」
妹はやる気満々だ。
「待ちなさい!」
「・・・ヤバイ!」
逃げ出した!しかし回り込まれてしまった!
「試験はどうなったのかしら?」
「あう・・・」
エリカ姉の顔を見ようとしない。つま先があさっての方向を向いてる。
しばらく固まる。回れ右して・・・僕の方へ向かってきた!
「グェ!・・・」
足だけ前に出して止まった。どうやら襟首を掴まれたようだ・・・学生服の襟が伸びきるんじゃないかと思うほど変形している。これは落ちたな。残念だが、2人で始めることになりそうだ。
「お気に入りがー・・・降伏!するから離してー」
ようやくタブレットをエリカ姉の前に取り出した。回り込んでそいつを覗き込む。
“(略) 貴女は帝国科学大学理工学部エンターテイメント研究科に合格したことを証明します”
・・・エリカ姉の顔を見ると、固まっていた。もちろん無言で。コメントしがたい予想外な事件だ。
「作戦成功!」
顔全体で笑っていた。多分勝利の笑みなのだろう。ガッツポーズまでし始めた!
「・・・後ろめたくする必要あったの?」
「ヤリタカッタダケー」
堂々と自慢できることじゃないのか?
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プレゼントを持って自室へ向かう。50万の本は本棚にしまってっと・・・
“♪♪♪♪♪~♪♪♪♪♪♪♪~♪♪♪♪♪♪♪”
聞きなれたBGMが聞こえた。スマートフォンを取り出す。着信は・・・恭介からだった。大体あいつの言いたいことは想像つく。あのゲーマー学生の顔が見える前から先制攻撃を仕掛けた。
「今夜のことだろ?」
「オメデトウ!織田学は引きこもり学生からエスパー学生に進化しました!」
予想した通りのニヤケ面だ。誰が引きこもりだよ・・・
「茶化すなよ・・・βの話、ぜひ聞かせてくれ」
「サービス開始まで守秘義務があるんだ。向こうの広場の南端で待ってる。アバターネームは・・・」
「テウルギアだろ」
「マジでエスパーになったか?」
「お前がこれ以外の名前を使うとこを見てみたいくらいだ。・・・それと、言っときたいことがある」
「どうした?」
「今回でゲームは引退する」
「さびしくなるな。・・・って学からVRゲーム取ったら何残るんだよ」
「これから残すのさ」
「リアルでのコミュ、大丈夫か?」
「何とかなるさ。こいつは背水の陣だ」
「いつでも戻ってこいよー」
「それじゃあ陣の意味がないぜ。・・・向こうでセレモニーをやろう!悔いが残らないように!」
「こっちも派手に見送ってやるぜ!また今夜にな!ぶっ飛んだな格好してけよ!」
「言われなくとも!」




