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仲の良かった親友の計画によって嘘告された俺。その話を聞いた親友の妹がブチギレた  作者: 白金豪


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第23話 追放

(今村和美視点)


「いやだ〜〜! いやだ〜〜!」


「…………」


 うるさい。


「絶対にいやだ〜〜!!」


「…………」


 うるさい。


「お願いだから許してえぇぇぇぇ!!」


「……うるっさいなぁ」


 ベッドの上でスマートフォンを触っていた私は思わず顔をしかめた。


 あれから三日ほど経った。


 パパとママに全部を話してからというもの、我が家の空気は完全に変わっている。


 もちろん。


 原因は、あれ。


 私の兄。


 今村和哉。


 ……いや。


 今はもう兄なんて呼ばないと決めたんだった。


 あれでいい。


「いやだぁぁぁぁぁ!!」


「もうっ!」


 何回叫ぶの!?


 さっきからずっとこれだ。


 しかも声が大きすぎる。


 私の部屋まで普通に聞こえてくる。


 イヤホンをして無視しようかとも思ったけど、ここまで騒がれると逆になにが起きているのか気になってきた。


「いい加減にせんか!!」


「ひぃぃぃぃ!?」


「……パパ?」


 今度はパパの怒鳴り声。


 私はスマートフォンをベッドへ置いた。


 ……なにしてるんだろ?


 仕方なく立ち上がる。


 部屋のドアを開けて廊下へ出ると――。


「いやだ! 親父! 話し合おう! な!? 俺たち家族だろ!?」


「今さらなにを言っとるんだ!」


「家族なら話し合いが大切だろ!?」


「もう終わった話だ!!」


「まだ足りない! 全然足りない!」


 ……なにこれ。


 目の前では意味の分からない光景が広がっていた。


 あれの部屋のドア。


 そのドアノブをパパが両手で掴んでいる。


 そして。


「出てこい!!」


「いやだぁぁぁぁ!!」


 あれが部屋の中から必死にドアを閉めようとしていた。


 パパが開けようとする。


 あれが閉めようとする。


「ふんっ!」


「ぐぬぬぬぬぬぬ!!」


 ドアが少し開く。


「うおおおおおおお!!」


 あれが押し返す。


 ドアが閉まりかける。


「観念しろ!!」


「いやだぁぁぁぁ!!」


 また開く。


「絶対に出ないからな!!」


「いい加減にせんか!!」


 また閉まる。


「…………」


 なにやってるの?


 さっきまでうるさいと思ってたのに、ちょっと面白くなってきた。


 熱い攻防戦。


「和哉!! 手を離せ!!」


「嫌だ! 離したら終わる!」


「分かってるならさっさと離せ!」


「だから嫌なんだよ!!」


 確かに。


 珍しく話が噛み合ってる。


「親父! 頼む! 俺、本当に反省してるから!」


「その話はもう聞いた!」


「もっと聞いて!」


「聞かん!」


「聞いてよぉぉぉぉ!!」


 ……必死だなぁ。


「ふんっ!!」


「うわっ!?」


 あ。


 一気にドアが開いた。


 パパが思いっきり引っ張ったせいで、あれの体が部屋から飛び出してくる。


「ぐあっ!?」


 そのまま廊下に転がった。


「いってぇ……」


「…………」


 弱っ。


「よし」


「よし、じゃないよ!」


 あれが慌てて立ち上がろうとする。


 だけど。


「逃がすか!」


「うわっ!?」


 パパの右手が伸びる。


 ガシッ。


 あれの首根っこを掴んだ。


「さっさと行くぞ!!」


「いやだぁぁぁぁ!!」


 また始まった。


「親父! 待って! お願い! ちょっとだけ! あと五分だけ話そう!」


「話すことはない!」


「じゃあ三分!」


「ない!」


「一分!」


「黙れ!」


「三十秒!!」


「うるさい!!」


 パパが歩き始める。


 当然、首根っこを掴まれたままのあれも一緒に動く。


「ちょっ! 待って! 自分で歩く! 歩くから!」


「信用できん!」


「本当に歩くって!」


「さっきもそう言って部屋に逃げただろうが!」


「…………」


 あ。


 逃げたんだ。


「今度は逃げない!」


「もう騙されん!」


「親父ぃぃぃぃ!!」


 ズルズルズル。


 あれの足が廊下を滑っていく。


 ……すご。


 本当に引きずられてる。


「いやだ〜! 俺が悪かった〜! 許して〜〜!」


「遅い!」


「もうしないから!」


「当たり前だ!!」


「信吉にも謝る! 土下座する!」


 ピクッ。


 私は思わず眉を動かした。


 信吉さん。


 その名前をこいつの口から聞くだけでイライラする。


「だったら最初からやるな!」


「ごもっともですぅぅぅぅ!!」


 ……。


 ちょっと笑いそうになった。


 ダメ。


 笑っちゃダメ。


 私は怒ってるんだから。


「行くぞ!」


「いやだって!」


 パパが階段へ向かう。


 あれは手すりへしがみついた。


「待って! 階段! 階段は危ないって!」


「なら自分で歩け!」


「じゃあ首を離して!」


「逃げるだろ!」


「逃げない!」


「信用できん!」


「なんで!?」


「お前が聞くな!」


 パパがあれの手を手すりから引き剥がす。


「ああああああ!!」


 そのまま階段を降り始めた。


「ちょっ! 待って! 足! 足が!」


「自分で動かせ!」


「無理! 首掴まれてるから!」


「なら黙って来い!」


「理不尽だぁぁぁぁ!!」


 ズルッ。


「うわっ!」


 ズルズルッ。


「痛い痛い痛い!」


 階段ですら引きずられてる。


「…………」


 私はその後ろをついていった。


 なんだろう。


 すごくシュール。


 階段を降りるパパ。


 その後ろで半泣きになりながら引きずられているあれ。


 さらにその後ろを歩く私。


「和美ぃぃぃ!」


「…………」


「助けて!」


「やだ」


「即答!?」


 当たり前じゃん。


「お願い! お兄ちゃんを助けて!」


「誰がお兄ちゃん?」


「俺だよ!」


「知らない」


「和美ぃぃぃぃ!!」


 知らない知らない。


 私はなにも見てませーん。


「お母さぁぁぁん!」


「ママなら買い物」


「なんでこんな時にぃぃぃ!?」


 知らないよ。


 タイミングが悪かったね。


 そのまま一階へ到着。


 パパは一切手を離さない。


 あれは玄関が近づいてきたことで、さらに焦り始めた。


「待って! 親父! 本当に待って!」


「もう待たん」


「心の準備が!」


「三日あっただろ!」


「足りない!」


「知らん!」


「親父ぃぃぃ!」


 パパは玄関で靴を履く。


 あれも無理やり靴を履かされた。


「嫌だ! 行きたくない!」


「知り合いが来てるからな。あとは任せるからな」


「その知り合いが怖いんだよ!!」


「知らん!」


 パパが玄関のドアを雑に開けた。


 昼間の明るい光が差し込んでくる。


「ほら、行け!」


「待って! 待ってって!」


「せいぜい頑張って来い!」


「なにを!?」


「色々だ!」


「説明が雑すぎる!」


「いつ会えるかは分からないがな」


「そんなぁぁぁぁぁぁ!!」


「行ってこい!!」


「いやぁぁぁぁぁぁ!!」


 パパがあれを家の外へ放り出した。


「うわぁっ!?」


 ドサッ。


 玄関先に転がるあれ。


「いってぇ……」


 その姿を見ながら私は玄関から少しだけ顔を出した。


 すると。


「…………」


 誰?


 家の前に知らない男の人が立っていた。


 坊主頭。


 体も大きい。


 なんというか。


 すごく強そう。


「あとは頼んだぞ」


 パパがその人に声を掛ける。


「うーす!」


 坊主の男性が軽い調子で片手を挙げた。


 その返事を聞いた瞬間。


 地面に転がっていたあれの顔が引きつる。


「…………」


「…………」


「…………」


「ほら! 行くぞ!」


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 坊主の男性があれの腕を掴む。


「立て!」


「嫌です! 嫌です! 俺、ここに住んでるんです!」


「知ってるよ!」


「じゃあ家に帰してください!」


「今出てきたばっかだろ!」


 強引に立たされる。


「親父!」


 あれが振り返った。


「お父さん!!」


 パパは無言。


「お母さん〜〜!!」


「いないぞ」


「和美ぃぃぃぃ!!」


 私は無言。


「誰でもいいから助けてぇぇぇぇ!!」


「ほら、行くぞ!」


「いやだぁぁぁぁ!! ごめんなさい〜〜! もうしませんからぁぁぁ!!」


 大泣き。


 本当に泣いてる。


 顔ぐちゃぐちゃじゃん。


「お父さぁぁぁぁん! お母さぁぁぁぁん!」


 ズルズルと連れていかれる。


「ごめんなさぁぁぁぁい!」


 泣き声がどんどん遠ざかっていく。


「和美」


「ん?」


「閉めるぞ」


「あ、うん。分かった」


 パパは最後まで見届けることすらしなかった。


「待ってぇぇぇぇぇ!!」


 あれが遠くから叫ぶ。


「お父さぁぁぁぁん!!」


 パパがドアノブへ手をかける。


「ごめんなさぁぁぁぁい!!」


 バタン。


「…………」


 静かになった。


 さっきまで見えていた大泣きする顔。


 家の外から響いていた泣き声。


 全部。


 玄関のドア一枚で綺麗に遮断された。


「…………」


「…………」


 パパと私だけが玄関に残される。


 なんだろう。


 さっきまであんなに騒がしかったのに。


 急に静かになると変な感じ。


「パパ」


「なんだ?」


「あれ、どこに行くの?」


「知らん」


「知らないの!?」


「俺の知り合いに任せた」


「大丈夫なの?」


「死にはせん」


「基準そこなんだ……」


 思わず苦笑する。


 パパは何事もなかったみたいに靴を脱いだ。


「しばらくは静かになるだろ」


「…………」


 私は閉じられた玄関のドアを見る。


 確かに。


 静か。


 ものすごく静か。


「……まあ、いっか」


 信吉さんをあんなに傷つけたんだから。


 ちょっとくらい。


 いや。


 いっぱい反省してくればいい。


 私はくるりと玄関へ背を向ける。


 そして階段へ向かおうとした、その時。


「お父さぁぁぁぁぁぁん――!!」


 外から声が聞こえた。


「…………」


 まだ聞こえるんだ。


 私は階段へ足をかける。


「頑張ってね」


 もちろん。


 助けるつもりは一切ないけど。


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