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仲の良かった親友の計画によって嘘告された俺。その話を聞いた親友の妹がブチギレた  作者: 白金豪


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第13話 帰り道

 帰りのホームルームが終わった。


「はい。寄り道しないで帰るように」


 担任がそう言って教室を出た瞬間、静かだった教室が一気に騒がしくなった。


「やっと終わったー!」


「今日どこ寄る?」


「駅前行こうぜ」


 椅子を引く音やカバンのファスナーを閉める音。


 あちこちから聞こえてくる話し声。


 みんな待ってましたと言わんばかりに帰る準備を始めていた。


「…………」


 俺も机の横にかけていたカバンを持ち上げる。


 教科書と筆箱を入れて忘れ物がないか机の中を確認した。


 別に急ぐ必要はない。


 どうせ帰ったところで、なにか予定があるわけでもないし。


「よし」


 カバンを肩にかけて席を立つ。


 教室の後ろの扉から廊下へ出たところで、見覚えのあるピンク色の髪が視界に入った。


「あっ」


 向こうも俺に気づいたらしい。


 窓際に立っていた和美ちゃんが、ぱっと表情を明るくした。


 そのまま小走りでこちらへ近づいてくる。


「信吉さん、一緒に帰りましょ」


「えっ?」


「帰りませんか?」


「ああ。分かった」


 あまりにも自然に誘われたせいで返事をしてから少し遅れて胸が騒ぎ出した。


 和美ちゃんと一緒に帰る。


 昨日も一緒に帰ったのに今日はなぜか妙に意識してしまう。


「どうしました?」


「いや、なんでもない」


「本当ですか?」


「本当だよ」


 和美ちゃんは少しだけ俺の顔を覗き込んだ。


 紫色の瞳と目が合う。


 近い。


 思わず顔を逸らすと和美ちゃんが小さく笑った。


「じゃあ行きましょう」


「うん」


 俺たちは並んで廊下を歩き始めた。


 まだ残っていたクラスメイトたちの視線が背中に集まっている気がする。


『またあの子が来てる』


 そんな声も聞こえた。


 できれば聞こえないふりをしたかったけど、足がほんの少し速くなってしまう。


「信吉さん」


「なに?」


「そんなに急がなくても私は逃げませんよ」


「べ、別に急いでないよ」


「そうですか?」


「そうだよ」


 俺の歩幅に合わせるように和美ちゃんも足を速める。


「和美ちゃんまで速く歩かなくていいから」


「だって一緒に帰るんですから」


「そうだけど」


「同じ速さで歩かないと一緒になりません」


「じゃあ俺が遅くするよ」


「そうしてください」


 和美ちゃんが満足そうにうなずく。


 俺は少しだけ歩く速度を落とした。


 それに合わせて和美ちゃんも元の速さへ戻る。


 横を見ると俺より少し前に出ていた和美ちゃんが半歩だけ下がった。


 肩が並ぶ。


 ただそれだけなのに、さっきまで気になっていた教室からの視線がどうでもよくなってきた。


 昇降口へ着き、俺たちはそれぞれ上履きを脱ぐ。


 和美ちゃんはローファーを履く。


 俺も靴へ履き替えて昇降口を出た。


 校門へ向かって歩く生徒の数は多い。


 部活へ向かう生徒。


 友達と騒ぎながら帰る生徒。


 駐輪場から自転車を押してくる生徒。


 その間を俺と和美ちゃんは並んで歩いていく。


「和美ちゃん、今日は部活とかないの?」


「入っていないのでありませんよ」


「そうなんだ」


「信吉さんは?」


「俺も入ってない」


「知っています」


「知ってるなら、どうして聞いたんだよ」


「会話を続けるためです」


「正直だな」


「ウソをついても仕方ないですから」


 校門を抜ける。


 学校から少し離れると、生徒たちの数もだんだん減っていった。


 住宅地へ入る。


 学校の周りで聞こえていた騒がしい声も、もうほとんど聞こえない。


 代わりに、どこかの家から掃除機をかける音が聞こえてくる。


 家の前で寝転んでいた白い猫が俺たちをちらりと見た。


「あっ、猫です」


「よくこの辺にいるよ」


「飼い猫でしょうか?」


「たぶん。首輪してるし」


「触っても大丈夫ですかね?」


「逃げられると思うけど」


「やってみます」


 和美ちゃんが足音を立てないように猫へ近づいていく。


 猫は顔だけを上げ、じっと和美ちゃんを見つめた。


「おいで」


 和美ちゃんがしゃがみ、そっと手を伸ばす。


 指先が届きそうになった瞬間。


 猫は素早く立ち上がり、家と塀の隙間へ入ってしまった。


「あっ……」


「やっぱり逃げられたな」


「もう少しだったんですけど」


 俺たちは諦めて、また歩き始める。


「次に見つけたら今度こそ触ります」


「猫にも都合があるからな」


「分かっています。無理には触りません」


「ならいいけど」


 そんな話をしながら歩いているうちに見慣れた角を曲がっていた。


 次はなにを話そうか。


 そう思って前を見たところで足が止まる。


 目の前に俺の家があった。


 もう少しかかると思っていた。


 和美ちゃんと話していたためか時間が経つのがやけに早く感じた。


「本当ですね」


「全然気づかなかった」


「信吉さん、話に夢中でしたから」


「そうかもね」


「私はちゃんと分かっていましたよ」


「じゃあ教えてくれればよかったのに」


「教えたら話が終わってしまうじゃないですか」


「…………」


 さらっとそんなことを言う。


 和美ちゃんは少し恥ずかしそうに目を逸らした。


 俺まで顔が熱くなってくる。


「それじゃあ、またね。今日はありがとう」


 ごまかすように手を振る。


「はい」


 和美ちゃんも小さく手を振り返してくれた。


「信吉さん」


 背中に和美ちゃんの声が届いた。


 俺は家の扉の前で足を止める。


「ん?」


 振り返る。


 和美ちゃんはまだ門の前に立っていた。


 帰る様子はない。


 カバンの持ち手を両手で握り、何かを迷っているように俺を見つめている。


「どうしたの?」


「…………」


 和美ちゃんが小さく息を吸う。


 頬がほんのり赤い。


 それでも紫色の瞳は俺を離さない。


「私も信吉さんの家に入ってもいいですか?」


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