うるさいくらい、なんもない
「よお、久しぶり」
「久しぶり。何年ぶりだっけ」
「二年。いや、三年か」
「そんなに?」
「なるよ」
「もっと会ってると思ってたわ」
「……このへん、変わったな」
「だろ。あっちの商店街まるごとなくなってさ、全部更地」
「全部?」
「全部。きれーに何もない。で、そしたらさ——ほら、ここ」
「ここ?」
「見ろよ!目の前!」
「…………」
「な!? 富士山!」
「……ああ」
「すっげえ綺麗に見えるだろ!めちゃくちゃでかい」
「ほんとだ。こんなに大きかったんだな」
「風、気持っちーな」
「いろいろ無くなったからな、風通しも良くなったんだろ」
「ほんとだよ。前は建物ぎゅうぎゅうで息苦しかったもんな、この辺」
「ああ、そうだったかもね」
「だから静かだよなあ、ここ」
「前は、うるさかった」
「じゃあ良くなってんな」
「……うるさいよ」
「しっかしでけえなあ、富士山」
「……ん?ああ」
「なあ、登んない?」
「は?」
「富士山。登ろうぜ、今度」
「なんで」
「見てたら行きたくなった。こんなでかいの目の前にあんのに、行かねえのもったいねえだろ。お盆に休み合わせてさ」
「……お前はほんとそうだよな」
「なにが」
「たまに羨ましいよ」
「いつも羨ましがってくれよ」
「ふふっ」
「おれそろそろハラ減った」
「俺は、もうちょっとここにいるよ」
「富士山好きになったか?」
「別にそうでもないよ」
「変なやつ。じゃあ、おれももうちょっといるよ」
「そっか」
「……」
「……」
「……あの辺かな」
「あー、……なあ、そろそろ」
「分かったよ。ラーメンでいい?」
「そうこなくっちゃ」




