あくしゅ
「諸君、我々の世界は今なお脅威にさらされている」
「議長、本日の議題は」
「平和だ。いつだってそうだ」
「援助は試しました。食料を分け合い、分け合い、分け合った。結果、奪い合いが起きた」
「武力行使もやった。争いを潰すために争った。笑えない話だ」
「外からの圧力は」
「腕がものを言う時代は終わったんだ。締め上げたところで恨みが残る」
「では教育は」
「何世代もかかる。我々にそんな時間があるかっ」
「その通り、そんなに待てません!いま、現にあの火の前で、仲間が——」
「……君は、まだ若い」
「関係ないでしょう!毎日誰かが、冷たく、横たわっていくんですよ!」
「関係ある。長くこの世界を見てきた我々にはわかる。そう簡単に——」
「簡単じゃないから聞いてるんです!」
「…………」
「……我々には、もう打つ手なしでしょうか」
「…………いや。ひとつだけある」
「議長?」
「握手だ」
「…………は?」
「ヒトの気持ちに訴えかけるんだ。力でも駆け引きでもない。心と心を交わす。直接向き合って、手を取り合う。我々はいつも遠くから手を打とうとしてきた。でも手を差し伸べたことが一度でもあったか? 同胞だというのに、なぜ触れようとしない。握手なんだ。たった一度、手を握り合うだけで——」
「握手だと? 愚策だ!」
「甘い! もっと壁を!」
「悪い手だ! 理想論で腹は膨れん!」
「それは、無謀です!」
「……君もか」
「無謀ですよ。だって——」
「何度でも言おう、君はまだわからんのだ。若すぎる。ヒトは分かり合える。なぜ手を取ろうとしない!」
「…………議長」
「やれば分かる。握手だ。さあ、隣の者と手を取り合ってみろ」
「…………」
「…………」
「…………」
「……なぜ誰も動かん」
「いえ、あの……動いては、いるんですが」
「全員こう、胸ビレをぱたぱたしてるだけでして」
「…………」
「…………」
「……いや、わしはあるからさ。八本。ほら」
「あ、いま伸ばしたら——」
「ん?……うおぉぉぉお!!」
「…………あーあ、手なんて開くから。唐揚げか煮物かしらね」




