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ございますでいらっしゃいますでしょうか

「もしもし、そちらのシステムだけど、バグってますよね!?」

「お電話どうも。テクニカルサポートの田中です。どんな不具合でしょ?」


「メールの予測変換! あなたの会社に入れてもらったやつ! 敬語がおかしくなってんの!」

「いちいち電話しないでくれよなぁ、はいはい。具体的にどんな——」


「あんたさ、敬語もまともに使えないわけ?こっち客なんだけど。あんたのせいでメーワクしてんだけど!?」

「あー、敬語か。苦手でさ」


「仕事でしょ?け・い・ご!」

「……すみま、……申し訳ございません」


「それで、いま取引先にメール打ってたの。『お疲れ様です』って打ったら、『お疲れ様でございますでいらっしゃいますでしょうか』って!」

「……なるほど」


「直そうとしたら『お疲れ様でございますでいらっしゃいましたでございましたでしょうか』って! もう何回お辞儀してんだって話!」

「ごめ、もう、……大変申し訳ございません。ご確認させていただきますので、少々お待ちいただけませんでしょうか」


「それそれ! あんたの喋り方みたいになってんだけど!」

「……失礼いたしました。確認しますので、お待ち下さい」


「頼むわよほんとに。こっちは急ぎのメールなの」

「よし、これで。ご確認ください。敬語レベルを変更致しました」


「どうってあんた、『お疲れ様でございますでいらっしゃいましたでございましたでしょうか、でございます』って、酷くなってんじゃない!!」

「敬語に変更せよとおっしゃったのはお客様でございます」


「それはあんたにでしょ!?システムは逆よ逆! 敬語を無くしてほしいの!!」

「……承知致しました。設定を見直させて頂きます。敬語レベルを下げて再度対応致します。」


「早くしてよ」

「はい、では——敬語レベルを3段階ほど下げました。なんか打ってみて」


「えーと……『お疲れ様です。先日の件、ご確認いただけますでしょうか』、と。——あ」

「どう?」


「『おつおつおー。先日の関連につき確認よろ』って出た」

「……もうちょっとか——」


「ちょっと待って今度『おつ。先、確しろ』になった」

「え」


「『疲。先。確。しろ』」

「あ、ちょ、止めて」


「止まんないんだけど!? 『疲。先。確』——どんどん短くなってる!」

「…………」


「…………おい」

「…………だって下げろっていうから」


「限度があるわよね? それにしれっとタメ口きいてんじゃないわよ」

「すんません、あ、すみません。あ、いや、申し訳ございま——」


「——はぁ、もういいよ敬語。いったん全部なし」

「そう?あー、システムだけどさ、レベル下げすぎて振り切れたっぽい」


「ぽいって何」

「いや……正直ちょっと見たことない挙動してて」


「あんたのとこのシステムでしょ」

「うん」


「直せんの?」

「ちょ待って……いま敬語レベルをデフォルトに戻した。もう一回打ってみて」


「わかった。——えーと、『お疲れ様です。先日の件——』」

「どう?」


「…………あれ」

「何」


「全部消えた」

「え?」


「いや、文章全部消えたんだけど」

「消えたって、予測のとこ?」


「全部。メール本文ごと。丸々」

「…………」


「…………」

「…………」


「…………」

「…………ま、誠に申し訳ございません」


「…………まあいいわ、いやよくはないけど。——ねえ」

「はい」


「私、なんのメール書いてたっけ」

「……存じ上げません」


「そうよね。……田中さん。再度、お電話させていただきます」

「もちろんでございます。またのお電話を、心からお待ちしております」

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