第8話 勉強会B
朝目が覚めると、マフマフがプニプニになっていた。
良く見ると、ランの寝ている位置が変わっている……俺が左側で抱き枕にしていたわけだから、間にファラが入ったとしても、その更に左にならないとおかしい。
それなのに、右に寝ているミリアの更に右に移動している。
いくらランの寝相が悪くても、そこまで大移動はしないだろう。移動したとして、俺の上を通過するわけだから、そのときの衝撃で俺は起きるはずだ。
俺が寝ている間に何が起こったというんだ? 分からない……。
ランがアバンに代わっていたのであれば、さすがに驚くがファラなので、むしろ嬉しいくらいだし、まぁ、いいか。
謎を残したまま、ゆっくりベッドから出る。
周りを見ると、ミュウが居なくなっているので、食べ物の匂いもするし、恐らくマルカと食事の用意でもしているのだろう。
「おーい、朝だぞー。皆起きろー」
「うぅ……もう朝ですか……」
「ふぅ、あぁぁぁ……」
ミリアとランが起きたので、とりあえず揉んでおく。
「ひゃぁっ、もう……」
「むぅ……何、してるのぉー」
「朝だぞ、早く起きろ」
ミリアとランが起き上がったので放置し、ファラを抱き起こす。
「タカシ、ねむい……」
「ダメだ。起きなさい」
さすがにパンツ一枚でアバンの前に出すわけにはいかないので、服を着せる。
マリーとルリアがまだ起き上がらなかったので、空間魔術を使い落しておく。
「がぁっ!?」
「な、なに!?」
「起きろって言ってるだろうが」
全員起きたので、ファラを肩に乗せてからリビングに向かう。
「た、タカシしゃまっ! おはよごじゃます!」
「お、おはよう、ござい、ます」
「ミュウ、ちゃんと挨拶できるじゃないか。偉いぞ。おはよう!」
「ふん、お姉ちゃんに言われたですからね。仕方なくです」
「だ、だめだよ、ミュウちゃん。タカシ様はご主人様なんだから」
「でも……」
「めっ」
「うぅ……ごめんなさいです」
マルカの教育のお陰か。
でも、俺は憎たらしくて口答えばかりのミュウも好きだけどな。
とりあえずは、マルカに任せておこう。
「もう食事出来るのか?」
「ひゃい! も、もう! できてましゅ!」
「そうか。じゃあ、アバンさん達を起こしてくるか」
「あぅ、う、ウチがいくます!」
「そうか? じゃあお願いするかな。ありがとう」
「いえ!」
マルカが出ていったので、とりあえず椅子に座る。
ファラを横に座らせようと思ったが、半分寝ているのか、俺の頭に全体重を乗せて微動だにしないので、そのままにしておく。
「ミュウ、昨日の戦闘はどうだった? ちゃんとやれたか?」
「らくしょーです! みゅ一人でもいいくらいです」
「そうか。今日は、皆と一緒だからな。ミュウがすごいところを、皆に見せつけてやらないとな」
「まかせるです」
ミュウが胸を張って、自信満々なポーズをとっているところに、皆が次々に起きてきた。
「おはようございまーふ」
「おはよー」
「おはようございますです!」
「おはよう」
「おはよう。今、マルカにアバンさん達を起こしに行ってもらっているから、とりあえず座って待とう」
それぞれが椅子に座り終えたので、少し話をしておく。
「今日の戦闘は、マリーに色々と試してもらいたい事があるから、マリーが主体になると思う」
「私ですかっ!?」
「おう、お前は精霊魔法とやらが使えるようになったからな」
「えぇっ、本当なのですか!?」
「あぁ、精霊魔法とやらがどんなものか見てみたい」
「わ、分かりましたです! 頑張ります!」
精霊魔法といっても、どうせ普通の属性魔法と対して変わらないのだろうけど、俺が使えない魔法だしな。
高威力だったり、MP効率が良かったり、恰好良かったりしたら俺も使ってみたいな……。
「なぁ、精霊術士ってどうやったらなれるんだ?」
「精霊術士は、基本的にエルフ族しか得ることができなジョブだと言われています。タカシさんは人族なので……」
「まじか……」
エルフ族固有ジョブなのか……?
「人族や魔族だと習得出来ないのか?」
「どうでしょう? 人族や魔族で精霊術士になったという情報は、聞いたことがないですね……」
「お前等の大好きな勇者の物語でも、か?」
「あぁ、勇者が光の精霊と契約したという話はありますよ。あと、魔族が闇精霊と契約したとか」
「それは契約しただけであって、ジョブではないんだよな?」
「えぇ、まぁ……」
うーむ。勇者が光、魔族が闇。テンプレだな。
「地上に火、水、風、土の精霊が住んでたりとかはしないのか? そいつら全てと契約すれば、ジョブを習得できたりするとか」
「エルフ領に各属性の精霊が住んでいるとは聞いたりしますけど、契約となるとどうなんでしょう、マリー?」
「はい、居ますよ。でも、契約を結んだという話は聞いた事がないです。エルフは、精霊から恩恵を授かるだけなので……」
「そうか。修行をして、恩恵を授かれば、精霊術士になれるとか、そういうことなんだろうな」
俺には遠い話だ。
今後、精霊達に会えるようなことがあれば、直接聞いてみよう。俺のモノにならないか、と。
「「おっはよーう!」」
「皆さん、おはよう」
「おはようございます」
精霊の話が終わったところで、ちょうどアバン達がやってきた。
「おはよう」
皆揃ったので、マルカに合図を出し、朝食を出してもらう。
ついでに、ファラを席に座らせる。
その後、今日の狩りでマリーの魔法を使い、色々と実験をする旨アバン達にも伝えておく。
アバンとサラは納得して話を聞いていたが、パルとパロはどうも納得ができないようで、いつもの元気な返事ではなかった。
「どうしたんだ、パル、パロ」
「うーん、マリー姉いいなぁって。アタイも、魔法の試し撃ちとか色々やってみたいなぁって」
「うんうん、ボス、アタシ達も色々やりたいよ……」
「むぅ、そうだなぁ。お前達のスキルも見たことがないし、色々と使って試してみるか」
「「やったー!」」
こいつらのジョブも、まだ俺には把握できていないしな。
討伐者と討滅者。基本は単体相手のようだが、面白そうなスキルだし、今後の生活改め、性活の為に実験してみる価値はあるな。
「お前達、ハイドやスニークっていうスキル知っているか?」
「はいど?」
「すにーく?」
「分からないか……ミリア、知っているか?」
「はい。ハイドは、少しの間姿を見えなくできます。スニークは、少しの間気配を消せます」
「ふむ。それは便利だ、ん? 結局どちらも同じじゃないのか?」
討伐者のハイドに、討滅者のスニーク。討滅者の方が上位だから効果が高いとか、そういうことだろうか?
「微妙に違うんですよ。姿を消しても、気配を感じることはできるので、匂いや音に敏感な人は察知できます。でも、気配を消せば、それらを感じることができないので、察知できません」
「じゃあ、ハイドしてスニークで近づけば良いのか」
「簡単に言うとそうですね。でも、そんなに簡単なスキルではないので、うまく使える人はあまり居ませんよ?」
「そうか。おい、パル、パロ。お前達はハイドとスニークを使えるはずだから、練習しろ」
「「承知だよ、ボス!」」
ミリアがこちらを見ながら、溜息を吐いている。
使える人はあまり居ないと言ったばかりだしな。
でも、ミリアの話を無視したり、聞いていなかった訳ではない。いきなりレベルを上げたことで覚えたスキルを、使う事ができるかどうか実験してみたいだけなんだ。
「なぁ、ミリア。別にお前の忠告を無視するわけじゃないからな」
「えぇ、分かってますよ。また何か悪巧みしているんでしょ?」
「人聞きが悪いな」
「だって、そんな顔してますもん……」
もう俺の顔の動きで分かるようになってきたのか!?
まずいな。ポーカーフェイスを気取っていたつもりだが……。
「それはそうと、本来、スキルってどうやって使うんだ?」
「訓練して覚えますよ?」
「うーん、それは分かる、いや分かっているんだよ。そうだな……例えば、ダンジョンで急激にレベルを上げるとするだろう?」
「はい、ダンジョンでは良くあることですね」
「それで、今まで使ったことも無かったような、高位の魔法とか、スキルをいきなり使う事って出来るのか?」
「できますよ。現に、私が障壁とか使って見せたじゃないですか」
そうだった。
ミリアのレベルが上がって、障壁を覚えていたから使わせたら、普通に使えたんだった。
「あぁ、そうだったな。それってさ、誰でもできることなのか? ミリアが特別だったということは?」
「私が特別なんて思っていないですよ? ただ、スキルを知らない人は一生使えないままでしょうけど」
「それって、どういうことだ? 本当は使えるはずなのに、使い方を知らない人は使えないってことか?」
「そうです。どんなスキルか分かっていれば、体が勝手に動く? というか、何となく使えるようになるので」
「何となくって何だよ……」
「何となくは、何となくですよ。こう、何て言うんでしょうか? 頭の中に“こんな形”や“こう動くと良いかも”みたいな感じで、所作が思い浮かぶっていうか……うぅ、何となくです!」
ミリアにしては珍しく、曖昧な回答だなぁ。
レベルが上がっていれば、頭の中に使い方が浮かぶってことなのだろうか。
それとも、スキル名を声に出して言うと、勝手に体が動くとか。便利ではあるけど、それはそれで怖いな。
「まぁ、スキルは体に大きな負荷が掛かってしまうので、スキルを使うにあたって、体がついてくればの話ですけど」
「そうか」
負荷か。これはHPやMP消費の事だろうな。
曖昧な説明ではあったけれども、要するに、レベルが上がって、消費するHPかMPが残っていれば誰でも使用する事ができる。
但し、使用するスキルがどんなものであるか分かっていないと、発動すらできない、ということか。
まぁ、どれも当然のことではあるな。
俺も神シリーズは、実験の末に使用することができたし。
俺の場合は、自分のステータスを見ることができるから、スキル名が分かって推測し易かったというのもあるが。
「なるほどな。理解した。ありがとう」
「いえいえ。お役に立てて良かったです」
話が終わったので、周りを見てみると、俺とミリアだけが会話をしている状態になっていた。
「あの、タカシ様。申し上げ難いのですが……タカシ様は、今までどのような所で生活をされていたのでしょうか。どれも基本的な事ばかりを、ミリアさんに聞いていたようですが……?」
アバンの事をすっかり忘れていた……。
皆で食卓を囲んでいるから、当然聞こえていたのは当然だよな。
「俺はこの大陸の人間ではないので、当たり前の事が分からないんですよ。あっちでは、あまり人と関わりを持っていなかったので」
「そ、そうですか……失礼な事を聞いてしまい、すみません」
「いえいえ、大体の事は分かっているつもりではあるんですけど、確認の意味も込めて、ミリアに聞いているんです」
「なるほど。それにしても、ミリアさんはお詳しいですね」
「そうでしょう。自慢の嫁です」
「よ、嫁じゃないですっ!」
アバンが“まぁまぁ”と言って宥めてくれたので良かった。
それにしても、スキルってそういうものだったのか。
これなら、皆に色々と実験をさせることができるな。
食事もそろそろ終わりに近付いてきたので、実験のために、もう少しだけ聞いてみることにする。
「ミリア、後は知識として知っておきたいんだけどさ、精霊関係はマリーが分かっているだろうから、良いとして、討伐者、討滅者、剣士、小剣師、戦士、斧戦師、槍戦師、舞闘士、破術士、調合師はどんなスキルを使えるか全部分かるか?」
「お、お多いですね……。うーん、そうですね。今挙げたジョブのスキルでしたら大体把握していますよ」
「さっすがだなぁ。じゃあさ、今日の狩りで、それぞれのスキルの使い方を、皆に教えてやってくれ」
「えっ!? ほとんど上位のジョブじゃないですか!」
「おう。皆、そろそろ使えるはずだからな」
「なんと!?」
ミリアを驚かせるつもりが、アバンが食いついてきた。
「どういうことですか!?」
「タカシ様、今仰ったことは真ですか!?」
「えぇ、本当ですよ。いやー、皆才能あるなー」
「タカシ様、そ、それは偶然にしては出来過ぎですよ!? 一体、皆さんに何をされたのですか!?」
流石に皆に才能があった、では誤魔化せないか……。
「ちょっとおっぱい揉んだだけです」
「お、おぱっ、ぱいっ!? 誤魔化さないでいただきたい!」
「俺は、小さいのから大きいのまで、大きさに関係なくおっぱいが大好きなんです。なぁ、皆、そうだろう?」
「「「「はい……」」」」
「なっ、なぁ!? 姫様まで!?」
「まぁ、それだけです。さぁ、今日は誰のおっぱいを揉もうかな。あ、飯も食い終わったし、そろそろ出発の準備でもしましょう! マルカ、片付けお願いして良いか?」
「ひゃっ、ひゃい」
一気に一人で話を進めて、マルカに後片付けをお願いしたあと、アバンを残して準備を進めるため、部屋に移動する。
全く何一つ誤魔化せていないが、何とかなるだろう。
別に、アバンがサラに詰め寄って聞き出したとしても、彼ならば黙っていてくれるだろうし、問題はない。
最後はそんな投げやりな形になり、準備も完了する。
「よし、忘れ物などは無いか?」
「大丈夫です」
「ん」
「いつでも大丈夫です!」
「おっけーだよー」
「いきましょう!」
家を壊すのはMPの無駄なので、そのままにして出発する。




