〜第九話 宿屋での一泊〜
ガルバス鎮圧作戦で失敗し、肩を撃ち抜かれ負傷するアルト。
仕方なく神殿から銀貨5枚を盗む神官
突然のパニックに陥り、ザクシス奇襲作戦のせいで神殿という居場所を失った魔法使い見習い。
これは彼らのとある日常の会話である。
これは少し後の、それでいながら近い未来の話だ。
アルト:
「……なあ神官様。これ、神殿から持ち出したって言ったよな? 大丈夫なの? 明日の朝、神罰で雷落っこちてこない?」
神官:
「お黙りなさい……! 奉納室は吹き飛び、保護対象は行き場を失い、貴方が撃たれて死にかけたのです。これは『正当な経費』です! 神もお許しになります……多分……(必死に祈る)」
見習い少女:
「神官様、目が泳いでますよ……。でもアルトさん、本当に生きててよかった。あのクロスボウ、音もなく飛んできて凄かったですね……」
アルト:
「凄かったですね、じゃねえよ! 一発で俺の命の灯火が消えかけたんだぞ!? ガルバスの奴ら、新兵器とかズルいだろ! そもそも何で俺たちがガルバスの拠点なんかに行かされたんだよ。絶対ザクシスを追うべきだったろ!」
会議テーマ①:「大人の事情がクソすぎる件」
神官の愚痴:
「神殿長はアクシスや商業ギルドマスターに頭が上がりませんからね。ザクシスを追うとドロドロの権力闘争に巻き込まれるから、都合よくガルバスへ私達を押し付けたのでしょう」
少女の純粋な疑問:
「でも、マルカ村でアクシスとザクシスの下っ端が大暴れして、国家の第1軍団が出撃したんですよね? じゃあ神殿長たちの保身、意味なくないですか?」
アルトの悟り:
「上層部の考えることなんてそんなもんだよ。現場の俺たちがクロスボウで射抜かれて、神官様が横領犯になって、見習いちゃんが宿無しになっただけっていうね」
会議テーマ②:「第1軍団vs下っ端の抗争、どうなる?」
アルト:
「国家が第1軍団を派遣するって言ってもさ、戦ってんのただの『下っ端の小競り合い』だろ? 大砲でハエを叩くようなもんじゃないの?」
神官:
「ですが、商業ギルドや貴族街の収入源が荒らされた以上、国もメンツがありますからね。本陣は涼しい顔で、下っ端だけが踏み潰される地獄絵図になるでしょう」
少女:
「……私、もう神殿にも戻れないし、これからどうしたらいいんでしょう……」
アルト:
「大丈夫だろ。俺なんて元・農民で、排水路の掃除屋で、ネコババ冒険者だぞ? 生きてりゃなんとかなる。……とりあえず、明日の朝飯は白パンと温かいスープな」
神官:
「残りの銀貨は大切に使ってくださいよ……!(切実)」
こうしてとある宿の一室での切なくも温かい談話会は幕を閉じたのだった..................




